(22.10.11) ノルウェー人権外交の勝利 劉暁波氏へのノーベル平和賞授与

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 実にノルウェー政府は立派だとつくづく感心してしまった。民主主義とは何かを実地で教えてもらったようなものだ。
中国の反体制活動家劉暁波(りゅう ぎょうは)氏に対するノーベル平和賞の授与についてである。

 劉暁波氏89年の天安門事件で学生側を支援し投獄され、08年には「08憲章」を起草して中国共産党の一党独裁を批判したため身柄を拘束された。
そして10年2月に懲役11年の刑を言い渡されて、現在服役中の人物である。

 本年度のノーベル平和賞の候補に劉暁波氏がノミネートされていることを知った中国政府は陽に陰にノーベル委員会ノルウェー政府に圧力をかけ続けてきた。

中国の法律を犯して刑罰に処せられた人物にノーベル平和賞を授与するなど、ノーベル平和賞の趣旨に反する。
もしこの警告を無視してノーベル賞を劉暁波に与えれば、日本と同じように泣きを見る。それでいいのか

 しかしこうした脅しに対し、ノーベル委員会の回答は実に確固たるものだった。
中国の憲法35条は言論・出版・集会・結社・抗議活動の自由を認めていながら、実際はまったく憲法を守っていない。
劉暁波氏の逮捕は明確に憲法違反であり、かつ基本的人権に対する挑戦である


 さらにヤーグラン委員長は「中国がより民主的な国になるため、他の人が言わないことを我々は言わなければならない(そのために劉暁波氏にノーベル平和賞を授与した」と言い放った。

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 中国政府は完全に頭に来て、CNNやBBCやNHKの劉暁波氏に対するノーベル平和賞受賞のニュースを切断してしまった。
さらに劉暁波氏の妻に対する外国メディアのインタビューを阻止している。

ノルウェーのヤツ、日本のように中国の圧力に屈してひれ伏すと思っていたら、居直りやがった。
中国の覇権を認めないとはトンでもない国だ。
日本と同じように経済で締め上げられないだろうか。ノキアはレアアースを使用しているのだろう


主席、ノキアはフィンランドの会社でノルウェーの会社では有りません。この国は北海原油と漁業と林業の国ですのでわが国との関係は深いとはいえません

それではノルウェーへの旅行を差し止めたり、ノルウェー人が当局の制止を無視して万博会場に入りパンダを見たとして拘束したらどうか
テンヤワンヤの騒ぎになってしまった。

 今回のノルウェー政府の対応を見て、世界には恫喝に屈しない国と、易々と恫喝に屈して「早く船長を解放しろ」と首相が叫ぶ国とがあることが分かった。
民主主義の出来具合が違うのだろう。

 

 

 

 

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(22.4.29) 天気晴朗なれども波高し 中国海軍の実力

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 日清戦争が行われたのは今から100年以上も前だが、黄海海戦で手ひどい敗北を喫した中国の北洋艦隊が、100年のときを隔てて再び日本の前に立ちはだかろうとしている。

 中国海軍は大軍拡のおかげで、東シナ海の防衛的海軍から太平洋に展開できる大海軍にまで成長した。
その実力行使の一環として、中国海軍は潜水艦2、ミサイル駆逐艦2、護衛艦3等合計10隻で、西太平洋上での合同訓練を4月7日から実施した。

 中国海軍は最初は東シナ海で演習を行い、次いで沖縄本島と宮古島の間の宮古海峡を4月10日通過し、沖ノ鳥島方面の太平洋上で軍事演習を行った。
日本はこの軍事演習を監視するために、海上自衛隊の護衛艦「すずなみ」「あさゆき」が追尾したのだが、それに対し中国海軍の艦載ヘリが「すずなみ」に90mの距離まで急接近し、威嚇行動をとった。
おめえ、何で俺たちの後を追いかけてくるんだ。一発ぶっ放すぞ・・・

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 通常公海上で互いに武装した艦船とヘリが近づくと、一触即発の状態になる。相手の意図が分からないから両者とも臨戦態勢に入り、どちらか一方がトリガーを引けば戦闘状態になる。
中国と日本が西太平洋で、日清戦争の再現をしそうになった。

 たまらず日本は外交ルートを通じて「このような危険な行動を取らないように」と中国政府に申し入れを行ったが、中国の駐日大使からの回答は一方的に日本が悪いというものだった。

中国は国際的なルールに従い、軍事演習の計画を公表した。これに対し日本の護衛艦が監視体制をとり、東シナ海から太平洋までしつこく付きまとってきた。従ってわが国は艦載ヘリを出撃させたのだ

 現在西太平洋のシーレーンではどの国が制海権を確保するかで熾烈な戦いが繰り広げられている。
従来はアメリカ第7艦隊日本の海上自衛隊がここの制海権を確保していたが、そこに中国の東海艦隊が進出してきた。

注)軍事用語で第一列島線という言葉があり、日本・台湾・フィリッピンを結ぶ線を言う。従来は中国海軍はこの線の外側の西太平洋に展開する能力を持っていなかった

 中国海軍にとりこの演習がなぜ必要かというと、沖縄と宮古島の間の海峡を抜けて、台湾の背後に回り台湾を台湾海峡と西太平洋の両側から挟撃できる態勢を取ることが、長年の課題だったからである。
台湾解放のためには、西太平洋からの上陸作戦能力が必須である

