(22.11.14) NHKクロ-ズアップ現代 「放射性物質 トリウム 最前線」

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 時代の流れが速いのだろうか、最近は私が知らないことばかりが発生する。
NHKのクローズアップ現代レアアースにかかる番組が放送されると聴いて見てみたが、表題が「放射性物質 トリウム 最前線」となっていたのには驚いた。
これはレアアースの番組だろう。トリウムってなんだい

 私はまったく始めて知ったのだが、レアアースを採掘すると同時に放射性物質トリウムがレアアース鉱石とくっついて採取されるのだと言う。
トリウムはウランやプルトニウムと同じ放射性物質だが、性質が異なり自力で核分裂しない安定した放射性物質だという。

 このトリウムが発生させる放射能は通常は人体に影響がないが、レアアースの採掘をすればするほどトリウムがたまってしまうので、その処理を適切にしないと環境破壊につながると言う。

 私は今までなぜレアアースが中国でのみ生産されているのかの理由が分からなかったが、他国はこのトリウムの処理に手を焼いてレアアース生産から撤退してしまったのだそうだ。
一方中国はまったくこのトリウムを放置していたので、この鉱山周辺の環境はひどく放射能に汚染されだして、無視できない状況になりつつあるという。
中国版足尾銅山事件だ。

注)環境問題を無視して生産すれば世界でもっとも安価なレアアースが生産できるのは当然だ。

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 温家宝首相が「環境破壊を防ぐためにレアアースの生産を縮小している」といっていたのはすべてが嘘ではないらしい。
もっとも中国はまともに環境問題を考えるような国でないから、もっぱら戦略的にレアアースの環境問題を使用しているのだが、それにしてもトリウム問題があるとは知らなかった。

 この汚染物質のトリウムを世界各国では資源として使用しようとしており、主として原子力発電の燃料に使えないかとの研究が進んでいる。
ドイツではプルトニウムとトリウムを混合した原子力燃料の実験が行われており、一方アメリカではウランとトリウムを混合した原子力燃料の実験が行われていた。

 問題はトリウム用に開発された原子炉がないことで、今後実用化できるまではかなりの年月がかかりそうだった。
中国以外の鉱山でレアアースを生産するためには、中国との価格競争に勝つために同時に産出するトリウムを何とかして資源化して使用する他に手はない。

注)他国は中国と異なりトリウムを危険でない状態に処理をするのでコストで中国にかなわない。

 温暖化ガスの排出を抑えるためにエコカーの生産を強めればレアアースが必要になり、その結果トリウムが環境破壊をもたらすとは何とも皮肉だが、人類はこの難問を解決しなければならないだろう。

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(22.6.22) 中国人民元の為替の弾力化は本当だろうか?

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 中国人民銀行が今月19日に「人民元の為替の弾力化を高める」と報道したことに伴い、世界各国は一斉に歓迎のコメントを出したが、その期待に反し、実施予定日の21日には若干の元高に留まった。

注)中央値は変わらず、変化幅0.5%以内の6.80元で従来の6.83元から比べると0.4%の元高だった。

 中国の為替制度は日本などの変動相場制と異なり、リーマンショック以降はまったくのドル固定制と言ってよく、1ドルに対し6.83元に張り付いていたので、現状は微修正といった段階だ。

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 ここにきて中国が為替の弾力性を高めると表明したのは、6月26日にカナダのトロントで開催されるG20首脳会議で、胡錦濤国家主席に恥をかかせないためである。
中国は面子だけで生きているような国で、現在の中国皇帝といえる胡錦濤国家主席が満座の前で非難されたり、そのための弁解をしなければならない立場になることを何としても避けなければならない。

 「中国は為替を人為的に操作し、世界経済に甚大な悪影響を与えている」などとオバマ大統領に言われたら、胡錦濤国家主席の立場がない。
胡錦濤主席に恥をかかせるな」中国人民銀行に指示がとんだ。

注)胡錦濤国家主席は中国では皇帝の立場にある。
外国からの首脳を迎えるスタイルは、自分は動かず静かに立っており顔は無表情を決め込む。
日本の首脳がニコニコ笑って、腰をかがめて握手する様は朝貢外交の使節団のようだ。


 オバマ政権は大量の国債を中国に購入してもらっているてまえ、本音は中国を刺激したくない。
しかし一方民主党が多数派の議会は中国に対し人民元の切り上げを要請している。
中国が何も対応しなければオバマ大統領はG20で厳しい口調で中国を非難しなければならなかったのだから、ほっとして歓迎のコメントを出した。
建設的な一歩だ

注)民主党は基盤であるGM等の工場労働者の職場を守らなければならず、オバマ大統領は民主党議員から元安がアメリカ製品の輸出を阻害していると突き上げられている。

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 しかし21日から実施すると表明した元の為替相場はほとんど変動せず、為替関係者からは「中国は本気で為替相場の弾力化を測るのだろうか?」と疑問の声が出ている。

 中国としたら元相場の弾力化は痛し痒しだ。
輸出産業保護のためには元安が至上命令だが、一方そのための為替介入で国内には元が溢れかえり、不動産バブルが止めどもなく続いている。国内物価の高騰も気がかりだ。
若干の元高は容認してもいいのじゃないか・・・・・・

