(22.10.2) 為替介入は失敗する。 早くも限界が見えてきたドル買い・円売り 

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 先月15日に政府・日銀が行ったドル買い・円売りの為替介入は早くもデッドロックに乗り上げ始めた。
当初2兆円規模で行った為替介入で、82円台だったドルが85円台になり、「どうだ、介入は成功したろう」と胸を張っていたが、このところ再び円高が進み、9月30日には83円台に戻っている。

 政府・日銀はアメリカも西欧も協調して為替介入をしてくれないので、日本だけで孤軍奮闘しているが、いづれ日本は失敗すると市場から見透かされている。
さあ、83円台になったぞ。もう一度介入するかい?」市場がささやく。

 なにしろ市場には各国が行った金融緩和策による資金があふれかえっている。
アメリカのFRB約70兆円、ヨーロッパのECB約80兆円、そうして当の日銀が新型オペレーションと称して約30兆円を市場に放出しているのだから、ヘッジファンドはほぼ無限大の資金を持っているようなものだ

 さらにFRBは一層の金融緩和策を検討しているといっているのだから、日銀がどんなに努力しても資金不足だ。
戦う相手に資金援助しているのだから、勝てるはずはない。

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 政府・日銀は円安にしないと日本が崩壊するような大騒ぎだが、しかし冷静になって考えてみると、なぜ円高になって悪いのかさっぱり分からない。

 円高になると地方の輸出企業の経営者が「これ以上の円高では企業経営が成り立たない」と言ったり、大手自動車メーカーが「1円円高になれば100億円の利益が喪失する」言ったりしており、それはまったくその通りなのだが、一方輸入業者は「1円円高になれば100億円の利益が発生する」のも事実なのだから、輸出産業のみにスポットを当てるのは片手落ちだ。

 それに何より「日本が豊かになって何が悪い」のだろうかと思ってしまう。
GDPが中国に抜かれたのも、円高になれば抜き返せるし、一人当たりのGDPもアメリカを再び抜くことができる。

 海外の優良な企業は円高のおかげで買収が可能になるし、小金持ちの人は海外に別荘を構えることもできる。
外国旅行をすれば「なぜこんなに自分は金持ちなのだろうか」と疑問に思うほどだ。

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 鉄鉱石や石油や石炭や、中国が輸出規制をしているレアアースの資源価格が高騰しているが、円高が進めがそうした悩みも解決する。
資源の購入に苦しむのは通貨の価値が低下している国だけで、日本のように価値が上昇している国は「だから、なんなのさ」という感覚になる。

 アメリカの共和党政権は「ドル高こそはアメリカの利益」と言ってはばからなかったが、なぜ日本では「円高こそは日本の利益」という政党がいないのか不思議だ。

 アメリカがドルの増刷を繰り返すのは、リーマンショック以降の金融機関が、シティーグループを見ても分かるように、本当の意味で収益が回復していないからだ。
サブプライム商品の時価評価をやめて、不良資産を塩漬けにすることで表面的には経営改善が図れたと発表しているだけである。

 一方日本の金融機関は竹中平蔵氏が徹底的な自己査定を行わせたおかげで、アメリカやヨーロッパの金融機関のように資産が悪化していない。
ヘッジファンドが日本を信頼して円買いするのはその健全性ゆえといえる。

 客観的に見れば円高は日本にとってチャンスだ。
なにしろ世界の資金が日本に集まるのだから、それを利用して世界の優良企業を買収して、マイクロソフトアップルグーグルのような企業になれる千載一遇のチャンスといえる。

 いつまでも「円高で大変だなんていっているようでは、このせっかくの機会をみすみす逃すだけだ。

 

 

 

 

 

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(22.9.17) 単独の為替介入は政府のパフォーマンス   円高は止まらない

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 菅総理が再三に渡って言及していた為替介入15日実施された。
市場は菅総理の介入発言は口先だけだと高をくくっていたので、さすがにびっくりして円は82円から85円まで円安が進み、当局は為替介入が成功したと胸を張っている。

 しかしこの為替介入が成功するかどうかは、これからの為替相場の動向にかかっており、1日だけの勝負で勝敗が決まるわけではない。
15日は長い戦いの始まりに過ぎず、単独介入と言う援軍なき戦いを日本一国でいつまで続けられるかはかなり疑問だ。

 今回日本の通貨当局はアメリカやヨーロッパの通貨当局に「最低限ネガティブなことはいわないでほしい」と頼むのがやっとで、とても協調介入などできる雰囲気でなかった。

注)なぜ円高・ドル安になるのかの本質的な理由はアメリカにあり「円高・株安は止まらない 若者は荒野を目指せ」に記載した。

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 アメリカもヨーロッパも現状のドル安、ユーロ安は輸出振興に好都合であり、財政政策によるてこ入れをこれ以上する余裕がないので、本音は円高こそ望むところで、日本の為替介入はとんでもないと思っている。

