(22.1.24) オバマ大統領と強欲資本主義との戦い 「真昼の決闘」

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 オバマ大統領が21日に発表した金融規制強化案は、世界のどの国の指導者の規制強化案より徹底的でドラスティックだったので、市場は大騒ぎになってしまった。
これはニクソンショックに匹敵するオバマショックではないか
いや、単なるパフォーマンスで実施できっこない

オバマ大統領は強欲なウォール街の連中が我慢ならないんだ
しかし、アメリカはそのウォール街でもっているんじゃないか

国の資金で倒産を免れた連中が、こんどは国の資金を使ってぼろもうけをしてボーナスの大盤振る舞いじゃないか
それが資本主義というものだ。国が安い資金を提供してくれたら、それを使って利益をあげて何が悪い

 喧々諤々(けんけんがくがく)の議論になってしまった。

 今回オバマ大統領が発表した金融規制強化案の以下の3点である。

① 銀行によるヘッジファンドの所有の禁止
② 顧客から依頼のない自己資金を使った証券売買の禁止
③ 金融機関の規模拡大を抑えるための預金規模による制限


①の意味
 金融機関とヘッジファンドとの最大の相違は政府の規制を受けるか否かにかかっている。後者は税金さえ納めれば何をしても問題がなく、また財務の公開も必要としない。
しかもヘッジファンドの多くは本社をケイマン諸島のような無税の地域において、税金の支払いさえ免れることができる。

 アメリカの大手金融機関は、取引内容に問題があり政府の規制がかかりそうな案件(ヤバイ案件)を子会社のヘッジファンドで行ってきた。そうした抜け道を規制するということ。

②の意味
 規制緩和によって、現在金融機関は銀行業務と証券業務を兼営することができる。このうち銀行業務は斜陽産業でまったく儲からない(企業融資は設備投資が停滞して儒資がなく、個人融資は倒産確率が高い)。

 このため金融機関は証券業務に特化しており、それも自ら証券を組成してそれを売却したり、自己資金で証券取引をおこなう業務(自己取引という)がかせぎ頭になっている。
特に金融機関は今、政府からほぼゼロパーセントの金利で資金調達ができるので、その資金で金や石油や穀物や新興国の株式に投資をすれば絶対にもうけることができる。
このぼろもうけを止めさせ、証券業務を顧客からの注文だけに制限させようというもの。

③の意味
 業績が極度に悪いシティ・コープを倒産させられないのは、その影響が大きすぎるため。このため小さな金融機関にしていつでも倒産を容認できるような規模にしようというもの(アメリカでは小規模な金融機関の倒産は激しい)。


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(1987年のアメリカ

 今回の発表は基本的方向を指し示したものであり、その具体化は現在議会で検討されている金融規制強化法に反映されるため、そのままオバマ大統領の発表通りになるわけでない。

 しかし今回のオバマ大統領の方針は、従来アメリカが目指してきた金融資本主義の方向とは真っ向から対立し、アメリカという国のあり様を否定しようとしている。

注)1990年代の中ごろからアメリカは自動車産業に代表される産業資本に見切りをつけ、金融資本で国の運営を行うことにした。
このための戦略が金融の自由化とグローバリズムで、世界中から金を集めて、最後は踏み倒す戦略をとった(サブプライムローンの例)。

 現在はさすがにサブプライムローンではだませないので、今度は金や石油や穀物等の実態のあるものを証券化したり、市場で売買したりして収益を上げている。


 ウォール街などは当然大反対で「成長と活力を奪う非現実的な提案」とこき下ろしているが、オバマ大統領は「ウォール街が戦う気なら、受けて立つ用意がある」とまるで「真昼の決闘」みたいになってきた。

 実際アメリカは金融資本主義から決別すると、後に残されたのはIT産業航空機産業農業位しか競争力がないので、成長と活力からは確かに程遠い状況にはなりそうだ。

注)そのためGoogleを中心とするスマート・グリットという新戦略を考え出している。

 オバマ大統領は本気のようだが、ウォール街の抵抗は激しく、共和党を中心に巻き返しが行われるだろう。
一方オバマ大統領はこの先弱いドル政策を推進して国内産業の保護育成に努め、自らの支持基盤である工場労働者の職場確保に邁進しようとするだろう。
ウォール街にいくら儲けさせても、そこは金持ちの共和党の地盤だからだ。

 たとえばゴールドマン・サックスの従業員約3万人09年度の平均給与は約4500万円で、これはアメリカ大統領の給与とほぼ等しい
あの、強欲だけの連中が政府の低利資金を好き勝手に使って、そして給与はこの俺と同じか!!!」オバマ大統領ならずとも頭に血がのぼるはずだ。

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(1987年のアメリカ。この頃のアメリカがオバマ大統領のユートピアのようだ

 オバマ大統領1980年代日米経済摩擦が激しかった頃のアメリカに戻ろうとしている。
そこはまだ産業資本主義が残っていた時代だが、大幅なドル安になればたしかにアメリカの自動車産業や航空機産業には追い風になるだろう。

 そうなるかどうかは、今後のアメリカ議会(主として共和党)とオバマ大統領との「真昼の決闘」次第のようだ。

 

 

 

  

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(21.9.3) アメリカ商業用不動産価格の暴落と金融危機の第2段階