注)中国人民銀行は元相場をドルに固定するため、元が上がりそうになるとドルを買って相場を下げてきた。このためドルが急激に溜め込まれ外貨準備は200兆円を越えているが、その分国内には元資金が供給されたことになる。

 
おそらく中国人民銀行は元を若干ずつ切り上げると思うが、その速度はアメリカが期待したものには程遠いだろう。
中国は国内の消費市場の拡大を図っていると宣伝しているものの、実際は政府支出の拡大と金融緩和でどうにか景気を支えているのが実情だ。
だから本音は輸出拡大で、政府支出が限界に達する前に輸出主導型の経済運営に復帰したいと考えている。


注)日本が国内市場の拡大を唱えながら、常に輸出産業の業容回復で不況を脱出してきたように、中国もそれ以外の方法はない。

 
どこの国にもその国の経済運営のパターンと言うものがあり、そこから乖離することなどできないものだ。
胡錦濤国家主席に恥をかかせないために中国人民銀行は元高容認発言をしたが、実際の切り上げの足取りは亀の歩行のように遅いものとなるだろう。


 


 



 

 

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(22.6.2) 世界の工場の終わりの始まり 中国ホンダ部品工場のスト

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 今回の中国ホンダの部品工場のストをみて、中国の世界の工場としての終わりの始まりを感じた。
この工場は広東省仏山にある変速機を製造している工場で、従業員数は約1000名だという。

 この工場でストライキが発生した理由は、部品工場と完成車工場の従業員間に賃金格差があることで、中国に4箇所ある完成工場の従業員の賃金が部品工場の従業員より高いのだと言う。
これを知った部品工場の従業員が怒ってストを始めた。

 しかしこの種の賃金格差は日本でも同じで、部品は中小の関連会社で生産し、本社の組立工場ではそれをジャスト・イン・タイムで生産しており、当然本社職員の給与のほうが関連会社の職員の給与より高い。

 日本ではそれが当然のことと認識されているが、中国は社会主義体制のため建前は違う。ここでは「同一労働・同一賃金」が建前で、この場合の「同一労働」とは「同一労働時間」であることがほとんどだ。

注)マルクス経済学では労働とは労働時間で計られ、質は考慮されない。

 なぜ、この社会主義の建前が最近になって声高に叫ばれるようになってきたかだが、その理由は労働力が不足してきたからである。
中国では農民工と呼ばれる出稼ぎ労働者が最低限の賃金で搾取労働を担ってきたが、この農民工がここ10年間で半減してしまった。

注)製造業に従事する農民工は10年前は1800万人だったが、09年には1000万人に減少した。

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 農民工が半減した理由は地方でも職場が確保できるようになったからで、特に中国政府が不況対策としておこなった4兆元約57兆円)の投資のほとんどが、地方の公共工事に向けられたためである。
中国人も好き好んで出稼ぎをしているわけでなく、近くに職場があれば家族と一緒の生活のほうがいいに決まっている。

 こうした労働力不足を奇貨として最大限に利用したのが中華全国総工会という労働組織で、全国の労働組合に大幅賃上げの指示を出した。
妥協するな。同一労働同一賃金だ。ストを打ってがんばれ
おかげで労働争議は09年は06年対比2倍の60万件になった。

 ホンダの部品工場の初任給は1544元約22000円)だと言う。日本人の大卒の初任給は約22万円程度だから、日本の賃金水準の10分の1程度だ。
今回のストでホンダ約24%の賃上げに応じたと言うので、約25000円の給与水準になるらしい。

注)この賃上げで多くの労働者は職場に戻ったが、一部の労働者は職場復帰した労働者を「日帝の犬」と主張して山猫ストを継続している。

 これでもまだ日本と比較すれば低賃金だが、問題は今後ともこの賃上げ要求は厳しくなりこそすれ、収まる気配がないことだ。
すでに同じ自動車部品工場の韓国の現代自動車に飛び火して労働争議になっている。

 ホンダは現在中国で、日に2000台の規模で完成車を製造しているが、この部品工場のストで約1週間操業がストップしてしまった。14000台の完成車ができなかった勘定で、中国を最大の市場としているホンダとしては苦しい立場だ。
仕方なく日本から変速機を急遽輸出する措置を取ったようだが、ストが頻発するようでは、中国を低賃金で使い勝手のいい労働市場とみなす訳にはいかない。

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 中国の賃金水準は明らかに低賃金というレベルから、中進国並みの賃金水準にシフトしつつある。
中国人がいつまでも低賃金で甘えてよいわけはないので、この動きは必然ではあるが、一方で世界の工場としての魅力は低下する。

 今後は中国は販売市場としての魅力は増すものの、生産拠点は徐々により安価な労働力を求めて中国から移動することになるだろう。

 このホンダのストは世界の工場中国の終わりの始まりといえる。




 

 

 

 

 

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(22.4.19) 中国の不動産バブルはどこまで拡大するか?