注)アメリカは中国に対し元安の是正を求めている最中で、日本の円安政策に対しても快く思っていない。

 これを端的に表現したのがグリーンスパン前議長で、アメリカの公聴会で「為替介入は効果がない。長期的・普遍的な効果は期待できない」と実にそっけなく述べている。

 今回の政府・日銀の為替介入の規模は約2兆円といわれ、これで3円あまりの円安を演出したのだから、確かにまずまずの成果とはいえる。

注)通常は1円円安に誘導するためには1兆円が必要と言われているので、今回は2兆円で3円の円安なので、効果的だったとの判断になる。

 なお為替介入をして調達したドルはそのまま持っていても金利がつかないので仕方なしにアメリカ国債を購入することになる。日本も中国(元安誘導のためドル買いをしている)もこうしてアメリカ国債が積みあがっていく。

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 しかし為替介入は一旦始めると止めたほうが負けのポーカーゲームになってしまい、後はどちらが資金を持っているかの勝負になる。
政府・日銀は為替介入に必要な資金を短期国債を発行して調達し、それでドル買いをするのだが、前回03年から04年にかけての単独の為替介入では約33兆円の資金を投入した。

 その結果は125円台の円が、110円程度の円高になっているのだから、どう見ても成功したとはいいがたい。
日本は輸出振興による不況脱出を図ろうとして、120円台の輸出企業にとって最適な為替相場の維持を図ろうとしたが、そうは問屋が卸さなかったというところだろう。

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 今回の円高は日本に原因があるのではなく、アメリカにその原因がある。約70兆円にも登る景気浮揚策を実施してもアメリカ経済は一向に上向かない。
FRBはさらに追加の金融緩和を行うと言っているが、これはさらにドルを増刷すると言っているのに等しい。
こりゃだめだ。ドルはどんどん低下する。相対的に真面目に管理された円を持っておくのがよさそうだ」市場はそう思っている。

注)今回のポーカーゲームの対戦相手はヘッジファンドで、アメリカ政府がジャブジャブの資金供給をしているのでかなり手ごわい。

 原因がアメリカにあるのにアメリカはさらに放漫経営をしようとしているのだから、円高・ドル安の流れは決定的だ。
さらにアメリカはドル安を容認しているのだから対応の仕様がない。

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 今回仕方なしに単独で為替介入を始めたが、前回と同様30兆円規模の為替介入を行っても、グリーンスパン前議長の言う様に円高の流れを止めることはできないだろう。
菅政権は「政府は何もしないで円高を放置して、景気を減速させた」と言われたくないので、パフォーマンスとして実施しているにすぎない。

 しかし冷静に考えてみれば、円高とは日本全体の価値が上がることで、黙っていても金持ちになることを意味する。
強い円は企業買収や海外の資産を安く購入できる絶好の機会であり、願ってもない好機だ。

 だから「円高で輸出企業は大変だ」というお決まりの悲鳴はもう止めて、積極的にこの機会を利用するのが、まともな経営者というものだ。


(別件)苅田郷で恒例の陶芸展が18日より開催されます。詳細は以下のとおりです。
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(22.8.25) アメリカが共食いを始めた なぜ円高が進むのか

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 このところの円高株価の低迷菅政権は悲鳴を上げ、日銀の白川総裁に「これは日銀が無策だからだ」と詰め寄っている。
円が94円になったのも、日経平均株価が9000円を割るのも、すべて日銀が2%程度のインフレターゲットを設けないからで、「何でもいいから資金を市中に注入してデフレを抑えろ」と命令し始めた。

注)日銀は昨年の12月以降、新型オペレーションと称して、金融機関に金利0.1%、期間3ヶ月の資金を20兆円規模で供給させられている。
それでも効果がないので、さらに不良資産を担保とした融資や国債の直接引受け等が取りざたされている。

 しかしこれは日銀に対する濡れ衣というもので、円高も株安もすべてアメリカ経済が行き詰まり共食いを始めたからであり、原因はアメリカにある。
そもそも高度に発展したアメリカのような資本主義社会が中国やインドのように発展するはずがない。
そのアメリカが1990年代以降GDPが成長したように見えたのは、日本とヨーロッパの資金を強奪してきたからである


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 順を追って説明しよう。

 日本のバブルがはじけたのは1990年の始めだが、アメリカは日本に対しアメリカ国債を購入させるだけでは収まらず、BIS規制で日本の金融機関を追い詰め、それまで世界最強と思われていた金融機関を二束三文で購入することに成功した。
このためその後の日本経済はまったく元気がなくなり、以降20年に及ぶ低迷をきたしている。

注)世界的規模の銀行だった長期信用銀行には約8兆円の政府資金が投入されたが、これをリップルウッドに約10億円で売却している。

 アメリカは日本からの資金をこれ以上強奪できないことが分かると、次はヨーロッパからの資金の強奪に切り替えた。
サブプライムローンをたっぷり含んだ証券を、ムーディーズのような格付機関と共謀して安全確実で高利回りの証券と称してヨーロッパに売りまくった。
アイスランドアイルランドがヨーロッパ各地から預金を集め、こうした証券に投資して、リーマンショックまではわが世の春を謳歌していたのがそれである

注)アメリカで組成された証券の約半数がヨーロッパに売られたと推定されており、現在のイギリス、スペイン、ギリシャ等の低迷はその毒があまりにきついからである。

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 こうしてアメリカは当初は日本を、ついでヨーロッパを餌食にして1990年以来の成長を遂げてきたのだが、とうとう餌食にする相手がいなくなってしまった。
草食動物がいなくなれば肉食動物も生きてはいけない。