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(金融危機第2段階の足音が近づいてきたと言っているワンちゃん)  

 サブプライムローン問題
に端を発したアメリカの金融恐慌は表面的には落ち着いている。特に5月のストレステストの結果発表で、追加する資本金は10社に対し、せいぜい7兆円規模だとFRBがお墨付きを与えてからまったく問題がないかのようだ。

 決算数字を見ても第一四半期以降黒字の金融機関が続出しており、これで金融危機は収束したとFRBは考えているらしい。
もっともなぜ黒字になるのかは証券化商品時価会計を止めたからで、その理由が振るっていて、誰も証券化商品を買う人がいなくなり、市場価格が分からなくなってしまったからである。

どうせ市場価格が分からないのなら取得原価でいいやFRBは太っ腹だ。
これで隠された住宅関連の損失はIMFの試算で09年4月現在約90兆円(9900億ドル)規模になるから、黒字にならないほうがおかしい。

 サブプライム問題をこうして隠蔽していたら、今度は商業用不動産の価格が下落し始めた。住宅価格06年から暴落が始まったのだが、商業用不動産はそれから2年遅れて08年から暴落し始めた。
個人より企業の方が資金的な懐が深く、持ちこたえていたのだろう。

 住宅価格の方はピークから約35%低下して下げ止まりの傾向が見えてきたが、商業用不動産は約35%低下してこちらはさらに低下傾向を示している。
日本の例では、商業用不動産価格はピーク時から87%下がってようやく下げ止まったので、それから見るとまだまだ地獄を見そうだ。

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Image01  商業用不動産価格の暴落がどの程度金融危機問題に発展するかは融資規模を見るとわかる。

住宅用不動産商業用不動産の金融機関の融資規模(証券化商品を含む)を比較すると、09年4月現在のIMFの推計で住宅用がローン・証券込みで約1100兆円(12兆ドル、商業用が約240兆円(2.6兆ドルだから住宅用の約2割に相当する。

 一方評価損失は住宅用がこれもローン・証券込みで130兆円(1.4兆ドル、商業用が38兆円(0.4兆ドルで、住宅用の約3割に相当する。
ただし問題は商業用不動産の価格がさらに低下し、たとえば日本に倣って70%程度低下すると評価損は76兆円規模になり、住宅用の約6割になってしまう。

 今問題になっているのは、商業用不動産価格は今後も急低下して、ピーク時対比70%程度(87%はともかく70%は行きそうだという感度は低下するのではないかと思われていることだ。
こりゃ、ヤバイ。住宅用だけでなく商業用もつぶれたら、金融機関は持たない

 この商業用不動産の価格の急低下についてリチャード・クー氏は「金融の問題が再び注視されるようになるのは時間の問題」だと氏の本「世界同時バランスシート不況」の中で以下のように述べている。

「(09年)8月時点の株式やCDS市場は、足元で月間7.6%も下がっている商業用不動産の問題を・・・無視しているが・・・いつまで続けられるか疑問である。
米国の住宅価格はピークから約35%下がったといわれるが、・・・その損失は約140兆円(
IMFの試算では約130兆円)といわれている。
そこに)商業用不動産が35%も下がった問題が乗っかるのだから、・・・金融の問題が再び市場で注目されるのは時間の問題だろう。

 商業用不動産価格については価格の急落が始まったばかりであり、底入れの気配はない


注)市場は最近(8月末以降)この商業用不動産価格暴落に伴う金融機関の損失に気づいてきたみたいで、株式の動きが不安定になっている
また為替もじりじりと円高になってきた。
ひところ高くなっていた原油価格も再び低下すると私は思っている。


 アメリカの金融問題はサブプライム問題から、商業用不動産の暴落問題に移ってきたので、今後はこの価格動向に目が離せなくなってきた。
金融危機の第2段階といえる。

 

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(21.8.1) 米中同盟は腐れ縁

P7250340  (マッスル氏撮影 山崎編集)

 7月27日
28日の両日、米中戦略・経済対話がアメリカで開催された。
開催に先立ちオバマ大統領孟子を引用し「人が通らない山道はたちまち雑草で覆われる」と演説し、中国側が"Yes,We can"などとオバマ大統領のキャッチフレーズを引用したりしてすっかり蜜月時代を演出したので、世界のマスコミは「すわG2だ。米中二国間時代の始まりだ」と騒ぎ始めた。
世界はアメリカと中国で仕切られるようになったとの認識だが、それは過大評価というものだ。

 確かに戦略対話では気候変動、北朝鮮・イランの核問題、中国の人権問題等が議題には登ってはいたが、両国ともこうした問題を本気で取り扱うことはせず、もっぱら経済問題、それもアメリカ国債の購入問題に焦点が当てられていた。

 この会議は、はっきり言ってしまえば経済的に疲弊したアメリカが「頼む、アメリカ国債を買ってくれ」と依頼し、金持ち中国が「それなら国債が減価しないようにしっかり経済運営を行なえ」と釘を刺した会議に過ぎない。

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マッスル氏撮影 山崎編集)

 なぜそういえるかといえば具体的に内容を見てみれば分かる。戦略対話では以下の課題が話しあわれたが、単なるジェスチャー以外の何者でもない。

 気候変動クリーンエネルギーがテーマになったが、この両国こそが二酸化炭素を世界にばら撒いている元凶で、それをやめればたちまちのうちに経済が減速するから、話し合いの余地など最初から無い。このまま垂れ流しを継続しようというのが結論だ