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 しかし中国が台湾を実力行使で解放する場合に、中国海軍にとって厄介な問題が残っている。
それは宮古海峡を抜けるときに日本の海上自衛隊が阻止行動を取る可能性があることで、この海峡を自由に通過できなければ目的が達成できない。
今回の艦載ヘリの護衛艦「すずなみ」への接近は、威嚇の意味もあるが日本の護衛艦の実力とその意志を見たかったともいえる
日本は戦うか、それとも腰抜けか?」

 もう一つの西太平洋での演習目的はここに必ず駆けつけるアメリカ第7艦隊の空母を釘付けにして台湾に接近させないようにすることで、潜水艦を配置して空母に攻撃をかけるという演習だった。

注1)空母の艦載機の航空能力はほぼ700km程度のため、アメリカの空母を台湾から1000km範囲に入れないのが、潜水艦の目的になる。

注2)1996年3月に台湾の総統直接選挙を妨害するため、弾道ミサイルを台湾近辺に撃ち込んだが、このときはアメリカが空母ニミッツとインディペンダンスを台湾海峡に派遣して中国の野望をくじいた。
このとき以来中国海軍軍拡の目標は、アメリカの空母が台湾周辺に近づけないだけの海軍力を持つことになった。


 中国海軍は20年にも及ぶ大軍拡のおかげで、日本の海上自衛隊を凌駕する実力を蓄え、自由に宮古海峡を往来する能力を身につけた
西からも攻められることに驚愕した台湾はこの危機に備え、西太平洋からの上陸を阻止するための特別演習を実施し、さらにアメリカから地対空ミサイルPAC-3を購入したが、中国の台湾解放の実力は確実に上がっている。

 もし台湾が中国に完全に飲み込まれてしまうと、日本の防衛ラインは非常にあやうくなり、次は日本ということになる。

 普天間基地問題で日米関係が冷却しており、日米安全保障条約が実質的に機能しなくなれば日本は独自に中国と対峙しなければならない。1世紀の時を隔てて日清戦争時の状況が再現しようとしている。
 

 

 

 

 
 

 

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(22.4.7) 中国の刑法と死刑執行  覚せい剤密輸事件

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(テラさん撮影 山崎編集) 

 覚せい剤を日本に大量に密輸しようとした日本人の死刑執行を行うと中国政府が通告してきたことで、鳩山首相、管副総理が中国政府に「懸念」を表明したが、なぜそのようなことをするかさっぱり分からなかった。
私などはまったく「懸念」しなかったからだ。

 中国政府が法律に基づき死刑を執行することに日本がとやかく言う筋合いではない。反対に「日本の法律と相違しているので、日本の刑法に基づき裁け」と言う方が問題で、そんなことを言い始めたら国家の主権問題になってしまう。

 今回覚せい剤密輸の罪で死刑が執行される赤野死刑囚は、大連空港で覚せい剤2.5kgを保持しているところを大連警察に見つかり逮捕起訴された。

注)正確に言うと赤野死刑囚が1.5kg、一緒にいた石田受刑囚(懲役15年)が1kg保持していた。なお、赤野死刑囚の刑は6日に実施された。

 中国の刑法では「覚せい剤50g以上の密輸で懲役15年か無期懲役、または死刑」になるのだが、この量刑の違いは密輸しようとした量による。
だいたい1kg以上の密輸では死刑になる場合が多く、赤野死刑囚石田受刑囚との量刑の相違はそこから来ている。

注)正確に言うと密輸を含め、保持していることが犯罪になる。

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(テラさん撮影 山崎編集)

 日本においては殺人事件以外で死刑が執行されることはほとんどないが、中国では麻薬の取引や汚職でも死刑が執行される。
麻薬取引が蔓延し、かつ汚職天国であるためで、厳罰で臨まなければこうした犯罪を防止できない。
これは中国のお家の事情だ。

 管副総理が「やや日本の基準より罰則が厳しい」と言ったが、温家宝首相は「中国の法律に基づいての処理で、多くの人の命を危険にさらす重大な犯罪だ」と反論した。
これは公平に見て温家宝首相の言い分が正しい。
中国官憲の努力で、日本に大量の覚せい剤が持ち込まれないで済んだのだから、本当は日本は中国に感謝しなければならない立場だ。

 中国の裁判は2審制であり、地裁で死刑判決を受け、その後09年4月に高裁で死刑が確定した。
赤野死刑囚の控訴時の申し立ては、
① 通訳の能力が低く、自分の立場を正確に伝えられなかったこと。それゆえ供述調書を証拠とできないこと、
② 自分は主犯格でなく、単なる運び屋であること、
③ 覚せい剤は押収されたので、実質的な害悪が発生していないこと
、だったが高裁ではそうした理由はすべて却下された。

については確かに問題があって、日本でも外国人の犯罪で言葉の壁がしばしば発生している。
は中国の刑法の運用では覚せい剤の量が問題で、主犯かそうでないかは考慮されないので却下は当然だろう。
はまったく反論になっていない。

①以外は控訴理由にはならない。

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(テラさん撮影 山崎編集)

 鳩山首相管副総裁の言う「懸念」なるものが何なのか、私にはさっぱり理解できないが、今回も人権団体アムネスティが死刑判決は人権問題だといつものように言って中国大使館前で抗議集会を開いていた。