注)中国が次のターゲットとなっており、アメリカの金融機関・証券会社・ヘッジファンドがさかんに中国に進出しているが、中国は統制経済なのでアメリカの金融機関が自由に活動することを許していない(自由化前の日本と同じ)。
自由化とはアメリカの金融機関が他国の富を強奪する手段である。


 強奪する相手がいなくなると、後は共食いしか残されてない。
アメリカがリーマンショック以降始めたのはこの共食いである。

 まず自動車産業の雄GMが倒産し、アメリカ政府は約4兆円の政府資金の投入を行ったが、GMはどう見ても自力での再建が不可能と思われた。

 そこでアメリカ政府とGMは、アメリカで最も品質が高く、高収益を上げていたアメリカトヨタをマットやブレーキに欠陥があるとの理不尽な理由で徹底的にたたくことにした。
トヨタの販売力が健在ならばGMの車は売れないからだ。
これがものの見事に成功しトヨタは大凋落し、一方GMは再上場が可能なところまで販売が復活した

 GMは政府の企業だから、4兆円の資金を回収する必要がオバマ政権にあり、そのために優良企業のアメリカトヨタを血祭りにあげた。22824_011

 次の共食いは政府とシティー・グループによるゴールドマン・サックスつぶしで、これもシティー・グループに対し約34兆円(4000億ドルの政府資金が導入されシティーは政府の金融機関になっているからだ。
34兆円の回収にはゴールドマン・サックスの足を引っ張るより手がない。トヨタ方式だ

 まず10年2月に突然ニューヨーク・タイムズが、「ゴールドマン・サックスがギリシャ政府に対し数千億円の融資を行っているのに、これを通常の融資ではなく空港税や宝くじの収益金を担保とした交換(スワップ)による取引として偽装している」とすっぱ抜いた。 

 融資ではなく交換にすればスワップ取引になり、それゆえギリシャ政府の財務報告には記載しないで済むというのがミソで、これがギリシャ政府とゴールドマン・サックスの密約になっていたというのである。

注)他の南欧諸国の融資もすべてこのようなスワップ形式をとっているが、スワップはデリバティブの一種で財務報告の対象外になっているのが普通。

 
続いて10年4月に、SEC(証券取引委員会)が、「ゴールドマン・サックスがサブプライムローンをたっぷり含んだ証券化商品の販売で、その危険性を顧客に告知せずに販売した」との詐欺罪の告発を検察庁に行った。
ゴールドマン・サックスはこの商品が将来大幅に値下がりすることを知っていたという理由である。
 

注)実際は大手ヘッジファンドが証券化商品を組成し、それをゴールドマン・サックスのネームバリューで販売したのだが、このヘッジファンドはこの商品が将来値下がりするものとして先物予約で売り注文を出していた。

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 このあたりまではすでによく知られている事実だが、最近出版された副島(そえじま)隆彦氏の「新たなる金融危機に向かう世界」を読んで驚いた。
シティー・グループによるゴールドマン・サックス追い落とし作戦の第三幕があり、それがあの5月6日の理由が分からないニューヨーク株式の乱高下だったというのである。
この時ニューヨーク株式市場では7分間の間に約1000ドル低下し、その後約650ドルの急激な戻し相場になった。

 この理由として当初シティーバンクのトレーダーの誤発注だとの説明がされたが、その後訂正され、原因は複合的で明確な原因は不明とされている。

 この原因を副島氏は、ゴールドマン・サックス超高速プログラム取引100分の3秒で取引注文が出せるという)の裏をかくさらに超高速プログラム取引をシティーバンクが開発し、先物取引でゴールドマン・サックスが無限ループに陥るように仕組んだと言うのである。

 そして株価が約1000ドル程度低下したところでシティーが大口の購入を行い、ゴールドマン・サックスに多額の損失を与えたと言う。
うぅーん、うなってしまった」有りそうなことだが、証拠は見つけるのは不可能だろう。

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 このようにしてアメリカ経済は外国から資金を強奪する相手がなくなったため、国内で政府系企業(実質的に政府が支援している企業)が政府と組んで、自立している優良企業を追い落として収益確保に走っており、まさに共食いの状況になっている。

 しかしこれではアメリカ経済全体としては成長することができない。
成長を偽装するためにはアメリカ政府が国債を発行して中国や日本に買い取らせるか、それができない場合はドルを印刷して市中にばら撒くしか方法がなくなった(これで名目のGNPは増加する)。
しかしそのため、市場ではドルへの信頼が急低下してドル安になっている。
アメリカの成長は終わった。後は衰退しかない」市場はそう判断し始めた。

 私が何度も言っている様に、経済も永遠に成長することはない。それでも成長しようとすればアメリカが今まで行ってきたように、日本やヨーロッパから資金を強奪するしかない。
しかしそれも限界があり、最後は国内の共食いとなって、アメリカ全体としては成長が止まる

