(22.11.17) 金融機関はわが世の春  22年度中間決算

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 日本の金融機関大手6行の中間決算が出揃ったが、予想どおりわが世の春を謳歌している。
日本経済が低迷し、融資需要が漸減しているのになぜ金融機関の収益が増加するかと言うと、融資を諦めもっぱら資本市場で勝負しているからだ。

 内外の国債、新興国の株式や投資信託、それに金や鉄鉱石のような実物への投資が信じられないほどの利益を上げており、中間決算の収益はリーマンショック前を上回った。

 なぜ資本市場で収益が上げられるかというと、日銀が0.1%と言うただ同然の資金を35兆円の規模でばら撒いてくれたからである。
政府の指示だ。何でもいいから借りてくれ

 ただの資金なら猿でも儲けることができる
ゆうちょ銀行かんぽ生命のように日本国債ばかりに投資しても1%の鞘は抜けるし、アメリカ国債ならば(為替変動を無視すれば3%の鞘が抜ける。
投資ファンドに融資したり、自己ディーリングで新興国の株式や投資信託に投資すれば、確実にそれ以上の収益を上げることができる。

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 金融機関にとっては今は天国のような状況で、ここで収益を上げられないようでは金融機関を返上したほうがよい。
部門別の収益構造を見てみると分かるが、リテール部門法人部門の収益はほぼ横ばいなのに、市場部門の収益だけが突出して増加している。

注)三菱UFJの場合、市場部門の収益が1160億円(前年同期)から2425億円と倍増している。

 政府のもくろみは日銀の金融緩和策で国内企業が設備投資を増加させ、国内のGDPを増加させると共に就業機会を増やすことだが、実際はこのように金融機関の収益改善だけに利用されている。

 もっとも金融機関も日本の重要産業だから、収益が増加することは好ましいことだが、残念ながら喜んでばかりはいられない。
こうした資金は主として新興国の株式や不動産、それと増産に制限がある石油や金や鉄鉱石や穀物等に向けられて世界的なインフレーションが発生しそうだからだ。

注)現在は主として金や鉄鉱石の値段が上昇している。さすがにリーマンショック前のように何でも値上がりすると言う状況ではないが、このまま推移すれば希少財に向かって資金が流れ込むと思ったほうがよい。

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 金融機関の発表によると下期の収益予想については、景気が足踏み状態で武富士等消費者金融に不安感があるので上期並の収益が確保できるか不透明だと述べている。

 しかしこうした金融機関の説明を素直に聞くことは難しい。景気が足踏み状態なのは今に始まったことではなく、また景気がよくなっても大企業は自己資金で設備投資を実施できるから金融機関とは無関係だ。
さらに消費者金融の引当についてはすでに完了しているはずで、今頃騒いでいるほうがおかしい。

 だから下期も日銀が供給しているただの資金を最大限に活用し、市場部門で過去最高の収益確保を実現することは確かで、金融機関はわが世の春を謳歌し史上最高益を達成しそうだ。

注)過去金融機関が最高益を達成したのはリーマンショックの前の07年度

 

 

  

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(21.11.20) 日本経済の回復と輸出主導体質

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 ここにきて先進諸国の経済回復の基調が鮮明になってきたが、日本も09年第3四半期(7月~9月)のGDP年率4.8%と急速に回復してきた。

 内訳を見ると前期比もっとも大きく伸びたのが輸出+6.4%であり、一方個人消費は+0.7%だった。
また設備投資も回復して+1.6%となったが、住宅投資は相変わらず水面下にある。

 この世界不況が始まるや日本では内需拡大の必要性が叫ばれたが、内需と言っても個人消費はほとんど拡大せず、公共投資だけが大幅に伸び、そのうちに中国等の新興国の経済成長に伴い輸出が回復してきたというのが実態だ。

 今回も輸出主導の回復なのだが、実はそれ以外の方法は日本には存在しない。

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 なぜ個人消費が拡大しないかは理由がある。
日本のように人口が停滞する国では、老人人口の比率が毎年高くなっていくが、老人は消費活動に熱心でない

 私個人をみても分かるが、食欲はわかないし、衣類などはタイツがあれば十分だし、家の手当ては済んでいるので住宅関連はメンテナンス以外の需要はない。自動車などは年に2回程度しか乗らないので手放してしまった。