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(マッスルさん撮影 山崎編集)

 バブルは破裂するまでそれがバブルであることが分からない。日本の不動産バブルもアメリカのサブプライムローンバブルもそれが破裂するまでは誰もバブルとは思わなかった。
現在中国で発生している不動産バブルについても同じことが言える。

 中国の第一四半期10年1月~3月)のGDP伸び率が対前年比11.9%になったとの報道が一斉になされている。
中国の一人勝ち」と言う文字がおどり、確かにEUもアメリカも日本もかろうじてプラスの状況に比較すれば驚異的な数字だ。
世界は中国一国でもっているような報道だ。

 しかしその中身を見ると不動産投資を中心とする固定資産投資26%も伸び、特に都市部での不動産投資の伸び率は上海で約35%と突出している。
今回のGDP伸び率の主要部分が不動産投資であることが分かる。

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(マッスルさん撮影 山崎編集)

 もっとも中国のGDP統計は推定部分が多く、正確さが保証されていない。たとえば中国のGDPは翌月の半ばには第1次速報値が発表されるが、日本のGDPの発表はその1ヵ月後である。
日本ではそこまで時間をかけて推計しても、常に間違っているのだから中国の推計がかなり大雑把なものだと言うことが分かる。

注)元々GDPの計測には推計数字が使用されるが、中国の場合は国営企業や中国に進出している大企業、政府支出、金融機関貸出等の一部の資料で大胆に推計している。
また数字そのものが地区共産党の評価につながるため、常にバイアスがかかる傾向にある。
ただし、傾向値は分かるので、他の確実な貿易統計や外貨準備高の推移等とチェックすれば大体の動きはつかめる。

 GDP統計に疑問があるものの、中国で不動産バブルが発生していることは確かだ。その最大の原因は、中央銀行からの大量の資金供給で、10年の第一四半期にも2.5兆元約33兆円)規模の資金が市中に流れている。

注)09年1年間で市場に流れた資金は約135兆円規模と言われている。

 この数字は09年第一四半期の4.6兆元60兆円)よりははるかに少ないが、日本の日銀が行っている金融緩和が約半年20兆円だから、それをはるかに上回っている。
日本と中国のGDPはほぼ同じなので、この金融緩和策はジャブジャブの緩和と言っていい。
何でもいいから金を借りろ。好き勝手につかっていい

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(マッスルさん撮影 山崎編集)

 問題はこうした資金が開発ディベロパー等に流れ、たとえばこの資金を元に上海では地区政府から土地の使用権を購入し、マンション建設が盛んに行われている。

注)上海中心から約20kmの場所にある、新紅湾城では中建地産と言うディベロパーが約11haの土地の使用権を購入し、そこにマンションを建設しようとしている。
そのマンション価格は1㎡あたり68万円と、日本並みの価格(
都心部90万、都下は50万程度だからその中間の価格)になると推測されている。

 こうしたマンション建設が果たしてバブルなのか実需なのかと言うことになるが、当然のことに中国当局は実需と主張し、海外の投資家はバブルと怪しんでいる。

 中国ではかつての日本の様に住宅事情がよくないことは確かなので、実需部分もあるが、相当部分はバブルと言うのが実態だろう。
なにしろ上海では市民の平均年収の約60倍だと言うのだから、投機目的以外の購入は不可能だ。

注)日本では住宅資金は年収の6倍程度が適切とされ、多くても10倍程度だったのと比べるとべらぼうだ

 一体この状態はいつまで続くのだろうか。
この中国の不動産バブルがはじけるのは中国政府が金融機関を通しての資金供給を絞ったときである。日本でもバブル真っ最中に政府や日銀が土地資金の規正に乗り出し、窓口指導を行うようになってから土地バブルが崩壊した。

 現在中国の中央銀行が土地資金融資に消極的になっているが、それでも市中には今までばら撒いた資金が豊富に滞留し、また中央銀行の引締めも本気ではない。
バブル崩壊よりも景気後退を恐れているからだ
従って当面はまだバブルがはじけることはないと見てよさそうだが、ユーフォリアはいつか終わることだけは確かだ。

 

 

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(22.3.9) 地上げ天国の中国 中国の光と影

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 「親の心子知らず」とはこのことを言うのだろう。温家宝首相全人代で「積み残された(都市と農村の)格差是正」を訴えている足元で、黒い頭のねずみが徘徊している。 
中国はどうやら地上げ天国で、黒い頭のねずみのおかげで都市と農村の格差はますます拡大しそうだ。

注)都市と農村の所得格差は04年には2.5倍程度だったが、09年には3倍を超えてしまった。

 毎日新聞3月5日に報道した「地上げ、腐敗、苦悩の中国」という記事はとても興味深い。

 中国の大都市部の地上げの実態が、かつて日本でもバブル期に行われた地上げとまったく瓜二つであり、違いといえば日本がもっぱら金で有無を言わせず地上げしたのに対し、中国は公権力共産党幹部)と国営企業や同族企業がタッグを組んで行っていることぐらいだ。