 ドル安になるのはアメリカが成長できなくなっているのに、それでも成長しようとFRBが不必要に資金を供給(ドル札を印刷している)して、インフレ政策をとっているからである。
日本で日銀に同じような政策を取らせても、インフレだけ亢進し名目GDPがあがるだけになるのだから無駄というものだ。

 経済成長には限界があるという認識が、先進国には今一番必要だと私は思っている。

注)人間でも二十歳を過ぎると身長が止まるが、それでも成長させようとして過食すればメタボになるだけだ。
先進国諸国はこのメタボを成長だと称している。

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(22.3.21) 資産デフレはどこまで続くか  土地公示価格の低迷

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 公示地価2年連続下落の文字が新聞紙面に躍っている。
06年~07年にかけてここ日本でもミニバブルが発生して公示価格が上昇していたから、09年(正確には10年1月1日現在は確かに2年連続の低下だが、バブル最盛期の91年に比較すると、住宅地で約50%、商業地で約70%低下している

 ピーク時比較、住宅地で半分、商業地で3分の1になったのだから、(ミニバブルを無視すれば地価はここ20年余り低下してきたと言えそうだ。
日本の地価については2つの問題が存在する。一つはなぜこんなに地価が低下したのかという問題と、もう一つは今後いつまで地価の低下が進むのかという問題だ。

 私の父が不動産関係の仕事をしていたのはバブル真っ最中の頃で、当時は「土地神話」があり、父は顧客に「土地は必要な2倍を購入しなさい。家を建てるときはその半分を売って建てればお釣りが来ますよ」と勧誘していたし、実際にそうなっていた。

次郎、持つなら絶対に土地だ。土地は必ず上がる」と父は私に口癖のように言っていたが、私がこの教えを実行する頃はバブルがはじけ、価格は低下の一途をたどるようになった。
土地も商品である以上需要と供給で決まるという経済学の教科書どおりの動きだが、今度は私は息子に「土地は必ず下がる。不動産に手を出すな」という「土地神話」教えることになった。

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 客観的に見て、日本の土地は住宅地商業地も今後値上がりが期待できない。
少なくとも実需という面ではまったく期待ができず、06年~07年にかけてあったような世界的な資産バブルの余波が日本に及んだときのみ、価格が上昇すると思われる。

 住宅地価格が上昇しないのは、日本の人口が低下し始め老人人口が増大しているからである。人口が減れば土地価格が低下するのは当たり前で、日本の過疎地域は早くからそうなっているし、それが全国規模で発生したと思えばいい。

 また老人が増えるということはすでに住宅手当が終わった層が増えるということで、そうした層は新たに土地手当てをしようとはしない。
また子供が少ないということは将来親の不動産を譲ってもらえる可能性が高いので、若者も無理して土地の手当てに走らない。
だから実需という面では住宅地は供給過剰となる。

 一方商業地についても日本のGDPが低下したり停滞したりしている中で、企業は新たなオフィスビルの手当てをすることはない。
それよりもより家賃の安く、かつ広いビルに引っ越して少しでも経費を節約するようになるから、条件の悪いオフィスビルはよほどディスカウントしない限り顧客が集まらない。

注)有楽町から西部デパートが撤退したが、今後多くの場所でメイン商店の撤退が始まり、周辺の地価が低下する

 06年~07年にかけて外資が東京都心のビルを買いあさりミニバブルガ発生したので、不動産業界はその再現を期待している。しかし、そうした需要は新興国の不動産バブルが一巡して資金に余裕が出てからだから、すぐには発生しないし、当然のことにすぐに剥げ落ちる。

注)ミニバブルがあっても実需に応じたオフィスビル手当てでないので、金融が引き締まればすぐに収束する。

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 私は個人的には不動産価格がいくら低下しても今いる家を売ることはないので、「だからどうなの」という感覚だが、日本全体の将来を考えた場合日本の不動産の魅力が薄れていくことには問題がある。
一言で言えば、「日本が世界的規模で過疎化する」ということだからだ。

 商業ビルに限って言えば、ビルの空室率が増えるということは、企業が日本を捨てているということで、このことは即若者の職場がなくなるということを意味する。
現に今年の大卒の内定率は約80%だと悲鳴をあげている。
20%の就職できなかった学生は大学院に進んでさらに時間稼ぎをするか、ニートとなって親のすねをかじるか、新興国に飛び込んでそこで仕事を見つけるかのいづれかの方法をとるはずだ。

 新興国で仕事を見つけるような元気な若者が多いといいのだが、実際は勉強がそこそこできれば大学院に、そうでなければニートになる確率が高い。
本来は働いてほしい若者が働かず親のすねをかじっているのだから、日本からさらに活力が奪われてしまう。そして親の資産がなくなれば若者は放りだされる。

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 若者のことを思うと、今必要なことは日本を世界の企業から見て魅力のある場所に変える事で、実際新興国といわれる中国等は特別区を設置して、法人税を低くし、手続きの簡素化をはかり、必要なインフラを政府の資金で整備している。

 日本はインフラは非常によく整備されているが、なにしろ法人税が高く、やたらと手続きが煩雑だから、日本で事業を起こそうとする企業はほとんどない。
その結果若者の職場は年々縮小してしまった。