 しかし赤野死刑囚は中国の法律に従って裁判にかけられ、死刑が確定したのだから、私だったら「まったく何も言うことはありません。これは中国の国内問題です」と言う。

 繰り返すようだが、刑法の罰則規定はそれぞれの国の主権の問題で他国が口を挟むような問題ではない。

注)事件が発覚したのは06年9月だが、この覚せい剤は北朝鮮で生産されたものと思われる。従来北朝鮮の覚せい剤は北朝鮮の貨物船が日本の沿岸まで運び、暴力団関係者の小型船に渡していたが、日本の沿岸警備が強化されてこの方法が使えなくなった。

 そのため北朝鮮は中国経由で覚せい剤を日本に密輸するルートに変更したが、こうした事情を中国当局は把握していたため、大連空港で運び屋を補足した。

 

 

 

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(21.4.27) 中国の知的財産権強奪計画  レッド・クリフの戦い

100pxnational_emblem_of_the_people2  さすが中国だと感心してしまった。中国が国家的戦略として各国の知的財産権合法的に強奪する計画を立て、この5月1日に各国に通達するのだと言う。

 いわゆる「強制認証制度」と言うのだが、中国政府が認証しない限り、中国への製品の輸出も中国での生産・販売もまかりならないという、恐るべき制度だ。
認証してもらいたければ、全ての情報を公開しろ

 制度そのものは07年8月WTOで定めたものだが、これは医療用器具のような生命にかかわる製品が対象になるものと想定されていた。
しかし中国はこの制度を利用して、IT製品にまで認証制度を拡大し、世界の知的財産権を無料で強奪することを考え付いたのだからすごい。

かつて中国は西欧や日本の植民地主義者から土地や人民を収奪された。今度は中国が強奪する番だ。我々には富を取り返す権利がある

 対象になる知的財産権13種類で、ファイアウォールソフト、ICカードの暗号ソフト、迷惑メール撃退ソフトと言った最先端ソフトのソースコードで、それを当局に公開して、当局の審査を受けろと言う。

 実はソフトの世界ではソースコードを公開するかしないかは、経営の最重要決定事項になっている。
私たちが通常使用しているパソコンのOSの世界では、Windowsはソースコードを非公開することによって莫大な利益を上げることができたし、一方Linuxはソースコードを公開することによって、世界中のプログラマーがLinuxを修正することを可能にした。

 現在の電子機器はほとんどが高度なソフトによって制御されており、たとえば日立製作所が開発した非接触ICカードフェリカのソースコードは企業の最高機密になっている。

 こうしたICカードに内包されている暗号ソフトは世界各国の企業や研究所がしのぎを削って開発をしているソフトと言え、この世界では「暗号化ソフトを制するものが世界を制する」ともで言われている。

 そのソフトを中国は無償で公開しろと言う。驚いたのはアメリカや西欧や日本で、いわば知的財産権が国家戦略の要と認識している国家群である。
とんでもない。そんなことをすれば中国当局はすぐさまソースコードを解読し、その情報を中国の企業に提供する。そうなれば中国が世界の最先端の知的所有権国家になってしまう

 実際中国の知的財産権強奪はすさまじく、たとえばドイツのシーメンスから高速鉄道の技術を導入したが、それにほんの少しだけ手を加えた後「中国が完全に知的財産権を保持している」と言いだした。
こうしてシーメンスは高速鉄道の技術を無料でふんだくられようとしている

 だが、中国とすれば今が最高のチャンスだと思っている。「世界の景気が後退し、唯一経済成長が見込まれるのは中国だけだ。中国で商売をしたければ、情報公開するのが当然ではないか」

 特に暗号化ソフトが重要なのは、中身が分かれば世界各国のファイアウォールを破ることができ、世界の軍事・経済情報を中国がすべてつかむことが可能になるからだ。
中国が覇権国家になれるか否かは、この知的財産権強奪計画の成否にかかっている
さすが中国は戦国の昔から兵法にたけている。

 日本企業としては痛し痒しだ。対象13品目の総売上高は約1兆円と見積もられており、中国が最後のアンカーと思っている企業も多い。

 中国と先進各国とのこの闘いはWTO等を舞台に繰り広げられるはずだが、唯一の経済成長先が中国と思われているだけに、企業によってはソースコードを公開して中国政府に取り入ることもあり得る。

 はたして中国が仕掛けてきたレッド・クリフ(赤壁の戦い)を米・西欧・日本の連合軍は打ち破ることができるだろうか。

(21.4.30追加)

 中国政府は29日、強制認証制度の実施を1年間延期して、22.5.1からの実施にするとの声明を出した。とりあえず第一回目の戦いは連合軍の勝利に終わった。

 

 

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(20.6.11) なぜ自衛隊機は中国に飛ばなかったのか

 今回の四川大地震に対するテントを中心とする援助物資の輸送問題ほど、不思議な顛末はない。

 ことの起こりは5月27日に、「自衛隊機を含む支援の打診を、中国軍の少佐からされた」ことに始まる。
この打診を北京の日本大使館は中国の正式要請と判断して、本国に報告した。

 翌28日に、町村官房長官が「自衛隊機を含め、支援の要請があった」と正式会見で述べた。
このため,各メディアは翌日の29日の報道で「自衛隊の派遣が実現すれば歴史的な出来事」と一斉に報じ、日本中が大フィーバーになった。

