(21.9.9) 八ツ場(ヤンバ)ダム入札延期と地方自治
地方自治とはなんと難しいことだと思った。今回の 八ツ場(やんば)ダム建設の入札延期に伴う地方自治体の反応のことである。
民主党がマニフェストに記載した「もっとも無駄な公共投資」とされた 八ツ場ダムについて、関係自治体(1都5県)からは「利水・治水の面から絶対に必要」との意見が次々と出されている。
これには民主党もびっくりしたのではなかろうか。
民主党としたら各自治体から「良くぞ中止してくれました。これで無駄な経費の出費がなくなり、本当に助かります」と言われると思ったら、まったく反対の反応だ。
特に東京都知事なんかは「 八ツ場ダムは利水・治水の面から必要で、中止になったら費用負担金約457億円について国に返還を求める。完成させるよりもばらしてダメにしたほうが、保障を含めお金がかかると思う」と述べている。
まず利水・治水の面から必要と言うことはまったくの嘘だ。
利水については東京都は水の確保が有り余っており、今後どうやって減らせばいいのかを検討しなければならない。
このことについては 八ツ場あしたの会が詳細な分析をしており、「工業用水は1970年代から横ばいないしは減り気味で、その後増え続けた水道用水も1990年代からは横ばいです(図1)。首都圏ではいまだに人口が増加していますが、一人当たりの給水量は減少を続けています。これは節水機器の普及と漏水防止対策の推進によるもの」だそうだ。
件の東京都についても「水あまりが最も顕著なのが東京都です。東京都の水道用水は1980年頃からすでに頭打ちでした。ところが水源開発が次々と進められた結果、保有水源はどんどん増え続け、現在では一日701万m3に膨れ上がっています。
一方で、一日最大給水量は最近10年間に100万m3/日も減少して、約530万m3程度になっているため、現在は約170万m3という大量の水源があり余っている」そうだ。
注)以下のグラフで確認していただけると石原知事の言葉が嘘であることが分かる。
http://www.yamba-net.org/modules/tinyd2/index.php?id=3
また治水については建設省(現国土交通省)が進めた、大規模堤防(スーパー堤防)により水害の危険性は大幅に緩和されと当の建設省(国土交通省)が説明している。
それは当たり前で、いつ完成するか分からない 八ツ場ダム建設を待たないと治水ができないなんていったら、それこそ関係住民から袋叩きにあってしまう。
八ツ場ダムは治水上も利水上もすでに不要となったダムなのだ。
費用分担金457億円も誇張で、このうちの約4割は国からの助成金になっている。だから東京都が負担した金額は実際は307億円だと言う。
それよりもさらに最終的な追加負担額約200億円(最終負担額は653億円と推定されている)がなくなるのだから本来は喜んでよさそうなものだが、石原都知事はダムを完成させろと言う。
注)最終的な金額の推定は、以下のブログの数値を使用。
http://www005.upp.so-net.ne.jp/boso/nakayama02.htm
一番分からないのは、「完成させるよりもばらしてダメにしたほうが、保障を含めお金がかかると思う」と言っていることで、何をバラすと言っているのだろうか。
現在まで作ったのはインフラ部分で、道路やJR吾妻線の移設や、住宅地でこれらはそもそもばらすような代物ではない。
あえて言えば仮排水工事がそれにあたるが、トンネルの両側をふさげばよいだけだ。
だから石原都知事のクレームは単にためにする議論なのだが、それにしても何でそのようなことを言うのかは検討の余地がある。
結論から言えば、「すでに支払った費用分担金を返してくれ」と言うことで、「特定多目的ダムおよびその施行令」には国が自ら中止する場合が想定されていないため、分担金の返礼については、ルールが存在しない。
「このまま行くと、国に分担金を踏み倒されるかもしれない。そうならないようにクレームをつけておこう」と言うのが本音だろう。
民主党も大変だ。誰が見ても不必要なダム一つ中止するにも、関係自治体すべてからクレームが出るのだ。
しかしこの程度のことでひるんでは、そもそも不要な公共工事など何一つなくなることはないのだから、断固とした対応を望みたいものだ。
最近のコメント