 人権問題は中国が「ウイグルやチベットは国内問題」だと主張しており最初から話し合いの対象にならないが、アメリカは国内の人権派を意識してパフォーマンスで言ってみただけに過ぎない。

 北朝鮮やイランの核問題は、前者は6カ国協議でも難航しているのだからいまさらの感があるし、後者は中国と話し合いをする内容ではない。

 アフガン・パキスタンの安定化もアメリカの問題で中国は関係がない。

 だから戦略対話など話あう内容がまったくないのだ

 一方経済対話については、従来は元安中国の為替の操作)問題が最重要課題となっていた。
元が不当に安いため、中国の輸出が急拡大しているという問題意識である。

 就任早々にガイトナー財務長官が「オバマ大統領は中国が為替操作をしていると信じている」といって牽制したが、今回はまったく元安問題は議題に登らなかった。

 それは昨年のリーマンショック以降、アメリカの貿易収支は大幅に改善しているからで、アメリカが世界から物を買えなくなっているからである。輸出も輸入も落ちているが、輸入の落ち込みの方が激しい

 このため輸出立国中国、日本、韓国が大幅に経済減速しており、「元安だから貿易収支が赤字ではなく、アメリカの過剰消費が問題だ」とした中国の主張が裏付けられた形だ。


 現在アメリカの最大の課題は拡大する財政赤字を誰がファイナンスしてくれるかにかかっている。
金融機関の救済や自動車産業の救済に金は湯水のように出て行くが、すべて国債発行でまかなう以外に手段はない。
従来は日本がそうした財政赤字をファイナンスしていたが、日本の貿易収支は大幅に悪化して新たに米国債を購入する余裕がなくなった。

 まだ貿易収支が黒字で余裕がある国は中国ぐらいで、アメリカは経済立て直しの資金を中国から調達しようとしている。
一方中国は約200兆円の外貨準備があるが、うち約75兆円がアメリカ国債で、さらに約75兆円がアメリカの不動産担保債といわれている。

 合計で150兆円もアメリカ債を買い込んでしまい、アメリカに対する最大の債権者になってしまった。
こうなると不振会社に融資を続けた金融機関と同じで、中国とアメリカは一蓮托生の国といえる。
アメリカが倒産したら中国は150兆円の不良債権を抱えてしまう。

 もし一蓮托生を解消しようとすればアメリカ国債を売却することになるが、中国が売りに出たことが知れれば市場はパニックになり、アメリカ国債の減価は何処まで拡大するかわからない。
何と言うことだ。国債を売ることもできないのか」一頃の日本と同じ立場だ。

 結局中国はアメリカ国債の価格維持のために、これからも国債を購入し続けなくてはならないことに気付き愕然とした(中国が購入しないとFRBがひき受けることになり、これは通貨の増発と同じだからインフレが進む。
インフレが進むとドル安が進み、中国が持っている国債が減価してしまう
)。

P7250343  (マッスル氏撮影 山崎編集)

 今回の経済対話はアメリカが弱者の恫喝をおこない、中国がしぶしぶそれに応じた会議に過ぎない。かつてのアメリカと日本の関係に似ている。
こんな会議がどうして、「米中2国間時代の始まり」などといえるだろうか。

 確かに米中同盟は始まった。しかしこれはアメリカ国債を契機とした単なる腐れ縁に過ぎない。

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(21.5.29) GMの破算とCDSの爆発

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 アメリカ政府がGMに求めた再建計画提出日6月1日の期限が近づいているが、どうやらGMは倒産を免れることができないらしい。
金融機関等の債権者との交渉が暗礁に乗り上げたからだ。

 このため長い間金融専門家の間で「それが爆発すると、サブプライムローンの比ではない」といわれていたCDSが本当に爆発しそうになってきた。
CDSとは金融危機が発生する前までは、もっとも人気のあった金融商品の一つで、一種の企業保険のようなものだ。

 今回の例で言えば、GM270億ドル(約3兆円弱無担保社債を発行しているが、これを購入した金融機関やヘッジファンドは無担保なのでリスクが高すぎると判断する

 そこで金融機関やヘッジファンドはAIGのような保証会社(保険会社)に、GMが倒産した場合のヘッジとして保険料を支払い、全額または一部の債権を保全してきた。
GMが倒産しても、AIGが代わりに払ってくれるから安全確実だ
それがCDSだ。

 今回のGMと債権保有者との交渉が難航して決裂したのも、このCDSがあるためである
債権額の90%削減なんてとんでもない。それよりかGMが倒産してAIGに100%の保証を実行してもらおう。わが社にとってはGMの倒産が一番の利益だ

 オバマ政権としたら、失業者をこれ以上増やさず、業況を悪化させないためにも、何とかGMの債務削減交渉を成功させたい。
最悪でも事前調整型の破産法適用クライスラーと同じ)に持って行きたかったが、どうもそうは問屋がおろさない状況になってきた。
事前調整のない、本当の倒産になりそうなのだ。