 ところが29日の当日、中国外務省の武大偉外務次官が「機は熟していない」との談話を発表し、自衛隊機受入れに慎重な姿勢をとった。

 その結果30日に日本政府は、「自衛隊機の派遣を見送り、チャーター機での支援物資の輸送」に切り替えた。
町村官房長官が「中国国内の一部に慎重論が出されているのを考慮した」との談話を発表している。

 以上がことの経緯であるが、いくつかの点とても不思議な気がする。ほとんどミステリーと言っていい。

 まず中国軍からの自衛隊機派遣要請は「日本側が前もって伝えた提案の第五番目にあった提案内容(自衛隊機の派遣を中国から要請したらどうか)」の打診であり、そおした意味で、日本側のシナリオだったことである。
なぜ、日本は中国に「自衛隊機派遣要請をしてもらいたかったのか」が第一の疑問点である。
別にチャーター機でよかったのでなかろうか。

 二番目の疑問点は、「日本大使館は中国軍少佐の打診を、なぜ中国政府の正式要請と判断したか」である。
常識的に考えれば、外務省でない中国軍の少佐(日本で言えば陸海空幕僚幹部の課長にも満たない軍人)の要請が、中国政府の正式要請であるはずがない
しかし北京の日本大使館はこれを中国政府の正式要請と判断した。
なんとも不思議ではないか。

 三番目の疑問点は、日本中が「世紀の出来事」とはしゃいでいたその日に、中国外務省武大偉外務次官が「機が熟していない」と否定したことである。
なぜ、中国外務省はすぐさま否定したのか
余りにドタバタ過ぎないか。

 ホームズワトソン君に謎解きをしてもらおう。

ホームズ、なぜ日本政府は自衛隊機の派遣を中国から要請してもらいたかったのだろうか。日本軍と聞くと中国の世論が反発することは、誰でもわかりそうなものなのに

これは中国ロビーの悲願のようなものだからだ。日の丸をつけた自衛隊機が中国まで飛び、中国から歓迎されれば日中間のわだかまりが一気に解消に向かう。
そおした賭け外務省の中国ロビーが画策して、それを中国との関係改善に熱心な福田首相が了承したと言うことだろう

中国はそのシナリオに乗って、中国軍の少佐が打診してきたが、なぜ中国軍なのだろうか。中国外務省が窓口のはずだが

現在の四川大地震の復旧活動を実際に指揮しているのが軍部だからだ。中国国内では解放軍の力が強大だ。ちょうど戦前の日本を想定すると感度が合う。
したがって、当事者として外務省とは相談せず、日本に要請の打診をしたのだろう。

 今回は軍部が、『アメリカも韓国も軍用機で援助物資を運んでいるので、日本にも同じことを依頼』しようとしたのだと思う。。
なにしろ四川大地震の復旧は、実質的に軍部の専決事項になっているし、軍人であれば、こうした災害時に軍用機で物資を運ぶのが常識と思うはずだ。

日本大使館も中国の実情を知っているから、正式要請と思ったのだろう。
そうでなければ何事も慎重な外交官が勘違いするはずがない

 ところがこれを聞いて中国外務省が激怒した。『これは国内問題ではない。外交問題だ』と言うわけだ。

 なにしろ中国外務省は過去、日本が災害支援等で自衛隊機を派遣するたびにクレームをつけてきた。
04年1月のイラク派遣では『中国にとって敏感なところがある』と述べたし、05年1月のスマトラ沖地震では『日本は海外活動拡大という強烈な願望を持っている』と牽制している。

 外交権を軍部に取られたと思い、武大偉外務次官がすぐさま否定したのだと思う。『外務省は常に自衛隊機の海外派遣に反対だ』と言うわけだ

軍部と外務省の意見の相違を胡錦濤国家主席は把握していたのだろうか

どうもそおは見えない。それどころではないというのが実態だろう。自衛隊機であろうがチャーター機であろうが早く支援物資を運び込まなければ暴動が起こりそうだからだ

すると、今回のドタバタ劇は、元々日本の中国ロビーが書いたシナリオを、国内問題として軍部が受け入れようとしたのを、中国外務省が外交問題として否定したと言うわけか。
中国のお家の事情だね。それにしても今回の日本のメディアのはしゃぎ方はちょっと異常だったね



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(20.6.4) 中国・農民工たちの冬(NHK)を見て

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 最近見たドキュメンタリー番組で、これほど悲しく心を打つ番組はない。中国内モンゴル自治区から、急発展をとげている天津に出稼ぎに来ている2家族に密着したドキュメンタリーである。

 中国には二種類の人種が住んでいて、都市住民農村住民に別れる。日本人には信じられないが、互いに戸籍が異なり、基本的には農村住民は都市の住民になれない。ただ短期間に出稼ぎに来れるだけである。

 日本でも高度成長期には農村から都市に大量の出稼ぎ労働者が働きに来たが、同じ日本人であることにかわりがなかった。しかし中国では違う。
あいつらは、農民工だ。俺達とは違う人種なのだ都市住民の意識である。

 農民工はいわゆるゲットーを作って生活している。家賃は月900円程度で極度に安いが、それすらもまともに払えない。水道と電気以外は整備されていない最低限の狭い住居だ。
かみさんはその場面を見て「私は中国人に生まれなくてよかった」と言っていた。

 そして農民工は少ない仕事を取り合っている。あまりに農民工が多い(中国全土で約2億人と言われている)ので仕事にあぶれ、賃金は徹底的にたたかれるのだ。
お前ら賃金に文句を言える立場か」斡旋業者の言葉である。

