(22.10.2) 為替介入は失敗する。 早くも限界が見えてきたドル買い・円売り
先月15日に政府・日銀が行ったドル買い・円売りの為替介入は早くもデッドロックに乗り上げ始めた。
当初2兆円規模で行った為替介入で、82円台だったドルが85円台になり、「どうだ、介入は成功したろう」と胸を張っていたが、このところ再び円高が進み、9月30日には83円台に戻っている。
政府・日銀はアメリカも西欧も協調して為替介入をしてくれないので、日本だけで孤軍奮闘しているが、いづれ日本は失敗すると市場から見透かされている。
「さあ、83円台になったぞ。もう一度介入するかい?」市場がささやく。
なにしろ市場には各国が行った金融緩和策による資金があふれかえっている。
アメリカのFRBが約70兆円、ヨーロッパのECBが約80兆円、そうして当の日銀が新型オペレーションと称して約30兆円を市場に放出しているのだから、ヘッジファンドはほぼ無限大の資金を持っているようなものだ。
さらにFRBは一層の金融緩和策を検討しているといっているのだから、日銀がどんなに努力しても資金不足だ。
戦う相手に資金援助しているのだから、勝てるはずはない。
政府・日銀は円安にしないと日本が崩壊するような大騒ぎだが、しかし冷静になって考えてみると、なぜ円高になって悪いのかさっぱり分からない。
円高になると地方の輸出企業の経営者が「これ以上の円高では企業経営が成り立たない」と言ったり、大手自動車メーカーが「1円円高になれば100億円の利益が喪失する」言ったりしており、それはまったくその通りなのだが、一方輸入業者は「1円円高になれば100億円の利益が発生する」のも事実なのだから、輸出産業のみにスポットを当てるのは片手落ちだ。
それに何より「日本が豊かになって何が悪い」のだろうかと思ってしまう。
GDPが中国に抜かれたのも、円高になれば抜き返せるし、一人当たりのGDPもアメリカを再び抜くことができる。
海外の優良な企業は円高のおかげで買収が可能になるし、小金持ちの人は海外に別荘を構えることもできる。
外国旅行をすれば「なぜこんなに自分は金持ちなのだろうか」と疑問に思うほどだ。
鉄鉱石や石油や石炭や、中国が輸出規制をしているレアアースの資源価格が高騰しているが、円高が進めがそうした悩みも解決する。
資源の購入に苦しむのは通貨の価値が低下している国だけで、日本のように価値が上昇している国は「だから、なんなのさ」という感覚になる。
アメリカの共和党政権は「ドル高こそはアメリカの利益」と言ってはばからなかったが、なぜ日本では「円高こそは日本の利益」という政党がいないのか不思議だ。
アメリカがドルの増刷を繰り返すのは、リーマンショック以降の金融機関が、シティーグループを見ても分かるように、本当の意味で収益が回復していないからだ。
サブプライム商品の時価評価をやめて、不良資産を塩漬けにすることで表面的には経営改善が図れたと発表しているだけである。
一方日本の金融機関は竹中平蔵氏が徹底的な自己査定を行わせたおかげで、アメリカやヨーロッパの金融機関のように資産が悪化していない。
ヘッジファンドが日本を信頼して円買いするのはその健全性ゆえといえる。
客観的に見れば円高は日本にとってチャンスだ。
なにしろ世界の資金が日本に集まるのだから、それを利用して世界の優良企業を買収して、マイクロソフトやアップルやグーグルのような企業になれる千載一遇のチャンスといえる。
いつまでも「円高で大変だ」なんていっているようでは、このせっかくの機会をみすみす逃すだけだ。
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