 実は世界には総額で6000兆円全世界のGDPとほぼ同じ)のCDSがあるといわれ、AIGだけでも約40兆円CDSを保有している。
今回のように企業が倒産しそうになると、政府や労働組合は何とか企業存立に向けて努力するが、一方金融機関やヘッジファンドはその企業を倒産させてCDS契約に基づく債権回収を図ろうとする
、金融機関は政府の公的資金の支援が期待できるので妥協の余地はあるが、ヘッジファンドには支援がないため、妥協の余地はない

 実際GMが倒産すれば270億ドル規模のCDSの保証実行がされるのだが、関連会社等への波及を考えると(関連会社が倒産して、ここでもCDSの実行が発生する)、その規模がどの位ふくらむか、現状では誰もわからない。

 CDSの爆発が始まれば、小康状態にある金融市場が再び大荒れになる。だから6月1日はアメリカにとっても、世界にとってもエポックとなる歴史的な日になりそうなのだ。

(21.6.1)追加
 米政府はGMが連邦破産法11条の申請をして破産するとの声明を出した。これに伴い米政府とカナダ政府が約4兆円の支援を行い、両政府あわせて72%の株式を取得して、国有化することになった。

 上記ブログで記した債権額270億ドルの約半数はGMの提案を呑むことになったが、残りの半数は拒否している。拒否をしたファンドや金融機関はCDSの実行を実施することになる。

 私が上記ブログで記載した約半分の規模でCDSが実行されるのだが、その広がりについては今はまだ分からない。

 

 

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(21.5.11) アメリカのストレステストは大本営発表

Images  7日、米財務省FRBは、金融大手19社に対する特別検査ストレステスト)の結果を発表した。

 それによると、10社が資本不足に陥る可能性があり、その額は746億ドル約7兆5千億円)であるが、すでにアメリカ政府が投入した公的資金バンカメ 450億ドル、シティ 450億ドル、ウェルス・ファーゴ 250億ドル等)で十分であり、アメリカ政府の優先株を普通株に転換するだけでいいと言うのだ(ただし各金融機関は普通株の公募も行なうと発表した)。

 市場は一応に歓迎して株価は上昇し、格付会社(S&P)バンカメシティの格下げを今回は行なわないと発表した。
いわばアメリカ中お祭りムードで「これで金融危機は収束した」といっているようなものだが、今回の発表はオバマ政権の政治的配慮の報告で、実態を反映したものではない。

 そもそもストレステストの方法が問題で、日本の金融庁が01年に行なった金融検査とは大いに異なる。日本の場合は個別取引先ごとの一件審査で、そのときの検査は厳格を極めた

 不動産関連企業などはそれだけで査定対象になり、担当者が「この企業はバブルの中でもしっかりしていた企業なのに、こんな査定をされては融資もできない」と嘆いていたくらいだ。

 一方アメリカが今回行なったストレステストマクロ経済指標を使った数学的手法なのだが、何よりもその前提条件が問題と言える。

今回の前提条件は、09年度米国の実質成長率▲3.3%、失業率8.9%と言うのだが、これは第一四半期の実質成長率▲6.1%より楽観的で、4月の失業率8.9%とまったく同じ数字になっている。

 これでは経済は第一4四半期が底でその後急回復し、失業者はこれ以上増えないと言っているのと同じだが、本当だろうか。

 つねにFRBの予想は楽観的過ぎるところがあり、たとえば2月19日FRB09年度のGDP予測を発表したが、それは▲1.3%だった。その舌の根の乾かないうちに第一四半期▲6.1%になったのだから思わず笑ってしまった。

 しかし政策担当者の発表と言うものはこうしたもので、日本でも大本営発表は嘘ばかりだったが、「日本軍はいたるところで敗退しており、勝つ見込みはまったく無い」などといったら、誰も戦わなくなるのだから、ある程度致し方ない面もある。

 しかしこの発表を真に受けて「アメリカの経済は底を打った」とはしゃぐのも問題で、「アメリカ政府はこれ以上の公的資金の投入ができないので、現状で大丈夫だと政治的発表をした」と判断するのが適切だろう。

 今はアメリカ政府の発表で一時的に楽観ムードが出ているが、実態は隠しようが無いので、今後発表される統計数字を見て再び悲観ムードが漂うことになるだろう。
今までも政府の強気な発表の都度、市場は一時的に好感し、その後正気に戻ることの繰り返しだった。

 近い将来、オバマ政権はストレステストの結果が甘かったことを認めて、金融機関に対するさらなる公的資金の追加に追い込まれると思っておくほうが妥当だと思う。

(22.7.11追加)
アメリカ政府はその後、低金利資金を金融機関に大量に貸し込むことで、公的資金の追加投入をしないで済んでいる。
金融機関はその低利の資金をヘッジファンド等に融資することで業容は急回復した。

いわば、バブルを新たなバブルでおおい隠す戦略だが、これは次のバブル崩壊までの単なるユーフォリアにすぎない。

 

 

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(21.4.25) 米金融大手6社は上げ底景気 持続する金融危機

Images8  この22日までに米銀大手6社の09年1月~3月までの第一四半期決算数字が発表された。
これによると一社を除いて大幅な黒字転換であり、前期が6社中5社が赤字だったのとは正反対の好決算になった。

 バンカメルイス最高経営責任者(CEO)は、「歓迎すべき決算内容だ」とはしゃいだが、市場は正反対の反応を示し、バンカメの株価は24%安8.02ドルまで下落し、金融株を中心に全面安になってしまった。

