(22.12.17) NHKアインシュタインの眼 柔道 日本柔道は復活なるか!!
今年9月に東京で行われた世界柔道選手権は金メダル10個を獲得し、久方ぶりに日本柔道強しの印象を持ったが、これが本当に日本柔道復活につながるのか私はまだ疑問に思っていた。
なにしろ2004年のアテネ大会で8個の金メダルを取り「日本柔道ここにあり」と思ったが、次の2008年の北京オリンピックでは金メダルは半減して4個しか獲得できなかった。
特に日本を代表する鈴木桂治選手のような優秀な選手が、モンゴルのレスリングのタックルを多用するツブシンバヤル選手にあっさりと負けたときは、思わず天を仰いだものだ。
あれから2年「日本柔道は黄昏だ。日本人がバタバタ負けるのはいやだ」と思っていたので、私は柔道の試合は見ないことにしていた。
ところが、東京の世界柔道選手権で10個の金メダルを獲得したのだから驚いた。
「本当かい???????」
調べてみると日本復活のためのいくつかの好条件があったようだ。
新ルールとして① レスリングのタックル技など、帯から下の下半身を直接攻撃した場合は即座に「反則負け」となったし、また、② 相撲のもろ差しのようにいきなり上半身に抱きつく攻撃が厳しく規制される。
一度目は「待て」、二度目から「指導」を与えられることになっていた。
おかげでモンゴル選手が得意としたタックルがなくなり、また単に力だけで押してくる柔道が影を潜め、本来の柔道技が復活したのは喜ばしいことだ。
それに今回の世界選手権から各階級に二人ずつエントリーが可能になったことも選手層の厚い日本に有利になったようだ。
私はもっぱら柔道日本の復活がこうしたルール変更によるもので、日本柔道そのものが強くなったわけではないと思っていたが、昨日放送されたアインシュタインの眼を見てその考えを改めることにした。
日本柔道には単にルール変更の恩恵だけでなく、ワザの高度化の研究がされていて、それが日本柔道の復活につながっていたからだ。
この番組に出演していた選手は女性の52kg以下級の西田優香選手と男性は無差別級の上川大樹選手だったが、いづれも今回の東京大会の金メダリストである。
西田選手は世界一すばやい背負い投げをするのだが、見ていて私のイメージしていた背負い投げとはまったく違っていた。
通常背負い投げは言葉の通り相手を背負って投げるのだが、西田選手の場合は相手の懐に低い姿勢でもぐりこみ、相手が前がかりになったタイミングで引き落としていた。
投げられた選手は一瞬西田選手が目の前から消えて、次の瞬間には引き落とされて身体が一回転しているような感覚で、何をされたのかわからないという状況になる。
これだと相手を担ぐわけでないので力が要らず、タイミングだけが重要になる。
「なるほど、柔よく剛を制すだ」感心した。 (上川選手の内股は相手が右に回こみ、身体が浮いた瞬間に引き落とす感じ)
一方上川選手のほうは内股を得意としていて、しかも2種類の内股を使い分けていた。
私の知っている内股は蹴り上げた足を相手の股の間に差し込んで、反動で相手を浮かして投げるもので、井上康生選手が得意としていたあの美しい内股である。
上川選手は井上選手のような内股もできるが、もう一つ相手がワザをかけようとして上川選手の右側に出て身体が浮いたところをすかさず、払い腰のように内股をかけていた。
相手を高くけ上がることはなく、体落としのような感じで小さく弧を描きながら倒していた。
「ほとんど力を必要としない」と上川選手が言っていたが、相手の回り込む力を利用しての内股で、これも「柔よく剛を制す」のことわざどおりのワザだった。
今回からレスリングのタックルや相撲の押し出しが禁止、あるいは注意事項になったので、ワザが再びよみがえっていた。
「こりゃ、次のロンドン大会が楽しみだ」すっかり嬉しくなった。
日本が得意とする一本柔道に再び戻りつつあるといえる。
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