 日本は仕事をするには魅力のある場所でない。外国から企業が進出してこないのはそのためだ。
今は世界的に誘致競争をしている時代で、何も努力しないで愚痴を言っていると、日本は世界の過疎地になって、不動産価格は傾向的に低下する

注)ただし中国と同じような工場誘致は、日本の賃金水準から見て不可能だ。日本の特区は大都市周辺で、かつ知的産業の集積地にしないと成立しない

 くどいようだが、不動産価格がいくら低下しても私を含めた老人にはあまり影響はない。しかし、若者の職場が狭められていくのは問題で、不動産価格が上昇する場所でないと職場確保が難しい。

 

 


 

 

 

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(22.3.18) なぜ金融政策は効果がないか  新型オペと日銀の苦悩 

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 日本は完全なデフレ状態になっており、消費者物価卸売り物価も前年対比で1~2%程度の速度で低下し続けている。
すべての価格が下がるのだから、定年退職者や首切りの心配無い公務員には天国のような状況だが、一方生産者や流通業者はいくら経営の合理化を進めても収益改善が進まないという地獄の状況だ。

 政府は財政政策を思いっきり発動して、10年度予算では赤字国債を44兆円規模で発行するのでこれ以上の財政出動が不可能になってきた。

注)赤字国債をさらに増額できるが、財政規律の限界をとうに突破しているし、格付が低下する。

 菅直人副総裁兼財務相日銀白川総裁の尻を引っぱたいて「財政がダメなんだから、金融でなんとかしろ」と金融政策の一層の緩和を要請したが、だからと言って30兆円(09年10月から12月)といわれるデフレギャップが埋まることは無い

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 日本には今後ともデフレが継続していく要因があり、金融緩和はデフレに対してまったく効果が無い。

 日本が基本的にデフレなのは人口が低下し始め、老人人口が増加しているからである。人口減少はそれだけで需要は低下するし、若者が少なくなって老人が増えると、住宅投資が減少し、教育に金をかける必要が無くなり、衣食も何でもよくなり、レジャーも金をかけるよりも有り余った時間をかけておこなおうとする。

 これらすべての要因があいまって、日本ではデパートスーパーも最近ではコンビニさえも、売上が落ち込むようになり、自動車住宅も前年度対比減少している。
だからと言って工場学校スーパー等はすぐに縮小や撤退することができないから、需給ギャップが広がり、さらに物価は低下してしまう。

 国内に資金需要がなければ、日銀が金融緩和で放出した資金はすべて国外に向かうと思っていい。
そのことは最近の日本の金融緩和策の経験を見ても、また少しシミュレーションしてみてもすぐに分かる。

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 浜矩子同志社大学教授は、「日本が21世紀初頭におこなってきた長期の金融緩和策の結果が、サブプライムローンの肥大化につながり、リーマンショックを引き起こした」と分析しているが、今回の金融緩和策もまた同様な資産バブルを誘発する可能性が高い。

 日銀は昨年の12月以降、新型オペレーションと称して、金融機関に金利0.1%、期間3ヶ月の資金を10兆円規模で供給している。
だがデフレ回避に一向に効き目が無いので、さらに10兆円規模の追加措置を発表した。

 しかしこうした資金が日本の経済、特に設備投資を増大させてデフレギャップの解消に向かうかというとそうはならない。
たとえば金融機関にとってはタダのような資金を日銀が供給してくれたのだが、何しろ期間が3ヶ月では設備投資資金などには使いようが無い。

 一番可能性が高いのは銀行が自己ディーリングを行い、新興国等への株式投資や、流動性が高い国債や投資信託、あるいは金や石油への投資をおこなうことである。
3ヶ月間、タダの資金があるのだ。鞘を稼ごう

 日銀もさすがに期間3ヶ月では効果がないと判断したのか、期間の延長や供給金額の増加(3月17日に10兆円増額したを図ろうとしている。
しかしこれでも国内の設備投資増強には向かわないだろう。

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 たとえば自動車メーカーが金融機関からほぼゼロ金利と言ってよいような資金を無理やり借りさせられたとしよう。
何でもいいから、1000億借りてください。政府の依頼です

注)中国の金融緩和はこうした資金が不動産と株式投資に向かった。

 この自動車メーカーはその資金を国内の工場建設に向けるだろうか。
企業としては銀行と同じような鞘稼ぎを行うか、あるいは投資をするとしても中国インドブラジルといった新興国に最新鋭の工場を建設するはずである。
日本じゃ、車が売れないし、輸出だと貿易摩擦が起こるから現地に工場を建てて、現地に溶け込もう
だから日本の需給ギャップは金融緩和ではどのようにしても埋めることができない

 人口減少、老人天国の日本は毎年のように需要は減少していく。。
GDPは傾向的に低下していくので、生産設備や流通施設をそれに合わせて縮小させなければデフレギャップはうまらない

注1)日本でGDPを拡大させる唯一の方法は海外から若者を移住させて日本人の国籍を取得させることである。
貧しくエネルギーのある若者はハングリー精神に燃えており、かつ住宅や衣食に対する需要が旺盛だ。

