(23.2.3) 公的債務1000兆円踏み倒し方法 国債はこうして償還される

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 最近2カ年間の民主党政権の一般会計予算は目を覆わんばかりの惨状になっている。マニフェストで約束したばら撒き支出を守るために、当初は霞ヶ関埋蔵金を当てにしたが、それがほとんどないことが分かると赤字国債の増発で帳尻を合わせた。

 おかげでここ2年間は税金より赤字国債の発行のほうが多くなり、完全な借金経営に落ちている。
国債発行も増額に次ぐ増額で本年度末には公的債務が1000兆円の大台に乗りそうだ。

 さすがに格付会社S&Pが驚いて、長期国債の格付を上から3番目から4番目に落とした。
日本政府はいったいこの借金をどのようにして返済するつもりなんだ

 最も借金がすべて悪いわけではなく、それを使用して日本経済を立て直すことができればふたたび健全経営に戻ることができるのだが、そうした見込みは皆無だ。

 なにしろ民主党の一枚看板である子育て支援についても、子供が大人になってGDPに貢献するまでは時間がかかりすぎるし、農家の戸別所得補償は生産性の悪い農家を何とか維持しようという政策だから、経済成長とはまったく関係ない。

 いわば生活資金を借金でまかなっているようなものなので、返済資金などあろうはずがなく消費者金融の多重債務者となんら変わりがない

 こうした現状を見て世の識者は国債が増えると子孫に借金を残すことになると反対しているが、これは間違った説明で実際は子孫に借金を残すことはない。
今の若者は老人より貧乏で、そもそも返すべき財源を持っていない
さらに企業は海外に出てしまい法人税は激減しているし、給与が伸びなく失業者が多くなって所得税も激減だから税金で返すこともできない。
そして消費税を上げようとすると選挙で敗北する。

 こうした状況下で公的債務を返済する方法はたった一つしかない。
インフレ政策である。かつて日本は太平洋戦争に敗れそれまでの戦時国債をインフレによって帳消しにした。
同じように第一次世界大戦に敗れ多額の賠償金を負わされたドイツも借金をインフレーションで帳消しにしている。

 こうした例は敗戦に伴う措置として例外と思われているが、それほどドラスティックでなければ世界の借金国の常套手段になっている。
今たとえば年率10%程度エジプトのインフレ率程度)インフレが更新すれば、1000兆円実質価値は1年で900兆円になる、さらに翌年には810兆円の価値になり、計算してみれば分かるが10年で348兆円の価値にまで激減する。
この程度になれば通常の国家の借金レベルになり国債問題は解決する。

 しかも時代は完全にインフレモードに入った。エジプトほどひどくはないがEUのインフレ率は2%を上回り始め、イギリスは4%に近くなっている。アメリカと日本のインフレ率はまだ低いが完全にインフレの鎌首は上がってきた。
よしチャンスだ、インフレで赤字国債はチャラになる」民主党はほくそ笑んでいる。

 民主党政権は完全にポピュリズム政権だから支出削減消費税のアップも実施する能力はないが、一方で無策を繰り返すことでインフレは確実に高まり、結果として国債問題が解決する。

 国債問題はインフレさえあれば解決するのだが、一方でインフレで手ひどい被害を受ける人はいて、それは1400兆円にのぼる個人の預金者と、現在日本で生活をしている人である。
もしインフレが毎年10%であると仮定すると個人預金は年率10%の割で目減りをしていく。
預金者のほぼ80%は年配者だから一番の被害者はこの年配者になる。

 次の被害者はこの日本で生活している人で、年率10%のインフレは消費税を10%上げたのと同じ効果で、しかも毎年10%づつ上昇すればほぼ7年で物価は倍になり、生活水準は半減する。

 こうして1000兆円の国債は瞬く間に減少し、同時に個人預金も10年で3割程度の価値しかなくなり、生活水準は7年で半減する
このような状態は国民にとっては不幸の何者でもないが、民主党政権が継続する限りそうなる。

 そして無策の民主党政権は老人と現在の生活者の犠牲の上に将来の若者に負担をかけることなく、唯一国債残高の圧縮に成功した政権になるはずなのだ。

(24.11.30追加)
野田首相は衆議院選挙実施と引き換えに自民党と公明党の協力を得て消費税増税法案を通過させた。
鳩山・菅と続いた民主党政権は野田首相に変ってからようやく現実直視の政党になったが、このために今回の総選挙では大敗北を喫することになりそうだ。


 

 

 

 

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(23.1.22) 日本国債のCDS上昇 後がなくなってきた日本国債

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 この時期になると日本国債CDSクレジット・デフォルト・スワップといって日本国が倒産した場合に代わりに日本国債の返済をしてくれる契約。大手の保険会社等が引き受けてくれる)が上昇する。
理由は明確で日本政府がまったく財政再建に乗り出さず、目一杯の国債発行を行って次年度の一般会計予算を組むからである。

 なにしろ税収より国債発行額が多いのだから、正常の神経の持ち主ならば日本国債を持っていること自体不安になるだろう。
実際は日本国債の保有者は日本の金融機関が94%を占め、特に郵貯や簡保は国債運用以外の運用を知らない。

 このCDSの購入者はもっぱら海外の投資家だが、海外投資家は不安解消の手段としてこのCDSを購入している。
誰でもいいから日本国債の保証をしてくれ」保有者は不安で仕方ない。

注)直接の国債購入者以外に投資物件としての購入者も多い。

 通常信頼できる水準にある国債のCDS0.5%程度で、アメリカやドイツの国債がこの水準にある。
日本国債のCDSは0.5%~1%の間を行ったり来たりするのだが、この当初予算作成時期には海外の投資家の不安が最高潮に高まって1%に近づいてくる。
おい本当に日本国債は大丈夫なのかい」と言うところだ。

