(21.9.24) 大前研一氏の経済観 PART Ⅱ 中国への傾斜と賞賛

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 昨日から大前研一氏の、Voice10月号に掲載された「急回復する世界、追いつけない日本」と題する論文を読んでいる。

 その副題が「中国の巨大な内需をどう掴むか」となっていて、大前氏の主張が「アメリカ、ユーロ圏、中国(これをG3と呼ぶ)の経済が急回復しているのに日本だけが取り残されている。取り残されないためには中国市場をターゲットに、輸出や投資活動を活発化させなければならない」と言うものだと言うことは昨日述べた。

 問題は大前氏のいうように、中国経済G3と呼ばれるほど世界の中で重きをなし、白馬の騎士のように世界経済を救うことが果たして可能かと言うことになる。

 大前氏中国経済を次のように分析する。
中国は輸出基地としての競争力を失い始めていた。理由は人件費の高騰で、中国政府は・・・給料を毎年15%ずつあげる政策をとった。
(その結果)現在の中国の人件費はベトナムの3倍、ミャンマーの10倍ほどになり・・・・輸出主導の経済モデルも・・行き詰まりを見せ始めていた


 実際中国の貿易統計を見ると、輸出はここ5ヶ月20%以上の減少が続いていており、減少そのものは10ヶ月連続になっている。
一般的にはこの現象はリーマン・ショックに伴う世界貿易の減少と説明されるが、大前氏はそれ以上にすでに中国経済に内在化された要因で輸出主導型の経済成長が行き詰っていたと説明する

 しかし、と大前氏は次のように説明を続ける。
今年1月、その景色は一変し、・・2年半をかけて52兆円の内需振興策を行うと中国は約束し、(さらに)銀行に対しても個人や会社に対する融資締め付けから一転し、お金を貸し出せと指示したのである

 その結果「09年第2四半期のGDPは、同年前期比7.9%の成長を記録した。内訳を見ると・・輸出産業は同年前期比で3割減って・・(本来ならマイナス成長になるはずなのにそれがプラス7.9%になったのは内需シフトを進めたからに他ならない」という。

注)GDPの計算上の純輸出は輸出-輸入だから、輸出の減少がそのままGDPに反映されるわけではない

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 大前氏が言いたいことは、中国は内需拡大に成功し、今までの貿易立国からアメリカのような消費大国にマジックのようにたちまちのうちに変わってしまった、と言うことで、こうしたモデルチェンジに成功した世界でもまれな成功事例だと言う。

「日本においてはGDPの構成比を1%変えるのは至難の業だが、共産党主導で強権的に政策を発動できる中国は、その変化を通達一枚でできてしまう」と中国共産党の経済運営を手放しで賞賛している。

 中国共産党こそは通達一本で輸出主導型から内需主導型へ経済をドラスティックに変えてしまう資本主義の優等生と言うことだ。

 正直言って本当か?」と言うところだが、実際中国の輸入が増えだして日本と韓国の輸出産業が息を吹き返しているのは確かだし、中国の不動産と株式が急回復しているのも確かだ。

 この現象を見て大前氏はこれを中国経済の質が変わったと説明するが、私の見方は違う。
私の見方は「中国はリーマン・ショックで輸出が大幅に落ち込んだため、世界でまれに見るケインズ政策を導入し、財政と金融面から他国を圧倒する資金供給を行っているから」と言うものだ。

 注)中国政府が発表している09年上半期のGDPは7.1%の増加で、その寄与度は投資部門+6.2%個人消費3.8%、純輸出▲2.9%なっている

 たとえば投資部門の増加は中国政府が発表した総額52兆円規模の公共投資がGDPを底上げしている。
その影響度は一年で投資額が26兆円だとすると、昨年のGDP390兆円6.7%に相当するから、半年で最低でも+3.4%程度はGDPを底上げしそうだ。
中国政府の発表+6.2%とは異なるが、財政支出があればそれなりの効果があるのは当然だ。

 また個人消費寄与率3.8%だが、こちらについては大前氏が言うような通達でたちまち消費が増加したわけでない(それほど中国の人民は甘くない)。

 ここは通達ではなく中国銀行がジャブジャブの資金緩和を行い、その資金が株式と不動産に流れていると言うのが実情だろう。
なにしろ中国銀行は今年の1月以降、上半期中に昨年1年間の増加資金の1.5倍の資金を市場にばら撒いた。

 ばら撒かれた資金は投資に向かわず、ほとんどが不動産株式に向かったため、バブルと言えるような高騰が起こっている。
こうした値上がり益を享受した層が自動車や不動産取得に向かっているので、消費が拡大している。

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 共産国家中国がケインズ政策の最も忠実な履行者だというのは歴史の皮肉だが、それは90年代の日本を研究した結果で、大胆な財政・金融政策だけが大不況を長引かせない唯一の方法と認識しているからだ。

