(22.1.30) きみちゃんの扇田堤
(完成したきみちゃんの扇田堤)
信玄公があの暴れ川として有名だった笛吹川に堤を築かれ、甲府盆地の民百姓から洪水の苦難を取り除いてくださいましたのは今から450年以上も前のことでございます。
以来、甲府盆地は豊穣の地となり、民と武田家の繁栄の礎になったのでございます。
ここおゆみ野の四季の道は普段は何事もなく老若男女が散策を楽しむ道でございますが、一旦大雨が降りますと扇田小の四季の道に面した斜面から土砂が大量に流れ込み、その場所は泥濘の道になってしまうのでございます。
特に川の道と四季の道が交差する場所は流れ落ちた濁流が行き場を失い、湖となりそこを通学路にしている扇田小学校の児童は難儀を極めておりました。
ここのセイフティー・ウォッチャーを長年にわたってしていましたきみちゃんは大雨が降るたび子供たちが迂回路を通らねばならなくなる現状を何とかして解決したいと思っておりました。
「斜面から泥が流れ落ち、それが四季の道に積もるからいけないんだわ。なんとか泥をせき止めることはできないかしら」
(斜面の土砂が大雨のとき削られて四季の道をふさいでいた。堤が完成前は四季の道が泥で覆われていた)
きみちゃんは扇田小学校の打ち合わせ会議でも何回か解決策がないか提案してみましたが、うまい解決策を見出すことができませんでした。
きみちゃんは途方にくれていましたが、あるときひらめいたのでございます。
「これは、ここの御領主様に直接窮状を訴えて、泥濘を止める堤を作っていただくのが一番だ」
昨年の12月に思い余ったきみちゃんは、緑土木事務所の御領主、弾正様に、「どうか子供たちのために斜面から流れ落ちてくる土砂を止めるための堤を作っていただきたい」とたった一人で訴えたのでございます。
弾正様はとても心根の広い方で、しかもこの場所が来月行われる四季の道駅伝のコースであることも知っておりましたので、「それほどまでに民百姓や児童が困っているのでは、放って置くわけにはいくまい。すぐさま土塁を築き泥濘が四季の道に流れ込まないように対策を打とう」といってくださいました。
(排水溝が泥で詰まってしまうためこの場所が湖のようになる)
そしてこの1月の半ばから終わりごろまでにかけて、実にすばやい工事をなされ、ありがたいことに土砂が四季の道に流れ込まないように堤を築いてくださいました。
信玄公の信玄堤が約20年の歳月をかけて築いたのと比較すると、何と約2週間でここ扇田に堤を築いてしまったのでございます。
きみちゃんの喜びはひとしおでございました。
「よかった、これで扇田小学校に通う児童が濁流に足をとられて横転することがなくなった」
きみちゃんは完成した扇田の堤の前を子供たちが嬉々として通学している姿を見て一人涙をこぼしておりました。
土地の人はこの堤がきみちゃんのそうした献身的な努力によってできたのを知っておりますので、誰言うともなく「きみちゃんの扇田堤」と言うようになったそうでございます。
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