 実際ここ数年来デパート、スーパーは売り上げ減少に悩み、最近ではコンビニまでもが不況業種になってきた。
また旅行などのような遊興費の支出も体力勝負だから、若者のようにどこへでもいけるというわけでなく、結果として老人は医療費以外に金の使い道がない。

 また住宅投資が伸びないのも当然で、子供が少なくなれば親の持ち家があるので、自分で新たに新築する必要性が薄れる。
いずれお父さんの家がもらえるのだから、今は賃貸でいいや」と言うことになる。

 結局老人人口が増えると言うことは長期的に個人消費も住宅投資も漸減する

 だから内需拡大とは自民党政府がそうしたように、総額15兆円に登る公共投資の大盤振る舞いしかなく、不要な道路や橋や、飛行場をめったやたらと作ることだけだ。

注)麻生政権が行った消費拡大策の、定額給付金、エコカー減税、エコポイントのおかげで、消費はやや拡大したのは事実だが、効果は一時的なもので、消費を恒常的に増加させることはできない
自動車メーカーや電気メーカーはこうした措置がなくなると、すぐに売り上げが落ちてしまうと鳩山政権になきついている。

 後に残るのは膨大な財政赤字だが、リチャード・クー氏の言うようにそれ以外の方法はないのだから「これはいい財政赤字」と言うことになる。

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 しかし財政赤字を無理やり増大させることが本当に正しい態度なのだろうか?
ここには壮大な近代経済学の嘘があるように私には思える。

 かつてサミュエルソンの経済学を学んだときにとても不思議な感じがしたのは「クリーピング インフレーション」という概念だった。
穏やかなインフレと言う意味で、「経済が成長するためには穏やかなインフレーションの環境が最善だ」と言うのである。

 もう一つの不思議な概念は「GDPが毎年○○%成長しないと、失業率が増大して社会的不安が発生する」と言うもので、中国は8%、日本では3%程度の経済成長が絶対必要と言うものだ。

 二つあわせると、「インフレでなくては経済成長ができないのだから、インフレターゲットを設けて、日銀は資金供給を(ジャブキャブ)して何がなんでも経済成長をはかろう」と言うことになる。

 しかし考えても見てほしい。私のような定年退職者にとってはインフレは最悪の環境で、年金は増加しないのに物価が高くなって生活苦にあえいでしまう。
また毎年3%ずつ経済成長するということは、たとえばGDP約60%を占める個人消費の場合は毎年食料や衣類を3%ずつ増やしていかなければならない。

 しかし老人が増えている日本で、食料を毎年3%ずつ増やして食べていくことなど、どだい無理だ。無理して食べれば飽食になり糖尿病患者になってしまう。
だから個人消費が永久に3%増加するなんて事はありえない

 残された方法は公共投資を拡大して、不必要な道路や飛行場やダムや林道や漁港等を作って、後に膨大な財政赤字を残すことだけだ(実際そうしてきた)。

 しかし人間が成人になればそれ以上身長が伸びないように、経済も成熟すれば成長が止まる。少なくとも個人消費を中心とする内需は止まる。
そうした社会ではGDPは停滞するか、老人人口の増大にあわせて穏やかに減少していくのが正常だ。

 だから成熟社会では「GDPの拡大をはかる」などという政策目標は間違いで、不必要な公共投資は止め、GDPの減少は正常と認め、ありあまった時間でのんびり人生を楽しむのが最善の生き方になる。

注1)トインビーが「歴史の研究」で文明は成長し、成熟し、そして衰退を繰り返すといったが、この資本主義文明もいつまでも成長できないのは同じだと私は思っている。 

注2)ただしGDPをどうしても拡大したければ、国内需要が停滞するのだから、唯一の方法は輸出拡大しかない。世界には日本に比較して貧しく財に対する需要の大きな国(中国やインド等)があり、そこに対する財やサービスの供給には実需はある。



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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(21.6.8) 魔か不可思議な みずほ銀行行員の詐欺事件

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 信じられないような詐欺事件みずほ銀行で発生した。
直接の容疑は、みずほ銀行元調査役野邑(のむら)貞夫容疑者52)が架空の投資話みづほ銀行で元本保証、年利10%で米国債の秘密運用をしている)を会社経営者に持ち込み、1800万円を騙し取ったと言うものである。
その他の被害総額を合わせると約12億4千万円だそうだ。