 私はこの番組をNHKの再放送で、しかも途中から見たのだが、竹で作ったゴザを数枚、肩に担いで延々と歩いていく人々の映像が現れた時は、何をしているのか分からなかった。
これは天津港の埋め立てのための竹ゴザで、これを砂浜にひきつめそのうえに土砂をかぶせて港にするのだと言う。

 一枚で45円(記憶が定かでない)の竹ゴザをできるだけ多く背負って、約2.5kmの足場の悪い道を人力で運んでいる。重さはどお見ても60kg程度はある。
俺は農民工を100人使っている」現場監督と見られる人が自慢げに話していたが、竹ゴザを背負って黙々と歩いている人々の映像はナチスに強制労働をさせられているユダヤ人にそっくりだ。

これは昔、歴史の教科書で読んだクーリーじゃないか

 このゴザを背負っていた主人公は杜文海と言う人だが、私と同年輩で海風にさらされて風邪をひいているようだった。
医者にはかかれない。働けば風邪は治るだろう」一日労働すると1000円程度にはなるようだが、実際は月に1週間程度しか仕事がないらしかった。
農民工にとって一番つらいのは病気になることだ。そうなると故郷に帰らなければならないが、故郷には何もない

 杜文海さんには息子がいて一緒に出稼ぎに来ているが、息子はパワーシャベルで石炭をトラックに運び上げる作業をおこなっていた。
1すくい3円24時間労働を強いられていた。
休むと他の人に仕事をとられるので、旧正月にも故郷には帰れないと言う。
眠くて、パワーシャベルの中で寝てしまう」事故が起こらないのが不思議なくらいだ。

 こうまでして二人が重労働をしているのは、杜文海さんの高校生の娘を大学にやるための学費をかせいでいるからだ。しかしその学費も期待したほどたまらない。
俺達貧乏人がこの貧困から抜け出せる唯一の方法は、大学を出てよい仕事に就くことだけだ。だから俺は娘のための学費を稼ぐためだけに生きている。俺の人生はただ働くことだけに終わる

 一方高校生のこの娘が、学校で「将来の希望(正確な記憶ではない)」という作文を朗読している映像があった。
私は一生懸命勉強して、よい大学に入りよい職場に勤めたいです。それは私を大学に入れるために懸命に働いてくれるお父さんやお母さんに少しでも恩返しをしたいからです」読みながら少女は泣き崩れ、周りの少女達も泣いていた。

こんなけなげに生きている人たちがいるんだ」私は胸が熱くなり、涙がこぼれて止まなかった。

 杜文海さんの労働の厳しさには驚いたが、さらに悲しかったのは張健平さん夫婦の映像である。この夫婦は故郷に工場で片腕を複雑骨折した小学生がいる(なぜ工場なのだろう)。
この小学生の手術代が20万円程度(もう少し多かったかもしれないかかり、そのための手術代をかせぐために農民工になった。
故郷には年老いた老夫婦と小学生が暮らしている。

 しかし天津には農民工が多すぎて、おいそれと仕事が見つからない。特に夫の張健平さんの仕事がない。そのために毎日夫婦喧嘩がたえない。
ここは仕事がない。俺は炭鉱夫になる。落盤で死ねば保証金がでる。それで息子の手術代がでるからその方がいいだろう」喧嘩の後の張健平さんの捨て台詞だ。

 奥さんは勤めているものの、斡旋者は賃金を払ってくれない。中国では賃金の未払いは日常的に起こる。斡旋業者がネコババするからだ。
そのため旧正月で内モンゴルに帰郷するお土産にも事欠く有様だ。1500円のおもちゃを買うことができなくて60円の金魚が年に一度帰る息子へのお土産だ。

 故郷では老夫婦が約20頭の羊の放牧をしているが、牧草地は荒れはて、すべて売却しても3万円程度で、子供の手術代にははるかに及ばない。
老婆が高血圧で倒れ目が見えなくなって、村の医者は町の病院の検査をすすめている。張健平さんも「お金を借りて病院に連れて行く」というが老婆は強く拒否する。
私のことはいい。この子の骨折の手術に大金がいるのに、無駄なお金を使うことはない
中国の農村では老人は大事にされる。しかしどうしようもない。
張健平さんは泣いていたが、私もほとんど嗚咽しそうになった。

 子供の片腕はぶらぶらしていて、時間がたてばたつほど手術は難しそうだ。しかしこの夫婦はいくら働いても手術代を稼ぐことは難しそうだった。しかしその子は自分の将来を理解していない。
手術は痛いからやだよ」折れ曲がった腕をぶらぶらさせながら言っていった。

こんな世界があったんだ」信じられないような貧困だ。

 私はながらく中国の高圧的な態度に腹を立ててきた。尖閣諸島の石油採掘や日本大使館に対する理由なき破壊行為や、毒入り餃子事件など、目に余ったからだ。
しかし最近の中国は変わってきたと思っている。
胡錦濤主席の訪日の態度や、四川大地震の中国側の受入対応も世界の一員としての中国という側面が強く出ている。

 そして、このドキュメンタリーをみてこの感をいっそう強くした。こおしたドキュメンタリーは中国の恥になるため、今までは決して映像に収めることができなかった。中国は面子の国だ。
だから「シルクロードシリーズ」を見れば分かるとおり、許可される映像は「中国4000年の歴史」にふさわしいものだけだった。