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 日本国債の利回りは1%前後で、最近は投資家の不安感を反映して1.2%程度に上昇し、CDSも0.86%になって「日本国債のデットラインが近づいたのではないか?」と緊張感が高まってくるが、この時期を過ぎると沈静化するのが今までのパターンだ。

 理由は日本の金融機関が挙げて政府・日銀の国債価格維持に協力するからで、少しでも価格が低下利回りは上昇)すると、郵貯や簡保や生命保険といった機関投資家が国債を購入して価格維持を図っている。
もし、国債が暴落してみろ、お前達の持っている約900兆円の債券が紙くずになるぞ」日銀からこう言われれば、買い支えざる得ない。

 日銀はこのようにして日本国内の金融機関を脅し挙げては国債購入を図らせているのだが、国内で消化できる間はこの脅しが通用するものの、海外から調達するようになったらこの手は使えない。

 何時まで可能かの試算は多くの人がしているが大雑把に言えば後4年程度である。

注)国内の純資産額約1050兆円金融資産1400兆円-金融負債約350兆円=約1050兆円)対し、国と地方の公的債務863兆円との差はほぼ200兆円しかなく、毎年50兆円規模の国債増発をすれば4年程度で底をつくと計算される。

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 毎年この予算作成時期になるとCDSが上昇し、しばらくはまた小康状態を保ちながら、最後は本当のクラッシュに突入するのだろう。
海外の投資家が今、日本国債のCDSを0.86%でも購入するのは、クラッシュが発生したら一気にCDSが上昇するので、そのときに大もうけができるからだ。
あと数年で、日本国債は暴落する。そのときはCDSは暴騰するから今が買い時だ」そんな感度だ。

 さすがに菅総理もこのままの状態が続けば日本沈没が近いことを認識し始めた。与謝野氏を経済財政担当相にして、税制と社会保障の一体的改革に乗り出そうとしているからだ。

 民主党内には相変わらずマニフェストに掲げたばら撒き政策を支持する声が高いが、数年のうちに財政破綻が懸念されている日本経済にそんな余裕はない。
泥舟に乗っていることを認識できない民主党議員に明日はなく、その時がくればマニフェストと言う言葉さえ忘れ去られるはずだ。

 

 

 

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(22.12.26) 異常な国家予算が続いている 23年度一般会計予算

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 昨年に引き続き日本の国家予算は異状だ。
一般会計の総額は92兆4千億円で、昨年度より約1000億円増加し、過去最高の規模になっている。そして国債発行額が昨年と同様44兆円だから、収入の約半分が借入だ
これがどんなに異状かは自分の身になって考えてみれば分かる。

 これを個人感覚に引きなおすために個人の収入と支出が年間924万円とする。
通常のサラリーマンとしては上々の収入だが、問題は給与所得(税収)が409万円で、過去の貯金の取り崩し(埋蔵金)が72万円、そして親からの借入が443万円(国債発行)ということだ。

注)日本の国債はほぼ95%が国内で消費されており、主として老人の貯蓄が国債に化けている。

 なぜこんなにも親からの借入が多いかといえば、支出が924万円必要だからだ。
どうしても必要なお金として親に対する返済金215万円(国債費)、子供と両親の生活費(社会保障費)に287万円、それと下宿している息子への送金168万円(地方交付税交付金)がいるからである。
これだけで670万かかり、残りの254万円で自分達の生活をまかなっている。

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 私の家計がこのような状態におちいった場合、どのようにしたらよいだろうか。
一番最初に考えられることは、給与所得と貯金の取り崩し481万円)の範囲内に生活のレベルを抑えることだ。
国債費を一旦棚上げして、それ以外の支出709万円を、なんとか481万円に押さえ込む必要がある。
いわゆる働いたお金の範囲内で生活をすることだが、このためには今より228万円も生活を切り詰めなくてはならない。

 率にすれば32%であり、私の生活は実際の実力より約3割も分不相応の生活をしていることになる。
この家計費を3割削減するというのは、単なる計算上の数字ではない。
もし、国債の発行が不可能になり、IMF等から借入を行わなければならなくなったら、必ず要請される緊縮財政の水準である。
過去の韓国や、現在のギリシャがIMFから要請されたのはこうした数字で、韓国は真面目にこの約束を守ったが、一方ギリシャはストで政府を突き上げている。

 この3割削減は、国債費を棚上げした数字だから、実際は215万円の返済(国債費)がその上にのしかかる。
これへの対応は返済金額に等しい新規国債の発行をすることだが、実際は利子がこれに加わるため、毎年利子相当分だけ国債発行額は増加する。

 しかしこれは国債が市場で消化され続けるという前提で考えており、実際は破綻した国家の国債を購入してくれる先は一部の国際機関(IMF等)だけであり、市場からは完全に無視されると思ったほうがよい。

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 現段階で最善の方法は国債は現状水準で塩付けであり、これを縮小するようなことはできそうもない。
もうお父さん、これ以上の借入はいたしません」と断るだけだ。

 実際問題として国債問題は解決不能の段階に達している。返済不能という意味で解決不能なのだが、このような状態になったときの政府の対応策は猛烈なインフレーション政策があるだけだ。
たとえば物価が今より1兆倍になれば、800兆円の国債はたちどころに800円の価値になるのだから誰でも返済できる。

 第一次世界大戦後のドイツや第二次世界大戦後の日本、それにエリチェン時代のロシアはこうして借金の苦しみから逃れることができた。
もっとも国民もこのようなインフレに遭遇すれば、金や銀、相対的に安定している外国通貨に投資先を振り返るので、馬鹿を見るのは国債や国内預金を真面目にしている人たちだけになるだろう。