 銀行員が「高利回りの秘密運用がある」といって会社経営者等から金を騙し取る手口はおなじみのケースで、それには驚かなかったが、今回は同行職員18名からも約4億6千万円を騙し取ったと言うのである。

 これには驚いた。一般人ではなく銀行のプロ18名もだまされたと言うのである。
会社経営者に対しては「頭取印を偽造した預り証」と「偽造の見積書」、それに見積書には組織上存在しない「資金運用部の部長名」が記載されていたと言うが、確かに外部のものにはこれが有効でも、内部のもにはまったく効果が無い。

 内部のものなら「資金運用部」という組織が無く、「資金運用部長」などいないのはすぐ分かるからだ。

 どうやら今回の詐欺話外部向け内部向けがあり、野邑容疑者内部では私設のファンドを運営していたのではないかと思われる。
私も元金融機関の職員だから分かるのだが、金融機関の職員の中には、株式の運用に自信があるが、なぜか出世競争には取り残された人がいる。

 野邑容疑者52歳調査役だから、明らかに金融機関の職員としては落ちこぼれだ。
こうした境遇の人の対応は二通りに分かれ、① 銀行の出世競争から離れれてもっぱら趣味に生きる人と、② 何とか自分の実績を金儲けと言う手段で実現しようとする人に分かれる。

 野邑容疑者の場合は明らかに後者で、株式運用のノウハウで少なくとも金融危機が発生するまでは世界のヘッジファンドと同様に、かなりの高利回りを実現していたはずだ。
そして同僚に「融派生商品に投資すれば、10%の利回りは確実なのに、俺の銀行は無能だからそうした投資機会を逃している。
私に資金を預ければ確実に10%の利回りを約束する
」と誘ったはずだ。

 そうでなければみずほ銀行の同僚18名が4億6千万円も資金を預けるわけが無い。
また、こうしたファンドを野邑容疑者00年から約8年間に渡って運営していたのだから、その間は確かに運用実績は良かったのだろう(なお金融機関の職員が他のビジネスを兼営することは内部規約で禁止されている)。

 しかし08年の金融恐慌が野邑容疑者のすべての努力を水泡に帰して私設ファンドが倒産し、明らかに詐欺容疑が成立する会社経営者に対する投資話(架空の投資案件で頭取印を偽造)で逮捕されてしまったようだ。

 野邑容疑者としてはほぞをかむ思いだろう。
確かに資金運用部はなかったが、俺が資金運用部で運用部長だったのだ。金融恐慌以前は10%の確定利回りは確かに稼いでいた。すべてはリーマン・ブラザーズの倒産のせいだ

 今回の野邑容疑者の逮捕事件で世間にはかなりの私設ファンドがありそうなことが分かった。
今後、そうしたファンドをめぐって訴訟騒ぎや悲喜劇が発生することを予感させた事件だ。

(注)なお、こうした裏ファンドで得た収益は、しばしば所得隠しが行われるので、対象者は所得税法違反の容疑がかけられるだろう。

 

 

  


 

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(21.5.1) 黄昏の橋 弱者連合のゆくえ

200pxshinseibank_head_office1_3    毎日新聞の26日朝刊に「新生銀行とあおぞら銀行が来年夏をめどとした経営統合の交渉に入った」との記事が掲載された。
両行はいづれも1998年に経営破綻し、一時国有化されたあと、米系投資ファンドに売却されその傘下で再生を図ってきた銀行である。

 新生銀行はかつて長期信用銀行と言われ、またあおぞら銀行債券信用銀行と言われて、いづれも日本を代表する金融機関だった。
私が社会人になった昭和45年ごろは、特に長期信用銀行の評判は高く、私も長銀にあこがれた一人である。

 しかしそのビジネスモデルが日本の大企業に対する長期資金主として設備資金)の供給だったため、大企業が自己資本を潤沢に蓄え、金融機関からの融資が必要なくなると、融資先が先細りになってしまった。1980年代のことである。

 そのためバブル期には主として不動産事業に資金供給をシフトして、不動産融資ビジネスモデルにしたが、バブル崩壊と共に1998年、自らも破綻したのは承知のとおりだ。

 その後は米系ファンドの元で再生を図ることになったが、そのビジネスモデル米系金融機関のそれであり、主として証券化商品購入とそのディーリングだった。
実は日本にはそうした戦略で高収益をあげていた金融機関があった。
農林中金である。

