(23.2.5) ダイヤモンド取引の覇権をめぐる闘い インド ムンバイの戦略

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 私はインド経済についてはほとんど知識が無く、IT産業の隆盛やスズキ自動車がインド市場で50%を占めているぐらいの知識だったが、昨日(3日)のNHK「今日の世界」の特集を見て驚いた。

 インドをダイヤモンド取引の世界の中心にする戦略がインド最大の商業都市ムンバイで着々と実施されているのだという。
なぜインドがダイヤモンド産業の振興に熱心かと言うと、世界のダイヤモンドの研磨の約90%はここインドのムンバイで行われているからだという。

ダイヤモンドの研磨はベルギーのアントワープじゃないのかい・・・
私のこの知識は古く、低賃金で技術の優秀なインドで今や世界のダイヤは研磨されているのだそうだ。

 しかしこのインドの研磨産業はまったく下請け産業のようなもので、ここで研磨されたダイヤはアントワープのような先進国の市場に集められ世界中に販売されている。
下請けだけじゃ利益が上がらない。インドが直接研磨したダイヤを販売しよう」と言う目的で、昨年10月世界的規模のダイヤモンド取引所が開設された。

 ここに世界のバイヤーを集めることができれば研磨されたダイヤを世界中に販売できる流通ルートを確立でき、先進国から販売権を奪取できる。
なにか中国の電気産業や鉄鋼産業と同じで、産業の先進国から新興国への移転だ。

 しかしまだ多くの問題があって、ムンバイの取引所がアントワープのそれと同じくらい安全で、かつ政府の税制上の優遇措置がないと世界のダイヤモンドの中心にはなれない。
現在のムンバイはあまりに強盗やカッパライが多すぎ、政府の支援も十分とはいえないという訳だ。

 それともう一つの問題は原石の取引がここインドでできるかで、この取引はもっぱらアントワープロンドンニューヨークや、最近ではダイヤの生産地ボツワナで行われている。

原石の取引もインドに呼び込もう。それができれば原石の取引、研磨、製品の販売をすべて抑えることができて、インドがダイヤモンド取引の世界の中心になる」という戦略だ。
現在のインドの市場規模は2兆円だが、それが今後どのくらい拡大するかわからないという。

 インドは日本にとって戦略的に重要なパートナーだ。インドと日本にとっての仮想敵国は中国だが、インドはミャンマーやスリランカに中国海軍の基地を建設されて中国に封じ込められようとしている。
一方日本は尖閣諸島から追い出されようとしており、共に手を携えて中国の覇権主義に対抗しなければ生き残ることができない。

 インドの経済的、軍事的成長は即日本の利益になる。昨年10月に日本とインドはEPA貿易と投資の自由化協定)を結んで互いに協力関係を強化する約束をしたばかりだ。
インドのインフラ整備こそは日本企業にとっての最大のビジネスチャンスであり、ここムンバイを世界的にも安全で便利な街にできれば、ムンバイが世界のダイヤモンド産業の中心になることができる。
このプロジェクトで日本企業の活躍を期待したいものだ。

 

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(22.10.28) 日印経済協力と中国封じ込め政策 EPAの締結

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 この24日から26日までインドのシン首相が日本を訪問し、懸案だったEPA(貿易・投資などを自由化する経済連携協定)の締結が決まった。
本来貿易や投資の自由化交渉はWTOの場で行うことになっていたが、WTOの国際会議がまったく進展せず、しびれを切らした各国が2国間で貿易と投資交渉を始めた。それがEPAである。

 今回日本がインドとEPAの締結が決まったことに、朝日新聞の社説は「日本が久しぶりに実現した外交関係の前進」と絶賛したが、出遅れて韓国に水をあけられあせっていた自動車業界や鉄鋼業界はもろ手を挙げて大賛成だ。

注)韓国とインドは10年1月にEPAを締結している。

 現在の日本とインドとの経済関係は貿易量が中国の25分の1程度で、まだまだ関係が深いとはいえないが、インドが求めているインフラ整備道路・港湾・電力・通信)に日本企業が積極的に関与できる下地ができたと言える。

注)例外的に自動車メーカー・スズキはインドの自動車シェアの50%を占めており、インドで最も成功した会社になっている。

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 EPA締結は純粋に経済問題だが、実はシン首相の日本訪問には隠れた戦略的狙いがある。
インド・日本にとって目下の仮想敵国は中国で、インドはカシミールで中国に敗北し、最近はミャンマースリランカに中国海軍の軍事基地が建設されつつあり、インド洋を中国の内海にされかねない状況になってきた。

注)インド海軍は空母の建設に乗り出したが、すべて中国海軍にインド洋をあけ渡さないためである。

 一方日本は尖閣諸島で中国に脅され、まだ実効支配はしているもののいつ中国海軍に尖閣諸島をのっとられるか分からないような状況になっている。
さらにレアアースで経済を締め上げられ、中国国内では日本製品の排斥運動が起こっている。

注)日本と中国の貿易は最近は中国のほうが黒字で、中国は世界最大の貿易立国であり、実際は日本の方が中国製品の排斥をできる立場にある。
最近イオンは中国からの衣類の調達を現行の80%から50%に落とすと公表した。


