(21.3.28) イオンの反省
国内のスーパー業界を二分するイオンとイトーヨーカドーが値下げ合戦に突入した。
3月18日、イトーヨーカドーが2600品目の衣料品、住居関連商品、食料品の価格を15%~30%値下げすることにしたが、その翌日イオンは信じられないような広告を掲載してイトーヨーカドーに対抗した。
「イオンの反省」
「イオンの価格は他店にくらべて、決して安くは有りませんでした」
「イオンの売場は、欲しいと思える商品が並んでいませんでした」
「もう一度、お客様が求める本当の低価格、売場、サービスを取り戻すことに全力を尽くしていきます」
具体的には食品や衣料品など5100品目について、食品で20%、衣料・住宅関連で30~35%の値引きを予定しているという。
イオンが今までの常識を覆すような衝撃的な広告を掲載したのには、深い理由がある。
実はスーパー業界は完全な冬の時代に入っており、イオン全店売上高は08年8月以降、前期比マイナス(11月▲4.9%、12月▲3.9%、1月▲4.6%、2月▲8.4%)が続いている。
そして09年2月の連結決算が最終赤字になることが確実視されており、イオンは利益を上げることができなくなった。
理由は特に総合スーパーのジャスコが専門店(衣料のユニクロ、家電のヤマダ電気、薬のマツモトキヨシ、家具の大塚家具、100円ショップのダイソー等)との価格競争に負けているからである。
「このままいったら総合スーパーというビジネススタイルは崩壊する」
岡田社長の危機感が「イオンの反省」を掲載させた。
もっともイオンとしても今まで指をくわえて何もしなかったわけではない。総合スーパージャスコのジリ貧をカバーするために食品専門スーパーマックスバリュの展開を積極的に進めたり、PB(プライベートブランド)の取り扱い品目を増やしたりして顧客の獲得に努力してきた。
しかしそうした取り組みも売上の減少速度を弱めるだけで、イオン全体のジリ貧傾向を止めることができない。
イオンは「イオンの反省」で価格を下げる方針を打ち出したが、この戦略は以下のようだ。
① PBの扱い商品の拡大を目指すことで、現在売上の約10%程度の割合を11年2月期までに20%程度にまで引き上げる。
PBの価格はNB(ナショナルブランド)の価格より10%~40%程度の低く設定されているので価格低下に結びつく。
② PBは主として中国や東南アジアに生産拠点があるが、工場をイオンが所有しているわけでないので需要の増減にフレキシブルに対応できる。その結果不要在庫を持たなくて済む。
イオンがこうした低価格戦略をとることにしたのは、今後の世界経済がデフレ傾向にあると判断したからである。
昨年の夏までは石油価格や穀物価格、原材料の高騰によりインフレ傾向が加速し、イオンもNBブランドを中心に値上げラッシュが続いたが、リーマン・ブラザーズの倒産以降世界経済は完全にデフレ傾向に転じた。
「デフレになれば低価格でないと物は売れない。しかもデフレはこの先何年も続くだろう」
岡田社長の「イオンの反省」はこうした世界経済の潮流に何とか追いついていきたいとの悲鳴のようなものである。
私のように、年金生活者はデフレは大歓迎だし、またジャスコ鎌取店でほとんどの買い物をする身には、イオンのこの戦略が何とか成功して欲しいと応援したくなる。
「反省イオン まけるな やまちゃん ここにあり」
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