(22.7.24) 過疎の村は復活するか? 王滝村見聞記
(松原スポーツ公園の多目的屋内コート)
今回の「おんたけウルトラトレイル100km」に参加してみて、地方の過疎の村のあり方についてしみじみ考えてしまった。
王滝村は語源が「おんたけ」から来ているように、元々は木曽御岳の信仰登山とひのきの生産で栄えた由緒正しき村だが、人口は毎年減少の一途をたどり現在900名あまりになっている。
過疎化が進み老人人口が増え、若者がほとんどいない。
今回この大会は長野県王滝村の松原スポーツ公園を主会場に開催されたのだが、「この公園は実に立派だが、はたしてここを王滝村の住人が使用しているのだろうか」と疑問が生じた。
松原スポーツ公園は陸上競技、サッカー、野球場を備え、多目的屋内コートまである実に立派な総合施設である。
トイレにはシャワー室まで併設されている。
(王滝川)
もし東京近在にこのような施設があれば連日利用者で満杯になることは確かだが、過疎の村の老人がそうした競技をするとは思われない。
老人にはサッカーや野球は激しすぎるスポーツだ。
実際施設の空き状況を検索してみると、使用されるのは休日と夏休み期間だけであることが分かった。
それも今回のOSJのウルトラトレイルのように、王滝村の人たちが使用するというより外部のイベントが多い。
「なぜこんな立派なスポーツ施設を、老人ばかりが住んでいる過疎の村に建設するのだろうか」とても不思議な気がした。
過去自民党政権は地方に優しい政権で、こうした過疎の村までも公共投資と称して運動公園や公民館を建設してきた。
王滝村だけでなく、王滝村周辺の市町村にも同様の運動公園や公民館がある。
地方は公共施設のオンパレードで公園や公民館だけでなく、道路、橋、ダムとありとあらゆる施設がそろっているが、ただし人がいないから使用する人がいない。
設備は作る時は国や都道府県からの補助があるが、その後のメンテナンスは市町村の責任だから、メンテナンス費用の捻出には苦慮する。
(王滝村の美林)
実際この松原スポーツ公園は芝生が綺麗に刈られ、運動場に雑草が生えていなかったから、真面目な管理をしている。
利用料は1日で1万円前後だから、非常に安価だが、それでも利用は休日と夏休みに集中しているので、とてもペイすることはないだろう。
そう思って王滝村の財政状況を見てみたらひどい逼迫状況で、22年度にも財政再建団体に指定されそうになっており、自立計画を作成して支出の削減策を図っていた。
もっとも王滝村の財政が逼迫したのは、スポーツ公園を建設したからではなく、村営のスキー場建設の資金回収がままならなくなったからである。
王滝村は昭和37年、おんたけスキー場を開設しピークの平成3年~6年間は毎年60万人強のスキー客が来ていたが、スキーブームが去るとつるべ落としの減少になり、最近は6万人程度のスキー客しか来ない。
設備投資は60万人強を見込んで増設してきたのに、実際はその10分の1しかスキー客が来ないから、建設資金の回収ができなくなるのは当然だ。
一方で観光で村おこしをしようとして松原スポーツ公園やキャンプ場を作ってきたのでさらに問題は深刻になていいる。
赤字はますます膨らみ、村民は減少しているから残るのは借金と膨大な公共設備だけになってしまった。
もっともこうした状況は王滝村だけでなく、過疎に悩む市町村は多かれ少なかれ同様の状況にある。
現在の日本の危機の一つにこうした過疎の地方自治体の問題がある。
(三浦貯水池)
一体どうしたらいいのだろうか。解決策は複合的だが王滝村だけにとって見ればスキー客の増大を図ることが最も効果的だ。
しかし日本のスキー人口は年々減少しており、他のスキー場と競争して顧客競争に勝ち抜くほどおんたけスキー場が優位にあるわけでない。
日本の製造業復活の条件が成長しているアジアを取り込むことだが、過疎の村の復活条件も実はまったく同じだ。
日本人はスキーをしなくなったが、中国や韓国や台湾の人はそもそも雪自体が珍しい人が多く、スポーツを楽しむ若者も多い。
幸い王滝村には霊峰木曽御岳山まであるのだから、スキーや登山、それに王滝川を利用したカヌー等のイベントがいくらでも計画できる。
ユニクロの柳井会長が言うように「アジアを取り込めなくては成長なし」なのは日本の地方自治体も同じだと腹をくくって、(旅行会社とタイアップして)中国人等の観光客誘致に積極的に乗り出すのが一番効果的だと私は思う。
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