 日本では大相撲の世界がそうなっており、上位力士はほとんどが外国人で、日本人はとても横綱になれそうも無い。
それでも私たちは大相撲をけっこう楽しんでいるのだから、これこそ日本に活力をもたらす起爆剤だと認識することだ。

注2)日銀がまったく効果のない新型オペレーションをおこなっているのは、政府から「国債の直接日銀引受」を要請してくるのを回避する代替手段だといわれている。
「国債を引き受けてハイパーインフレーションになるよりはマシだ」との判断だ。

注3)自民党政府は、このデフレギャップを埋めるために、無理やり地方空港やダムを建設してきた。しかしこれはただ無駄なことをしただけで、日本の国力をそぐ効果しかなかった。



 

 

 

 

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(21.11.25)  日本経済はデフレから脱却できるか

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 とうとう政府が悲鳴をあげた。11月月例経済報告で、「日本経済はおだやかなデフレ状況にあり、景気を下押しするリスク」が存在すると言い出したからだ。

 実は日本はここ10年来基本的にはデフレ状態にある。政府がデフレ宣言をしたのが01年3月だが、06年7月に一旦この「デフレ」という表現を使わなくなった。それが3年5ヶ月ぶりに、ふたたび「デフレ」と言う表現を月例経済報告で使用したのには訳がある。

 GDPの7月から9月までの実質成長率年率4.8%なのに、名目成長率▲0.3%となっている。
なにしろ消費者物価指数がここ7ヶ月に渡って低下しており、下げ幅も拡大している。
いくら生産しても価格が低下するので儲けにならない」企業は悲鳴を上げだした。

 デパートは二桁の売上げ減少が1年以上続いているため、銀座松屋では9800円のスーツを年2回のセールで売りだした。
高品質、高価格ではだれも買う人がいない
ユニクロのように高品質、低価格が時代の潮流になっている。

 デフレ脱却のために政府は09年度第2次補正予算を組んで、景気対策に取り組むと菅副総理は言っているが事はそう簡単ではない。

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 なにしろ日本経済は「デフレが当たり前の社会構造になっている」からである。需要拡大の最大の要因は人口増加豊かさへの希求だが、日本は人口は減少に転じ、老人人口の割合が毎年増加しているし、物がありあまってこれ以上購入するものがほとんどない

 毎回同じ事を言っているので恐縮だが、豊かな社会の老人が消費拡大に励むなんて事はありえない。

 私を例に言えば、食事は毎年細くなってきて、食べ物に対する欲求は低下するし、衣類はユニクロさえあれば満足してしまう。旅行も楽しいけれどもヨーロッパに行くには地獄のような長時間の飛行時間に耐えなくてはならない。
そんな苦労をするくらいなら、家でのんびりするほうがいい」ということになる。

 実際はブログを書いたり、小学生にマラソンを教えているのだが、このインターネット環境はもっとも価格低下が激しい世界で、私もほぼ無料でブログを製作しているし、見ている人も無料だ。
子供に教えているマラソン教室はボランティアだから、GDPの計算には入らない。
私の生活からはGDPを押し下げる要因しか存在しない。

 政府の試算では、デフレギャップはほぼ40兆円だと言う。供給能力に対して需要が40兆円足らないと言うことだが、これを埋めるのは容易でない。
供給能力が大きすぎれば、それを小さくするのが最も妥当な措置で、生産拠点をまだ需要のある海外に移すか、かつての炭鉱政策のように閉鎖をするか、織物業界のように余分の機織機を消却するか、漁船の減船のように計画的に削減するしか方法がない。

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 ただこの方策は国内に失業率の増加と言う副作用が伴うため、政府の政策として取りづらい側面がある。
そのため生産能力は一定にして、需要を無理やり作り出す措置がとられてきた。
景気対策として公共投資の拡大をするのがそれで、道路や橋や飛行場を必要ないのに作る政策である。

 確かにこれで一時的には建設業界などは潤うが、副作用は甚大で赤字国債の増発と、無用な設備のメンテナンスに費用がかかることになる。
そして何よりも問題なのは、無駄な経費をかけている間に、日本の国際競争力が失なわれることである。

 私の見た無駄な公共工事の事例として南アルプス寸又川沿いの約40km林道がある。南アルプスの最南端光岳(てかりだけ)から、この寸又川に降りると、そこから寸又峡温泉まで、この林道を歩くことになる。
林道と言っても国内材はまったく売れないから、林道として利用しているわけでない。土木工事が必要なのでただ作っただけである。

 ところがこの寸又川は急峻ですぐに土砂崩れがあって、林道が埋まってしまう。実際私が見たときは上流部分20kmは土砂に埋まっていた。
下流部20kmについては、地元の建設会社が砂防工事を行っていたが、本来何の役目もない林道さえ作らなければ、土砂崩れはおきないのだから不要な作業である。
無用に作って無用にメンテナンスを行っている典型的な事例だ。

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 このように日本の公共事業はただ雇用を確保するだけのために無駄使いをし続けてきており、当然の結果として日本の国際競争力は毎年低下してしまった。
古い産業を保護するために莫大な赤字国債を発行し続け、一方新しい産業は育たないからだ。