 記事によると北京市郊外にある芸術区アメリカのソーホーのような場所らしい)に住む芸術家劉さんら6名が、マスクと黒服に身を固めたヤクザ19名に袋叩きにされたのが2月22日のことだそうだ。

 この場所に劉さんは350平米の住宅兼アトリエを借りて住んでいたのだが、突然地元幹部の弟から立ち退きを要求された。
中国では土地は国家のものだから、個人はそれを賃借することしかできない。

注)中国では同族間のつながりが強く、権力者の周りにはそれを利用して私腹を肥やす同族がたむろしている。

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 地元幹部の弟が「土地利用計画が変更になったので、賃貸借契約は無効だ」と主張し、劉さんがこれに反対すると水道、電気、暖房をたたれ、それでも退去しなかったため、ヤクザを使って追い出しにかかったのだそうだ。

 この場所は北京市朝陽区政府が昨年9月に、約26万平米の「土地備蓄」に当てると発表し、約17万人の住民に立ち退きを迫っている場所の一部だという。

注)中国の地上げの方法はこのように公権力が有無を言わせず行うところが日本と違う

 現在中国では財政・金融を総動員した景気対策を実施している。
財政政策はもっぱら公共投資に向けられ、また金融政策は国営企業や同族企業に対する融資の押し付けになっていた。
政府の指導です。何でもいいから資金を借りてください」そんな感じだった。

 公共投資はその前提に土地の収用が必要になるのはどこも同じで、多くの場所で住民が土地を追い出されているが、一方国有企業や同族企業に振り向けられた資金は設備投資に回らず、もっぱら大都市周辺の不動産投資に向けられている。

注)なお中国政府はバブルを懸念し最近引締めに転じたが、今まで貸し与えた資金が市場に大量に滞留して引締めの効果がない。

 これはバブル期の日本を思い出してみれば誰でも納得するはずだが、当時はまともに業務拡大を図るのは愚かな経営者で、不動産投資としてゴルフ場や別荘地の開発をおこない、株式で儲けるのが有能な経営者と思われていた。

 中国でもまったくバブル期の日本と同様の現象が発生しているが、土地が国有のため地方政府のほうが住民より強い立場にある。
なにしろ共産党三権司法、行政、議会)を束ねており、かつ警察を掌握しているのでやりたい放題だ。

今回の事例では警察がヤクザ19名を逮捕したが、この場所が北京政府のお膝元で温家宝首相の目に留まる場所だったからで、他の地方では警察もぐるになって住民追い出しを行っている。

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 中国では瞬く間に大都市が建設され、高速道路も新幹線も空港も思いのままに建設でき大前研一氏などは手放しで賞賛している(大前研一氏の経済観
しかし実態は公権力を握る地方幹部と資金面で潤沢な国営企業や同族企業が結託して甘い汁を吸い続けているだけだ。

 思い余って地方の住民が北京に出てきて直訴しようとしても、江戸時代の日本と同じで直訴はご法度で、たちまちのうちに警察官に蹴散らされてしまう。

 北京政府としても腐敗幹部を追放したいが、その腐敗こそが中国躍進の原動力でもあるので、きれいごとだけでは済まされない。
限度を越した腐敗は一罰百戒の意味で公開の場で弾劾されるものの、北京政府自身も腐敗の温床なのだから、あまりに追求すると天に向かってつばすることになる。

注)共産党組織は利権であり、好き勝手に懐を肥やせる。これが中国躍進の一つの側面だ。

 しかし温家宝首相も頭が痛いだろう。
腐敗が進みすぎると農民が反乱を起こし、腐敗がないと躍進ができない。
中国と腐敗は王朝の昔から切っても切れない縁があり、「優秀な官僚とは適当に腐敗した官僚で「賄賂を受け取らない官僚は悪官僚」なのが中国の伝統だ。
だから現在の胡錦濤王朝もそれに習っているだけに過ぎないともいえる。

 こうして温家宝首相がいくら全人代で格差是正を訴えても、都市と農村間の格差はますます広がり、中国の光と影は増幅される。

注)中国人の性質を最も理解していたのは毛沢東だった。中国人はすぐに走資派(金儲け)に走るのでそうならないように文化大革命で根絶やしにしようとした。しかしその努力もむなしく鄧小平の指導で走資派の中国が開花したと言うわけだ。



 

 

 

 

 

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(21.12.1) サイボーグ経済はどこまで持つか 中国経済の行方

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 Voice12月号2010年の中国経済の特集に、みずほ証券チーフマーケットエコノミストの上野泰也氏「サイボーグ経済」崩壊の始まり』という論文を掲載しており、実に興味深く読むことができた。

 上野氏の論文を読んで、今まで中国経済について私が記してきたことと非常によく似た認識を上野氏がしていることが分かった。
上野氏の論述を私の言葉で書くと以下のようになる。

注)これは上野氏の論文の注釈ではないので、興味のある方は直接上野氏の論文を読んでください。

 上野氏の分析では中国は人造人間サイボーグと同じであり、ちょうどオリンピックの100mで優勝し、その後金メダルを剥奪されたベン・ジョンソンのようなものだとみなしている。
思いっきり筋肉増強剤で強化しているが、薬がなくなればただの人に過ぎないという訳だ。

