(22.8.4) 千葉市財政健全化プランの是非 財政は健全化できるか?
千葉市では出前口座と言うものを実施しており、このたび市民ネットの福谷さんが声をかけて鎌取コミュニティーセンターで「千葉市財政健全化プラン」の講義を財政課の岸本さんから受けた。
千葉市の財政が危機的状況にあることは前から知ってはいたものの、通常の生活をしている限りそうした危機意識はない。
いつものようにゴミの清掃車は時間通り来るし、四季の道の草刈も定期的に行われている。
道路も必要に応じて補修されており、下水道の整備も進んでいる。
私が唯一市の財政が厳しいと実感するのは公園のベンチで、ベンチが朽ち果てているが補修がされていない。已む無く私がペンキを塗って何とか持たせようとしているが、その時は「市の財政は厳しいんだな」としみじみ思う。
なぜ市の財政が危機的なのに、市民がそれを実感しないかと言えば、市が市債を発行したり、貯金(基金と言う)の取り崩しをして、つじつまを合わせているからで、これは国の予算の半分以上が国債発行でまかなわれているのとまったく同じだ。
しかしこの市債発行による資金調達については財政健全化法による縛りが平成19年からかかることになった。この法律が施行された趣旨は夕張市のように破産してしまう地方公共団体が急に出ては困るので、事前に破産しそうな地方公共団体をチェックしようと言うもので、4つの指標のうち一つでも抵触すると、財政健全化(が必要な)団体に指定され、健全化プランの策定が必要になる。
注)千葉市は財政健全化団体に指定されているわけではないが、その可能性が高いため自主的に健全化プランを策定している。
(マッスルさん撮影、山崎編集)
千葉市は市債の発行を国と同様おおらかに実施してきたため、4つの指標のうち、実質公債費比率(借金返済額が収入の何%にあたるか示す指数。これが25%を越えると財政健全化団体に指定される)、および将来負担比率(将来的に負担する可能性のある借金の総額が収入の何%にあたるか示す指標。これが400%を越えると財政健全化団体に指定される)が健全化指標に抵触しそうになってきたからである。
注)実質公債比率は20年度20.1%で17政令指定都市の中で16番目に悪い数字。将来負担比率は309.6%で同じく政令指定都市の中で17番目に悪い数字。はっきり言えば政令指定都市の中では最悪な財政状況。
日本では国レベルでも地方公共団体レベルでも、かつてはおおらかに借金ができたが、それは金融緩和策による金余り現象で金融機関から見ると他に適切な融資先がなかったからである。
「まず市町村が倒産することはないだろう」そう思われていた。
しかしながら夕張市のように人口が激減して税収も激減している市町村は、さすがに金融機関も市債等の引受に躊躇するようになり、そうした市町村から倒産が始まっている。
千葉市は前市長のころから財政健全化プランを策定して、市債の発行にストップをかけてきたが、本気になって千葉市の財政を健全化しようとしたのは現市長の熊谷氏がはじめてである。
(マッスルさん撮影、山崎編集)
熊谷市長がリーダーシップをとって、平成22年から25年までの「千葉市財政健全化プラン」を策定した。
今回その内容を財政課の岸本さんから説明を受けたが、正直な感想は「熊谷市長が本気で取り組んでいるのは分かるが、達成は難しそうだ」と言うものだ。
私が何より難しそうだと感じたのは、市税徴収率(20年度、92%)や国民保険料徴収率(20年度、71%)、住宅使用料徴収率(20年度77%)等がとても低く、引き上げの努力はしているものの、なかなか上昇していないことにある。
「なんで、こんなに徴収率が低いのですか?」質問してみた。
「私にもよく分からないのです」岸本さんの返事だ。
千葉市は本来入ってくるべき収入が一種の脱税行為で十分入ってこず、一方支出は確実に支出されるため、不足分は必然的に公債発行や基金の取り崩しで対処せざる得ない。
私は日本政府や地方自治体ほど国民に優しい組織は世界広しといえどないのではないかと思っている。
国民や市民の要求を目一杯に聞いており、一方で税金はあげられず脱税行為は横行し、仕方なしに借金をしてでもその要望を聞いてきた。
今までは金融機関からいくらでも借金を重ねることができたが、しかしそれも終わりだ。
地方公共団体については財政健全化法の縛りができたからである。
(マッスルさん撮影、山崎編集)
今、千葉市にとって必要なことは、市税や国民健康保険や保育料等当然徴収するべきものは公権力を使用して徴収し、一方扶助費(高齢者福祉、生活保護対策)は収入の範囲内に抑えるようにして、借金をしてでも実施するような安易な社会福祉対策をやめることにある。
熊谷市長の「千葉市財政健全化プラン」は相応に意慾的だが、「社会福祉を削っているわけではない」と言っているように微温的であり、本当の厳しさが足らない。
自治体も会社もつぶれてしまえば根本的なリストラが必要になるのだから、その前にそうならないような対応が必要なのはどこも同じだ。
「千葉市は倒産前夜にある。市民へのサービスは相応に削る」そうはっきり言って実施すべきで、そうでなければ財政健全化プランの達成は難しいだろう。
注)JALが倒産した後を見ても分かるように従業員の首切り、賃金カット、福祉政策の見直し、設備投資のカット等が再生のための条件になる。
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