(22.4.5) グアムが沖縄になってきた 普天間基地移設問題

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 4月3日の毎日新聞の記事には驚いた。グアムが沖縄と同じように、海兵隊の受け入れに反対しているのだと言う。

 グアムは沖縄の約半分の面積の島だが、30%が軍用地として接収されている。
ここにアンダーセン空軍基地アプラ港海軍基地というアメリカ屈指の基地がある。
私はグアムには基地問題などは存在せず、住民は米軍が駐留していることで基地経済が活性化して喜んでいるものだと思っていた。

 しかし実態は違うと言うのだ。
歴史をたどるとグアム1898年のスペインとの戦争で勝利したことにより、スペインから強奪したのだが、その後第二次世界大戦中約4年間日本軍に占領された。

 現在は準州として扱われ、グアム代表の下院議員は国会で投票権を持たず、住民は大統領選挙にも参加できない。メリットは税金をアメリカ本国に取られないで済むことだが、このあたりの住民感情は大変複雑なのだと言う。
俺たちは植民地の住民か?なぜ大統領を選べない
グアムの先住民で最大の人口を持つチャモロ人の心を苛立たせている。

注)グアムは人口20万人弱でこのうち約半数が先住民のチャモロ人。現在は知事が選出されているが、1968年以前は軍政だった。

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 現在問題になっているのは、2014年までに日米合意に基づき、約8000名の海兵隊がグアムに移転すると言う計画で、これに先立ち軍が行った環境アセスメントで新たな軍用地の徴用と28haに及ぶさんご礁の海の浚渫が必要だと発表された。

とんでもない。今でも島の面積の30%が軍用地なのに、それがさらに広がり、さんご礁の海がなくなれば観光客が来なくなってしまう
グアムは住民のほぼ60%が観光業に従事しており、観光資源が最も重要な資源となっている。

 当初グアム海兵隊8000名の受入に賛成したのは、軍用地の拡張やさんご礁の海が埋め立てられるとは思っていなかったことと、移転に伴い、不足していたインフラ整備が進むと思っていたからである。

日本が移転費用の約6割、6500億円相当を出してくれる。これによって汚水処理、発電施設整備、道路、橋梁の補修が一気に進み、グアムの住環境は格段に向上する

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 しかし計画が具体化するにしたがって日本からの拠出金は主として軍関係の住宅整備や港湾の整備に使われ、住民の生活向上にはほとんど回らないことが明らかになってきた。
なんということだ。得をするのは軍だけか!!」
たまらずカマチョ知事は「4年後の海兵隊8000人の移転期限の延長を求める」という声明を発表した。

注)米軍は軍事予算の削減で兵舎等の住環境の投資が十分できなくなっている。日本政府からふんだくる資金はすべて、不足している軍の福利厚生や軍施設の整備に当てようとしている。

 この問題をさらに複雑化させたのが普天間基地移設問題で、「海兵隊の移設だけでもこれだけ問題があるのに、さらに普天間基地のヘリコプター部隊の移設など、とても認められない」という雰囲気になってきた。

 社民党阿部政審会長は「グアムは普天間基地の移設に反対しているが移設費用4000億円をグアムに渡せば、グアム移転を了承するはずだ」とコメントしたが、そうは問屋がおろしそうにない。
移転費用が軍関係だけでなく民生にも回らなくてはカマチョ知事も賛成するわけにはいかないからだ。

日本政府が資金を上積みして民生費用まで出してくれれば考えてもいい」と言うのが偽らざる心情だ。

 しかし、グアムは日本領土ではない。軍の移転費用の他にグアムの民生費用まで面倒を見るのは、日本国民が納得しないだろう。
こうして日本国内だけでなくグアムの住民も普天間基地移設に反対し始めた。
鳩山総理は「腹案がある」と言ったが、実際はますます問題が複雑化している。

 おそらく鳩山総理の腹案とは、総理辞任しかないのではなかろうか。

  

 

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(22.2.17) 普天間基地移設問題がさらに複雑化した  テニアン

280pxsaipantinian1  鳩山政権普天間基地移設問題は、なにかますます複雑化してきたようだ。
民主党内部でも辺野古案、嘉手納案、南海孤島案があるところに、社民党が今度は従来のグアム案以外にテニアン案を持ち出してきた。