 だから現状の中国経済は政府の懸命な努力によってもたらされた一時的なユーフォリアなので、中国ががんばっている間に世界経済が回復すれば、ふたたび輸出主導の経済成長に戻ろうと言うことだろう。
早く世界経済が復活してくれ。そうでないとわが国のケインズ政策も息切れしてしまう」これが中国政府の本音だ。

 同じ現象を見ても大前氏と私の認識はまったく異なる見方になってしまった。



 

 

 

 






 

 


 

 

 

 

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(21.9.23)  大前研一氏の経済観とサービサー

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 大前研一氏が、Voice10月号に「急回復する世界、追いつけない日本」と題する論文を掲載していて、その副題が「中国の巨大な内需をどう掴むか」となっている。

 題名や副題でも分かるように、大前氏の主張は「アメリカ、ユーロ圏、中国(これをG3と呼ぶ)の経済が急回復しているのに日本だけが取り残されている。取り残されないためには中国市場をターゲットに、輸出や投資活動を活発化させなければならない」と言うものだ。

 私の感度はアメリカもユーロも急回復は無理で、中国は金融バブルで底上げしていると言うもので見解の相違が有るが、大前氏がアメリカ市場の回復の事例としてあげているサービサーの動きついては、確かに注目すべきだと思われた。

 ところでサービサーという業務をご存知だろうか。サービサーとは債権回収会社(露骨な言葉で言えば取り立て屋のことで、日本では2000年2月サービサー法が施行され、それ以来銀行、証券、ノンバンク等がこの法律に基づき債権回収会社を設立して、現在は約100社あまりの会社がある。

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 なぜこのような会社が必要かといえば、日本のバブル崩壊で多くの住宅融資や一般融資が焦げ付き、とても金融機関が自前で債権回収ができなくなったからである。
それまでは債権回収業務は本人(銀行)弁護士に限られており、私も金融機関の融資担当者だった頃、この回収業務を担当したことがあるが大変な仕事だった。

 さらに私の経験を言えば、監査役をしていた頃子会社のサービサー会社を監査したことがある。当初私は、サービサーやくざの取り立て屋のような商売だと思っていたが大間違いだった。

 実際はサービサー法で厳格に業務の内容が規定されており、たとえば「午後9時から午前8時までの電話連絡・訪問、および意思に反する勤務先の訪問、反復または継続しての電話の督促」が禁止されていた。

 時に無理やり取立てを行った職員などがいると監査対象になり、「われわれは暴力団でないのだから、法律に反することはしてはいけない」などと監査報告に書いたものだ。

 アメリカのサービサー場合はもっと簡単で取立てではなく、ほとんどの案件がすぐさま競売にかけられ回収される。
もともともの競売債権は額面の2~3%程度で金融機関から購入しているので、3割程度落札できれば確かに25%の収益はでてきそうだ。

注)日本の場合はあまり競売にかけたがらない。競落人に暴力団が入ることが多く、社会問題になりやすいからだ。そのため通常は競売人は競落人を事前に用意して競売にかける

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 大前研一氏の説明では「ブラックドックやピコムという巨大資産運用会社が動き始め・・・・彼らの新しい取り組みメニューがサービサーで・・・・彼らの計算によれば、不良債権を買い取ったうえでうまく処理して売却すると、年率25%の運用益が出る」と判断してるという。

 そして「ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーなどもこのサービサー業務に事業に参入して、不良債権争奪戦になってもおかしくないくらい、・・・底値買いのチャンスとなってきている」という。

 大前氏が言いたいことは、「巨大資産運用会社が、不良債権を買いあさり始めたのはアメリカ経済が底値を打って、これ以上悪化しないと読んでいるからで、アメリカ経済もこれから急回復するだろう」と言うことだ。
もっとも大前氏は「いまだ状況は予断をゆるさない」と言っているので、手放しでアメリカ経済の復活を予測しているわけでない。

 この「サービサーがアメリカで動き始めたので経済は底を打った」と言う判断は、いかにも大前氏らしい感度だ。
はげたかファンドが動いたら景気は底打ちだ。負けないように不良債権を二束三文で買いあされ」と言うとことだろう。
私にはサービサーの動向で景気の動きをつかむと言う感度が無かったので、大前氏のこの指摘は参考になった。


注)日本では長銀や日債銀、北拓が倒産し、その残務処理のためにサービサーが設立された。一方でアメリカではAIGもシティーグループもまだ存命している間にサービサーが動き出すのだから、さすがに動きが早い

 しかしアメリカのヘッジファンドもただで起きないのと言うのはこのことで、次は不良債権の売買で一儲けしようと言うのは、いかにもはげたかファンドらしい。

 

 

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