(22.9.12) ANAと関西国際空港の生き残り作戦 LCCに活路を見出そう
ANAと関西国際空港が生き残りをかけて11年秋をめどにLCC(格安航空会社)に参入をする。
日本が参入障壁を構築して日本市場を守っている間に、世界の航空業界はLCCに席巻されてしまった。
世界最大の航空会社はLCC最大手米サウスウエスト航空であり、メガキャリアではない。
注)LCCのシェアは現在提供座席ベースでは20%だが、将来は50%対50%程度にはなりそう。
LCCは当初は欧米が中心だったが、現在は航空需要が爆発的に伸びているアジアに急拡大している。
そうした中で日本は最後のLCCの争奪戦場になろうとしている。
日本の空がLCCから守られていたのは07年11月まではオープンスカイでなかったからである。
航空路や便数はすべて政府間の2国間協定で決められており、航空会社や空港会社は政府の言うことを聞いていれば、そこそこの収益が確保できる体制だった。
その見返りは国交省や県職員の天下りで、いわば持ちつ持たれつの関係にあったといえる。
注)07年11月以降も羽田、成田、関空、中部については発着枠がないという理由でオープンスカイの対象からはずしている。
なおオープンスカイとは空港の発着枠に余裕があれば、航空会社が自由に発着枠、便数、路線を決められる政策をいう。
こうした当事者にとって夢のような世界が崩れたのは、アメリカ、EUを中心に世界の航空業界がオープンスカイに移行したからである。
オープンスカイになると格安航空会社が競争に参入し、航空運賃が劇的に下がり約半分になってしまう。
注)アメリカは国内航空会社の競争力を強化するために、いち早く航空自由化政策をとった。そして国内で十分に実力を蓄えたところで、オープンスカイという方式で世界の航空会社を系列化に置く戦略を立てた。
これに対して日本は門戸を閉じることによって対抗してきた。
消費者にとっては天の恵みのような話だが、一方航空会社は死活問題で、実際JALは倒産してしまったし、ANAも赤字に苦しんでいる。
「このままでは、ANAもJALと同じようになってしまう」
危機感がANAにLCCへの参入を決断させたようだ。
注)10年3月期のANAの決算は営業利益が542億円の赤字。売上高は12%減で3期連続減少。ANAも経営改善策に取り組まなければ生き残りが難しい。
一方今回のLCCの導入に関空が積極的なのは、このままでは関空の未来がないからである。
近くに大阪国際空港や神戸空港を持ち、関空は利用者数の伸び悩みに悩んできた。
本格的な滑走路が2本で、かつ24時間営業なのだから成田より条件はいいが、当初閉鎖予定の大阪国際空港が存続しているため、ハブ空港になれない。
「これではいつまでたっても赤字を脱却できない」
注)関空の10年3月期の経常利益は9億円の黒字だが、補給金90億円を除くと赤字であることに変わりが無い。
ANAと関空の危機意識がLCCの導入に手を結ばせた。関空はLCC専用のターミナルを建設して、空港利用料の大幅引下げを目指している。
アジアにはマレーシアのエア・アジアやオーストラリアのジェットスターと言ったLCCの強豪がひしめいている。
こうした中でANAがLCCに参入するのだが、座視していればJALと同じように倒産してしまうのだから当然の対応だろう。
世界の航空市場は2分化され、サービスが悪くても運賃が安いLCCと、運賃が高いがサービスの良いメガキャリア共存時代に入った。
ANAの生き残りをかけたLCC参入が成功することを期待したいものだ。
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