 金融機関の決算が黒字転換したのだから、本来なら金融危機の収束を宣言してよさそうなものだが、市場がまったく評価しなかったのには理由があり、それは決算内容が上げ底だったからである。
上げ底とはあの観光地の土産によくある上げ底のことである。

 実はアメリカ政府はこの第一四半期から時価会計基準の大幅緩和を認めることにした。
かつて失われた90年代に「日本の金融機関が駄目なのは時価会計を採用していないからで、時価会計こそは国際標準だ」と言っていたのだが、今では掌を返したように「日本の会計基準のほうが正しかった」と言っているみたいだ。

 なにしろ緩和策がすさまじい。「金融市場で取引が成立しにくくなった証券化商品については、満期まで保有することを前提に、長期的な価格で算出してよい」と言うのだ。

 簡単に言えば「取得原価でもなんでもいいから高く評価しろ」と言っているわけで、これではかつての日本の会計基準にそっくりだから笑ってしまう。
おかげでそれまでほとんどゼロと評価されていた証券化商品がたちまち通常商品としてよみがえってしまった。

 たとえばシティグループ証券化商品に起因する損失が前期比8割減の22億ドルになったが、実際は何も改善されていないので従来方式だと約110億ドル22÷0.2=110の損失だったことが分かる。
上げ底は実に88億ドルだから、これで決算が黒字にならないほうがおかしい。

 シティ第一四半期純利益は16億ドルのプラスと発表されたが、従来どおりの会計基準を適用すると、▲72億ドル『16-(110-22)=72』で、前期の▲83億ドルとほとんど同じであることが分かる。
実際は何も変っていないのだ

 他の金融機関も従来方式で評価すると、証券化商品は100億ドル前後の損失だったから、経営内容の良いJPモルガン以外はやはり赤字決算であることに変りが無い。

 そして何より市場を驚かせたのはローンに対する貸倒引当金の増加で、バンカメをはじめ各金融機関は前年同期比2倍貸倒引当金の計上を余儀なくされていた。
まずい、決算内容がいいのは粉飾で、実際は大赤字でしかも融資内容は悪化している

 今までは証券化商品の損失が主体だったのに、今度は個人ローンやクレジットカード部門の融資が焦げ付きだした

 実際IMFが先日発表した損失額推計ではアメリカの金融機関の損失額は08年10月では140兆円と見積もられていたが、09年4月には270兆円とほぼ2倍に膨れ上がっている。
半年で損失額が倍増してしまった。

 現在、アメリカ政府は19社の金融機関の特別検査を行なっており、資産内容を厳格に査定した結果を5月4日にも発表するとしている。一部には16社が実質債務超過ではないかとのうわさが流れているほどだ。

 市場はこの結果を固唾を飲んで見守っているが、この第一四半期の上げ底決算を見ると、公的資金の投入が必要な金融機関が増加することは間違いなさそうだ。

 金融危機はいまだ収束していないと言える

 

 

 

 

 

 

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(21.3.20) 強欲資本主義とオバマ大統領の戦い

Images1 強欲資本主義オバマ大統領との戦いが続いているが、初戦は明らかにオバマ大統領負けだ
なにしろ、バンカメに吸収合併されたメリルリンチには、救済合併以前に36億ドル(約3500億円)のボーナスを食い逃げされ、公的資金100億ドルの36%がネコババされた。

 メリルリンチだけかと思ってたら今度はAIG(アメリカン・インターナショナル・グループ)が1億6500万ドル(約158億円)のボーナスをこの3月13日に支給した。AIGに対しては1800億ドル(約17兆円)の公的資金が投入されている。

政府がいくらでも金を出してくれるから、みんなで山分けしよう
1億円以上のボーナスを73名に支給し、最高額は約6億円だと言う。

 さすがにこれには議会が頭に来てAIGリディ最高経営責任者(CEO)公聴会でつるし上げた。
もちろんリディCEOも負けてはいない。
経営再建のため有能な人材を引き留めるための措置」だと反論した。もっともボーナスをもらった途端に11人がトンズラした。

 議員から賞与リストを出せとせまられたが、「そんなことをすると社員の安全が守られないからダメだ」と拒否した。当然賞与リストの一人にリディCEOも含まれているのだろう。

 一方クオモ ニューヨーク州司法長官(公的資金投入を受けた金融機関の報酬問題の調査責任者によると「賞与が支払われたのは、いづれも損失をかかえ、会社を破綻寸前に追い込んだ部門に所属する職員ばかり」だそうだ。いわゆる金融部門の幹部と言うことになる。

AIGを倒産に追い込んでおいて、有能な職員はないだろう」と議員に噛み付かれて、再びリディCEOは居直った。
経営危機が表面化する前に契約で決まっており、15日までに支給しなければ訴訟を起こされる可能性がある
勿論訴訟を起こす一人にリディCEOも含まれる。

 どこまで話し合いをしても埒が空かないので、とうとうオバマ大統領が切れてしまった。
納税者に対する背信行為だ。あらゆる法的な手段で阻止するようガイトナー財務長官に指示した。

