(22.11.4) 外交政策を実地教育してくれるメドベージェフ大統領 水に落ちた犬は棒でたたけ
ロシアが実に見事な外交攻勢をかけている。日本が尖閣諸島で発生した中国漁船の衝突事件で、中国側から恫喝されあわてて船長を解放し、さらに謝罪と賠償を要求されているのを見てチャンス到来と判断した。
「みろ、日本は中国の言われるままだ。あの国は領土を守ろうとする気構えがまったくない。この機会に我が国が第二次世界大戦で確保した領土を、ロシア領として確定しよう」
10月1日、メドベージェフ大統領が国後島を訪問し、経済開発を約束した。
「クリル諸島の携帯電話のインフラはロシア政府が整備したもので日本製ではない」
日本の外務省は中国問題で一杯のところに追い討ちをかけられて、前原外相がロシア大使に不快感を述べたのがやっとだ。
しかしベールイロシア大使は「大統領がどのロシア地域を訪問するかは大統領の選択」で日本にとやかく言われる筋合いはないと居直った。
注)通常大使は反論をせず「本国に伝達する」とコメントするのが普通。したがってこのコメントは異常に強気と言える。その後日本は駐ロシア大使を本国に実情を詳細に報告させると称して呼び戻した。
しかし、このメドベージェフ大統領の国後島訪問のタイミングの良さはどうだろう。まさに「水に落ちた犬は棒でたたけ」のことわざ通りで、日本外交の弱点を完全についている。
そもそも民主党政権になってからの日本外交のダッチロールは目に余るものがあった。
鳩山前政権の外務大臣だった岡田氏は「非核3原則の核兵器は持たず、作らず、持ち込ませずには密約があり、アメリカ艦船が核を搭載したまま日本に寄港したはずだ」と言ってアメリカの心を逆撫ぜにした。
注)自民党政権はアメリカ側からの事前協議がないから核搭載はないものと信じている、と言う大人の判断をしていた。
さらに鳩山前首相はアメリカとの普天間基地移設問題で、何度も辺野古以外の場所をあげて、アメリカの「日米間の取り決めは政党間の取り決めではなく、国家間の約束だ」と言う警告を無視した。
この結果日米安保条約は完全に空文化され、アメリカはすっかり安保条約を履行する気持ちを失ってしまった。
「そんなに核がいやなら、自力で中国とロシアの核大国に対抗してみろ」
鳩山前政権のアメリカ敵対外交の結果、日本は日本の自衛隊だけの力で中国とロシア、さらには北朝鮮と対峙しなくてはならなくなった。
「ついにチャンスが到来した。アメリカの核の傘がない日本など母親にはぐれた子羊のようなものだ。この機会に尖閣諸島を中国領土にしてしまえ」
中国の太子党が動いた。
日本はアメリカが支援してくれるものと思って当初強気な態度でいたが、すでにアメリカは日本をみすてており「領土問題は日中間の問題だ」と突き放した。
注)この太子党の動きは「中国外交のダッチロール 共青団派と太子党の暗闘」参照。
「安保条約はどうしたんだ」菅総理が騒いだが後の祭りだ。
すっかり弱気になった日本が中国の恫喝に屈するのを見てロシアのメドベージェフ大統領が決断した。
「アメリカの庇護のない日本など、おそるるに足りない。戦争で得た領土は所詮は戦争で取り返すしかないが、日本の軍備力には核がない」
注)これまでロシア大統領が北方4島訪問を控えていたのは、アメリカの核の傘にある日本を手ごわいとみなしていたため。
何度も言うが世界の現実は「水に落ちた犬は棒でたたけ」だ。
日本では理想主義教育が盛んで、「平和と唱えていれば平和になる」と思っている。
こうした理想主義を中学生や高校生が唱えるのは好ましいが、大人、わけても政治家が本気で唱えると国を誤る。
日本以外の政治家でそのように思っている政治家など存在せず、「平和は力で守るもので、領土も力で守るものだ」と言うのが世界の常識だからだ。
メドベージェフ大統領の行動こそが世界標準だと思わなくてはいけない。
アメリカの核の傘をはずした日本の実力がどの程度のものか、思い知らされている。
このようにして民主党政府はリアルポリティックスをメドベージェフ大統領から実地教育してもらったので、少しは大人になれるのではなかろうか。
最近のコメント