(22.12.4) 独裁国家はなぜ永続するのか? 北朝鮮の事例
ウィキリークスが公表した公文書の中に韓国高官の話として「キム・ジョンイル氏が死亡した後、2~3年以内に北朝鮮は崩壊するだろう」との予測が述べられていた。
この予測が私の感度とかなり違っていたので、「おや、韓国はそう見ているのか」と思った。
私の感度は独裁国家はなかなか崩壊せず、かなり持ちこたえるのではないかと思ってるからだ。
注)北朝鮮の建国は1948年だから、すでに60年以上この体制が続いている。金日成が死亡した1994年にも、後数年で北朝鮮は崩壊するといわれたが、すでに15年以上も命脈を保っている。
現在の北朝鮮は経済的には完全に中国の属国となっており、核開発の脅しと哀願によって中国から食料を調達してそれで生き延びている国家だ。
国民のほとんどが飢えて餓死したり、かなりの人々が中国領内に逃げ込んでいる。
どう見ても崩壊しておかしくないのだが、この国家を中国が懸命に支えている。
中国としては大量の難民が中国に押し寄せたり、また完全に崩壊して韓国と合併したりしたらことだから、泣く泣く経済援助に応じているのだが、本音はヤクザに身をやつした子供を持った親の気持ちだろう。
中国は北朝鮮が中国の改革開放を習って経済改革に取り組んでほしいというのが本音だ。
しかし北朝鮮当局としたら世界一幸せな国家に生きている北朝鮮の国民が、中国の物質主義に染まって、「もしかしたら世界でもっとも貧しい国は北朝鮮ではないか」なんて疑問を持ったら大変なので、改革開放なんてしたくてもできない。
結局いつもの戦争の瀬戸際政策をとって哨戒艇を沈没させたり、大砲をヨンビョン島に打ち込んだりして「戦争をしたくなかったら経済援助をしろ」と脅すばかりだ。
通常このような独裁国家は国民が立ち上がってルーマニアのチャウシェスク政権のように独裁者を銃殺すると予測しがちだが、実際に銃殺されているのは金正日氏に反対した人々ばかりで、北朝鮮には反対者がいなくなってしまった。
注)昨年末のデノミは後継者の金正恩氏が指導したのだが、この政策に反対したものは金正恩氏の反対勢力としてパージされたと、米国の外交文書に記載されていた。
私が独裁政権が崩壊しないと予想するのはこの反対者がいないという現実からで、みんながこの独裁政権を「世界にまれに見る豊かな国」と思っている以上は革命などは起こりようがないと思うからだ。
私が前に書いた記事でこの金王朝は次代の正恩氏がラストエンペラーになると書いたのは、実力者NO1の張成沢氏が権力を握ると想定したからで、金王朝は崩壊するが北朝鮮は継続すると思っている。
注)金総書記の断末魔 正銀を守ってくだされ!!を参照
国民は「北朝鮮が世界一」だと思っても、北朝鮮のトップ層は外国に何回も出て実態を知っている。
「この貧しい北朝鮮を救うには金一族をパージして、中国並みの改革開放路線を目指そう」張成沢氏を中心にそう考えているはずだ。
しかしこれは権力の中枢が金一族から北朝鮮の実務者集団に移るだけで、社会主義社会の看板も北朝鮮労働党の看板も何にも変わらない。
革命は行われず、クーデタが行われ体制は維持される。
北朝鮮の本当の崩壊は東欧圏がそうであったように宗主国中国の崩壊がなければ、崩壊するとは思われない。
現状中国経済は絶好調で、かつ分離独立派や反体制派完全に力で押さえつけているからすぐには崩壊しそうもない。
だから北朝鮮は金正恩氏が失脚しても、中国が存在している限り存在するというのが私の予想だ。
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