 今日本ではデフレ対策の思考の変革を迫られている。

① 日本経済はデフレになるのが当然の構造をしているので、無理な公共投資等で需要喚起をすると、財政赤字が拡大し、しかも無駄な公共物ばかりが後に残される。
② デフレから脱却する唯一の有効な方法は、世界の新たな需要を先駆けて開拓することで、特に環境関連産業(電気自動車、太陽光発電等)で世界のパイオニアになることである。


 さて鳩山政権はこうした取り組みを実施できるだろうか。自民党政権だけを行って、日本経済をつぶしてきたが民主党政権の経済政策はの方策を採ることができるだろうか。
菅副総理の第2次補正予算の中身が、大変興味あるものになってきた。

 

 

 

 

 

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(21.10.1) デフレの時代とパラダイムシフト

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 総務省29日発表した8月全国消費者物価指数前年同月比▲2.4%05年を100とした指数で、100.1になったそうだ。
前年に高騰していた原油や食料品の価格が落ち着き、一方消費低迷で商品の価格の値下げ競争が激化しているからだと言う。
東京都9月の指数は99.7でさらにデフレが進んでいる。

 私のように年金生活者デフレになると物が安くなり、一方年金額は一定だから生活が向上する。そうした意味ではデフレになればなるほど助かるのだが、一方生産者スーパーのような小売業者にとっては地獄のようなものだ。

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 なぜ物が安くなるのだろうか?
 通常日本のような人口が減少し、高年齢化する社会では物を買わなくなるのでデフレは必須となる。
人口減少はそのまま需要減少につながるし、一方高齢者は若者のように新規機能の製品に飛びつかない。古いものを大事に使うのが高齢者だが、一番の理由は新たな機能を操作できないからだ。

 私などは携帯電話に新規機能が付いたと言われるたびにうんざりする。
パソコンもこれ以上OSが進化してどうなるのかと思うし、最近買い込んだビデオカメラなどはいまだに使い方が分からない。

 物は昔ながらのオーソドックスなものが一番使いやすいし、新しいものはそのたびに苦労するので購入に躊躇する。
だから新製品はなかなか売れなくなり、需要は停滞する。

 ヨーロッパは日本に先駆けて人口が停滞していた社会だが、イギリス人などが古いものを大事にする性質を昔は不思議に思っていた。
成熟した社会では物はあふれかえっているので、自分が好きなものだけを使用し、新しいものが何でもいいとは言えなくなることを知らなかった。

注)一時期イギリス人もバブルっていたが、それまでのイギリス人の性格は古いものを大事に使うと言うものだった

 先日NHKテレビで「中国社会の光と影」と言う番組を放送していた。中国の都市部に住む若者が次々に新製品を購入し、親は子供のために住宅を購入していた。
こうした、発展途上国(人口が増え、若者が多く、まだ商品に対し需要がある国)では、当然インフレが更新しGDPが伸び、それを幸せと感じているが、日本の80年代にそっくりだった。

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 私たちは長らくGDPが増加することが無条件に善だと思っていたが、衣食住が足りればそれ以上何を求める必要があるのだろうか。
まったく無用な八ツ場ダムを作るためにあくせくするよりは、高原で寝そべっているほうがいい。

 成熟社会では必要なものがすでにそろっている。だからGDPを増やすためには、不要なものをつくらなければならないし、そうしたものを購入しなければならない。
成熟社会では無駄に働き無駄に消費することが求められる。
しかし、あるとき人々はこうした生き方に疑問を持つようになるのだ。
われわれは何か間違っているのではなかろうか?」

 前にも記したが私はローマ帝国のような物づくりの好きな社会がなぜ中世のようなGDPが停滞して宗教心だけが向上する社会に変わったのか不思議に思っていた。
しかし最近になって、物はあふれてしまうとそれ以上物に対する興味を失うことに気がついた。

 日本やアメリカや西洋のような成熟社会は今後長いデフレの時代に入りGDPはほとんど増加することは無いだろう。
一方、中国やインドのような発展途上国は相変わらずGDP信仰が盛んだろうが、それも時間の問題だ。
日本はあの80年代からたった20年で、GDP信仰に疑問を持つ社会になっている

 だから21世紀の中ごろまでにはほとんどの国が豊かになり、物に対する興味がなくなるだろう。GDPは停滞から後退局面入り、人々はGDPと言う言葉があったということすら忘れてしまうはずだ。

 

 

 

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(21.6.2) デフレの時代 その1

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 世界的な金融恐慌で、石油穀物の値段が劇的に低下してきたが、ここに来て身近な消費財の値下げが一斉に始まっている。

 先鞭をつけたのはスーパー業界で、イトーヨーカドーイオンPBプライベートブランド)を中心にこの4月頃から大幅値下げに踏み切った。
イオンなどは「イオンの反省」という新聞広告までだし、
イオンの価格は他店にくらべて、決して安くは有りませんでした」
「イオンの売場は、欲しいと思える商品が並んでいませんでした」
「もう一度、お客様が求める本当の低価格、売場、サービスを取り戻すことに全力を尽くしていきます」
とまで言うのだからすごい。