 上記はもう一度言うが単なる計算の遊びではない。今この段階で日本が倒産すれば必ず3割の支出削減を要請され、我々の社会保障費も地方への交付金も一律3割カットされると思ったほうがよい。

 現在の生活はひとえに国債消化が国内で可能なことを前提に成り立っているだけだ。
だから後いつまで国内での国債消化は可能かが問題だが、すでに郵便貯金も簡保の保険金もほとんどが国債購入に当てられ、銀行の預金も国債購入に張り付いている。

 識者が盛んに国債購入余力の計算を行っているが、5年から10年の間にその時が来ると予測している。
そのとき私達の生活は3割カットになるのだが、本当はそれ以前に財政再建に取り組むのが正しい態度だと思うのだが・・・・・・・

 

 




 

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(22.11.10) NHKスペシャル 「862兆円 借金はこうして膨らんだ」 その2

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 なぜ大蔵官僚が消費税の導入に熱心だったかは、大蔵官僚出身で元自民党衆議院議員だった柳澤氏の証言がある。
消費税は悪魔のようなずる賢い財源で、誰にでも平等に負荷することができ、この税制からは逃れることができない

 税を徴収する側から見ると、確実に税収を補足できかつ適宜に税率を変えることができるので(景気対策として税率を下げ、緊縮財政になれば税率を上げる)、これほど便利な税体系はないのだそうだ。

 だから大蔵官僚がおりあらば政府の尻をたたいて(政府はほとんどの場合は国民に人気のないこの税制に乗り気でない)消費税の導入とその税率アップに邁進していった経緯は分かる。
しかし内部文書で大蔵官僚が「福祉予算の増大に対処するために消費税の導入が必要だった」と一貫して証言しているのは、私にはマユツバに聞こえた。

 これでは政府予算は福祉予算だけで成り立っているようで、今問題になっている不要な組織の物件費や人件費はどうなのかと疑問に思うし、防衛費だって相応に必要ではないかと思ってしまう。

 それに何よりこの番組を見て奇異に思えたのは建設国債についての言及がないことで、実際国債の残高の約半分は建設国債であり、建設国債を分析の対象にしなければ片手落ちに思えたからである

注)建設国債は道路やダムや飛行場のように物が残り、一方赤字国債は年金のように支払われて後に物が残らないという違いがある。
そのため財政法の考え方は建設国債はよい国債で赤字国債は悪い国債と認識している。
しかし 八ツ場ダムを見ても分かるように日本の公共工事は不必要なものを仕事を確保するだけのために行っており、不況対策以上の意味を持っていない。


公債の残高推移(特例公債というのが赤字国債)
http://www.mof.go.jp/zaisei/con_03_g01.html

公債の新規発行額
http://www.mof.go.jp/zaisei/con_03_g02.html

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 大蔵官僚の悲願だった消費税がようやく導入されたのは竹下内閣昭和62年から平成元年)の時で、日本中がバブルに浮かれていた平成元年1989年)のことである。

 今から思うとこの時期(バブルが弾けた前後数年間)は日本財政史上もっとも財政が安定していた時期で、赤字国債の発行はなく、かつ建設国債も最低限に抑えられていたことが分かる。

注)平成2年(1990年)から5年(1993年)まで赤字国債は発行されていない。

 そうした国民が浮かれていた間隙をぬって竹下内閣は大蔵官僚の要請をいれ消費税の導入に成功したが、野党と世論からは総すかんを食ってしまい、退陣に追い込まれた。
大蔵官僚は竹下内閣を犠牲にして消費税の導入に成功したと言える。

 しかし日本経済は1990年、突然襲ってきたバブル崩壊により瀕死の重傷を負うようになり、失われた10年に突入した
再び税収不足に悩まされ始めたため、一時的に発行をやめていた赤字国債の復活や、公共工事による景気対策として建設国債が増額されたため、1990年代を通じて財政状況は急激に悪化していった。

注)平成3年度(1991年)を底として公債依存度が急上昇する。

 しかもこの時期アメリカのクリントン政権から貿易赤字の解消のため国内需要を喚起し内需中心の経済に転換するように強い要請が有った。
8兆円規模の減税を行い、アメリカへの輸出を減らせ

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 景気の悪化、アメリカからの減税要請、国債の増発、財政の国債依存等大蔵官僚を悩ます状況下で、大蔵官僚は(政治センスがまったくなかった)細川首相1993年から94年)を脅しあげて1994年2月国民福祉税7%を突然公表させた。

 この時の事は私も覚えているが、突然深夜のテレビで国民福祉税を言ったのには驚いた。
消費税を廃止して国民福祉税に変更して税率を上げると言う
それはないだろう」と思ったが、翌日にはこの案をあっさりと撤回してしまった。

 細川元首相はこのときの事情を「大蔵官僚が細川内閣に無理心中を迫った」のだと述懐している。
この増税のシナリオは10年に一度の大物次官と言われた斎藤氏と新生党の小沢氏の間で取り進め、細川氏は単に神輿に乗ったのに過ぎないというのが実情だったようだ。

注)このとき細川政権の最大与党社会党は国民福祉税のことを知らなかった

 こうして最後の大物官僚による消費税UPのクーデタは失敗し、エリート(大蔵官僚)による改革は失敗したという。
その後大蔵官僚が黒子に徹しながら最後のかけに出たのが橋本内閣(1996年から98年)による財政再建だったという。
黒子になったのは大蔵省が前面に出ると国民が反発すると分かったからである。