 かつて農林中金長銀日債銀と同様に割引債利付債で資金調達を図る債券発行銀行ただし農林中金は農協資金の調達もあった)だったが、国内に融資先が少なかったこともあり、早くから米国債券を中心とする投資銀行に特化していた。

 このビジネスモデルがアメリカの金融機関と同様、金融恐慌が発生するまでの高収益構造を支えたため、新生銀行あおぞら銀行もこのビジネスモデルを採用することにしたのである。
農林中金を見習え。証券化商品に投資しろ

 あおぞら銀行などは農林中金の元専務能見氏を社長に据えたほどの熱の入れ方だった。
しかしこの戦略は、世界的な金融バブルの崩壊でまったく裏目に出てしまった。

 09年3月期の決算は新生銀行▲1430億円あおぞら銀行▲1960億円の最終損失になり、しかも損失補填のための増資もままならない。倒産の過去を持つ2行には、農林中金メガバンクのように増資を引き受けてくれる先が無いからである。

まずい、このままでは再び倒産してしまう。公的資金の再投入しか手がない」ここに来て金融庁が動き出した。
しかし、金融庁としても2行の面倒を見るのはきつい。そもそも収益のビジネスモデルが描けず、今後とも展望が持てない2行を公的資金で支え続けることは難しい。
しかもこの2行からはまだ返済を受けていない公的資金4000億円があり、政治問題化しやすい。

なんとか、2行を統合し、経営規模を縮小することによって安楽死できないものだろうか金融庁の本音である。

 だが、この2行の筆頭株主はいづれも米系投資ファンドで、海千山千の相手だ。おいそれとは金融庁の戦略に乗ってくれない。
投資ファンドが損失を受けない統合しか容認できない
抵抗は厳しく、金融庁の大盤振る舞い以外に統合は難しそうだ。

 
 思えば大企業への長期資金の供給と言う役割が終わり、そもそも存在理由が無くなってからの2行の迷走は悲しいほどだ。

 一度目は日本の不動産融資に特化して失敗し、今度はアメリカの不動産投資(形式は証券化商品の購入)に特化して再び失敗してしまった。
次なるビジネスモデルはもはや存在しない。

 2行が統合しても、客観的にはメリットが無いのだが、過去、新生銀行だけでも約8兆円公的資金を投入してきた経緯がある。
金融庁としてはいまさら後に引けないから、しばらくは公的資金の投入で生かし続けざるえないだろう。

 しかしいつまでも黄昏の橋をわたり続けることはできそうもない。

 

 

 

 

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(21.4.26) 日本の金融危機の現状

Images7  日本の金融機関の決算3月が多いので、現状では見込みの段階ではあるが、それでも明らかな特徴が出ている。

 基本的に赤字なのはアメリカの金融機関と同じだが、赤字の内容が日本型とアメリカ型に分かれている。
明確にアメリカ型なのは野村HD農林中金で、一方日本型三菱UFJFG三井住友FGであり、ちょうど中間に位置するのがみずほFGという具合だ。

 アメリカ型の特色は市場部門のウェイトが高く、そのため証券化商品を多く保有したためにその評価損が大きく、経営をひどく圧迫してしまった金融機関である。

 一方日本型市場部門のウェイトが小さく、いわゆるサブプライムローンの残高は少ないが、株式の持合で多くの株式残高があったために、この株価暴落で減損処理に追い込まれ、また融資の不良資産が増大した金融機関である。
サブプライム関連の損失が少ないだけ、経営は相対的に安定しており、三菱UFJFG三井住友FGがこれに当たる。

 みずほFG
は自ら投資銀行になろうとして、ロンドンに子会社を設立したが完全に戦略が裏目に出てしまい、メガバンク3行の中で、最も収益を圧迫してしまった。中間型といえる。

 それは3月期決算の内容を比較してみれば一目瞭然で、野村HD▲7094億円農林中金(▲6100億円)、三菱UFJHG▲2600億円)、三井住友FG(▲3900億円)、みずほFG(▲5800億円)と言った具合になっている。

