(22.2.9) 寒い一日 おゆみ野の森と苅田郷の囲炉裏
この日(6日)の寒さは間違いなく今年一番の寒さだった。毎月第一土曜日はおゆみ野の森で草刈が行われるのだが、さすがに冬場は刈る草もない。
代わりに積んであった倒木をチエンソーで裁断したり、次回の定例会で実施する予定のお花炭(飾り炭)を試験的に作成したりした。
お花炭とははじめて知ったが、「まつぼっくりや柊、椿等の植物を缶に入れ、蓋に小さな穴を開けて火にくべ、穴から煙がでなくなったら出来上がりという炭で、古くから床の間に飾ったり消臭効果もあるもの」だそうだ。
注)この日の活動内容については斎藤さんの「ちば公園のベンチから」に詳しい。
私はやることがなかったので数年前に切断したつる草が、そのまま枯れて樹にまつわり付いていたのを除去していた。
しかしこの日の寒さは尋常でない。気温は6度程度だったはずだが、北風が吹きまくり体感温度はほぼ0度に近かった。
10時から始め、その後森の会議もこの森で行われたため終了は午後1時半頃になり、すっかり身体が冷えて寒気までしてくる。
「まずいな、近々四季の道の駅伝の準備が始まるのに風邪をひきそうだ」
家に帰ったらすぐに風呂に飛び込んだ。
本当はそのまま家に居たかったのだが、この日は前からかみさんや友達と苅田郷(かったごう)のTさん宅で、囲炉裏(いろり)を囲む会が予定されていた。
Tさんはこの集落で築200年程度の旧家に住んでいるのだが、その一室に実に懐かしい囲炉裏がある。
この囲炉裏を囲んで野菜や肉を焼いて団欒しながら時間を過ごすと言う稀有な経験がここでできる。
「パパさん、先に行ってるよ。後から来てね」かみさんと友達が出かけていった。
私はガラパゴス島の海イグアナのように風呂とコタツで十分身体を温めてからようやく苅田郷に出かける気持ちになった。
この日は午後から北風がさらに強くなり自転車のハンドルが風圧で旨く操作できないほどだ。
囲炉裏を囲む会は10名程度の人が集まっており、ほとんどが旧知で気の置けない人たちばかりだったが、なにしろ寒い。
火に面した方はあったかいのだが、背後から隙間風が私を襲う。外套衣で身を包んだが、朝から身体を冷やしてばかりいたのでとうとう頭痛までしてきた。
最初は大人だけだったがジュンジュン姉さんが一人息子のY君を連れてきた。小学校4年生だ。Y君は普通の小学生が興味を持つことをはるかに通り越している。
この家の当主が本箱に積んであった、塩野七生(ななみ)の「ローマ人の物語」を読み出した。
私もいつかは読もうとしていた一冊5cm程度の厚さがある本格的な本だ。
この屋の当主が驚いて「こんな子は見たことがない。末恐ろしい」と感嘆の声を上げた。私は最初挿絵でも見ているのかと思っていたが、「カエサルに興味があるんだ」なんて言いながら読み進んでいる。
当主は本当にこの4年生の児童が「ローマ人の物語」を読めるのか確かめたかったのだろう。
たまたまこの囲炉裏部屋に飾ってあった、福沢諭吉の格言集を指して「読めるかい」と聞いた。Y君はこの格言集を実にすらすらと読んでしまったが、私でも苦労するような代物だ。
「お母さん、この子にはたまには漫画なんかを読ませたほうがいいんじゃないのか」あまりにも早熟だと思ったのだろう。
私も心底驚いたが、小学生が意外に能力が高いことはマラソン教室をして知っていた。
なにしろ小学校3年生の女の子に、私は短距離ではかなわない。
Y君は「この家は宝の山だ」なんて言いながら、昔の文芸春秋やビル・トッテンの著書、グリーンブックスから出ているアインシュタインの解説書を持ってきて、「おじさん、これ貸して」なんて平然と言っている。
「この家の本はすべて持っていっていい」と当主は答えていたが、ますます信じられないという気持ちだったろう。
私が小学校4年生の頃は川でザリガニやハヤという魚を捕まえて喜んでいたし、勉強なんかからっきしできなかったから、Y君の読書力には舌を巻く。
「大人でも読めそうにない本だな」いやはや驚いた。
しかしこの日は寒かった。私は寒気がひどくなってきたので早々に引き上げようとしたらY君が「山崎さんは特別に早寝だと聞きました」なんてひどく大人びた言い方で見送ってくれた。
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