 橋本内閣は大蔵官僚の要望を入れて1997年消費税を3%から5%にアップし、財政再建に取り組んだ。
しかし実際はようやく回復基調にあった景気が悪化して、法人税等の収入が激減したため消費税をアップした理由が分からなくなってしまった。
だれだ、消費税をアップすれば財政再建になるといったのは・・・」橋本首相は悔やんだが後の祭りだ。

 翌年の参議院選挙で自民党は敗北し橋本首相は退陣し、消費税に手をつけた政権政党は敗北すると言うトラウマをここでも実証した

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  その後は日本は未曾有の金融危機に突入し、1998年、長銀や日債銀がばたばたと倒産したため財政再建どころではなく、日本そのものの存在が問われるようになった。
赤字国債であろうが建設国債で有ろうが目一杯の借金をしろ
財政再建の季節は終わっていたのである。

 この金融危機を契機に大蔵官僚は財政再建の舞台から消え去ったのだと言う。
金融危機を防ぎきれなかった大蔵官僚は無能だ。大蔵官僚の言うことを聞いていたら国がつぶれる

 かつて大蔵官僚は職務として財政再建に取り組み、時に政府を犠牲にしてまでも消費税を導入したが、21世紀に入ってからはもはやなすすべがなくなった。
役所も分割され財務省(2001年)としてその他の役所の中の一つとして埋没している。

 以来連立政権による予算の増大に直面しても誰も止め立てする組織はなく、今赤字国債は止めどもなく拡大し続けているという。

 

 

 

 

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(22.11.9) NHKスペシャル 「862兆円 借金はこうして膨らんだ」 その1

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 7日に放送されたNHKスペシャル、「862兆円 借金はこうして膨らんだ」と言う番組は理解するのがかなり難しい番組だ。
この番組を録画して内容をチェックしてみたが、実際に赤字国債が発行された昭和40年から現在までの約半世紀財政史を大蔵官僚の証言で追うのは並大抵のことではない。

 財政史そのものがかなり専門的なことと、大蔵次官はほぼ2年で交代してしまうし、官僚の証言が当時のものか後で行ったものかよく分からず、かなり頭が混乱した。

 862兆円という数字は本年度末時点での国と地方を合わせた借入金の総額見込みだが、これは日本の1年間のGDPのほぼ2倍の金額だ。
なぜこれほどまでに借金が膨れ上がったのか、日本の借金体質がどの時点で発生し、そしてそれがなぜ現在も続いているのかを検証しようとしたのがこの番組である。
NHKが総力をあげた憂国のキャンペーン番組だが、登場人物の多さに閉口した。

注)862兆円は赤字国債と建設国債の合計金額

 この番組は本来赤字国債の発行が許されていない日本の財政法の中で、なぜ赤字国債が増加し続け、それを止めることができなかったかを旧大蔵省の内部文書から見ている。

注)日本の財政法の建前は赤字国債の発行を禁止し、建設国債だけを許容する仕組みになっている。財政法が赤字国債を禁止したのは戦前・戦時の財政がこの赤字国債でまかなわれ、最終的には異常なインフレーションをもたらしたため。
したって赤字国債を発行するためには特例法を制定して実施することになる。


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 旧大蔵省には大蔵省の幹部だけが見ることのできる財政史口述資料と称する内部文書があり、次官や主計・主税局長といった最高幹部約100人が後輩のために書き残した歴史的文書が保管されている。
それをNHKが見つけ出し、この番組を製作した。

 この文書を読んでみると時の事務次官や主計・主税局長が国内政治や国際政治に翻弄され、已む無く赤字国債の発行に同意していった経緯と、何とかして赤字国債を解消するために消費税の増税による財政赤字の解消を図ろうとしていたかが分かる。

注)大蔵省は健全財政の立場から常に赤字国債の増発には反対の立場で、歳入欠陥は増税によって対応すべきだとの立場を一貫して取っていた

 初めて赤字国債が発生したのは昭和40年で、東京オリンピック後の不況で約2000億円の歳入欠陥が発生した時である。
このときは一時的な止む終えない措置として赤字国債を発行し、確かにその後10年間は赤字国債の発行はなされていない。

注)赤字国債は「麻薬」と同じだと言うのが当時の次官の認識だった。

 この番組を見て私には一番意外だったのは、赤字国債と福祉予算の関係で、福祉予算の拡大こそがその後赤字国債発行がやめられなくなった最大の要因だと大蔵官僚が証言していたことである。

 福祉関連予算が急激に伸びたのは田中内閣昭和47年から49年)の時で、年金の物価スライドと老人医療費の無料化を行ったために福祉予算が一挙に30%も増額になった時だったと言う。
私の記憶では田中内閣は列島改造論を掲げて日本中で土木建設をしようとした内閣だと思っていたが、意外にも福祉予算も大幅に増額していた。
当時の言葉で「福祉元年」という。

注)昭和40年代の高度成長で財源が十分にあったため、土木建設も福祉も両立できると思われていた。

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 しかし世の中は甘くない。昭和48年にオイルショックが発生すると税収が一気に落ち込み昭和50年の予算では再び赤字国債の発行が必須となってしまった。

注)オイルショックこそは日本の高度成長を終了させたエポックになっている。その後の日本はいわゆる安定成長時代に入る。

 公共事業の新規取り組みは中止できても、田中内閣が始めた年金の物価スライドや老人医療費の増額が年に1兆円規模で増えて、結果的に2兆円の赤字国債を発行することになった。

 当時の大蔵事務次官の反省の弁は「財源の裏付けのないまま、高成長が続くものと想定して福祉制度を導入したのが失敗だった」と言うものである。
公共事業なら止めることもできるが、福祉については一旦始めるとやめることができない。毎年確実に10%程度の伸び率で増大し、一方それに対する予算措置はない」のだそうだ。

