(23.2.1) 郵便事業の大崩壊 日本郵便炎上
日本郵便(郵便事業会社)が大崩壊を始めた。23年3月期は530億円の赤字が見込まれ、宅配便事業だけでは約1000億の営業赤字だと言う。
注)日本郵便の業務は郵便と宅配便。なお小泉改革で従来の郵政グループは郵便、貯金、簡保、郵便局の4つの会社に分かれ、さらに持ち株会社として郵政ができた。
もともと郵便事業は大赤字で小泉郵政改革前までは郵貯と簡保の黒字で赤字分を補填していたが07年10月、貯金と簡保と郵便が分離された結果隠れていた大赤字が露呈し始めた。
それでも小泉首相に請われて郵政の建て直しに手腕を発揮していた西川善文氏が社長の時の09年3月期決算では黒字化ができたのに、亀井静香氏が強引に社長に据えた斎藤次郎氏になって、大赤字に陥り今後どこまで赤字が拡大するか分からないような状態になっている。
亀井氏と斎藤氏のタッグは、赤字体質の郵便事業と黒字の郵貯・簡保を統合してどんぶり勘定にし、郵政グループを国民新党の政治基盤に据えようと言うものだった。
ところが昨年の参議院選挙で頼みの民主党が惨敗したため、郵政再国有化法案が国会を通らなくなってしまった。
郵便事業が成り立たないのには構造的な理由がある。郵便事業とは郵便と宅配便をさすが、前者は電子メールの普及により、その存在理由がなくなってきている。
もちろんダイレクトメール等の需要はあるのだが、これはクロネコヤマトのメール便に対抗できない。
さらに宅配便はクロネコヤマトや佐川急便という強敵がいて、特に人件費の面で郵便事業は歯がたたない。毎年毎年メールも宅配便もジリ貧になり、今後どこまで落ちていくか分からない状況だ。
しかもさらに悪いことに日本郵便は亀井氏の要請を受けて赤字垂れ流し事業だったゆうパックを日本通運のペリカン便と一緒に抱え込むことになった。
もともと西川前社長の戦略は宅配便事業をJPエクスプレスと言う別会社に切り離し、ゆうパックとペリカン便を統合して独立採算で生き残りを図ると言うものだった。
これを齋藤社長はペリカン便を含めて日本郵便本体で行うことに修正した。
注)ここが一番分かりづらいところだが、小泉改革の本質は郵便事業の中の最も赤字が多かった宅配便を郵政グループの外に出して独立採算にし、市場原理に任そう(つぶれるならつぶれていい)と言うものだった。
亀井氏はこれに反発し宅配便を取り込むことにした。
なぜそこまでして赤字会社を抱え込むかと言うと、郵便事業の従業員26万人が、亀井静香氏の政治基盤としての必要数で、なんとしてもこの数を減らすわけに行かないからである。
「経営などどうでもいい。必要なのは国民新党に投票する郵便局職員だ」亀井氏がほえている。
しかしこのJPエクスプレス吸収措置の結果はひどいものだった。統合時にシステムの大失敗が発生しひどい遅配になってすっかり利用者から嫌われてしまった。
「ふざけんな、生鮮食料品が届かないじゃないか、ゆうパックはまったく信用ならん」
この遅配の弁済やその後のゆうパック離れで161億円の赤字が膨らみ、さらにコンピュータの統合費用で244億円の赤字が増加して、宅配便の年間の営業赤字は1000億の予想になっている。
これでは郵貯や簡保がいくら収益を上げても郵便事業の赤字で収益は大幅に食われてしまう。
再国有化案はねじれ国会で法案が通る見込みがなく、一方で再国有化を前提に進めたJPエクスプレスの吸収や、臨時雇用職員の正規雇用化、および合理化策の中止により、日本郵便はニッチもサッチも行かなくなってきた。
「ひどいじゃないか。再国有化するというから赤字会社を抱え込み、正規従業員を増やしているのに、これでは会社がつぶれてしまう。はやく親方日の丸にしてくれ」日本郵便の悲鳴が聞こえる。
小泉氏の言う完全民営化での市場原理か、亀井氏の言う完全国有化による赤字抱え込みかで日本郵便は揺れている。
政治は空洞化してどちらの結論も出せない。
こうした中で日本郵便は赤字を累積し、事業そのものが成り立たなくなりつつある。
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