 もっともどの金融機関も資本増強を図らなければBIS規制に抵触しそうになって、懸命な自己資本の増強に走り出した。

 特に野村HD農林中金は資本の増強をはからないと、経営そのものが成り立たないところまで追い込まれ、野村HD約1兆3000億円(野村HDは投資銀行として資本増強を図ったが、結果的には減損処理等に使用することになった農林中金は1兆9000億円の資本増強を図った。
他に三菱UFJFG1兆円これはモルガンスタンレーへの出資90億ドルの資金調達のため)、三井住友FG 8000億、みずほFG 3000億と言った具合である。

 農林中金は自ら証券化商品を組成することは無いが、世界最大規模の機関投資家として、いわゆるサブプライム関連商品を多く保有していたため、減損処理や引当金の積み増しに追い込まれたのである。

 一方野村HDは自ら組成した証券化商品の評価損や、購入した証券化商品の価格暴落により、市場部門だけで▲5746億円前年▲2261億円)の損失を出してしまった。
またリーマンの買収費用も経営に重たくのしかかっている。
市場部門の損失は野村の損失の約8割にあたり、これはアメリカのシティグループバンカメとまったく同じ構図と言える。

 以上の結果から日本の金融機関の将来がある程度推定できる。
日本経済が回復基調に乗れば、最も早く苦境から立ち直りそうなのは、日本型の三菱UFJFG三井住友FGで、一方アメリカ型の野村HD農林中金は証券化商品のウェイトが高いため、アメリカの金融機関と同様に長い間苦しむか、場合によったら公的資金の導入が必要になるかも知れない。

 みずほFGは両者の中間だから、日本経済がすばやく立ち直れば経営は回復するが、そうでない場合はかなり苦しい経営を強いられそうだ。

 リーマン・ブラザーズが倒産したときに、与謝野大臣は「蜂に刺されたようなものだ」との認識だったが、それは日本型の金融機関の場合で(ただしスズメバチだったが)、アメリカ型の金融機関は経営の根幹を揺るがすような影響があったことが分かる。

 

 

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(21.2.2) 日本にも金融危機が迫ってきた

Images7  昨年の9月、リーマン・ブラザーズが倒産した時、日本の金融機関に対する影響は「ハチに刺されたようなものだ」と与謝野経済財政担当相は言ったが、ハチはハチでもスズメバチの大群だったようだ。

 当初は日本では公的資金の投入などはありえないと高をくくっていた。しかしここにきて金融機能強化法を成立させて、約2兆円規模の公的資金で地銀以下の中小金融機関に資本投入を可能にしたり、一般企業にまで公的資金の導入が可能なように産業活力再生法の改正案も検討し始めた。

 しかしどうもそれだけでは済みそうもない。日本を代表する金融機関がアメリカやヨーロッパの金融機関と同様に揺らぎ始めたからだ。

 現在08年10月~12月の大手金融機関の四半期決算が発表されているが、明らかに変調が見て取れる。
日本の3大メガバンクといわれる、三菱UFJFG、三井住友FG、みずほFGの決算は三井住友はかろうじて黒字、みづほ、三菱UFJは赤字になり、特にみづほの決算数字は劇的に悪化している(三菱UFGの決算報告は6日なので、市場の予想)。

 08/4月~12月の当期利益は▲505億円第3四半期だけでは▲1451億円)、内訳は株式の急落による損失▲1968億円、倒産増加による不良債権処理費用2191億円だという。
みずほ通期(09/3期)には1000億円の黒字となると発表したが信じる人はいない。

 なにしろ前提条件が、「日経平均株価が9000~10000の間にあれば」というのだから、誰が見ても無理な数字だ。現在8000円を割っている株価が3月末ではさらに下がると見るのが普通だ。
なにしろ輸出関連企業は総崩れで黒字の企業を探すのが難しいくらいであり、これで株価が上がったら「株価は企業業績が悪化するに従って上がる」という新たな法則を作らなくてはならない。

 今思えば2000年みずほの設立は当初から苦難の連続だった。第一勧銀、富士、興銀といったそれまで日本をリードしてきた金融機関の合併であり、当初こそ「世界のメガバンク誕生」とマスコミがはしゃいだが、実際はそれそれが1兆円以上の不良債権を抱えた弱い金融機関同士の寄り合い所帯だった

 しかも2002年4月のシステム統合ではATM決済で250万件の口座振替にトラブルが発生し、すっかり金融庁の機嫌を損ねてしまった。
みずほ金融庁から業務改善命令を出され、勘定系システムの統合という、それ自体はまったく金を生まないシステム開発に経営資源のほとんどを取られる有様になってしまった。