 中国の暴虐ぶりは目に余るため、密かに日本とインドは軍事面での提携を強化することにし、インドで外務・防衛の次官クラスの定期会合を持つことも決まった。
もっとも経済面では中国は日本もインドも最大の貿易相手国だから、あまりに露骨な中国包囲網をとることもできない。
現状は深く静かに潜行したまま日印枢軸を強化しようと言う段階だ。

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 日本とインド間にあるほとんど唯一と言っていい棘は原子力の平和利用についての意見の相違である。
インドはNPT核拡散防止条約)を承認しておらず、独自に核開発を実施し、同じく核保有国のパキスタンと対峙している。

 日本との原子力協定には「インドが核実験を行ったら協定を破棄する」という停止条件がついているが、インドの核実験はパキスタン次第だから、状況によっては核実験の再開はあると見なければならないだろう。
だからこの問題は対インド戦略の最大のネックになる可能性が高い。

 しかしそれ以外の経済・防衛問題については完全に利害が一致するのだから、日印関係の強化は日本にとり相当のプラス効果をもたらしそうだ。

 シン首相は日本訪問の後、マレーシアとベトナムを訪問するがいずれも中国の海洋進出に脅威を感じている国で、今回のシン首相の訪問が中国封じ込めのための訪問だったことが分かる。

 これでようやく日本も対中国包囲網の足がかりができたと言える。

 

 

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(21.5.28) インドの衝撃 NHKスペシャルを見て

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(NHKスペシャルより

 NHKスペシャル、「インドの衝撃 膨張する軍事パワー」を興味深く見た。
日本では、アメリカ中国韓国の情報はそこの国の住民と見間違うほどよく入ってくるが、それ以外の国の情報は極度に少ない。
日本にとってこの3国以外はまるで存在していないかのようだ。

 今回NHKスペシャルで取り上げられたインドについても、私などはガンジーの無抵抗運動ネール首相非同盟政策印パ紛争といった半世紀前の知識と、最近のIT産業の躍進ムンバイでのテロ以外にはほとんど知っていないというのが実情だった。

 特に今回取り上げられた軍事パワーなどまったく知らなかったといってよく、インドがインド洋でのシーレーン確保のために、海軍力と空軍力の大軍拡をしていることを始めて知った。

 海軍の増強のために駆逐艦の建造や、空母の建造に着手し、また空軍の増強のために最新鋭の戦闘機126機購入する計画だという。
このための兵器購入費は約1兆円だそうだ。

 空母については戦後のアジアでははじめての建造で(戦前は日本が空母を持っていた)、かつ最新鋭の戦闘機購入についてはロシアのミグ35とアメリカのF16スーパーバードを競わせ、高度なレーダー技術を入手するのが目的だという。

 現在インドの空軍は約500機の戦闘機を持つ世界第4位の空軍力だそうだが、実際はミグ21という、数世代前のオンボロ機が中心で、これを一気に世界最高水準の空軍に変えるのだという。

 なぜインドが軍拡に乗り出したかは、経済成長で軍備を拡張できる余力が発生したこともあるが、本当の目的は中国である

 中国のインド洋への進出はめざましく、主として保護国ミャンマーのインド洋側に海軍基地を設け、さらにスリランカのような周辺地域にも経済援助と見返りに軍事基地の提供を得ようとしている。
このままいくとインド洋は中国の中海になってしまう

 こうした動きを見過ごせないと感じたのはアメリカインドで、特にインドは21世紀の大国として世界をリードするライバル同士と認識しており、中国への警戒感が強い。

インドのシーレーンはインド海軍が守る」とインドの海軍司令官が言っていたが、アメリカがインド洋から撤退した場合は、インドだけの力でもインド洋を守りきろうとしているようだ。

 かつて1962年に、インドと中国はカシミール近郊で国境紛争を行い、この時は中国が完勝した。おかげでこの地域の領有権は中国が持ち、インドはこのときの屈辱を忘れていない。

 インドが敗北した原因はネール首相の非同盟政策で、インド軍の力が弱体化していたからだといわれている。
インドが核開発に乗り出したのは、このときの失敗に懲りたからでインドの仮想敵国は中国である。

 インドと中国は表面はともかく、互いの信頼感はゼロといってよい。
さらに近年インド洋のシーレーンが重要なのは、アラビアの石油とアフリカの石油・鉄鉱石の交通路がインド洋だからである。
経済発展が著しいインドと中国にとって死活のシーレーンになってしまった。

 もしインドと中国の間で再び紛争が起こっても、インド洋を押さえてしまえば中国は石油も鉄鉱石も入手できない。
反対に中国に押さえ込まれてしまうと、中印紛争の二の舞で、インドは再び完敗する。

 こうしてインドと中国はインド洋のシーレーンをめぐって大軍拡を競い始めた。
日本の立場からすると、尖閣諸島で煮え湯を飲まされたり、何かというと南京大虐殺を持ち出して日本を揺さぶったり、日本の常任理事国入りに反対して日本大使館を襲わせたりする中国よりは、はるかにインドの方が友好的だ。

 安倍元首相は「インドとの友好関係を深めるべきだ」と言っていたが、国家的戦略としては、インドと組む遠交近攻策が、日本の基本的戦略になるべきだと私も思う。
インド洋のシーレーンは日本にとっても生命線であり、インドとの友好関係は日本の安全保障の強化に確実につながるはずだ。

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