 この増え続ける福祉予算の財源措置として、当初考えられたのは「再び高度成長を取り戻し、税収を上げること」だった。

 福田内閣昭和51年から53年)が53年度に11兆円予算を増額して超大型予算を組んで高度成長を目指したのがそれだ。
福田内閣としてはこれで再び高度成長の波に乗れると思ったが、しかし日本経済は二度と高度成長に戻ることはなかった。

注)日本経済の成長率は石油ショックまでは年率約10%程度だったがそれ以降は平均でバブル崩壊まで4%程度だった。
福田内閣は成長率4%を一気に7%に引き上げ、それによる税収増加で福祉予算の財源不足を補おうとした。


 この頃までの大蔵省の方針は高度成長による税収増で赤字国債を解消しようと言うものだったが、福田内閣の政策が失敗に終わってからは新たな税源確保として消費税の導入に邁進するようになったという

高度成長はもはやない。後は増税しか歳入欠陥を埋める手段は残されていない

 福田内閣の後を継いだ大平内閣が成立すると、時の大蔵次官大倉氏と大平首相は消費税の導入に積極的に乗り出し、昭和54年の選挙においても一般消費税の導入を訴えたが自民党は過半数割れを起こし総選挙で敗北してしまった。
次官の大倉氏は予算の増額を20%から13%に抑えることで国民の理解を得ようとしたが、まったく効果がなかったという。
こうして大蔵省のもくろみは国民からNOと言われ増税路線も頓挫してしまった。

 その後消費税導入を訴える政権政党は必ず敗北するという、日本財政史上のトラウマがこのときに形成され、高度成長による財源確保も、消費税増税もできないため財政は急激に悪化していったという

注)消費税については部分的に成功したが現状でも5%であり、西欧の税率20%程度と比較すると十分なものと大蔵官僚は思っていない。

(続く)

 

 

 

 

 

 

 

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(22.7.13) 民主党の敗北と財政再建の頓挫

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 11日に実施された参議院選挙で、菅民主党は大敗北を喫して改選議席54を大きく下回る44議席に留まった。参議院は完全なねじれ現象になり、一方与党は衆議院で3分の2の再可決が可能な議席数に足らないため、予算以外の法案は参議院で否決されれば、一切通過が不可能になってしまった。

 管首相は消費税引き上げ発言が与党敗北の原因と認め「十分な説明が不足していた」と陳謝したが、過去消費税引き上げを前面に出して勝利した政党はない。

 97年当時の橋本内閣が消費税を5%にアップしたが、その後の選挙に破れ首相を退陣したし、近くは麻生首相が増税論議を前面に打ち出して民主党に大敗した。
そして今回は菅首相が消費税の10%UPを選挙の争点にして、やはり大敗北を喫してしまった。
日本の国民は常に増税に対してはNOと回答する

(7月14日追加)読者のtakapingさんから「同じく増税を言っている自民党が議席を伸ばしたのだから、国民が必ずしも増税反対ではないのではないか」とのコメントをいただきました。
正確な表現は「政権与党が増税を選挙の争点にすると日本の国民は常に増税に対してはNOと回答すると書くべきでした」

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 管首相としても身体窮まってしまっただろう。先進国の中で最も財政事情が悪く、予算の半分以上を国債発行に頼らざる得ないのに、国債残高を少しでも減らそうと増税を選挙で訴えれば、その政党は必ず選挙で敗北する。
日本では財政再建は不可能なのだろうか?」菅首相ならずとも考え込んでしまうだろう。

 一方で子供手当のようなばら撒き政策を行い、他方で消費税の増税が不可能となれば菅民主党にとって残された道は、国債の増発しかない。
現在でも先進国中最悪の財政事情がますます悪化するが、それ以外に日本と言う国の国政の運営ができないのだ。

 そうなると一体いつまで日本は国債の増発に耐えられるかということになる。
日本の国債発行環境は特殊だ。約94%が日本人が保有しており、これはアメリカの約50%、ドイツの約35%等に比較して圧倒的に国内での保有が多い。
最もそのほとんどが金融機関や保険会社のような機関投資家が購入しているので国民の個人保有は5%程度だ。

 なぜこのように国内保有が多いかといえば、日銀の低金利政策によって預金金利が低く抑えられ、1.5%程度の国債の利回りでも十分に利ざやが稼げるからである。
特にゆうちょ銀行かんぽ生命は国債を購入するためにだけ存続していると言っていいほどだ。

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 だから日本国債の購入者がいる間は菅民主党は国債増発で政権運営を続けられるのだが、それが何年程度可能かを試算したレポートがある。
Voice6月号に掲載されたみずほ証券チーフマーケットエコノミストの上野泰成氏の「国債暴落シナリオの現実性」がそれで、上野氏は以下のように論旨を展開した。

① 家計金融資産のネット残高(資産-負債)は09年12月現在約1150兆円
② 中央政府と地方政府のネット債務(負債-資産)は同じく約620兆円
③ したがって国債消化余力は1150兆円-620兆円=530兆円
④ 毎年の国債消化余力の減少ペースは約50兆円(過去3ヵ年平均)
⑤ この結果家計金融資産に余裕がなくなるのは530兆円÷50兆円=10.6年

 この試算では約10年間程度は国内に国債を消化できる余力が残っていることになる。
そうか、まだ10年は国債を今と同じペースで増発しても大丈夫なのか。日本と言う国は底が深い」そう判断するか、
国債の増発スピードが上がっているので、家計金融資産の減少ベースは早くなるだろう。
もし日銀が低金利政策を止めれば、資金は国債から他の資金に移動するはずだから、たとえ国債消化余力があっても、金融機関は国債を購入しなくなるだろう
」と判断するかは政策の分かれ目になる。

 常識的な判断は、まだ10年程度国債消化余力があったとしても、毎年毎年状況は苦しくなるので、何処かの時点で日本国債の信任がなくなり、ギリシャ並みの緊縮財政を強いられるだろう、というところだろう。

 今回国民は菅民主党に増税は反対だと意思表示をした。したがって財政再建は頓挫してしまったが、10年以内に市場からNOのサインがだされ、いたし方なしに増税路線に転換すると言うのが一番ありそうなシナリオだ。

 

 

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(22.2.23) 国債は償還されるのか

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(国債で何を騒いでいるんだい?)

