(22.6.11) FAO(国連食料農業機関)の勧告は正しいのではないか!!
国連食料農業機関(FAO)が日本政府に対し「口蹄疫のワクチン接種後、感染していないにもかかわらず予防的に殺処分される家畜について、食用として利用することを勧告した」と6月5日の新聞記事に出ていた。
このFAOの勧告は私が今回の口蹄疫の拡大防止措置の中で最も疑問としていた全頭殺処分し埋葬する処理に対する疑問に答えてくれたものだ。
「なぜ、病気でもない牛まで殺し、埋葬しなければならないのだろうか?」
この口蹄疫と言う病気は人間には感染しないことが分かっているので、鳥インフルエンザのような脅威はない。
それでもなぜ全頭殺処分されるかと言うと、そうしないと「口蹄疫の清浄国」として認定されないからである。
畜産の盛んな英国において01年に口蹄疫の大流行があり、650万頭の家畜が殺処分され、ようやく口蹄疫の蔓延を抑えた。
しかしイギリスの例でも分かるとおり殺処理が有効なのは、見つけたら即対応した場合だけである。
その時は小規模の殺処分で済むが、遅れるとイギリスのように畜産業界全体の危機になってしまい、産業そのものが崩壊する。
「はたして産業そのものを消滅させるような処理方法が正しい方法なのだろうか?」
しかも殺処分は西欧を中心とする畜産国の処理方法であり、一方南米では殺処分されても感染していない家畜は食肉として流通している。
人間には口蹄疫は感染しないので問題なしとしているのだろう。
注)口蹄疫には人間も感染するが、風邪程度の症状で収まると解説している本もある。しかし今回の宮崎県の事例を見ても分かるように、人間への感染者はいないので、やはり人間には感染しないというのが正しいようだ。
たしかに「口蹄疫の清浄国」にならなければその国からの畜産物の輸入を認めない国がほとんどなので、畜産輸出国としてはひどい痛手だ。
しかし日本はもっぱら輸入国なのだから、「清浄国」でなくてはならないという経済的なメリットはない。
それ以上に、病気でない家畜の販売が認められれば、経済的利益と無駄な埋葬処理をしないで済むだけ現場職員の負担が減る。
FAOの勧告はいたって常識的で問題点がないと私には思われるが、農水省は西欧にならってかたくなに全頭の殺処分をするようだ。
このかたくなな方法はかつて私が担当したシステムの2000年問題を髣髴させる。
2000年問題とは、暦年を二桁(たとえば01年)で表示されている場合、1901年か2001年か分からずコンピュータが誤作動するので、事前にすべてのシステムをチェックして、問題があれば修正を施す処置だった。
この西暦を二桁で表現するのはアメリカ流の方法で、一方日本ではほとんどが4桁表示を採用していた。
だから当初これはアメリカやイギリス等の個別問題と思われていた。
注)初期のシステムはメモリーやディスク容量はとても小さかったので、節約のために西暦を二桁で表現した。遅れてシステムを開発した日本ではメモリーもディスクも余裕があったので、西暦を4桁で開発した。
しかしアメリカ政府の強硬な要請があり、金融庁は日本の金融機関に対し、たとえ4桁であってもすべてのシステムを事前走行させて問題のないことを確認しろ通達してきた。
それまで日本では2桁の暦年のあるものだけを洗い出して、修正テストしていたのだが、まったく関係ない4桁のシステムまですべて事前走行の対象になってしまった。
システムについて熟知されてない方は「事前走行すればいいじゃないか」と思われるかも知れないが、処理には日次、週次、月次、3ヶ月、半月、年次、ランダムの処理があり、ほぼ半年間に渡ってこのテストを行ったため、新たなシステム開発ができなくなったほどだ。
結果はほとんど問題がなしで、事前に確認していた2桁の修正で済んだのが実態だった。
「なぜこんなばかげたテストをしなければならないんだ」怒りがこみ上げてきたが、すべてアメリカの意向を受けた金融庁の通達のせいだった。
注)アメリカの指示でシステムの全頭殺処分をしたようなものだ。
今回の口蹄疫についても農水省が金融庁と同様なかたくなな対応をしている。最も今回はアメリカからの圧力と言うよりも先進酪農国、特にヨーロッパの処理に習っていると言う性格が強い。
しかしFAOはそうした殺処分対応がすべてではないと勧告してきた。
金融庁にしろ農水省にしろ、必ずアメリカやヨーロッパの方式だけを金貨玉条にして追随しようとしているが、FAOレベルで柔軟に口蹄疫問題を考える段階に来ているのではなかろうか。
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