 イオンの最近のヒット商品はPB食パン1斤88円だという。しばらく前まで150円前後に設定されていたのだから、劇的な値下げだ。

 コンビニにおいてもPB商品が増えており、かつては便利だが高かった商品がスーパーと対抗するようになり、かつ売れ残り食品の値引き販売まで始まった(公取委が「セブンイレブン本部が契約店の値引販売を禁止する」のは独占禁止法違反だと指導した)。

 外食産業すかいらーくのような高価格メニューの店は流行らなくなり、低価格メニューのガストに衣替えしている。
牛丼すき屋第二次牛丼戦争をしかけて、並を330円(▲20円)に値下げした。

 百貨店はまったく販売が不振で、ここ14ヶ月前年割れしているが、銀座松屋では9800円スーツを限定200着販売し完売した。
百貨店でも特売が日常化している。

 高速道路料金は政府の指導で全国一律1000円になり、今度はアクアラインの料金が千葉県知事の指導で800円になる。
トヨタはエコカーのプリウスを最低価格205万円(▲30万円)で販売して自動車販売不振を一気に挽回しようとしているし、政府はエコカーを導入すれば自動車取得税重量税を大幅に減額して後押しすることにした。

 海外旅行代金も円高とガソリン価格の低下で劇的に安くなっており、一頃旅行者泣かせだったサーチャージも終わりに近づいた。
今日の新聞には改正薬事法の施行で大衆薬が安くなるといっている。

 すべての価格が低下するデフレの時代が再び始まった。
なにしろ昨年の第4四半期以降、GDPの約6割を占める消費は、前期対比落ち込んでおり(08/10~12 ▲0.8%、09/1~3 ▲1.1%)、高価格商品はまったく売れなくなっている。
内閣府の発表では09/1~3期の需給ギャップ▲8.5%で、過去最悪でこれを金額に直すと約45兆円の需要不足だという。
これではものの値段が上がるはずがない。

 この状況がいつまで続くかはもっぱら景気動向に左右されるが、私はこの状態はかなり長く続くと見ている。
理由は
① 今年は確実にマイナス成長、来年以降も低成長が続くこと
② アメリカ政府の国債増発によって、円高傾向が定着し、輸入品の価格が低下すること


 デフレは私のような年金生活者にとっては天の恵みのようなものだが、生産者にとっては地獄の苦しみで、それに適応した企業だけが生き残ることになりそうだ。

 

 

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(20.11.10) 再びデフレの時代が始まった

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 ひところあれほど騒がしかった物価の上昇を聞かなくなった。ガソリン価格は日を追って低下しており、今では120円台になっている。
この夏ごろは原油価格は1バーレル147ドルまで上がり、年末には200ドルも突破すると言われていたが、実際は60ドル程度になっている。
この先もさらに低下しそうで50ドルが視野に入ってきた。

 穀物価格2007年から急騰したが、いずれも本年度に入り急落しており、まだ上昇前の2倍程度の価格になっているものの、以前の価格に戻るのも時間の問題だ。

 たとえば小麦の値段は長らくトン当たり100ドルから200ドルの間を推移していたのに、一時期440ドルになったが先月は237ドルまで下がってきて、さらに低下しつつある。

 小麦の価格上昇期にはパン業界はパニックになり、パン製品は一斉に価格があがり、大好きなぶどうパンが160円から230円になったときは目を剥いた。
もうぶどうパンも食べられない
しかしそうした心配も杞憂に終わりそうだ。

 再びデフレの時代に戻ってきた。

 私のように定年退職者は所得が決まっているのでインフレに弱い。対応策として自動車を処分してもっぱら自転車に変えたり、ジャスコのトップバリュや6時以降の値下げ時期に買い物をするようにしていたが、これで一息つけそうだ。

 インフレからデフレへの転換は実にドラスチックだった。アメリカの3月のベア・スターンズの倒産、9月のリーマンブラザーズの倒産が契機であり、世界の投資家が震え上がった。
まずい、全ての投資の手仕舞いをしろ」あらゆる投資資金が市場から引き上げられて、残ったのは実需だけになってしまった。

 気がついてみれば穀物も石油も1年前に比較してそんなに需要があるわけでない。中国やインドが経済成長をとげていると言っても、世界全体の石油や穀物の需要が1年で2倍や3倍になるはずがない。
バブルがはじければ元に戻るのは世の常だ。

 資金は最も安全と見られている円に殺到している。
アメリカはオバマ大統領になり大きな政府のもと赤字国債を増発するから、ドル安になる。
ヨーロッパは弱い輪がほころんで、アイスランド、ウクライナ、ハンガリーが倒産しそうなので、ユーロ圏もかなり危ない。
中国元は魅力的であっても市場性がないからなかなか入手できない。
やはり、円しかないじゃないか」世界の趨勢がそうなっているので、円高はとどまることがないだろう。

 少し長いスパンで見ればドルもユーロも50円程度まで円高になりそうだ。穀物も原油もドル表示での価格がさがり、さらに円高のメリットで価格が下がるのだから、物価は加速度的に低下しそうだ。
すでにスーパーやデパートでは一部製品で円高還元セールが行なわれているが、そのうちあらゆる商品の値下げ競争が始まるだろう。

やれやれだ」定年退職者には本当に住みよい時代が再び始まろうとしている。

 

 

 

 

 

 

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