 はたして日本の国債は償還されるのだろうか、そうした疑問がわいて来る。なにしろ鳩山内閣のばら撒き政策で、国債の発行残高は膨らむ一方で、現時点で10年度末11年3月)の公債の残高は863兆円GDP対比181%)と推定されている。

 この残高は当初予算のみでの残高だから、補正予算を組んで増発すれば瞬く間にGDP対比200%に近づいてしまう。
大雑把な言い方をすれば稼ぎの倍の借金を抱え込むことになる。

 個人でも住宅資金を借りる時は所得の2倍程度の借金はするが、この場合は不動産が担保になっていていざという場合は不動産を処分して返済すればいい。

 一方政府の場合はそうした担保がない。社会保障費などはそのまま消えていくし、ダムや道路などの建設費はダムなどを担保とするわけにはいかない。
したがって政府の場合は税金を増やしてその中から返済する以外に手はないのだが、実際問題として増税はかなり難しく、鳩山首相は今後4年間は消費税は上げないと言っている。

 通常財政健全化の論理は「借金を将来の日本人に肩代わりさせるわけにはいかない」というものだが、本当に借金を将来の日本人に肩代りさせることが可能なのだろうか。

 経済が停滞している日本で返済資金の余裕などが生まれるはずがなく、預貯金約80%は老人が持っている。若者は生活するのに精一杯で老人より若者が貧しいのがこの日本の実態だ。

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ふうーん、それは深刻だね!!!)

 返せないほどの借金が増えたときの常套手段は歴史が教えてくれる。

① ハイパーインフレーションを起こして国債の価値をゼロに近づける。
② 国家破産しIMFから支援を受けて財政再建に取り組む。
③ 自力で財政再建に取り組む


 はたして日本はどの方式を採用するのだろうか。

①の事例 日本の戦時国債の償還はこの方法でなされた。
戦争終結時点で、戦時国債が1400億円程度、政府短期借入金が2000億円程度合計3400億円程度あったのだが、綺麗さっぱりと返済されている。

 そのからくりは昭和9~11年の卸売り物価を100とすると、昭和26年(この頃から朝鮮特需で日本経済は立ち直った)までに物価が約350倍上昇した超インフレにある。これなら戦時国債・借入金の実質的な償還は約10億円(3400÷350)で済んだことになり、350分の1に踏み倒せるなら誰だって返済できそうだ。

 戦時国債の例を当てはめると、現在の国債残高863兆円がこうしたインフレで帳消しになれば、このコストを負担するのは国債保有者お金を持っている老人)ということになりそうだ。

注)戦後と同じハイパーインフレーションが発生したと仮定すると、返済額は約2.5兆円で済むことになる。

 もっとも、現在は戦争もないので日本で再びハイパーインフレーションが発生する可能性は少ない。
現在はひどいデフレで政府はインフレ目標を年率1%にしたいと悲鳴をあげているくらいだ。

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(結局、なるようにしかならないのよ・・・)

②の事例
 この事例は世界各国にいくらでもある。IMFから資金を借りて対外債務の支払い等に充当し、一方で国内では超緊縮予算を組むことになる。

 鳩山政権の10年度当初予算は、一般会計の規模は約92兆円で、税収約37兆円、その他約11兆円、国債発行約44兆円となっている。
一方国債の償還費約21兆円だから、国債純増は23兆円ということになる。

 これが超緊縮予算になると、国債増発はご法度で、できれば償還をすることが期待される。
たとえば毎年国債を5兆円ずつ縮小させ、かつその他のような埋蔵金がすでになくなっているものとすると、予算規模は52兆円規模税金37兆円+公債発行15兆円、公債償還20兆円)になる。

ネットで利用できる予算は32兆円37-5)で、これは10年度予算のネット71兆円92-21)の49%約半分ということになる。

 大雑把にいえば現在の生活水準を約半分にした生活を要請される。

注)この場合の国債残高は毎年5兆円ずつ圧縮されることになるただし完済まで172年の歳月が必要(863÷5)

③の事例 自力で財政再建に取り組む。このためには増税が必須で、たとえば消費税が現在の倍の10%になったとすると、15兆円規模GDP500兆円×消費の割合60%×増税分5%)の増税になる。

 これにより税収規模は52兆円
37+15)になる。国債はまったく増発せず現状維持とすれば、現在のネット予算71兆円の73%、約7割程度の生活レベルで過ごすことになる。

注)国債は増発されないが、借り換えのための国債発行はおこなわれる。

 過去の蓄え約1400兆円や、外貨準備約100兆円をすべて国債で使い切った後は、好むと好まざるとに関わらず、②か③の対応を迫られることになる。

 私としては自助努力で生活してほしいと思っているが、自発的にこの7割の生活を国民に要請するのは並大抵のことではない。おそらくこうした自力努力は行われず、②の国家破産が起こって已む無く生活を切り詰めるのではなかろうか。

 
 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

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(22.2.16) 日本国債のデットライン CDSの上昇は何を意味するか