 今回初めて中国は自身の実態を正直に映像に収めることを許した。約2億人の貧農がいることを画面は伝えている。そおした意味でこの「中国・農民工たちの冬」は歴史的な映像だ。
誰でもそうだが、互いに実情が分かれば信頼感が増す。
イデオロギーをまとった高圧的な態度ではなく等身大の中国だ。

 このドキュメンタリーはまた再放送されるだろう。まだ見ていない方は是非見られることを勧める。中国に対する見方が変わるほど価値ある映像だ。


お願い
このドキュメンタリーを見られた方がありましたら、その感想を教えてください。

 


 

 

 

 

 

 

 

 

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(20.5.16) 中国は普通の国になったのか

 おゆみ野四季の道」のテーマソング。以下のファイルをダウンロードすると曲が始まります。
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 今回の四川省で発生したM7.8の大地震に対する中国政府の対応を見て「中国もようやく普通の国になったのか」と感慨深かった。
災害発生を知ると、温家宝首相を本部長とする地震災害対策本部を直ちに設置し、首相自らも現地に飛び、災害復旧の陣頭指揮を執っていた。

 すでに1万人以上の死者が判明し、これからもどのくらい死者が増えるかわからない大災害に対し「一分一秒を争って人名の救助に当たってほしい。われわれは災害を乗り越えることを信じる」と温家宝首相は言っていた。
村山首相阪神大震災のときの対応を知ってるだけに、温家宝首相のこの対応は実に立派なものだと思わず目頭が熱くなった。

 しかし、過去において中国政府の対応はまったくこのようなものではなかった。
従来は災害が発生すると、直ちに報道管制を引き、外国メディアは勿論、国内メディアさえ災害の実態を放送させず、被害状況を実際よりはるかに小さく見せて公式の発表をするのが普通だったからである。
今回の災害は大規模なものでなく、人民の被害もない

 特に私が今回感銘したのは、中国政府が始めて国民全員を救おうとしたからだ。いままでは中国には共産党幹部・人民解放軍その他の人々がいて、国民とは共産党幹部・人民解放軍だけをさしていた
だからその他の一般の人がいくら死亡しても、人的被害はゼロと発表してはばからなかった。
その他の一般の人は国民ではなかったのである。

 しかし今回温家宝首相は、災害現場で自らハンドマイクをもって「あなたがた全員を救助する」と崩れ落ちた瓦礫に向かって叫んでいた。

中国もようやく国民の命を大事にする国になったんだ
日ごろ中国に対して批判的な娘も、瓦礫の中から小学生が助け出されるシーンを見て手をたたいて喜んでいた。

 中国が今までいかに人命を軽視し、人権のない国だったかは歴史的に検証できる。

 1950年から3年間、朝鮮半島で朝鮮戦争が勃発したが、このとき中国は中国人民義勇軍を派遣して、国連軍の主流アメリカ軍と戦った。
このとき中国側の死傷者は約90万人と言われたが、そのほとんどが毛沢東に降伏した蒋介石国民党軍の元兵士だった。

 毛沢東はこの厄介な国民党元兵士を前線に送り、その後方に人民解放軍の銃殺部隊を配置して、逃げてくる国民党軍元兵士を銃殺した。
そおして、元国民党の兵士在庫一掃を図った。
あの、アメリカ軍に雲蚊のごとく襲い掛かった中国人民義勇軍とは、後退すれば銃殺されるため、前にしか進めなかった元国民党軍の兵士だったのである。

 1960年代後半から、1979年代前半まで吹き荒れた文化大革命では、約1000万人の国民が、走資派として粛清され殺された。
もともとは大躍進政策の失敗で権力の座から滑り落ちていた毛沢東が、紅衛兵を利用して権力の再奪取を図ったものだが、人を殺すことに一切躊躇をしていない。
走資派は一人も生かしておくな。あいつらは人間でない紅衛兵の標語だ。

 1989年の天安門事件では、完全に報道管制を敷いた後、関係した学生を根こそぎ殺害したが、その数は数万人と言われているものの、歴史の闇だ。

 チベットでは共産党支配に反対するチベット人を数十万人単位で殺害して、今に至るチベット問題の遠因となっている。

 これだけ人命を軽視してきた国が今回は報道管制も敷かず、また災害の様子を外国メディアに一切隠すことなく、全世界にありのままの真実を伝えている。
温家宝首相も国民を助けようと必死だ。始めて中国政府は、共産党員や人民解放軍だけでなく国民全員を助けようとしている

 「中国もやはり変わってきたのだ」私はひどく感銘した。
北京オリンピックを中国で開催することは成功だったのだと思う。
中国は世界から見られている存在であることを意識して行動し始めた。少なくとも政治の指導者はそのように行動するようになった。

 中国政府が今回始めて見せた、国民の命を大事にする姿に私は胸を打たれ、思わず涙が流れた。
中国も変わってきたんだ

 

 

 

 

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(20.5.12)胡錦濤国家主席の訪日は大成功だ

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 胡錦濤国家主席の訪日は、近来まれに見る成功に終った。特に早稲田大学で胡錦濤主席福原愛選手と中国のエース王楠選手を相手にラリーをしていた姿には思わず笑ってしまった。

 やや肩に力が入っていたが、65歳とは思われない運動神経でスマッシュをはなって、さすが卓球王国の主席だけはあると観客をうならせた。

 北京で外国からの賓客に会うときは、身体を微動だにせず、相手が近づいてきて握手するまで不動のまま表情を変えないのだが、ラリーをしている姿からは腕白坊主が夢中になっているようなかわいらしさがほとばしり出ていた。