 中国経済については表面的な数字は華々しい。また日本の輸出産業が中国経済の回復に伴い立ち直ってきたのは事実だから、それなりに中国経済が好調なのは事実である。

 だが、中国政府が発表するGDPの伸び率や失業率統計等マクロ数字は、ほとんどが政治的に粉飾されており、中南海の政策担当者でさえ実態をつかめない。
おもいっきり財政と金融を緩和したので、国内の公共投資と不動産投資、株式市場が好調なのは分かっているが、はたして中国のGDPがどの程度のものかさっぱり分からない」これが本音だ。

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 上野氏によると中国経済の本質的課題は以下のように整理される。

① 中国の社会保障制度が不備のため貯蓄率が高く、消費が伸びない(個人消費の比率は35%前後で日本の60%程度、アメリカの70%程度に比較して極端に低く、消費に頼ることができない)。
② 沿岸部の外資系企業はアメリカ経済の不調のため、輸出が停滞している(
輸出は対前年比▲20%程度が続いている)。
③ そのため、4兆元(54兆円)の財政支出による公共投資
約9兆元(約115兆円)の金融緩和による不動産投資と株式投資によって支えられており、この結果バブルと言ってよいほどの状況が出現している。

 なにしろ中国の2009年1月~8月までの都市部固定資産投資(主として不動産投資)は前年同期比+33%というのだからすさまじい。日本のバブル期以上だ。

 銀行は政府の指導によってジャブジャブの資金を、主として国有企業に割り当てており、当初予定の5兆元約70兆円)をはるかに越えて、このままいくと10兆元約135兆円)規模にまで膨らみそうだ。

 割り当てられた企業は(一部は設備投資に回すが輸出や国内消費がのびなやんでいるため)仕方なく不動産投資や株式投資にこの資金を投入したので、不動産も株価も目いっぱい上昇してしまい、日本の80年代後半と同じようになってきた。
「お願いします。何でもいいから資金を借りてください。無担保でも結構です」長銀や日債銀が倒産したのと同じパターンである。

 こうしたジャブジャブの資金緩和は、景気が回復すれば中止しなければならない。もっとも急激な引き締めは、景気を急停車させ、不動産関連融資の焦げ付きを発生させるので、そのタイミングは実に難しい。

 統計数字を確認しながら、このあたりでソフトランディングを図るべきなのだが、悲しいことに中国にはまともな統計がなく実態を把握するのは直感しかない。

 正確なのは北京市等の不動産価格の推移や、香港や上海の上場されている株価、それと輸出入統計やアメリカ国債の保有残高等、ミクロ数字か外国に比較できる数字があるものだけだ
これだけの数字で経済運営を行っているのは、レーダーなくして運行している船と同じだが、それにしても中国経済官僚の力量は世界一だ」世界が驚嘆している。

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 中国経済は確かに暴走しているが、80年代の日本のバブルが崩壊したように、中国バブルもいつかは崩壊する。
その時はいつだろうか?」

 中国は今が盛りだ。かつての日本がジャパン アズ NO1といわれた時がまさに分水嶺だったように、中国とアメリカの2強が世界を取り仕切るといわれている今が、分水嶺になる可能性が高い。

 中国がインフレを恐れ、国内経済の行き過ぎを修正するために引き締めに転じれば、不動産価格も株価もたちまちのうちに低下するのは日本の経験が教えている。

 日本には大前健一氏のように無条件に中国経済を賛美する人が多いが、上野泰也氏はサイボーグは筋肉増強剤の薬が切れた時がおしまいだという。
10年まで中国経済は持つだろうか。10年度も薬が切れなければ持つが、いつかは限界が来ることだけは確かだ。


今日のYou Tubeはマッスルさんが撮影した飯豊山の花です。
http://www.youtube.com/watch?v=eZimS1L0mck

 
 

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(21.9.10) 中国経済の奇怪な法則 経済成長率は忠誠度

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 マーフィーの法則というのをご存知だろうか。

マーフィーの法則」という名は、オハイオ州の米軍基地内のに勤務していたのマーフィー大尉の名前を採ったとされ、その逸話は以下のようなものである。

 マーフィー大尉は、トラブルを起こした装置を調べて誰かが間違ったセッティングをしていた事を発見した。ここで彼の言った台詞 "If there is any way to do it wrong, he will." 「失敗する方法があれば、誰かはその方法でやるがこの「法則」の土台となったものだそうだ。

 予測できる失敗は必ず起こるとか人間の深層心理にあることは必ず実現するというぐらいの意味らしい。

 このマーフィー大尉の法則にもう一つ、中国政府の奇怪な法則を付け加えることにした。
経済成長率は地区共産党員の忠誠度をあらわす」という法則だ。
序列順位を少しでも上げたい地区党員は思いっきり経済成長率を上げて報告すると言う意味である。

 8月29日付けの中国系香港紙・大公報に興味深い記事が載った。
南京市の人民代表大会で「今年上半期の南京市の経済成長率は前年同期比10.2%」とだと市政府が発表したが、石油化学関連企業を経営する常務委員から「でたらめだ」と批判を浴びたという。