 さらに追い討ちは02年10月、当時の竹中金融担当相が「金融再生プログラム」を発表し、不良資産を厳格に査定するように指示したことにある。
平成の鬼平といわれた竹中氏に「不良債権を隠し立てするとただじゃおかねえぞ」とすごまれ、それまで何とか隠していた不良債権を一気に処理しなくてはならなくなった。
03年3期には2兆3700億円という国内最大の赤字を計上している。
へい、おそれいりやした。隠し立てはいたしやせん

 市場はビックリしてしまい、株価は額面近くまで低下したが、1兆2千億円の増資に成功し、しかもその頃から日本の輸出企業の業績が急回復したのでみずほは不良債権処理に悩まなくて済むようになった。みずほの業績もすっかり立ち直り、竹中氏金融再生プログラムは成功したと評価された。

 思えば06年7月、公的資金約3兆円を完済した時が、みずほが最も輝いていた時である。
よし、今度こそ本当のメガバンクになれる

 その後、経営方針として海外展開を積極的に行い、アメリカの金融機関にならい投資銀行業務に特化しようとしたが、これは遅れた帝国主義日本が太平洋戦争で大敗したのと同じわだちを踏んでしまった。

 投資銀行をまねてロンドンでサブプライムローンをたっぷり含んだ金融商品を販売しようとし、これが不良資産の山を築いたからだ
08年3月期、サブプライム関連で銀行部門で2080億円、証券部門で4040億円の損失を計上し(全体では約3000億の黒字)、これがケチの付け初めだった。
しかしまあ、この程度で済んだのを幸いとしよう」ほっとしたのもつかの間、リーマン・ブラザーズの倒産以降金融環境は劇的に悪化し、止まるところをしらない。

 みづほは第3四半期1451億円の損失を計上したがおそらく09年1~3月期にも、第3四半期以上の損失を計上するだろう。
株価も06年の1000円から現在(1月30日)は227円とほぼ5分の1まで低下してしまった。シティグループの3ドルといい勝負になっている。

 すでに日本の大手金融機関のなかで野村HDが金融資産の不良在庫に苦しんでおり(「野村HDのリーマン・ブラザーズの買収は失敗だった」「リンクが張ってあります」)、つぎはみずほの番になってきた。
スズメバチに刺された野村みずほは早晩、政府の公的資金の導入が必要となってきそうだ。

 

 

 

 

 

 

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(21.1.30) 野村HDのリーマン・ブラザーズ買収は失敗だった

200pxnomura_securities_28head_off_2   昨年9月にリーマン・ブラザーズが倒産した後、野村HDがすかさずそのアジア・パシフィック部門欧州・中東部門人員IT設備を購入した。当時は「さむらいの逆襲」として世界を驚かせたものだ。

 引継いだ人員はアジア・パシフィック部門から約3000人、欧州・中東部門から約2500人、それとIT設備の技術者のインド人約3000人の都合約8500人と言われていた。

 この人たちに野村HDリーマン・ブラザーズが支払っていた給与水準を保証して全員引継いだといわれている。
リーマン・ブラザーズの給与水準は投資銀行の中でも最も高かったと言われており、たとえばリーマン日本法人の社員の平均年収は約4000万円、一方買収した野村HDの平均年収は1170万円だった。

 こうまでしてリーマンの職員を確保しようとしたのは、それまでリーマンが築いてきた地位が野村HDのそれよりはるかに上だったからである。
はっきり言えば野村HDは日本ではトップの投資銀行(証券会社)だが、海外ではまったくリーマンに歯が立たなかった。

 たとえばM&A(企業の合併・買収)の実績ではリーマンは日本を除くアジア・パシフィック地域で08年度世界第9位、欧州地域でも7位だったが、野村HDはそのどちらでも50位以下だった。

 買収に当たって野村HDは「ワールドクラスの競争力を備えた金融サービスグループの実現に向けた布石が打てた」と自己評価したが、今思えばそのときが野村HDの至福の時だった。その後は坂道を転げるように野村HDの業績が悪化したからだ。

 理由はすでに投資銀行(野村HDもその一員)のビジネスモデルが崩壊し、それゆえにリーマン・ブラザーズも倒産したのだが、引継いだリーマンの人員はその崩壊したビジネスモデルの戦士達だったからである。