 私のように、普段中国を快く思わないものでも、今回の胡錦濤主席に好意を抱いたのだから、これが成功でなくて何と言えよう。

 思えば10年前の江沢民主席の訪日はひどかった。口を開けば「日本軍国主義」「歴史認識」「謝罪」を繰り返し、天皇陛下に対する敬意も微塵にも見られなかった。
ほとんど喧嘩を売りにやってきたようなもので、さすがの中国ロビーの面々も鼻白んだほどだ。

 江沢民早稲田大学の講堂で「日本軍国主義は対中侵略戦争を起こし、中国軍民3500万人を死傷した」と講演したのである。
これに対し胡錦濤主席は、同じ早稲田大学で「私たちが歴史を銘記するのは、恨みを抱き続けることでなく、歴史を鑑(かがみ)に未来に向かうためだ」と述べた。

 なんという違いであることか。江沢民はただ恨みだけを述べていたが、胡錦濤主席未来に向かいたいと言う。
日中間の懸案問題は、東シナ海のガス田毒入り餃子事件の解明日本の国連安保理の常任理事国入り等多いが、本当の意味ののどに刺さったとげは「歴史認識」にあることは確かだ。

 この問題が持ち出されるたびに、日中両国の国民はほとんどわれを忘れて感情的に対立する。
こおした問題はどこの国にもあり、イギリスでは長く北アイルランド問題がそおであったし、スペインではバスク地方問題がそれだし、トルコではクルド人問題だ。
隣の韓国と日本は中国と同じ歴史認識で互いに興奮してしまう。

 今回胡錦濤主席江沢民が要求した「おわび」も「反省」も求めず「未来」を強調した。
中国もやっと大人の付き合いができるようになったのか」私はひどく感銘した。

 最も中国は中国のお家の事情からしても「歴史認識」など言っていられないはずだ。
中国経済は今、後進国型の経済成長から、中・先進国型の経済成長に変換しなければ、確実に昔の中国に戻ってしまう瀬戸際にある。

 すでに昨年の10月から株式は下がり続け、ピーク時の半値になってしまった。不動産価格はまだ暴落には至っていないが、上昇はしなくなった。先見の明のある中国人はすでに不動産投資からは撤退している。

 中国元管理変動相場制に移行した5年7月以降、すでに20%の切り上げが行なわれている。
元相場の上昇を抑えようと、中国政府はドル買い元売りをしてきたが、売られた元が国内の物価を急上昇させ、国民は爆発の寸前だ。
豚も食えないじゃないか

 元相場を維持するためにインフレを甘受するか、それともインフレを抑えるために元高を容認するかで、中国当局は頭がいっぱいだ。
前者を採用すれば国民が怒り出し、後者を採用すれば輸出業者がバタバタ倒産してしまう。
どうすりゃいいんだ

 すでに中国では紡績皮革製品のような労働集約型産業は採算に乗らなくなった。
次はインド、ベトナムの時代になろうとしている。

  こんな時に「歴史認識」など持ち出して、日本の対中投資の足をひっぱたら大変だ。
これからは、日本に対し友好的なインドに投資しましょう安部前首相でなくてもそお言いたくなる。

 歴史は繰り返えすのだ。かつて日本や韓国がそおであったように、中国も今、中・先進国型経済に脱皮しなければならない段階にやってきた。
その場合組む相手は最先端技術の国日本が最有力候補だ。
日本を怒らせても何の利益にもならない胡錦濤主席の本音だ。

 さて、ようやく日中間に春風が吹いてきた。
中国は日本に「助けてくれ」とサインを送ってきた。この状況を日本はどのように利用できるか、日本の戦略的対応が見ものだ。

 

 

 
 

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(20.4.22)中国の聖火リレーは散々だ

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 中国の聖火リレーは散々な状態になってしまった。世界5大陸の21都市を回り、中国本土を含めて130日間、世界最大規模の聖火リレーのはずが、中国のチベットに対する人権抑圧の象徴になってしまったのだから、愛国的な中国人が切れてしまうのは無理もない。

 武漢では、ネットで抗議行動が呼びかけられ、聖火リレーが2度も中断したフランスへの抗議として、スーパーカルフールを約2000名の群集が取り囲む一場面があったが、3年前の反日暴動のような騒ぎにはならなかった。
さすがに日本に対しては何でもありの中国だが、フランスが相手だと少しは理性的になれるらしい。

 人民日報が「大国としての態度を養い、中国人の団結と理性、知性を世界に見せよう」と呼びかけデモを中止させた。
3年前の反日デモの時には「これは愛国心の発露だ」と言ってあおっていたのだからえらい違いだ。

 しかし中国にとって返す返すも残念だったのは、聖火リレーのスタート地点が人権問題のやかましいヨーロッパだったことだろう。
ロンドンがスタートになったのは、次期オリンピック開催地だからだが、ここでひどい出迎えにあってしまった( あとで確認したら、聖火はカザフスタン、トルコ、ロシアを回って4番目にロンドンに来ていました。ロンドンの騒ぎが印象深かったのでロンドンが最初と思ってしまいました

 次から次にチベット問題の抗議者が飛び出してきて、聖火リレーはさながら障害物競走になってしまった。
中国自慢の聖火警備隊もまったく役立たずで、もう少しで聖火が奪われそうになってしまったのだから、中国首脳部は激怒したに違いない。
お前達を派遣したのは、何のためだと思っているのだ。命を懸けて聖火を守れ