南京の経済は電力を大量に消費する重化学工業が中心だ。上半期の工業用電力が1.7%しか増えてないのに、GDP伸び率が10.2%というのは議論の余地がある」とその常務委員は述べたそうだ。

 実は中国の統計がいかさまではないかとの指摘は中国以外の専門家からはたびたび指摘されている。
よくある指摘は石油使用量とGDPとの関係からの推定で、従来の石油使用量とGDPの関係を調べてそこに整合性をもとめ、現在発表されている統計数字の人的操作を疑うということが多かった。

 今回は外国の研究者でなく、当の中国の専門家からの指摘だが、この議員はおそらく地方幹部の怒りを買って、常務委員の肩書きを剥奪されるだろう。

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 実は中国が発表するマクロ数字はほとんどが政治的プロパガンダとして発表され、中南海の経済担当者でさえ、本当の経済実績を把握することができない。

 特にGDPは曲者で、これは国家的な公表数字だから特に重要視され、たとえば南京市GDPが中国政府が目標とする8%を下回るようなことがあれば、地区委員会の責任問題になりかねない。

GDPによって出世も降格も決まるとなると、GDP経済学の数字ではなく心理学の数字になる。
なにしろ地区担当者は目標達成の責任者であるとともに、統計数字の報告の責任者でもあるのだ。

統計担当者工業用電力が1.7%の増加にとどまり、とても政府の言う8%の成長率は達成できません
地区委員会同志君は何か勘違いしているのではないか。かつてGDP成長率について我が委員会が正確な数字を挙げたことが一度でもあったか。北京政府が8%と言ったら、何があろうとも8%なのだ

統計担当者最近は外国だけでなく、我が中国の研究者も南京市が発表する数字に疑問を呈しています。特に電力需要との関連でその数字は政治的粉飾ではないかと言われました
地区委員会同志、警察と監獄は何のためにあるか知っているかね。そうした流言飛語を取り締まるためだ。安心してGDPの数字を10.2%と報告したまえ

統計担当者しかしそれでは統計数字の信憑性が損なわれます
地区委員会君はどうやらマーフィーの法則を知らないようだね。我が中国においてはGDPの成長率は中南海に対する忠誠度をあらわしている。
わが忠誠なる南京市企業が電力の使用効率を5倍にあげ国家目標を達成したのだ。
この数字を見て、胡 錦濤主席もお喜びなられるだろう


 実際問題として、すべての数字がでっち上げと言うのは言いすぎだが、下部組織からあがってくる数字はそのたびに政治的脚色が加えられる。
何しろ数字を報告する人はすべて共産党組織の幹部で出世主義者だ。

 たとえば鉄鋼生産量対前年比10%アップするように指令が来たとする。生産現場で実際の数字が5%アップだとしたら、現場担当責任者の首が飛ぶ。
仕方なく現場担当責任者はたとえば前年度の不良在庫を当年度の生産額に加えて9%アップだとの報告書をでっち上げる。
大限の努力をしましたが、惜しくも9%のUPにとどまりました

 この数字を見た地区担当者は次のように考える。
これでは目標達成にならない。どうせ中南海は数字の裏づけなど取らないのだから10%UPと報告しても分かるまい。いや思い切って12%にしよう

 この数字を見た中南海統計数字担当者は次のように考える。
全国から上がってくる数字はすべて10%以上だ。胡 錦濤主席の指示は実に偉大だ。目標は達成された。わが国は大躍進だ

 かくして「経済成長率は地区共産党員の忠誠度」というマーフィーの法則が証明され、めでたく党中央の目標は達成される。

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 このようにして中国のマクロ数字はほとんどが政治的脚色が施されているため、まともに信じることができない。
信じられる数字は外国に対応する数字がある場合で、たとえば貿易統計は中国の輸出は外国の輸入となるので、確認が取れる。
また、アメリカ国債の残高はアメリカの財務省が発表しているので裏づけが取れる。

 さらに各都市レベルのミクロ数字は研究者が実際に確認できるので嘘が少ない。
しかしGDPのような外国にその数字の裏づけがないような数字で、実際に何段階にも渡って操作されている数字はまったく信用ならない。
中国当局でさえその数字の信憑性が分からないと言うのは本当だ。

 かくして09年度のGDPはめでたく8%を上回る成長を遂げることになるが、それを本気で信じるのはおろかだ。


 

 

 

 


 

 

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(21.5.27) 中国大学生の就職問題  大学バブルのゆくえ

250pxpeople27s_republic_of_china__2   昨日(25日)、NHKのクローズアップ現代で中国の大学生の就職問題が取り上げられていた。
それによると本年度の大学卒業者は約530万人で、そのうち約200万人が就職できずに、いわゆる就職浪人になると言う。
比率にしたら約4割だから、日本の比ではない。

 中国では中国政府の方針で高等教育の充実を図ることにしたところ、2000年ごろから大量に大学が粗製乱造され、それまで100万人程度だった卒業生が今年は530万人約5倍に増えたのだと言う。

