(23.1.7) 来るべきインフレにどのように対処したらいいのだろうか
日本ではいまだにデフレが続いているが、世界経済は完全にインフレに突入した。特に資源価格の高騰が止まるところを知らず、金・銀・鉄鉱石・レアアース・石油・穀物価格の上昇が顕著だ。
新興国は相次いで利上げをしてインフレに備えているが、日本はまったく蚊帳の外と言っていいような平穏な状態が続いている。
海外でいくら資源価格が高騰しようが日本にさして響かないのは、一つは円高の影響であり、もう一つは日本の企業活動が縮小しているからである。
「鉄鉱石も石炭も石油もいらないぞ。なにしろ企業は外国に行ってしまって国内は空っぽだ」大げさに言えばそうした状況だ。
しかし日本のこうした平穏な状況が続くのもここ1年ぐらいまでで、それを過ぎるとあのリーマンショック前の資源価格上昇に悲鳴をあげた日が再現しそうだ。
私の好きなブドウパンが小麦価格の上昇で大幅アップし、「このか弱き老人の楽しみを奪うのか」と憤ったあの日の再現である。
いよいよ日本もデフレモードからインフレモードに突入するのだが、年金生活者にとってこのインフレほどつらいものはない。
なにしろ年金はほぼ固定なのだから、インフレに対抗する手段を持たない。
今の私の悩みはすずめの涙のような貯金が瞬くまに価値を失いそうなことだ。デフレの時は現金を持っているのが最も有効な戦略なのだが、インフレになるとヘッジできる投資信託や金に投資先を変えなければならない。
だが私の投資センスはゼロに等しく、かつて行った投資はことごとく失敗している。
バブルが絶頂期の頃、今よりはるかにお金があった私は株式の投資を行っていた。
「この収益金で子供の大学の学費を稼ぎ出そう」と思っていたらたちまちのうちにバブルが崩壊し、手仕舞いしたときには子供の大学の学費に相当する損失が出ていた。
4年前に引退した時もそうだ。わずかな退職金の一部を投資信託につぎ込んだ。購入したのは日経225のインデックスだったが、当時はまだ日本経済の復活は確実だと思っていたからだ。
ところが購入時に17000円程度だったインデックスが、ここ4年間で右肩下がりで低下し今は10000円前後になっている。
ほぼ4割の暴落だが、日本経済の実力をしみじみと感じてしまった。
ただ今回は手持ち資金がほとんどなく、退職金のほとんどを年金原資に投入していたので、損害と言ってもたいしたことがないのが唯一の救いだ。
「しかし俺の投資センスはひどいものだ・・・・・・」悲しくなった。
昔聞いた話で、大学の経済学部教授に向かってあるおばあさんが「それでは先生はお金儲けが上手でしょう」と言ったというが、実際はケインズのような実務家肌の経済学者以外は金儲けと縁がない。
私も経済評論を書いているものの金儲けとは無縁だが、だがしかしそうも言っていられない状況が差し迫ってくる。
「せめてインフレに負けないだけのヘッジだけはしておきたい・・・・」
先日読んだ大前研一氏の「グローバル経済のアイロニー」という論文では、BRICsに投資をするのはもう遅く、これからはVITAMINだと書いてあった。
「どう見ても私より大前氏の投資センスのほうが上だ」
大前氏の提言に従い、VITAMIN諸国のうち、ベトナム・インドネシア・タイ・トルコのインデックスファンドに資金を移すことを真剣に考えている。
注)日本がインフレにならざる得ないもう一つの理由は、財政赤字の増大がある。約1000兆円と言われる国と地方を合わせた借金はもはや返済不能の状態になっている。
この借金はこれからの若者に返済負担がのしかかるといわれているが、そんなことはありえない(若者は返す資金を持っていない)。実際はインフレ(場合によったら超インフレ)による棒引き以外に手段がない。
国民の貯金(実際は高齢者の貯金が多い)1400兆円がインフレで相殺になって、国の借金がなくなるのが実態だ(第2次世界大戦後の日本の超インフレを思い出せば分かるはずだ)。
最近のコメント