 投資銀行は元々はM&Aや企業の資金調達の手伝いをしていたのだが、1980年代後半から上場をし、かつ金融機関から自己資金の30倍程度の融資を得て、金融商品を開発し販売するようになっていった。
いわゆるサブプライムローンをたっぷり含んだ金融商品、ディリバティブの販売である。

 この商品が成立する前提条件は「不動産価格は必ず上昇する」ということだったが、07年度から予想に反して住宅価格が低下し始め、そのため投資銀行はこの商品がまったく売れなくなってしまった。
次々に金融商品が焦げ付き、商品価値がゼロになってしまったからだ。

 そのため投資銀行は金融機関から大量に借り入れた借入金の返済ができず、資金繰りに行き詰った。
毒入り餃子を作って販売ができなくなった中国の天洋食品と同じである。

 そして瞬時にリーマン・ブラザーズを含めアメリカの5大投資銀行が倒産するか買収されるか、普通銀行に転換するかして消滅してしまった。
この突然の消滅は恐竜の消滅と同じくらい劇的といえる。

 この時すでに投資銀行モデルは世界では成り立たなくなっていたのだが、そのモデルを野村HDは購入したわけだ。
まだまだいけそうだ野村HDはそう判断した。

 もちろん野村HDも十分注意して、人とシステムだけ購入し、トレーディング等に関連する資産と負債、および不動産の購入は除外した。
サブプライムローンをたっぷり含んだ資産など必要なかったからである。

 しかし野村HDはやはり誤算したと言えよう。リーマンの職員の給与が高かったのはそのビジネスモデルが成立していたからで、すでに稼げる手段を失ったリーマンの戦士は、ただの高給取りの集団に過ぎない。

 そのことが誰の目にもはっきりとしたのは08年10~12月の四半期決算が発表された09年1月27日で、この日野村HD3429億円の赤字(08/4~12期では4923億円の赤字)であることを発表した。
この赤字はシティグループ7500億円の赤字よりは少ないが、バンカメ1600億円の赤字より大きく、国内の金融機関のうちでは飛びぬけて大きな数字だ。

 しかも野村HD4四半期連続の赤字で、シティグループ5四半期赤字とまるで競争しているみたいになってしまった。
野村の経営はおかしいのではないか」市場は疑問を抱き始めた。
株価は11月6日の948円から下がり始め、1月22日には642円約30%も低下してしまった。
格付会社は野村HD格付けをいづれも1ランク下げ始めている

 08年10~12月の四半期決算を見ると、なぜ野村HDが赤字に苦しんでいるか分かる。
自己売買部門これがいわゆるディリバテブ商品の売買)で1470億円の赤字、リーマンの買収で人件費を中心に603億円の費用を計上。
その他にアイスランドの銀行が発行した債券の損失431億円元ナスダック会長にだまされた金額が323億円となっている。

 本業では儲からず、詐欺に引っかかり、リーマンの人件費等は収益を生む前に四半期ベースで600億円必要というのが実情だ。
このままいくとリーマン関連の費用は年間2400億円(600×4)になるが、これは野村HDが当初用意した1000億円をはるかに越えている。
しかも野村HDは「この1000億円は2年間の人件費に相当する」と説明していた。

 たしかにリーマン効果はまったくないわけではなく、たとえばエールフランスーKLMがイタリアのアリタリア航空の買収をしたときのアドバイザーになったりしている。しかしこれで得られる手数料は数十億円規模と想定されるので、とても2400億円の人件費等とはペイしない。

 結局ディリバティブ商品を売りまくるという投資銀行のビジネスモデルが崩壊した今、M&Aでちまちま儲けても、とても一人当たり4000万の人件費は支払えない。

 今後野村HDはどのような対応を取るだろうか。09年1月~3月も今期と同規模の赤字決算と想定されるので、年間8000億円程度の赤字になるだろう。株価はさらに低下し、格付けも低下して資金調達は極度に難しくなりそうだ。

 アメリカの投資銀行と同様に政府の支援なくして生き残ることは難しそうだが、そうすれば年間2400億もかかるリーマンの人件費等の削減が焦眉の急になるだろう。

 結局野村HDリーマン買収劇は高い買い物をしただけに終わってしまいそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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