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 最近日本国債のデットラインが近づいてきているのではないかという議論がかまびすしくなっている。
直接のきっかけは鳩山政権が組んだ10年度当初予算が税収入より国債発行の方が多く、国債残高だけでも10年度末には637兆円GDP比134%)、国と地方の借金を合せると863兆円GDP対比181%)と先進国の中では断トツに大きくなるからである。

注)イタリアが150%程度、アメリカ、イギリス、フランスは100%以下

いくらなんでも限界を越えているのではなかろうか?」格付機関が一斉に疑問を呈し始めた。

 格付機関は過去何回も日本国債の格付を引き下げてみたが、実際は日本国債が1.5%程度10年債)の低利回りで完売できてしまい世界の7不思議になっていた。
いくら格付を下げてもびくともしない。日本だけ特殊なのだろうか?」

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 他の先進各国の10年債利回りは大体3.5%前後で、これが普通であり高金利政策をとって資金導入を図っているオーストラリアニュージーランドは6%前後、財政赤字に苦しむギリシャ7%前後だから、日本国債の低金利は際立っている。
なぜ財政赤字NO1の国の国債が1.5%というような低利回りで売れるのだ?」グリーンスパンさえ驚いていた。

 この最大の理由は国内にそれでも国債を購入してくれる機関投資家がいることで、実質的に政府の支配下に入った郵貯簡保が最大の顧客で約3割相当を購入してくれる。
財務省は他に金融機関、保険会社を抑えているので無言の圧力で国内でほぼ全額国債を購入させることができる。

 その見返りは世界でもまれに見る低金利政策の継続であり、指標金利が0.1%なのだから1.5%でも十分に利ざやを確保できる構造だ。

注)金融機関は極端に言えば0.1%で日銀から資金を調達し国債で1.5%で運用するだけで収益を上げることができる。
なお、外国人の国債購入額は6%程度。


 こうした構造があるために、日本国債の利回りは1.5%程度でも完売していたし、日本国債の保証料CDS:日本国債が焦げ付いた場合に備えてAIGのような保険会社に保証してもらう仕組み)は0.5%以下という低利率で推移していた。

 今問題になっているのはその日本国債のCDSが昨年の11月頃から急激に上昇し始め、1%近くに成り中国国債のCDSとほぼ同じになったためである。

注)格付最上位の国の国債のCDSは0.5%以下が普通で、1%を越えるとかなり怪しくなる。現在ギリシャは3%程度。

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 もともとCDSは格付と連動するから、格付機関S&Pが上から3番目の日本国債の格付を4番目に引き下げる可能性があると発表したため、CDSが急上昇した。
しかし問題は本当に日本国債の信用が揺らいでいるかどうかである。

 揺らぎの数字的根拠は国内の純資産額約1050兆円金融資産1400兆円-金融負債約350兆円=約1050兆円)対し、国と地方の公的債務863兆円との差はほぼ200兆円しかなく、毎年50兆円規模の国債増発をすれば4年程度で底をつくと計算されることからきている。
ほれ見ろ、日本国債の寿命はあと4年程度で、その後はギリシャ並だ
格付機関が今度こそ日本国債が売れなくなると予想し始めた。

 確かに民主党のばら撒き政策が継続すれば、いつかは国内の資金も底をつく。国内資金が枯渇すれば最後に残るのは外貨準備高約100兆円だけで、これはほとんどがアメリカ国債かそれに準じた公的な債券である。
仕方がない、アメリカ国債を売ろう」背に腹は変えられない。しかしそうなるとアメリカ国債が暴落する。

 こうした経緯をたどって日本はアメリカと心中するのだろうか。また米国債の最大の保有国は中国だから、中国が営々と蓄えてきた資産も一瞬のうちに消えそうだ。
なにか世界的なカタストロフィーを日本が引いてしまいそうな話だが、その前に財政再建に日本が乗り出し、第2のリーマンショックを回避できるのだろうか。

 どうもこの問題は相当複雑そうだから、すぐに予測をしないでもう少し考えてみることにした。

 

 

 

 

 

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(21.12.6) 世界経済の七不思議 日本国債のレートはなぜ低い

056  

 おそらくこれほど魔か不可思議な現象はないとも思われる。
日本国債の利回りが世界のどの国の国債の利回りよりも低位にあって、一方政府の債務残高の推移は対名目GDP対比、先進国では断トツに高い

本政府は国債を自由勝手に増やすが、だからと言って市場は易々諾々とその低金利の国債を購入する、なぜだ?」

 かつて格付機関ムーディーズは軽蔑をこめて言ったものだ。
日本国債のGDPに対する比率は許容限度を越えた。これではボツワナレベルの格付がせいぜいだ2002年のことである。

 しかしその後も日本国債は売れ続け、利回りはどこの国よりも低位で安定してきた。
ムーディーズの馬鹿がとちりやがって
市場からクレームが付き始めたので、ムーディーズはあわてて「日本の対外債権や国内預金の多さから見ると、ボツワナレベルは間違いだった。イタリア並だ」と訂正した。2009年のことである。

 しかしムーディーズならずとも、この日本国債の強さは信じられないだろう。
現在利回りは1.5%前後だが、他の先進国は軒並み3.5%前後だし、高金利政策をとっている豪州やニュージーランドは6%前後、経済に赤信号が付いている南アフリカは10%前後になっている。
日本国債はオリンピックならば断トツの金メダリストといえる。

 一方、政府債務残高の推移は赤字国債の発行増で急激に悪化しており、アメリカやヨーロッパ主要国がGDP比せいぜい100%程度なのに、日本は200%と他を寄せ付けない悪さだ。
先進国の中でイタリアだけが150%だから、ムーディーズが日本をイタリア並みに評価したのもうなずける。
Image03_2