 テニアンとは実に懐かしい名前だ。太平洋戦争では日本軍のバゴイ基地があり、約2万人の住民と約1万人の軍人が駐留していた。
1944年のテニアンの戦いで日本軍守備隊は全滅し、アメリカ軍に軍事占領された。
その後基地が拡張され日本爆撃の基地となり、広島・長崎に原爆を投下したB29爆撃機が飛び立っていった場所である。

 現在住民は3500名程度でまったく過疎の村といってよく、約200km程度離れたグアムが観光と軍事基地でますます栄えているのと対照的だ。

 ここに社民党阿部政審会長沖縄基地問題検討委員会の一員として訪れ、北マリアナ諸島(テニアンはその一部)の知事から「(政府が了承すればテニアンに受け入れたい」という言葉を聞いて飛び上がってしまった。

300pxmarines_wading_ashore_on_tinia    なにしろその前にグアムカマチョ知事から「グアムへの普天間基地海兵隊の受け入れは(設備の限界を越え住民生活に支障が出るので)不可能だ」と釘を刺されたばかりだったからだ。
社民党は軍事問題を住民問題としか理解できない
名護市長選挙で移設反対派の市長が当選したので、「民意を尊重したら辺野古への移設はありえない」と強調している手前、グアムが民意で反対すれば移設を強硬できない立場にある。

 しかしテニアンは違う。なにしろ知事が「ウエルカム」といっているのだから、住民の総意で「テニアンに移設しよう」ということになる。

注)実際は、社民党はグアムの住民が反対しても、辺野古への移設費用約4000億円をつぎ込めばグアム移設が可能だと自民党ばりの利益誘導策を提唱している。
国内は民意を尊重し、外国は民意を無視して金で解決ということらしい。

 しかし軍事問題はダムの建設や道路建設と違って国内問題ではない
なにしろ軍事とは相手があっての問題で、現在沖縄駐留アメリカ軍の仮想敵国は中国と北朝鮮である。
そして同時に日本の仮想敵国は中国、北朝鮮、ロシアなのだから、北澤防衛相の言う「抑止力として機能するか」が最大の課題といえる。

 テニアンが過疎対策としてアメリカ海兵隊の受け入れを希望したとしても、米軍の戦略上不都合であったり、日本の防衛に役だたなかったら、軍隊としての役割がなくなってしまうのだからおいそれと応ずることができない。

 民主党は今でも基地移設問題ではてんやわんやの大騒ぎをしているのに、民主党に輪をかけた軍事音痴の社民党がアメリカの過疎対策としてテニアンを持ち出してきたのだから、これでは問題を一層複雑化するだけだ。

 もとはと言えば鳩山総理の不決断で5月まで結論を引き延ばしたのが問題なのだが、さらに不可思議な移転先が現れてきてひどい状況になってきた。
政治とは決断の技術」だが、その決断を総理大臣がしないのだから普天間基地移設問題が百家争鳴になるのも止むを得ないのだろう。

注)画像はWikipediaより転写

 

 

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(21.10.30) 鳩山政権はてんやわんやの大騒ぎだ  普天間基地移設問題

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 当然といおうか、やっぱりというべきか、鳩山政権普天間基地移設問題はてんやわんやの大騒ぎになってしまった。
もともと自民党政権でも手を焼いていたこの問題を、社民党を内部に抱える鳩山政権がうまく処理できるはずがないと思っていたが、それにしてもこの混迷振りはひどい。

 大騒ぎの元は担当大臣の北沢防衛相が苦し紛れに、「(キャンプ・シュワブ)への移設は『国外や県外というわれわれ民主党の公約』をまったく満たしていないというわけでない」と発言したのがきっかけだ。

 では「キャンプ・シュワブは沖縄県以外にあるのだろうか」とみんな思ったはずだが、当然沖縄県名護市にある。

 北沢防衛相は海兵隊の一部をグアムへ、また普天間基地に配置されている空中給油機を岩国に移設することをもって、「まったく満たしていないというわけでない」と言ったのだが、これはかなり無理筋だ。
じゃー、キャンプ・シュワブへの移設はなくなったのですか?」という問いに答えられない。

 この混乱に輪をかけたのが岡田外相の発言で「代替地が嘉手納基地にならないか。沖縄の二つの大きな基地が一つになるのはメリットだ」と発言し、かってにクリントン国務長官に直談判に出向くと言い出した。