 このため大学バブルが発生し、そこに世界的な経済不況が押し寄せたため、レベルが低いとみなされた大学の卒業生は就職できなくなったようだ。

 番組では上海の華東理工大学の大学生にスポットを当てて、約半年に及ぶ就職活動の模様をレポートしていた。
番組でははっきり言わなかったが、この大学はエリート大学ではないらしく、「貴方のような専門性のレベルでは、会社の要望に答えられない」と企業の就職担当者から冷たくあしらわれていた。
就職難のため、企業は優秀な大学の学生しか採用しないらしい。

 この番組に出てきた王さんと言う学生は、福建省の片田舎から出てきたのだが、中国の農村地帯では子どもを大学に行かせて、その子供を大企業に就職させることが貧困から抜け出す唯一の方策なのだそうだ。
この家族は年収25万円で、借金をして息子を大学に行かせていた。

 就職した子供は家族への仕送りで恩を返すと言う仕組みで、社会福祉がない中国では家族福祉が唯一の老後対策だと言う。

 王さんは家族への仕送りと、弟の大学の学費の面倒を見るため、4万5千円以下では就職しないのだと言っていた。
しかし王さんは金融機関に就職しようと努力したものの、金融バブルがはじけた後だけにおいそれとは就職できず、就職浪人になってしまったと番組は伝えていた。

 中国の大学生が就職難であることは知っていたが、実際に映像で見るとその様はすさまじい。
中国では中央が指令を出すと、各地方の共産党組織が競争で突っ走るため、常に中央の予想をはるかに越えてしまう結果になる。
大学の数も中央の予想の約2倍になったのだという。

 紅衛兵運動改革解放もすべて行き過ぎたり加熱してしまうのはそのせいで、何か中国という国柄のような気がする。
もっともこの程度で驚いていては、中国の指導者にはなれないらしく、こうした事態に冷静を装って(実際はテンヤワンヤの大騒ぎをして)大人として対処するのが中国式政治らしい。

 中国の専門家という人が「まず既成事実を作り、問題があれば後で解決するのが中国式」だといっていたが、世界最大の人口を持つ国家の運営はことのほか難しいようだ。

 中国政府としては、地方の道路の建設やダムを作る公共工事を拡大し、また地方公務員として一時的に就職させるように指導しているが(このあたりは日本とそっくりだ)、さすがに200万人の就職浪人を吸収するのは至難の業らしい。

 

 

 

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(21.1.17) 中国経済の現実 GDPはどこに消えるか

125pxflag_of_the_people27s_republic  実に興味深い論文が1月16日の毎日新聞に掲載された。「試練の2009年を迎えた中国」と言う特集の寄稿者の一人上海交通大学国際公共事務学院長の胡偉氏の論文である。

 この論文の興味深さは、政治的プロパガンダ学者としての良心がないまぜになって一つの論文の中に記載されていることにある。ほとんど水と油と言っていい。

 最初と最後は中国政府のプロパガンダそのものだ。
中国政府は今年の国内総生産(GDP)伸び率について8%の見通しを示した。・・・・・・世界経済は一体化し、中国だけでは発展できない。しかし中国は他国に比べ、世界での金融依存度は高くない。
さらに政府は2010末までに総額4兆元(53兆円)規模の景気刺激策を発表し、内需主導の経済成長方針を示した

また「指導部の基盤は強固なものとなり、経済情勢を十分制御できるようになった。景気刺激策で8%成長を維持するに違いない

 これは中国政府発表のプロパガンダそのものだが、自身が中国政治学会常務理事という高い地位を得ている以上、政府方針を批判できないのは仕方がない。

 しかし胡偉氏は「なぜ8%の成長が必要か」の説明で従来の政府見解を大きく逸脱して学者としての良心をのぞかせた。

中国では腐敗や失策、公費の無駄遣いなどによって経済損失が生じる。正確な損失額の算出は困難だが、GDPの7~8%と言われる。
このためGDP伸び率が8%を下回れば、庶民は成長を実感できず、マイナス成長と感じるかもしれない

 信じられるだろうか。この説明は従来の中国政府の説明とはまったく異なる。
中国政府の公式発表は「毎年1000万人近くの新規労働者が生まれる。この人たちの雇用を確保するために最低でも8%の成長が必要だ」と言うものだ。

そうだったのか!!」私は思わず声に出してしまった。
胡偉氏の説明によって今までどうしても分からなかったある疑問が解けたからだ。
それは「中国は毎年10%以上の成長をしているのに、新規大卒者が就職できずその就職率が最近の調査で70%程度になっているのはなぜか」という疑問だった。
2008.4.15 NHKの今日の世界で『昨年大学を卒業した学生の数は495万人。政府の研究機関である中国社会科学院はこのうちおよそ30%にあたる144万人が就職先を見つけることができなかった』と放送している

 日本の過去の事例を知っているものにとって、この中国の現実はミステリー以外の何者でもない。私が大学を卒業したのは昭和45年であったが、当時は高度成長の真っ盛りだった。
労働市場は完全な売り手市場で、私自身4社からの内定を得ていた。さらにいくつでも内定を得られそうだったが、そうしなかったのは断るのが大変なことに気づいたからだ。

高度成長期には労働市場は売り手市場になる。しかし中国は買い手市場で大卒者は就職がひどく困難だ。なぜか?

