(22.10.16) NHK古代史スペシャル 古代日本のハイウェー

22_014 (北海道の道路。ほとんどが一直線に敷設されている。古代の道路と同じ造り方になっている

 最近見た番組のなかでこれほど面白い番組はなかった。NHKが奈良遷都1300年を記念して放送している古代史スペシャル古代日本のハイウェーである。

 私はかつて教科書で平城京から各地に道が整備されたと言うことをならったが、その道はかなり細い道だと思っていた。
なぜ私が細い道と思ったかと言うと、江戸時代に整備された旧中仙道旧東海道はせいぜい3mから4m程度しかなく、馬や大八車がすれ違えるだけの幅しかなかったからである。

 江戸時代の道路が3mから4mなら、古代の道路はもっと狭かったに違いない。そう思っていた。
ところが最近になり古代道が次々と発掘され、奈良時代にあった古代道は何と13mから14m程度あったことが分かってきた。
嘘だろう、そんな馬鹿な!!」疑ってみたが事実なのだ。

 古代道の特徴は道幅が広いこと、ほぼ直線に敷設されていること、低い場所では盛土がされていること、そして側溝があったことが分かってきた。

 古道がまっすぐなことは経験的に私は知っていた。旧中仙道萩往還道をランニングしてみて、道の作りがまっすぐなのに驚いていたからだ。
少々の岡は迂回などせずに昇り降りさせられる。
昔の人はなんてタフなんだ。登りも降りも直線かい!!」
雨の石敷きの萩往還道を滑りながら走ったものだ。

注)古代には道路を直線に作っても、それに反対する住民運動のようなものがなかったし、また技術的に直線がもっとも作りやすかった。

22_018古代道の発掘のイメージ。実際はアイヌの住居跡

 古代道は全国に7本総延長6300kmだそうだが、これは昭和時代に日本列島改造で日本各地に高速道路を敷設しようとした総延長6500kmとほぼ等しい。
距離が同じだけでなくルートもほぼ同じだと言う。

 かつての古代道は国府と国府の間をほぼ直線に結んでいるのだが、現在の高速道路も大都市と大都市の間をほぼ直線に結んでいる。
そしてかつて国府が設置された場所が、現在でも大都市になっているので、ルートがほぼ同じなのだそうだ。

 道路の作り方は道路の両側に丸太とくいを打ち込んで土が崩れないようにし、一番下に落ち葉や木切れを敷き、その上にサッカーボールぐらいの石を敷き詰め、さらにその上に何層もの土を固めて道路を作ったのだと言う。

 この方法は中国から伝来した工法だが、もともとは秦の始皇帝軍事道路を作った時に用いた方法であることを思い出した。

 この番組ではこの古代道の建設を誰が何の目的で作ったのか検証していて、古代王権で最高の権力者だった天智天皇天武天皇だった可能性が高いと解説していた。

 私の推察は天武天皇が古代道の敷設を命じたはずだと言うもので、天智天皇ではありえないと思っている。
天智天皇は663年に日本・百済連合軍が唐・新羅の連合軍に白村江で完膚なきまでに敗れた後、国土防衛のため瀬戸内海沿岸に山城を築いたり、都を琵琶湖のちかくの大津宮まで後退させている。
唐の侵攻があるものとして恐れおののいていたと言うのが実際だ。

 防衛をする時の鉄則は相手の軍隊が簡単に都まで攻められないようにすることで、江戸幕府でさえ大井川等の大河には橋をかけさせなかった。
ところが今回発掘された古代道は道幅が13m程度もある立派な直線道で、これは秦の始皇帝がそうであったように軍団をすばやく動かすための道路といえる。

注)最近の例ではモスクワの道路網が複雑怪奇に入り組んで作られていたのも、他国からの侵入者を防ぐためである。

 防御のためでなく攻撃のための道路となるとその道路網を整備できた天皇は一人しかいない。
壬申の乱で勝利を収め、古代王朝最大の権力者になった天武天皇であり、日本全国を支配するために整備した道路と言うのが私の推定だ。

注)番組ではこの道路を伝令が行きかい、庸・調(地方の特産物)を運ぶための道路と説明していたが、そのためだけなら13mも道幅はいらない

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古代のイメージ

 また古代道には駅家うまや)と言う宿泊所が整備され、伝令鈴を鳴らしながら馬に乗ってかけていたので駅鈴と呼ばれた)や国司のような役人が寝泊りしていた。

 この駅家は全国に400以上が整備され、8世紀の後半には建物は瓦葺にするように命令が出されている(古代道の近くを発掘して瓦がでてくれば駅家の可能性が高い)。

 この古代道を駅鈴がどの程度の速さでかけたかと言うと、平城京と大宰府の間、約630km4日で駆け抜けたと言う。
一日あたり約160kmであるが、馬なら十分可能な速度だ。

注)私が24時間継続して走ってみて走れる距離の限界は150kmあたりであるので、馬なら人間の2倍の速度は出るはずだから、明るいうちに160km程度は走ったものと思われる。

 
この古代の軍事道路は作られてから100年後あたりから、補修が行き届かなくなり、道も切り崩されて江戸時代の道路のように細くなったと言う。
気宇壮大だった天武天皇の頃と異なり、天皇が甲冑を着て転戦することがなくなったからだと思う。


注)古代道は細くなりながらも300年程度使用されたと言う。

 こうして古代道は1000年の眠りにつき、今平成のこの時代に高速道路となって甦っているともいえる。
実に興味深い話だ。

 


