(20.6.23) グリーンピースに対する法治国家日本の対応
さすが法治国家日本だと感心してしまった。グリーンピース・ジャパン(GP)のメンバーが「宅配中のクジラ肉入りダンボールを盗み出した件」で警視庁と青森県警はGPのメンバー2人を20日逮捕した。
何しろいままでグリーンピースには散々泣かされてきた。
調査捕鯨船日新丸の乗組員が、シー・シェパードから薬品入り瓶を投げつけられ怪我をしたのだが、海域を管理しているオーストラリア政府は知らぬ顔のハンベイを決め込んだ。
オーストラリアのメディアはシー・シェパードの乗組員を「主義が正しければすべての行為が許される」とばかり英雄扱いにしていた。
オーストラリアが法治国家でないことは分かったが、GPのメンバーは日本も法治国家ではないと思っていたらしい。
GPは信じられないことに、窃盗したクジラ肉を証拠品として「日新丸の乗組員がクジラ肉を横領している」と告発したのである。
「法治国家では正当な手段で入手した証拠品でなければ証拠品として採用されない」という原則を知らなかったのだろうか。
あきれ返った警視庁と青森県警がGPメンバーを逮捕した。一方「クジラ肉の横領」についてはそおした事実はなかったと東京地検が結論づけた。
GPメンバーの逮捕は法治国家として当然の態度を示したのだが、「クジラ肉の横領問題」についてはいささか疑問点が残る。
ことの経緯は以下のとおりだ。
・GPのメンバーが事前に元日新丸の乗務員から、クジラ肉を西濃運輸が配送する情報を入手した。
・4月15日、帰港していた日新丸を監視し、情報どおり西濃運輸のトラックがクジラ肉を受け取り、埠頭から大田区の配送所に向かうのを確認し尾行した。
・大田区の配送所にGPメンバーが従業員を装って忍び込み、クジラ肉の入った宅配便の伝票NOを入手した。
・4月16日、西濃のインターネットの検索で、青森県の西濃の配送センターに宅配便が到着することを知って忍び込み、従業員を装ってクジラ肉の宅配便(23.5kg、5万4千円相当)を盗み出した。
・5月15日、GPは記者会見を開き「日新丸の乗組員が長年にわたりクジラ肉を着服しており、業務上横領に当たる」と日新丸の乗組員12名を告発した。
その証拠品として、配送センターからGPのメンバーが盗んだクジラ肉を提示した。
驚いた西濃は翌日、被害届を青森県警に出した。
・6月20日、GPの告発を受けて調査をしていた東京地検は「クジラ肉は乗組員が無断で持ち出さしたものではない」と結論し、日新丸乗組員12名を不起訴処分とした。
・同日、警視庁と青森県警はGPのメンバー2人を、窃盗と建造物侵入の疑いで逮捕した。
ほとんどスパイ映画と言って良い。中身がクジラ肉でなく麻薬や核物質だったら、話の筋はハリウッド映画そのものだ。
しかし冷静に考えてみるとこの事件はとても不思議だ。
① 西濃の配送センターから簡単に伝票NOがもれ、また宅配便が盗まれているが、宅配センターのセキュリティーはそんなに低いのだろうか。
通常は監視カメラが設置されていて、怪しげな人物を特定できるはずだが、なぜそれができなかったのだろうか。
② GPが記者会見してから東京地検が日新丸乗組員を不起訴にするまで1ヶ月以上もかかってるが、なぜそんなに時間がかかったのだろうか。
「船主が土産として配布したもの」だったら即座に問題がないはずだが、なぜそれほどまで慎重な捜査が必要だったのだろうか。
①については、西濃のセキュリティー水準が低すぎると言うことで、それはそれで西濃の経営上の問題と言えるが、②については何かおかしい。
どうして東京地検はすぐに判断できなかったのだろうか。
クジラ肉を乗組員が入手するルートは実は3ルートがあるらしい。
① 現物支給、② お土産、③ 無断で持ち出し の3ルートである。
今回は「お土産として船主が配った」と言う結論だが、GPの言うように「無断持ち出し」の可能性も否定できない。
東京地検としては、GPの不法に窃取したクジラ肉を証拠品とするわけにいかないので、独自調査をしていたわけだが、その調査期間に1ヶ月かかったと言うのならばつじつまが合う。
その結果の不起訴だが、この点については、私は一種の業務上の利権として、乗組員によるクジラ肉の持ち出しが有ったのではないかと疑っている。
財務省や国土省の役人がタクシー会社にたかったのと同じレベルの役得のイメージだ。
「無断持ち出しはあったが、一種の慣行として行なわれており、あえて事件にするほどのこともない」という判断が東京地検でされ、幕引きのために「お土産として船主がくばった」と言う説明を信じたふりをしたのではないかと私は思っている。
どうだろうか。
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