この答えは「GDPの成長の約8%余りを政府高官や企業のトップが懐に入れてしまい、もし成長率が10%だとすると、1000万の新規労働者に許されたパイは2%に過ぎないから」と言うことになる。

なるほど、これでは就職が困難なはずだ」ひどく納得してしまった。
中国国内での富の偏在も、高度成長下における就職難も中国の汚職体質のしからしむる所と言うのが胡偉氏の説明となる。

 本来なら胡偉氏は「そうした汚職体質を中国政府が厳しく取り締まって、より低い成長率でも問題のない社会にすべきだ」と言うべきだが、そう言わなかったのは中国の内情に精通しすぎているからだろう。

 胡偉氏は実に誠実な学者だ。プロパガンダの鎧に身を包みながら、中国の内実を教えてくれた。前後を固めても中身は真実を伝えようとする。今回の胡偉氏の論文を見てつくづくその感を深くした。

 

 

 

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(20.8.29) 宴の後の中国経済

 北京オリンピックが終わった。さて宴の後の中国経はどうなるのだろうか。
中国はこのオリンピックのために競技場関連の建設に約4兆円運営費約2兆円合計約6兆円の費用をかけた。これがいわば直接経費でこの額は他のオリンピックとさほど変わらない。

 違うのは道路や地下鉄建設等の間接経費で、約40兆円の巨費を投じている。アテネでは約12兆円シドニーでは約10兆円の規模だったからインフラ整備に従来のオリンピック開催国に比較し3倍~4倍の巨費をかけたことになる。

 このような巨費を投ずる理由として、オリンピックの経済効果が云々され、相応の経済効果があると説明される。
しかしこれは全くのでっちあげで、オリンピックを招致したいための国内向けアナウンスメントに過ぎない。
少なくとも直接経費については経済効果は全くない。

 これは少し考えてみれば分かるので、世界各地から1万人以上のアスリートを集めて開催したオリンピック競技場が、その後まともに使用されると考えるほうがおかしい。
競技が終わればどこの競技場も閑古鳥が鳴いてしまい、今度は競技場の維持管理に四苦八苦する。
維持管理費は意外とかかるもので投入した費用の2~3割程度の金額が毎年必要になる。

 そうした事例はいたるところにあり、ワールドカップ開催後のサッカー場や、長野オリンピック開催後のエムウェーブの維持に地方自治体は悲鳴をあげている。

 だからオリンピックそのものは壮大なお祭りであり、楽しければ良しとしなければならない無駄使いだと思えばよい。
祭りに金のことを言うのは野暮よ」江戸っ子の台詞だ。

 祭りが終わればしばらく茶漬けだけで暮らさなければならないのは、個人も国家も同じだ。
あの時は楽しかった」それだけのことなのだ。

 問題は6兆円の直接経費は全くの無駄金として、約40兆円にのぼる間接経費が中国経済の役にたつかだ。
日本では東京オリンピックにあわせて作った首都高速道路新幹線がその後の日本経済を支えたのは確かだ。

 中国もオリンピックに合わせて、空港・高速道路・地下鉄・新幹線等を整備した。中国が当時の日本と同じであれば経済効果抜群だが、明らかに経済環境は逆風だ。
アメリカ経済の減速は確実で、輸出に頼ってきた中国経済も成長率が落ちてきている。
中国政府は輸出の減少分を国内消費の拡大で補うつもりだが、お金があるのは政府と一部富裕層だけで、多くの中国人は貧乏人だ。

 だから90年代の日本と同じで、政府は公共投資を拡大して需要の創出を図ろうとしているが、四川大地震の復興特需も上海万博も一時的なカンフル剤以上の効果はないだろう。
不動産価格は、これも日本と同じで下がり続けるのは確実だ。

 インフレは激しく賃金は高騰して、もはや労働集約的な繊維や雑貨は中国から撤退している。
就職場所は狭められ、失業者は増大している。
何より香港や上海の株価指数がピーク時の半分以下になってしまった。

 先を見ることに鋭敏な投資家は中国経済はピークアウトしたと見て資金を引き上げている。
中国の時代は終わった」投資家のセンスだ。

 だからオリンピックのために無理して作ったインフラもその効果を十分挙げることは難しそうだ。
中国経済はオリンピックで浮かれていたが、宴が終わればこれから長い停滞局面に入るのはいたし方がない。

(22.4.18追加)この分析は完全に間違ってしまった。中国政府の行った財政・金融政策はかつての日本の高度成長時代のようによく効いて、世界経済の中で一人勝ちの様相を呈している。
現在不動産価格はバブルと言ってよく、また株式も持ち直した。

現在の中国経済の分析で最も大事なことは、この状態が日本のバブル崩壊と同じようになるのか、それともまだ成長局面なのでバブルを吸収してさらに躍進するのかの判断にかかっている。
現状ではまだしばらくは成長が続きそうだと見るほうが妥当な判断のようだ。

 

 

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