 

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(22.10.12) HNK古代史ドラマスペシャル 大仏開眼

22109_011

 先日2日間にわたって放送されたNHKの古代史ドラマスペシャル大仏開眼を興味深く見ることができた。
私を含め一般の日本人は、奈良時代というものをよく知らない。
聖武天皇奈良の大仏を造営したり、諸国に国分寺国分尼寺を建造したことから、非常に仏教政策に熱心だったことは分かるが、それ以上の知識はあまりないのが普通だ。

奈良時代とはどんな時代だったのだろうか?」そうした興味でこのドラマを見たが、この時代が中国のコピーであったことがよく分かった。
そもそも服装からして中国式であり、特に朝廷の玉座や百官の立ち居振る舞いが中国式であることに驚いた。
当時の指導者層はまったく中国人のようだ。

 手に細長い靴べらのようなものを当時の役人は持っていたが、これはシャクといって、挨拶を交わすときに使用する。
私はシャクは神主さんが詔をする時に使用しているものだとばかり思っていたので、シャクを両手で持って恭しく頭を下げる挨拶が当時の基本と知って驚いた。

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 この奈良時代の人口は500万程度で、都市的な場所は奈良の平城京と九州の大宰府ぐらいしかなく、後は人口がまばらな田舎といった感じだったようだ。
私のイメージとしては現在の北海道を一回り大きくして、かなり寂しくしたような場所が思い浮かぶ。

 この物語は聖武天皇の御世に遣唐使として唐から帰朝した吉備真備と名門藤原氏の家長、藤原仲麻呂との確執が縦糸のテーマになっており、横糸のテーマは大仏開眼となっているドラマだ。

 吉備真備は弱小貴族の出身で、とても朝廷の重要な役職を務める家柄ではなかったが、その学才が秀でていたため遣唐使の一員として唐に派遣され、唐で19年間の研鑽を積んできたインテリだ。

 今の日本のイメージで言えばアメリカのハーバードに留学し、そこで研究者として立派な業績をあげてきたと言うイメージで、実際ドラマでも合理的なこと以外は一切信じないと言う、唐のインテリらしい立ち居振る舞いをしている

 帰朝してからはその近代的知識により朝廷で押しも押されぬ人物として重用されるようになる。
しかし吉備真備を重用したのは心では藤原氏を煙たく思っていた聖武天皇とその皇太子阿部内親王(娘)で、一方藤原仲麻呂を支援したのは聖武天皇の后で、阿部内親王の母親でもあった光明皇后という構図になっている(史実でもその通りだといわれている)。

22109_004  

 母と娘が対立するとはおかしな構図だが、光明皇后は藤原氏の出であり、藤原一門を権勢の中心に据えることに熱心だったのに対し、阿部内親王は王家の父と藤原氏の母の子供でいわばハイブリッドだったからだろう。
私は母も藤原も嫌いなの

 この奈良時代という時代は、皇室の力と藤原氏の力が拮抗していた時代で、最終的には藤原氏の勝利に終わるがそれは一筋縄で行ったわけでなく、藤原氏は何回かの挫折を繰り返している。

 皇室側も有能な王位継承者を輩出し、特に長屋王が典型的にそうであるように政権の主要な地位に着いたが、藤原氏の陰謀によって自殺に追い込まれている。
自殺させたのは藤原4兄弟と言う仲麻呂の父や叔父だが、この4兄弟はこんどは流行の天然痘で相次いで死去してしまい、残ったのは仲麻呂だけと言う状況になっていた。

 このドラマでは吉備真備が内親王を助けて藤原仲麻呂の横暴をけん制すると言う構図になっている。
実際の吉備真備も反藤原方の筆頭で、そのため仲麻呂から疎まれ大宰府に流されているがこのあたりは菅原道真とそっくりだ。

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 一方横糸の大仏開眼はあまりよく分からない。吉備真備と共に唐から帰朝した僧玄坊聖武天皇の母親のうつ病を治療し、天皇の信任を得て日本国に世界最大の大仏の建立を勧めるのだがなぜ聖武天皇が盧遮那仏(るしゃなぶつ)の建立に積極的になったかドラマではよく分からなかった。

注)井沢元彦氏の逆説の日本史を読むと、聖武天皇もうつ病にかかっており、その原因は藤原一族が陰謀で殺害した長屋王の怨霊を恐れていたからという。長屋王を鎮魂するために光明皇后と一緒になって、大仏を造営したのだと言う。

 阿部内親王は聖武天皇から位を譲られ考謙天皇となるが、母親と藤原仲麻呂の陰謀で廃位させられ,上皇に祭り上げられた。
考謙天皇はこの状態に不満を持っていたが、母の光明皇后が存命のうちは積極的な反撃に出られない

 仲麻呂の専横はますます激しくなり、この仲麻呂の藤原氏中心の政治と新羅討伐計画ドラマでは触れていなかった)を苦々しく思っていた反仲麻呂集団が、光明皇后死去の後孤立した仲麻呂を打つことにした。
考謙天皇の命令で吉備真備を参謀総長にして反仲麻呂軍が仲麻呂の野望を砕くところでこのドラマは終わっている。

そうか、奈良時代を理解するには吉備真備を理解すればいいのか」ドラマを見てその手がかりを知ることができた。
いまから1300年も昔の、霧に包まれた時代だったが、今回このドラマを見ることによって、奈良時代理解の糸口がつかめることができて非常に満足した。

 

 

 

 

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