(23.2.12) オーストラリアとのEPA交渉は成功するか?

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 とても不思議な感じがする。このような交渉一つ満足な締結ができなくて日本はこれからどうなるのだろうかと言う心配だ。

 現在日本とオーストラリア間で行われているEPA(経済連携協定)交渉がそれだが、TPPが多国間協定であるのに対し、EPAは2国間協定のところが違う。
さらにTPPは基本全品目の関税撤廃を求めているのに対し、EPAは二国間で例外を認めあうところが違う

注)EPAとは関税の撤廃、資本や労働力の移動の自由等を含めた幅広い経済関係強化を目指す枠組み。一方関税撤廃だけの枠組みをFTA(自由貿易協定)という。

 オーストラリアにとって日本は大事なお客様だ。なにしろ日本の輸入額が輸出額の3倍も有る。
だから日本さえその気になればEPA交渉など即座に締結できるのだが、例によって農業分野の保護があだになっていまだに締結できない。

 オーストラリアから見ると輸出の約80%鉄鉱石と石炭、その他鉱物資源でこれの日本での関税は0%だから、別に自由化交渉をしなくても支障はない。
農産物のウエイトは10%で、こちらは米を始めとする高関税障壁が残っているが、オーストラリアは最近の大干ばつ大洪水で農産物の輸出余力が激減しており、米などはまったく輸出できなくなってしまった。

我が国は鉱物資源大国で、これで十分食っていけます。農業はまあ片手まですな」なんて状況だ。

 一方日本からすると輸出の目玉である自動車と機械類のウエイトが約50%で、これが関税障壁になっており何とかして関税の撤廃を図りたい。
日本が特にあせっている理由は宿敵の韓国がFTAEPAが包括的であるのに対してFTAは関税のみに絞った交渉)で先行し、年内にも締結が予測されるからだ。
まずいな、このままではオーストラリアでも現代に負けてしまう。日本は次々に世界市場から締め出されてしまうじゃないか玄葉国家戦略相があせりだした。

 コメについてはオーストラリアはまったく輸出余力がなくなっているので日本に関税障壁があっても問題がなく、他の農産物の関税が撤廃されるなら自動車の関税を撤廃しても良いという立場だ。

 しかし日本の農水省はかたくなで牛肉・小麦・乳製品・砂糖については重要品目に指定して関税の撤廃には応じない立場だ。
それじゃ、交渉しても無駄ですな
オーストラリアは経済が絶好調で、鉱物資源の輸出先はどこにでもあるから交渉を急がない。

日本とオーストラリアがEPA交渉を再開したが、菅内閣は本当にEPAを締結する気があるのだろうか」とアメリカは注目している。
日本がTPPに参加して農業分野の解放を認めるのか、それとも従来どおりの方針で「農業分野での解放はありえない」といったあのかたくな態度を維持するのか見極めようとしている。

オーストラリアと自由貿易協定の一つも結べないならTPPは夢のまた夢だ
いま日本は農業保護を貫いて輸出立国から滑り落ちるのか、それとも国内の農業団体を説得して世界貿易の主要なプレーヤーで有り続けるのかの選択を迫られている。

 農業保護を貫けば輸出産業は新興国に出て行ってしまい、国内は空洞化する。一方貿易自由化に舵を取れば農業団体や地方の反乱で国内政治は混乱する。
はたして菅首相に決断の勇気があるのだろうか。

 

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(21.10.9) オーストラリアの意外な自信 政策金利の引き上げ

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 ここにきて豪州準備銀行RBA)が政策金利3.00%から0.25%引き上げ3.25%にしたことが世界の経済界に衝撃を与えている。
それと言うのも9月下旬に開催されたG20の会議で「景気刺激策を緩和して金利を元に戻すのは早すぎる」と確認したばかりだからだ。

 経済運営で最も難しいのはこの緩和から引締めに転ずるときで、早すぎると経済が再び失速するし、遅すぎると有り余った資金が土地や株式に流れてインフレが亢進する。

 オーストラリアG20の一員なのだが、「わが国は別だ。G20の確認など知らぬ」と言う態度だ。
RBAスチーブンス総裁は「豪州経済の状況は予想を上回る強さを見せ、景況感などを示す指標も回復してきた」と非常に楽観的だ。
この時期にこれだけ楽観的になれる先進国の総裁は珍しい。