 岡田外相は本気だが、クリントン長官がこのような政府内部でも未調整の岡田外相の思いつき発言に軽々と乗ってくるとはおもわれない。

 なにしろ普天間基地移設は、橋本政権以来の懸案事項で、何回もすったもんだした挙句に、06年にようやく「在日米軍再編計画」として日米両政府が合意したものだ。
ゲーツ国防長官の言葉を借りれば「キャンプ・シュワブへの移設は、政党間の約束ではなく、日米両政府の合意事項だ」ということだ。

 この問題では社民党ももちろん黙っていない。福島党首は「普天間基地の問題解決には沖縄県民の負担軽減の観点から対応していくべきだ」と念をおした。

 当の鳩山総理は「最終的に決めるのは私だ。選択肢を新たに調査している段階だから、それなりの時間がかかる」と悠然と述べたが、本当は選択肢など存在しない。
外交はゲーツ国防長官の言うように「両国政府の合意事項」だから軽々に変えることなどできない。

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 江戸幕府が締結した日米和親条約を修正するのにどれだけ明治政府が苦労したかを思い出してもらえば分かるし、「サンフランシスコ講和条約は吉田茂首相が締結したので、政党が違うから見直しが必要だ」なんて言い出せば、国際秩序が崩壊してしまう。

 さすがに平野官房長官が見かねて「もう少し、注意して発言してほしい」と苦言を呈したが、鳩山政権はみんなで麻生前総理の舌禍をまねているみたいだ。

 アメリカの保守系新聞で共和党支持のウォールストリート・ジャーナルはとうとう頭にきて、「鳩山首相が代替案を十分考えているとは思われない」し、キャンプ・シュワブへの移設は国家間の約束事項で、もし「普天間基地移設計画が白紙になれば、当然沖縄海兵隊のグアム移設も白紙になる」と苛立ちを見せた。

 そして、返す刀でそれほどアメリカ軍を海外に追い出すつもりなら、
① 日本は独自に防衛費を増額するのか
② 北朝鮮の核や、中国の軍拡にアメリカなしで対抗できると思っているのか
③ 外交(口先)だけで、日本は安全を守れると思っているのか

と、噛み付いた。
普天間基地移設問題は国内問題ではなく国際問題だとの指摘である。

 実際普天間基地移設問題は、福島党首の言うような「沖縄県民の負担軽減」というような視点では解決できない問題といえる。
国際問題という視点から見れば普天間基地の位置づけは、アメリカが軍拡著しい中国や、核開発やミサイルを装備した北朝鮮と対峙する、その戦略のあり方にかかっていることがわかる。

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 実は日高義樹氏がつとに指摘しているように、アメリカ太平洋軍は現在大掛かりな再編作業を行っており、対中国、対北朝鮮の基地を沖縄からグアムに移設している。

 一番の理由は中国のミサイル増強がすさまじく、08年に行われたアメリカ太平洋空軍の演習(中国軍とアメリカ軍の戦闘を想定した演習)では、中国の移動式ミサイルで沖縄の基地はほぼ全滅してしまうことがわかった。
しかも日本の基地では弾薬庫が地上にあるため、それが破壊されたときの被害は想像を絶する。
まずい、このままでは沖縄駐留アメリカ海兵隊は全滅してしまう

 そのため、アメリカ軍は嘉手納を見限り、グアム前線基地に再編成することにして、最新鋭のF22戦闘爆撃機B1、B2という戦略爆撃機はグアムにのみ配置することにしてしまった。
グアムならミサイルが飛んでくるまでに迎撃が可能だ。中国の先制攻撃さえ防げれば反撃ができる

 そうしたアメリカの世界戦略の流れからすると、早晩嘉手納基地普天間基地も実質的にはアメリカにとって不要な基地になるのだが、たった一つのメリットは返還する時に日本から返還費用を巻き上げることができることだ。
日本がそれほどまでに基地を返還してもらいたいなら、グアムに移設する費用を日本政府が負担すべきだ

 さて、こうした情勢下で日本はどうすればいいのだろうか。最善は鳩山総理が言うように「結論を出すまでには時間がかかる」といって何もしないで動かないことだ。そうすれば米軍は自分の都合で沖縄からグアムに移っていく

 もっともその場合は日本は独自に中国と北朝鮮に対決しなければならなというさらに困難な問題に直面する。
だが、中国のミサイル攻撃を恐れてアメリカ軍がグアムに逃げてしまう以上、日本は日本でそれなりの覚悟をもって中国と対峙するしか残された道はない。

(今日のYou Tube は光徳寺です。村田川を越えて行きます
http://www.youtube.com/watch?v=Nt9X8Dbsex0

 

 


 

 

 

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