 もっともそのガイトナー財務長官はひどいポカをやっている。3月10日にはAIGがボーナスの支給をする(支給日は3月13日)ことを報告されながら何ら対応をとらなかった。
FRBはもっとひどく、3ヶ月も前に担当者がボーナスの支給計画の会合に出席していた。
ガイトナー財務長官もバーナンキFRB議長も同意していたではないか」とリディCEOに反論されて立場をなくした。
ガイトナー財務長官バーナンキ議長は議会でこの不始末を説明しなくてはならなくなった。

 財務長官FRB議長もまったく無能さを露呈してしまったので、最後は議会が動いた。
公的資金を受けた企業が過度のボーナスを支払った場合、司法長官に返済を求める権限を付与する法案」を可決した。

 しかしこれだけでは相手が返さないと言えば裁判になってしまう。そこでさらに「一定額の年収を越える幹部社員のボーナスに90%の特別税を課す法案」を下院で採決することにした。
しかし一度支払ったボーナスを取り戻すのは至難の業だろう。
すでに金融機関への返済に充てました」なんていわれたらどうするのだろうか。

 政府がもたもたしていたら、今度はファニーメイフレディマックAIGをまねて経営幹部に5000万円のボーナスを支払うのだと言う。
いづれも10兆円規模の優先株購入枠が設定されていて、公的資金が投入されている先だ。

 アメリカでは投資銀行も保険会社も住宅公庫も公的資金で幹部職員にボーナスの大盤ぶるまいだ
公的資金だろうがなんだろうが、一旦入った金はみんなで山分けだ。さっさとボーナスをもらってトンズラしようぜ

 どうやらリディCEOのいう有能な職員とは「税金のネコババが得意」な職員のことを言うらしい。
それに比較して日本の経営者のきまじめさはどうだろうか。
不祥事には全員で頭を下げ、アメリカの幹部職員からみればスズメの涙ほどののボーナスでさえ返上すると言う健気さだ。

 グラスリー共和党筆頭理事がしみじみと言っている。
AIGの幹部が日本の例にならって米国民に謝罪した上で辞任するか自殺するかしたら、私の感情も若干改善する

 しかしアメリカの強欲資本主義の戦士達はこんなことで自殺するようなヤワではなく、すきあらば公的資金をネコババする機会を狙っている。
金融工学でだまして世界から金を集めた。今度は政府をだまして金を強奪しよう

 これがあれほど誉めそやされたアメリカの輝ける市場万能主義の戦士の実態なのだ。日本でもひところアメリカに倣って「規制を排除してすべてを市場に任せよう」と主張する人が幅を利かせていたが、抵抗勢力のおかげですんでのところで踏みとどまった。

 すでにフランスドイツはアメリカのグローバリズムと手を切った。日本は相変わらずアメリカに付き合おうとしているが、この戦略の賞味期限も切れそうになってきた。

 




 

 

 

 

 

 

 

 

 

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(21.3.4)金融恐慌の第2段階 AIG炎上

Images1  ついに金融恐慌の第2段階が始まった。AIGが炎上し始めたからだ。
AIGアメリカン・インターナショナル・グループ)については、一般の人にはなぜこの会社が問題なのか分からない。

 そもそもAIG生命保険事業損害保険事業のような硬い商売をしており、日本人にとって生命保険会社アリコはがん保険などでとてもなじみのある会社だ。

 しかし、このAIGに対しアメリカ政府はすでに3回に渡って約1500億ドル(約15兆円)の資金援助をしてきており、さらに今回300億ドル追加資本の投入をするという。
合計で1800億ドル相当だが、これはシティグループ450億ドルバンカメ450億ドルGM134億ドルを足したものより大きい。

 AIG08年10月~12月期の決算で617億ドル(6兆円)の赤字を計上し、08年全体では993億ドル約10兆円)の史上最大の赤字になったからであるが、赤字幅は期を追うごとに拡大してきており、一体どこまで拡大するかわからない状況になっている。

 あわててアメリカ政府はAIGに対し300億ドルの資本注入をしたのだが市場はまったく評価せず、株価は世界各地でバブル崩壊後最安値の2番底をつけ始めた。
今日(3日)の東京市場ではトピックス25年ぶりの安値だと伝えている。
株価は底が抜けてこれからどこまで低下するかわからない
 
 市場が評価しなのは深い理由がある。
公的資金投入の理由をアメリカ政府の公式声明では「多くの個人の保険契約者に被害が及ぶのを防ぐためだ」と言っているが、これは嘘である。

 AIGの各部門のなかで、生命保険事業損害保険事業はいわば健全な収益の稼ぎ頭であり、まったく問題がない。
2007年のフォーブスの世界優良企業2000社の中で、世界第6位保険セクターで第1位だったのは紛れもない事実だ。

 そのAIGが急激に業績を悪化させた原因は、金融事業の失敗による。AIGも当初は通常の金融事業の範疇だったが、金融バブルの時期に信じられないような保証業務を引き受けるようになった。

 名前をCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)といい、投資家等が証券化商品を購入する時に、その上前をはねる事業である。
たとえばA金融機関が8%の証券化商品を販売しようとした時に、投資家がA金融機関の将来性に対し疑念を持ったとする。
そこで投資家はAIG4%CDS契約を結ぶ(投資家の取り分は4%になる)。

 この契約があればたとえA金融機関が倒産しても投資家はAIGが保証してくれているので、安心してこの証券化商品を購入できる。
AIGの保証があるのだから絶対安全確実だ
実際はA金融機関が証券化商品を販売する時に、CDS契約を込みで販売することが多い。『利回りは4%ですが、AIGの保証付です』)。