 だがそれでも日本国債の市場評価はゆるぎない。
リチャード・クー氏が「心配するな。赤字国債をいくらでも発行して、経済の底上げを図れ」とはっぱをかけるのもうなずける。

 日本国債が世界最強である理由は通常以下のように説明される。

① 日本国債の購入者は国内の機関投資家であり、日銀の低金利政策により1.5%前後でも十分に利ざやが取れるので、あえてリスクテイクな投資をしない(ゆうちょ銀行が典型的にそれで177兆円の貯金の約80%を国債運用にまわしている

② 日本は経常黒字国で、常に金余りの状態にあり個人貯蓄も約1500兆円と断トツに多い。いわば金の使い道に困っている状態なので、国債運用でも運用がないよりはまし。

③ 日本の国民が日本政府を信用し、国がよもやハイパーインフレ政策をとって国債の価値をゼロにするようなことはないと思っている。


Image04_2  

 以上のようだと、日本政府が低金利政策をとる限り、また経常収支が黒字である限り、また財務省と日銀がへまをしない限り、日本国債は売れ続け、世界最強の国債でいられることになる。

だから言ったろう。赤字国債をいくら発行しても日本は大丈夫なのだ。45兆円でも、50兆円でも発行しろリチャード・クー氏の雄たけびが聞こえるようだが、日本は世界の目から見るとえたいの知れない国と写るだろう。
まさに世界経済の七不思議なのだ。

注)日本人の行動パターンはグリーンスパンも理解の限度を越えていたらしい。「利回り1%の10年国債を進んで買う投資家は、日本人以外にはいない」とあきれ返っていた

 

 

 

 

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(21.8.7) 日本は何処まで特殊か? 貯蓄率急落現象

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(マッスル氏撮影 山崎 編集
 
Voice8月号の「巻頭の言葉」に掲載された「貯蓄率急落の先にある悲劇伊藤元重NIRA理事長、東京大学教授)の論評を読んで考え込んでしまった。

 そこにはおおよそ以下のような内容が記載されていた。

① 日本の家計部門の貯蓄率が急速に低下しており、1990年の始めに15%あった家計部門の貯蓄率が3%に低下している。

② 低下の主要な原因は高齢者の割合が増え、貯蓄を切り崩して生活する人が増えたことをあげている(
なお私はこれと同じくらい重要な要因として若い人が貯蓄ができないほど生活が厳しいことがあるのではないかと考えている

③ 金額で見ると約1400兆円の個人金融資産の約70%が、60歳以上の人が保有しているが、今後は増加する要因はない(
私の場合はほとんど預金がないので1400兆円に貢献していない)。

④ 日本政府は国と地方を合わせてGDPの約150%の債務を負っているが、1400兆円の相当部分が、公債の購入に当てられている。

⑤ 財政赤字は大胆な歳出拡大が必要なため、ますます公債の依存が増える。

⑥ 公債発行が増加すると通常は長期金利の急騰(国債価格の暴落)か悪性インフレが発生するはずだが、そうならないのは家計部門の貯蓄がこの公債購入に向かっているためである。

⑦ しかし今後個人資産が増加しない(低下する)と、この公債を誰が購入するかという問題が発生する。

⑧そうなると(
通常は日銀が引き受けることになり、これは紙幣の増発と同じだから)、長期金利の上昇か、悪性インフレか、円の暴落が起こる可能性がある

P7260374
マッスル氏撮影 山崎 編集

 この論説の主題は、日本は特殊な国であり、従来国民が貯蓄を低金利の銀行預金として運用してきたので(それ以外の運用については一部の人を除いて消極的だった)、政府は金融機関に低金利の公債を押し付けることができ、国債をファイナンスできた。
しかし今後はそうは行かないだろう、ということである。

 日本国債のムーディーズの評価は上から3番目Aa2だが、この理由は日本の国債残高は約800兆円GDPの約1.7倍(アメリカは約0.6倍)であることにあった。こうした日本国債の低評価が海外では一般的だが、日本政府は噛み付いた。
ボツアナレベルとは信じがたい
実際は、日本は特殊な国であり、日本人の多くが銀行預金という低金利に甘んじ、国債を購入してきたことは事実だ。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:National_Debt_of_Japan.svg

 通常は国がこのように借金を重ねると長期金利が上昇するのだが、(国民が国債をファイナンスしてくれるので)まったくそうはならず、1.5%前後で低位安定している(アメリカ国債の利回りは3~4%)。
これほど国に尽くす健気な国民は世界中を見回しても日本人くらいだ

 結局日本の国債残高が圧倒的に多いのにもかかわらず、利回りが低いのは政策金利を0.10%と低く抑え、定期金利10年物でも0.6%前後に抑えているからだ。
このため1.5%の国債でも金融機関は利益があがる仕組みになっており、政府の実質的な割当(形式的には割当は廃止された)に応じることができる。

P7260398
マッスル氏撮影 山崎 編集)

 さて問題は伊藤元重氏が心配している今後についてである。若者は貯蓄ができず、老人は貯蓄を取り崩す。国債を購入する資金はなくなり、アメリカのように海外に販路を求めるか、日銀に引き受けさせることになるのだろうか。

 私の予想は、長期的には国債の金利は上昇して、政府の財政圧迫要因になると思う。したがってそうした場合は、政府は消費税をあげて財源を確保するか、あるいは再び小さな政府を標榜することになると思う。

 結局特殊要因がなくなれば、一般要因で経済は動くのだから、貯蓄なき日本は何処の国もとる政策をとらざる得なくなるのだろう。

 

 

 

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