(23.1.16) BS世界のドキュメンタリー グローバル化する食 コメ貿易の背徳

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 私はドキュメンタリーのファンだが、あまり海外のドキュメンタリーを見ることはない。一番の原因は当たりはずれが大きくて、しばしば時間の無駄だったと思うことがあるからだ。

 一方NHK製作の番組を良く見るのは品質がよく、まずもって駄作が少ないことによる。なぜこのような品質の差が出るかと言うと、スタッフの数と資金量の差が原因と思っている。
海外製作のドキュメンタリーは少人数でかつ資金不足の状態で実施しているので、掘り下げが不十分なことが多い。

 しかし今回見た「グローバル化する食 コメ貿易の背徳」は良くできた番組だった。
製作したのはフランスLadybirds Filmsという会社で2010年の製作である。
この番組は2008年春の穀物高騰、わけても米の値段が従来の約6倍も上昇したのはなぜかと言う原因究明を行っていた。

 かつて日本で米不足が発生したのは1993年で、このときはタイからインディカ米と言う種類の米を輸入したのだが日本人の口に合わず、多くの米がその後捨てられてしまった(日本人が食べている米はジャポニカ米という)。

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 一方2008年春の米騒動は日本は蚊帳の外で、国内では減反強化をして米の過剰を抑えようとしていたのだからまったく世界の動きとは別の動きをしていた。
しかし世界市場はインドの旱魃とベトナムの水害を見て、投機資金が一斉に米(インディカ米)に群がり世界的投機ゲームが発生していた。

注)この時期は石油や鉄鉱石のような鉱物資源と小麦やとうもろこしのような食料資源に投機資金が一斉に群がっていた時期で、現在と状況が良く似ている。

 この影響を最もひどく受けた地域は最貧国が多いアフリカで、その一つが西アフリカのセネガルだった。
セネガルは米を主食としていたが、それはフランスが植民地政策として19世紀後半から、同じくフランスの殖民地だったベトナムから米を輸入して米を主食とさせたからである(セネガルはピーナツを生産していた。一地域一生産物のモノカルチャー方式)。

 2008年春までは米は投機の対象にならず、もっぱら実需で売買されておりトン当たり250ドルが相場で、セネガルの貧しい住民でも購入することができていたと言う。

 ところが2008年春、急にパニックが発生した。今まで250ドルだった米が見る見るうちに値上がりし、最終的には1200ドル程度まで跳ね上がってしまった。
このときはセネガルをはじめ世界各地で暴動が発生し、アフリカは飢餓で死滅すると言われたものである。

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パニックは輸入業者が米を溜め込んでいると非難していた

 この番組はこのパニックはあくまで投機資金が流れ込んだための売り惜しみが原因で実際に米がなくなっていた訳ではないことを、当事者の証言で明らかにしている。

 このセネガルの米流通を支配しているのはタイやベトナムの輸出業者、セネガルの輸入業者、それとスイスに事務所を置く穀物商社トレーダー)である。

 現在、世界最大の米の輸出国はタイ(次はベトナム)だが、タイは世界に1000万トン程度の輸出を行っており、ここでの価格が世界の米の価格の標準になっていたと言う。

 その価格を見てセネガルの輸入業者は輸入量を決めていたのだが、2008年春にはそうした長年の価格決定のメカニズムが崩れ、もっぱら投機資金の量によって価格が決められる様になってしまった。

 もともとトレーダーの役割は通常の商社と同じくタイの輸出業者に対する輸出金融とセネガルの輸入業者に対する輸入金融、いわゆる資金の立替業務である(その間一時的に米はトレーダーの所有になる)。

 通常は商社金融そのものだが、米が不足するとなればできるだけ米の販売を遅らせて値上がりを待つのが最も利益が上がるので意図的に売り惜しみを行う。
もちろんタイの輸出業者もセネガルの輸入業者も同じで、みんなが値上がり期待で米を在庫してしまったため、世界市場から米が消え、価格は6倍に跳ね上がってしまった

 当時タイ政府は約250万トンの備蓄米を持っていたが、ここも値上がりを狙って放出せずに抱え込み、一方世界最大の米輸入国だったフィリッピンはあわてて250万トンの買い付けに走った。
1200ドルと言うのはそのときフィッリピンがベトナム政府に支払った価格だが、価格が高いほど政府関係者にリベートが多く支払われるため、フィリッピン政府(アロヨ大統領とその夫)は喜んで支払ったと噂されている。

注)この投機で輸出業者、輸入業者、そしてトレーダーが利益を獲得した分、消費者は高い買い物をさせられたことになる

 このパニックの後、コメ価格は急速に低下し、現在は500ドルから600ドルの間で推移している。
しかし世界ではこの時の米不足を教訓に、中国やリビヤやサウジアラビアといった国はアフリカ、特にコメ生産に適していると言われているセネガルの隣国マリに農業投資(農地の買占め)を行っている。

