(22.1.12) 投機マネーと農産物価格の高騰
世界の金余り現象が農産物価格の高騰に反映し始めた。砂糖の価格が28年ぶり、カカオ豆が24年ぶりの高騰をしている。
こうした農産物の価格は実需が伸びたというより、生産が若干減ったことを狙った投機マネーの流入で、たとえば日本では砂糖の消費量は傾向的に減少してきており、昭和48年の318万トンから平成6年には220万トンとなっている。
日本では砂糖は健康生活の大敵と見られており、私なども喫茶店でコーヒーに砂糖をたっぷり入れると、「おとうさん、入れすぎよ」なんてたしなめられている。
日本では今後とも砂糖消費量が減少していくことは確かだ。
チョコレートも同じで、需要が一向に伸びない。明治製菓がミルクチョコレートを105円から120円に値上げをしたが、さっぱり売れなくなって仕方なくまた値段を引き下げた。
砂糖やココア豆の価格が高騰すると、生産地の不作や新興国の需要増が必ず挙げられるが、こうした原因はトリガーであっても本当の理由でない。
本当の理由は世界各国が行っている金融緩和策で、低金利と量的緩和によって市場にあふれた資金が投資銀行やヘッジファンドに集まり、その資金が世界中を徘徊しているからだ。
こうした資金の向かっている先は、一頃まではもっぱらサブプライムローンを仕組んだ証券化商品だったが、リーマンショックでけちをつけ、今はまったく価格が付かない。
さすがに証券化商品は危ないということになって、今は安全確実で高利回りが期待できる実物に投機資金が集中している。
金、石油、そして農産物である。
砂糖の価格は1年前の2倍以上になって29年ぶりの水準なのだが、これを受け国内大手の三井製糖は1kg当り価格を09年8月には6円、09年10月には5円引き上げた。
このデフレ時代に価格アップとは信じられないような措置だ。
もっとも日本を始めとする先進諸国では需要増は見込めないから、価格アップで更なる需要減少に見舞われることは確かだ。
日本においては価格をアップしても企業収益の増加にはならない。
実需が増加するのは新興国だけであり、本来ならそれが先進国の需要減とどのようにバランスをとるかで価格動向は決まるはずだ。しかし実際は投機資金の量によって決められている。
従って農産物価格の推移はアメリカや日本や西欧諸国が行っている金融緩和策がいつ中止になるかの出口戦略にかかっている。
現状では10年度上半期中は金融緩和策が継続されそうで、下期になって金や原油や農産物の価格上昇に国民が悲鳴をあげて政府を攻撃するようにならないと、金融引締め策はとられないだろう。
それまではこうしたコモディティの価格が上昇しそうで、私のような年金生活者にとっては不安な日々が続きそうだ。
注)日本での低金利政策や金融緩和はまったく日本経済の回復には役立たない。資金は国内ではなく海外で使用され、それももっぱら投機資金として利用される。
リーマンショック前まではこうした資金の供給国は日本だけだったが、今ではアメリカや西欧諸国も低金利政策をとって投機資金を供給している。
金融が自由化されている国の資金はもっとも利益が上がる場所で使用される。
日本はもっとも利益があげにくい場所なので、国内投資に向けられることはほとんどない。
日本経済の振興の目的のためには金融政策はまったくの無駄なのだ。
最近のコメント