 従来オーストラリアの経済は貿易収支は常に赤字(経常収支も赤字で、それを資本収支で生めることで成り立っていた。
貿易収支の赤字分を各国からの借入や投資で補ってきたわけだ
アメリカとそっくりだが、一つだけアメリカと決定的に違うところがある。

 それはオーストラリアドルが基軸通貨でないと言うことで、放っておいても資金が集まるアメリカと違う。このためオーストラリアは基本的に高金利政策をとってきており、この高金利で各国の資金を呼び寄せていた。
リーマンショックが始まる前の政策金利は7.25%で、日本においても外貨預金として人気だったはずだ。

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 もう一つのオーストラリアの特色は資源大国ということで、石炭や鉄鉱石の主要な輸出国だが、その最大の貿易相手国が最近は日本に代わり中国になってる。
このため中国経済が好調になれば、オーストラリア経済も潤う構造であり、昨今の中国の経済成長を好感してRBAは強気になった。

中国の経済成長は目覚しく、近隣の経済圏や商品市場に大きな影響を及ぼしている」という訳だ。
今回の利上げの直接的な理由としては「企業信頼感指数が+18ポイントで、小売売上高が09年8月、前月比0.9%の増加になった」と言うことだが、オーストラリアの企業家のマインドも非常に明るいと言うことだろう。

 また昨今住宅価格が上昇して住宅融資が拡大していることもRBAの利上げ材料になっている。
このままの低金利を放って置くと、インフレが再発するのではなかろうか

 かくしてRBAとしては伝統的な高金利政策に戻るのが正しいという判断をしたのだが、いつまでも低金利でいると国内的にはインフレが起こり、対外的には外資が入ってこなくなることを恐れているのだろう。

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 さてこのオーストラリアの判断は正しいだろうか。
すべてはここでも中国と言うことになる。中国の第2四半期のGDPの伸びは政府発表で7.9%であり、本年度目標の8%は達成できると強気だ。

 私は先に中国のマクロ数字政治的粉飾があり、信頼できないことを述べたが、数字はともかく中国政府がまれに見るケインズ政策を実行していることは確かだ。
http://yamazakijirou.cocolog-nifty.com/blog/2009/09/21910-f18a.html

 これにより経済は上向いてきており、日本韓国輸出産業も息を吹き返している。だから中国を主要な貿易相手国としているオーストラリアが楽観的になる気持ちは分かる。

 問題は中国が懸命な財政・金融政策をとっている間に、世界経済が持ち直すかと言うことになるが、アメリカ経済は相変わらずどん底であり、ヨーロッパも日本も急激な回復は望むべくも無い。

 その結果、中国は今までの外需頼みを止めて、内需重視に転換して自立的な経済成長を達成することを求められているが、それは中国に資金的余裕がある間はできると言うことだろう。
http://yamazakijirou.cocolog-nifty.com/blog/2009/09/21924-188c.html

 かつて日本も1991年にバブルが崩壊した後、赤字国債を増発しておよそ150兆円規模ケインズ政策を行ってきた。そしてそれが有効な間はどうにか数%の経済成長が可能だった。
中国はあのときの日本と同じで、溜め込んだ資金でここ2年間で52兆円規模のケインズ政策を行うことにしている。しかし資金が底をつけばGDPの成長率は鈍る。

 オーストラリアの利上げはすべて中国経済頼みであり、中国経済が世界経済のけん引役になれるとの前提に立っている
はたして中国と心中する気になったスチーブンス総裁の読みはあたるだろうか。
早すぎる引締め政策に転換して失敗し、経済を失速させた橋本内閣のようにならないだろうか。

 世界各国の経済担当者は、このオーストラリアの早すぎる決定に戸惑いながらも、その結果に注目している。
しかしその結果が判明するのはもう少し時間がかかりそうだ。


 


 

 

 

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