 日本の米は日本人の口に合うように特殊に品種改良され、もっぱら日本国内で生産されて、日本人だけが食べているので投機の対象にはなっていない。
実際は作りすぎて減反をいかに実施すればよいかが問題になっているが、これはある意味で幸せな状況と言える。

 今回のドキュメンタリーを見て食料が投機の対象になった時の恐ろしさをしみじみ感じてしまった。
そして現在再び投機資金が小麦やとうもろこしやインディカ米に群がっている。
この資金を提供しているのはアメリカ、西欧、そして日本の資金(金融緩和の資金がここに流れている)だから、実際は自分達の首を自分で絞めているようなものだ。

 

 

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(22.12.22) NHK海外ドキュメンタリー 悪魔が踊る街 リオ 終わらぬ麻薬取引

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 とても不思議な気がした。
ブラジルといえばサッカー王国ジーコの故郷であり、カーニバルが大好きな陽気な国民であり、最近は経済成長真っ盛りの国で、新興国の一角として飛ぶ鳥を落とすような勢いの国だと思っていた。

 一人当たり国民所得も10000ドルを越えて、いわゆる先進国グループに入れそうな勢いであり、特に鉄鉱石は世界的企業ヴァーレようして鉄鉱石価格の決定権を持ち、新日鉄が泣く泣く価格のアップに応じた国である。

 だから今回見たイギリスの放送局が製作したドキュメンタリー「悪魔が踊る街」には驚いてしまった。
この悪魔が踊る街とはリオデジャネイロのことだが、人口1170万人だというから東京とほぼ同じ規模の街だ。

 しかしこの街には20%の人口が住むファベーラというスラム街600箇所もあり、そこの治安は実質的にギャングが取り仕切って麻薬の密売が生業なのだという。
実際画面に出てきたスパイダーマンというギャングは、約150人から200人の麻薬の売人を組織し、ギャング自らはショットガンや手榴弾で重武装していた。

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ギャングのボス、スパイダーマン。手にショットガンを持っている

 イメージはソマリヤやアフガニスタンであり、とてもここが躍進目覚しいブラジルだとは思われなかった。
ブラジル政府もこうした麻薬密売組織を撃滅しようと、軍警察という特殊部隊を組織しており、日本的なイメージでは明確に軍隊といっていい装備をしていた。

 このファベーラに軍警察が突入する時は装甲車両を押し立てて、かつ大人数で突入し、それに対しギャング団も狙撃手を配備して抵抗するなど、まさに戦争そのものといってもいい状況になる。

 このドキュメンタリーにはギャングと軍警察衝突以外にジョニー牧師という人が出てきて、ギャング団から足を洗って全うな人間になるように布教活動していた。
私は牧師といえども殺されてしまうのではないかと心配したが、ブラジル人の信仰心はとても厚く、神の僕である牧師に対してはギャングといえども手出しをしないという。
ジョニー牧師も元はといえば、ファベーラの麻薬密売人だったそうで、この地区で生まれた子供はサッカー選手になるか、ファンク歌手になるか、そのどちらもかなわぬ場合は麻薬密売人になるのだという。

 実際はサッカー選手になるのも歌手になるのも難しいのだから、麻薬密売人以外の職業の選択はないというのが実情のようだった。
そして密売組織同士の抗争事件は日常的に起こっており、他の組織の若者が数十人単位で殺されることも珍しくないようだった。

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軍警察がファベーラに突入した時の様子

 画面ではコカインと偽ってベーキングパウダーを混ぜた麻薬を売っていた若者が、組織からリンチにあい、耳を犬に食われて、かつ足の骨を折られゴミ箱に捨てられていた。
この若者は奇跡的にジョニー牧師の支持者に助けられて看護されていたが、ギャングのスパイダーマンは「殺しても当然のヤツだ」と嘯いていた。

 このブラジルの現実を見てつくづく考え込んでしまった。これはアメリカで言えば禁酒法時代のゴッドファーザーの世界であり、日本で言えば戦前の高倉健が演じた日本侠客伝の世界だ。
リオという世界的な街のほぼ20%がこうした無法地帯になっており、麻薬の密売の温床になっているとは驚きだ。

 これではGNPが毎年いくら伸びても、ヴァーレの鉄鉱石価格がいくら高騰しても、国民は法と無法の狭間に生き続けることになる。
このブラジルのドキュメンタリーシリーズは始まったばかりだが、いわゆる新興国の実態を分析するのに最適な映像なので今後とも注目することにした。

 

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