 確かに、全てが好調のときはAIGは濡れ手に粟(AIGは保証しているだけで儲かる)でがっぽり保証料で上前をはねることができたが、サブプライムローン問題が発生してから歯車が逆転し始めた。
金融機関や投資銀行やヘッジフファンド等が倒産するたびに、AIGは保証実行をしなければならなくなったからだ。

 特にリーマン・ブラザーズの倒産以降は最悪で、AIGが引き受けた総額40兆円CDSの一体どこまで保証義務が発生するのかわからなくなってきた。
それ以外にも自らが組成した証券化商品の焦げ付きも著しい。

 当初アメリカ政府はリーマン・ブラザーズと同様にAIGを倒産させるつもりだったが、約40兆円のCDSの存在を知って愕然としたという。
AIGが実質的に最後のアンカーになっており、もしAIGを倒産させれば40兆円の面倒は、必然的にアメリカ政府が見なければならなくなる。
まずい、AIGを潰すと金融パニックになる

 現在、アメリカ政府はCDS問題が表面化しないように懸命にAIGを支えているが、CDSは世界で6000兆円規模であると言う。これは世界の1年分のGDPに匹敵し、もし本当にパニックになれば世界の1年間の働きが無一文になるに等しい(CDSをどの金融機関がどの程度持っているか正確にはわからない。保証業務は簿外だからだ)。

 CDSはまさに経済における核弾頭のようなもので、これが破裂したら世界経済は火の海だ。だからアメリカ政府はなんとしてもAIGを支え続けなければならない。

 しかしAIGの救済劇を見ていると底なしの救済劇で、不動産価格が底を打ち、実態経済がたち直らない限りCDS核弾頭は必ず炸裂すると予測した方がよい。

 

 

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(21.2.23) 米中同盟が始まった その2

Im20090221as2m2102u21022009131  クリントン国務長官のアジア歴訪は大成功に終わったようだ。日本に対しては最初の訪問国とオバマ大統領に会う最初の外国首脳と言う名誉を与えたが、これはリップサービスの類で、本来の目的は「米中間の二国間関係」を築くことが今回歴訪の最大の目的だった。

 なにしろクリントン国務長官は大統領予備選挙中に「21世紀の安全保障と機会」と言う論文で「米中関係はもっとも重要な二国間関係で、・・・(米中との間で)北東アジアでの安全保障体制を確立しよう」と言った人である。

 クリントン夫妻の中国好きはつとに有名であり、あまりに中国との癒着が激しいので、オバマ大統領はヒラリー・クリントン氏を国務長官に指名するにあたり、ビル・クリントン氏の慈善団体が毎年50億円程度集めている資金提供先の開示を求めたほどだ。

 今回の共同宣言クリントン長官は「米中両国が協力して世界経済の復興を先導すると信じるに足る理由がある」と言い切ったが、これはリップサービスでなく本音である。
世界経済はこれからは(日本やユーロ圏ではなく)米中2国間で決めていこう」

 クリントン長官は今回、① 経済対話、② 政治・安全保障対話、③ 気候変動の協力関係、について閣僚級の対話をすることを共同声明で発表したが、その心は「中国問題はすべてクリントン国務長官が取り仕切る」と言うものだった。
ブッシュ政権時代は経済対話は財務長官の専決事項だったし、安全保障についてはアメリカの台湾への武器輸出以降途絶えたままだった。

 アメリカにとって中国がいかにに重要なパートナーかは、なにより① 貿易の最大の相手国同士であり、かつ② アメリカ国債の最大の購入国が中国であること、から来ている。

 ブッシュ政権オバマ政権の最大の相違は、ブッシュ政権がウォール街の代弁者だったのに対し、オバマ政権がボーイングやウェスチングハウスやGMのような産業資本の代弁者だということだ。

 クリントン長官の使命はジャンボ機や原子力発電設備や自動車を中国に売り込み、さらに貿易赤字分に相当するアメリカ国債を中国に購入してもらうことにある。

 一時ガイトナー財務長官が「オバマ大統領は中国が為替操作をしていると信じている」と言って中国の元安政策を非難したが、クリントン長官は勿論そうした非難は一切しなかった。
国債さえ購入してくれれば何とも言わないわ

 実はアメリカにとってもっとも緊急の課題は年間100兆円とも言われる国債発行をどのようにさばくかにかっている。
もっとも良いのは中国や日本が購入してくれることで、これなら貿易赤字を国債で回収していることになる。

 反対にもっとも問題なのは購入先が無くなってFRBが引き受けることで、これはFRBがドル札を印刷していることと同じだから、限度を越えるとハイパーインフレーションにつながる。
かつての戦後の日本や、第一世界大戦後のドイツのようなイメージだ。

 ドルがハイパーインフレーションになれば誰もドルを保有しなくなり、その時点でアメリカの世紀は終わってしまう
日本と違って中国は気に入らなければアメリカ国債を売却してしまうから、そうさせないために「もっとも重要な二国間関係」を築かなければならない。それがクリントン長官の使命と言うことだ。

