(22.4.22) 韓国経済の光と影 その2
しばらく前までは韓国経済の影の部分の記事が大勢を占めていたが、最近は韓国経済を礼賛する記事が多くなっている。
特に週間エコノミストの4月13日号は韓国特集で、表題が「最強・韓国」で副題が「原発、電気、自動車・・・・日本敗北の理由」となっている。
具体的な内容を見てみると以下のようだ。
① DRAM、液晶で世界トップのサムスンの猛烈経営
② 冷蔵庫と洗濯機を売りまくる総合家電の覇者LG
③ 米国で着実にシェアを伸ばす、ホンダを抜いた現代
確かにこの記事を見る限り韓国の躍進はすさまじい。ここにきてあらゆる指標も好転している。
① 昨年度のGDP伸び率は0.2%だったが、今年は韓国銀行の予測では5.2%になると言う(日本は09年は▲5.2%、今年は+1%程度)。
② 通貨は一時1ドル1500ウォン程度まで急落していたが、最近は1100ウォンまで回復し安定している。
③ 株価はリーマンショック時直前のレベルまで回復してきており、日本がまだ7割程度の回復に留まっているのと大違いだ。
④ 輸出も順調に回復しており、特に中国とアセアン等に対する輸出が伸び、一方北米、欧州、日本に対する輸出のシェアは縮小し、輸出先のグローバル化が進んでいる。
こうした指標の好転を受けて、格付機関ムーディーズが韓国国債の評価を1段階あげて、上から5番目のA1に変更した(日本は上から3番目)。
「ようやく世界が韓国経済の実力を正当に評価し始めた」韓国のマスコミは大騒ぎだ。
元々韓国経済の問題点は国内に資本が少ないため多くの資金を海外から導入し、しかも短期資金のウェイトが高いことにあった。
このためリーマンショクやアジア危機のような金融危機が起こると資金が韓国から一斉に引き上げられ、その調達のためになけなしの外貨準備を崩さなくてはならないことだった。
今回のリーマンショック時にもこれが現れて一時は外貨準備が激減したので、市場は韓国が再びIMFからの支援が必要になるのではないかと固唾を飲んでいたものである。
しかし09年度に入り、韓国は急速に輸出が回復した。一番大きな原因は中国経済が大躍進したことで、中国に対する輸出が伸びさらに新興国に対する輸出によって韓国経済はV字回復を遂げた。
日本がもたもたしているのに比較すると好対照だ。
「見ろ、もはや日本に学ぶべきものは何もない。韓国の企業は世界トップだ。日本が韓国を学ぶ番だ」韓国の鼻息は荒い。
韓国の企業はオーナー企業が多い。こうした危機の時期はすばやい決断が要請される。韓国は市場特性を「低価格と適当な品質」を維持しながらいわゆる新興国の市場開拓に成功した。
注)私もDELLのディスプレイをサムスン製にしたが、非常に安くまた半年で壊れた。保証期間内であったのですぐに交換してくれたが、この経験で韓国製品は安いが壊れやすいことを実感してしまった。
だが、しかしこの状態がいつまで続くのかは疑問がある。一番の問題は失業者が多く日本と同様に国内市場が拡大しないことだ。
投資はほとんどが国外でなされており、国内には投資機会がほとんどない。
サムスン・現代・LGといった大企業はGDPで日本の5分の1しかない市場をとうに諦め国外ばかりに投資をおこなった。そのため国際収支の構造がかわり、08年以降所得収支が激増している。
注)2000年までは所得収支は常に大幅な赤字だった。その後とんとんの状態が続いていたが、08年より急激に所得収支が増大した(08年 約5400億円、09年 約4500億円)。なお韓国企業は証券投資より直接投資に熱心だ。
韓国政府も景気対策として、2%という低金利と金融緩和策を実施したが、この資金はほぼ国外投資に向かい、国内はデフレ状態になっている。
日本との違いは大手企業が海外でしたたかに収益を上げていることだが、この快進撃がいつまでも続くとは限らない。
アメリカでの躍進目覚しい現代自動車がいつアメリカでトヨタと同じようにイケニエになるか分からないし、中国の追い上げもきつい。
そして何より北朝鮮との緊張関係があり、哨戒艦天安が北朝鮮からの攻撃で撃沈されたとなると一気に緊張感が高まってしまう。
良くも悪しくも韓国の経済は国際情勢を敏感に反映して、急速に好転したり悪化したりする。
そして国家も企業も多くの資金を外国に頼っているため、業況が悪化すればすぐに資金が逃げ出す。
今は中国経済の恩恵と、新興国投資が効を奏して韓国経済は絶好調だが、やはり注意深く推移を見守っていくことが必要だ。
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