(22.3.3)バンクーバー・オリンピックの勝ち組と負け組
2週間にわたって開催されたバンクーバー・オリンピックが終わった。私はスポーツそのものの愛好家だからオリンピック放送はずいぶん楽しませてもらったが、一方で寂しさも隠しきれない。
日本選手の活躍がいま一つで、特に体格がさほど変わらない韓国や中国の選手の活躍を目の辺りにすると、「なぜ、日本はこんなに弱いのだろうか」という気持ちになるからだ。
今回のオリンピックで明らかな勝ち組はカナダ、アメリカ、韓国で、一方明らかな負け組はロシアそして日本だった。
カナダは主催国として金14個という最多のメダルを獲得したし、アメリカは今まで冬の大会では今一歩だったが、今回は総メダル数37個と最多の獲得数だった。
隣の韓国は金6、銀6、銅2と堂々たる成績で、国別メダル数でも5位なのだから、必ずしも冬季に強いと思われていなかった韓国の成績には目を見張る。
一方惨憺たる結果だったのはロシアで、かつては「冬季オリンピックといえばソビエト」と言われていたほどの強豪国だったのが、今回は金3つの11位だった。
メドベージェフ大統領は頭に血が登り「責任者は辞表を書かなければならない。できないというなら手助けする」といかにもロシア的表現で怒りを爆発させた。
次回の開催地ソチのロシアが、主催国レースで打ち負かした韓国に大きく遅れをとったのだから、「あわせる顔がない」ということだろう。
日本も明らかな負け組といえる。橋本聖子団長は長野のメダル数10個を目標にしたが、半分の5個であり、何より金メダルがゼロだったのが敗北を象徴している(長野では金5個だった)。
さすがに鳩山総理が見かねて「国として何か積極的に強化すべきところがあれば、考えて行きたい」と述べたが、私の気持ちとしてはメドベージェフ大統領のようにより直截な表現をしてほしかった。
「日本は弱すぎる。この原因を分析し適切な対処をしない限り、日本のオリンピックに未来はない」私だったらそう言いそうだ。
日本の冬のスポーツ界が低迷する原因は次のように言われている。
① 過去ウインタースポーツを支えてきた企業の業績悪化や倒産で、選手が十分な練習ができる環境にない。
注)ニッカウィスキー、池崎工業は廃部、拓銀は倒産、雪印乳業はジャンプだけを残して他は廃部。
② 企業スポーツに変わる国家のサポート体制が弱い。
注)北京五輪前の1年間の強化費
・ドイツ 274億、・アメリカ 165億、・英国 120億、・中国 120億、・日本 27億
③ スポーツ選手に対する制度的な報奨金や年金の仕組みがない。
注)韓国の国家報奨金
・金 4000万ウォン(約320万円)
・銀 2000万ウォン(約160万円)
・銅 1000万ウォン(約80万円)
韓国の物価水準は日本の約半分だから、実質のイメージは日本円を倍にすると合う。またこの他にスポンサーや競技団体からの報奨金もある。
韓国の年金制度
・国際試合で110ポイントを獲得すれば、月100万ウォン(8万円)
なおオリンピックの金メダルを獲得すると80ポイント
④ スポーツ選手の中にオリンピックの代表が国を代表して参加しているとの意識が低く、個人の競技と思っている傾向が強い。
注)男子ハーフボードの国母選手の場合を見ると分かるが、服装は個人の自由だとの意識で、国家の代表だとの意識はなかった。
以上のような要因がすべてからまって日本選手が活躍できない状況を作り出している。
最初に言えることは、かつてのように企業スポーツに頼ることができないのだから、早急にそれに代わるシステム作りをしなければ、選手は十分な練習もできない。
(スポーツ省を新設して育成環境を整える必要がある)
また日本選手は国家を代表してメダルの獲得に努力してくれたのだから、それに対する報奨金や年金の支給は当然のことといえる。
これほど日の丸を背負って努力してくれる人は、オリンピック選手とサッカーのワールドカップに出場する選手ぐらいだ。
(不要なダムや熊が遊ぶ高速道路を作るよりよほど生産的だ)
選手の意識も重要で、所詮個人競技だと思うと最後の最後で力を発揮できない。日本が概して団体競技(女子スケート団体追い抜き、陸上400mリレー等)に強いのは、自分が失敗すれば他に迷惑がかかるからと思って奮闘努力するからで、これは日本人の性格といえる。
(この日本人の性格を生かしたメダル獲得方針も大事だ)
オリンピックはギリシャの昔から戦争に代わる国別の力比べだった。この力比べに負けることは国民の意識を沈滞させる。
「どうせ、俺たちは弱いんだ。努力なんて止めよう」
そうした気持ちに陥らないために、韓国や中国並みの成績が取れるように国家は選手が努力できる環境を整えてほしいものだ。
注)画像はすべてNHKの放送を録画したもの。
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