 だがしかし中国とて便利なアメリカの財布になるつもりは毛頭ない。
原子力潜水艦や航空母艦を整備し、大陸間弾道弾の精度を上げているのは日本に代わり中国がアジアでの覇権国家になるためである。
それまではアメリカを怒らせるわけに行かない。クリントンには十分媚薬をかがしてある。中米関係は万全だ

 はたしてこの同床異夢の米中関係はうまく機能するだろうか。全ては中国経済の発展にかかっているようだ。中国が中国政府の発表のように毎年8%の経済成長をとげれば、中国は気前よくアメリカ国債を購入してくれるだろう。

 しかし中国経済が単なるアメリカの影に過ぎなければ、アメリカと中国は共倒れの関係になってしまい、中国経済は停滞しアメリカ国債を購入する余裕など無くなる。
その時はクリントン長官の米中同盟は一夜の夢に終わってしまうだろう。

 はたしてどうなるだろうか。私は後者の確率が高いと思っているが、それは09年度の中国経済が回答を出してくれるだろう。

本件と関連する記事は以下のとおり
米中同盟の始り ヒラリー・クリントン氏の国務長官就任


 

 

 

 

 

 

 

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(21.2.15) 投資銀行メリルリンチの強欲と大草原の小さな家 

Images1  メリルリンチ総額36億ドル(約3240億円)の闇ボーナス支給にアメリカ中が怒っている。

 ニューヨーク州のクオモ司法長官が米議会下院金融委員会への報告として明らかにしたことによると、メリルリンチがバンカメに救済合併された1月1日以前の昨年12月に、急遽総額36億ドルのボーナスを秘密裏に支払ったと言う。

 幹部には100万ドル(9千万円)、最高幹部には3000万ドル(2億7千万円)のボーナスと言うから半端ではない。
実はこのボーナス支給には多くの問題点がある。

 第一はメリルリンチが公的資金100億ドルを投入して政府が救済している先であること。従ってボーナスの36億ドルは公的資金100億ドルの一部が支払われたのと同じだということ

 第二は、本来のボーナス支払い時期は通常決算が確定した後の1月に支払っていたのに、12月に繰り上げて支払いをしたこと。しかもその時点で第4四半期決算(08年10月から12月)が▲153億ドルの赤字と推定されていたこと赤字だとボーナスは当然支払われない)。

 これはどう見てもバンカメに吸収合併される前に、社員全員でメリルリンチの資産を食い逃げしたもので、イメージで言えば落城前に城の有り金を持って兵士が逃げていってしまったようなものだ。

 これにはオバマ大統領ならずとも頭にくるだろう。
ウォール街の重役が、公的資金での救済を経ながらこうした高額のボーナスを受け取っていることに対して「恥ずべき行為で、かつ無責任」だと非難した。

 実は今までアメリカ国民やさらに言えば世界中の人々がメリルリンチのような投資銀行に一目も二目も置いていたのだ。
アメリカの優秀な学生は競って投資銀行に職を求め、数年で数億の年収を得ていた。

 最高級の住宅に住み、最高級の自動車を乗り回し、最高級のレストランで1本数百万円のワインを飲み、それでも金が余ってしまっていたのが、彼ら投資銀行の職員だったのだ。

しかし、それは当然だ。彼らは優秀で素晴らしい金融商品を世界中に売って、アメリカに富をもたらしえくれる」一般の人たちは尊敬と少しばかりの嫉妬を交えて彼らを認めていた。

 だが、しかし今回のメリルリンチを見て、投資銀行というものは事業に失敗すると、あとは平気で国民の財産を持ち逃げする最下層の人間だと言うことが知られてしまった。
あいつらは強盗と同じじゃないか。ろくでもないものを世界中に売りまくり挙句の果ては国有財産の横領か」。

 今アメリカ人は心の深いところで傷ついてしまった。それまで最も尊敬に値し、アメリカそのものと思っていた投資銀行がこそ泥だとしたら自分達は一体何を信じたらいいんだ。

 この喪失感はかつて日本が太平洋戦争で敗れた時、それまで持っていた軍人に対する尊敬の念が一気に崩れたのと似ている。
何を信じて生きればいいんだ

 オバマ大統領は「チェンジ」といい「アメリカ国民が苦しくとも全員で努力すれば明日が開かれる」説く。
深い意味で今アメリカは心の敗戦処理をしている。
強欲であるのが善だ」というアメリカと言う国のありようが根底から崩れてしまった後は、一体どう生きたらよいのか分からない。

 思えばアメリカが単に「強欲だけの国」になったのはソビエトロシアが崩壊し、日本がバブルで大コケにこけた時からだ。
競争者がいなくなった1990年代から今までの20年間、アメリカはウォール街そのものになってしまった。

 ウォール街を離れれば「大草原の小さな家」のような、貧しくともまじめな生き方もアメリカにはあるのだが、それは「恥ずべき行為で、かつ無責任」と思われてしまった。
なぜ、ぼろもうけの機会があるのに、そうしないんだ。『清く貧しく美しく』だと。馬鹿か

 私は
子供の頃「大草原の小さな家」や「シェーン」や「ララミー牧場」のようなアメリカをアメリカだと思っていた。
だが、それはすでに忘れられたアメリカだ

 強欲だけだったアメリカがかつてのアメリカを
思い出せるかどうかは私には分からない。しかし「チェンジ」がそうであってほしいものだと思っている。

 

 

 

 

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