 しかし、パリではさらにひどい出迎えを受けてしまった。パリ警察はロンドン警察を1000人上回る3000人の警備体制を引き、さらに聖火そのものを聖火警備隊パリ警察白バイ隊3重のバリケードで守ろうとしたが、こちらは2度も聖火を消してバスに逃げ込まなければならなかった。

 中国首脳部は切れてしまったはずだ。
お前達を派遣したのに、このざまは何だ。もしこれ以上不始末をしでかしたら生きて中国に戻れないことを知れ

 しかし、中国人には理解できないと思うが、イギリスもフランスも人権を重要視する民主主義国家としての誇りがある。平和なデモを禁止するような野暮なことはしない。
聖火と人権とどちらが大事か。両方だ」あっさりとしている。

 さすがに中国も単に聖火警備隊だけを脅しつけても駄目だと悟ったらしい。次のサンフランシスコでは、「どんな手を打ってもいいから、聖火が奪われたり、デモ隊に囲まれたりする醜態は避けてくれ」とアメリカに依頼したはずだ。
ヨーロッパだけでなくアメリカまでもトラブルが発生したら、先進国はこぞって北京オリンピックに反対していることになってしまう。

 おかげでサンフランシスコでは第一走者が倉庫に入って消えてしまった。
その後バスで移動して、コースとは関係のない場所で聖火ランナーが走った。アメリカとしても中国との関係を悪化させてまで、醜態を見せるつもりはなかったようだ。
ブッシュ大統領は、ヨーロッパの首脳とは異なり開会式に出席する予定なのだから「聖火リレーなんてどうでもいいから、混乱だけは避けろ」と言ったはずだ。

 しかしこれでは聖火リレーは何のためにしているのだか、訳が分からなくなってしまった。
もともと聖火リレーはナチスドイツベルリンオリンピックから始まったのだから、「聖火リレーは血のにおいがする」なんていわれてしまい、国際オリンピック委員会も立つ瀬がなくなってきた。

 その後は幸いに人権問題などそっちのけの国で聖火リレーがおこなわれており、さらにリレーの距離を減らしたり、ルートを変更したりして何とか中国の面子も保てるようになった。
特にブエノスアイレスでは、群集の中から水風船を投げ込まれたが、聖火警備隊がこれをブロックするシーンまで全世界に放映されて、中国首脳部としてはようやく安堵の気持ちになったろう。
これで、あいつらを刑務所にぶち込まなくてもすみそうだ

 しかし17日のインドはかなり問題であったはずだ。何しろここには亡命チベット人約10万人もいる。数千人規模のデモや聖火リレーの妨害が予想されたのだから、中国としてはインド政府に猛烈な申し入れをしていたはずだ。
もし聖火リレーが粛々とおこなわれなければ、貴国との外交関係に重大な懸念が発生することを理解されたい

 インド政府の警備体制は異常なほどだった。まずリレーの距離を9kmから2kmに短縮し、周りをバリケードで固め、さらに15000人の武装警官を配置してデモに備えた。
平和なデモであったにもかかわらず拘束された人は180人に上り、ほとんど戒厳令さながらだ。

 しかしこうまで聖火リレーがもみくちゃにされたのは、もともと中国がチベットを植民地にして、弾圧したのが原因なのだから自業自得と言うものだが、中国人には到底理解できないだろう(詳細は最後の植民地帝国中国の苦悩を参照)。
中国は世界の中心で、中国は文明を四方に広げて、その恩寵を施しているのに、なぜ野蛮なヨーロッパ人はそのことを理解しないのだ

 また血が頭に登ればカルフールを焼き討ちしそうだ。

 さて、26日はいよいよ日本に聖火がやってくる。すでに善光寺からの申し出でコースは変更になっているが、日本の聖火リレーは粛々とおこなわれるだろうか。

 私の予想 日本の警察官は優秀なこと、 人権団体の入国は拒否することにしていること、 日本にはチベット人は多くないこと、 日本の人権意識はヨーロッパより低いこと、からみて何事もなく聖火リレーがおこなわれ、あってもブエノスアイレスと同じ水風船レベルだというものだが、果たしてどうだろうか。

(20.4.29追加
 日本での聖火リレーは大きなトラブルもなく終了した。沿道での小競り合いで中国人4名が負傷したが、聖火リレーそのものへの影響はなかった。

 

 

 

 

 

 

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(20.3.24)最後の植民地帝国中国の苦悩

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 最後の植民地帝国中国が苦悩している。チベットで暴動が発生し、中国当局の発表で約20名、亡命政府の発表で約100名の死者が出たと言う。暴動はチベットだけでなく周辺のチベット人居住地区まで拡大した。
死亡者数については、中国当局の発表は天安門事件での過小報告の前科があるから、おそらく亡命政府が言う数字に近いのだろう。

 中国の放送局が放映した映像では、ラマ僧や一般人が商店を壊したり、自動車をひっくり返したりしていたが、武装警察が発砲する場面は伏せられていた。

 今回の暴動は89年天安門事件の時以来だが、その時の暴動を鎮圧して鄧小平のお気に入りになったのが、現在の最高指導者胡錦濤だから歴史の皮肉だ。

 北京オリンピックを控えて中国首脳も頭が痛いだろうが、元はと言えば中国がチベットを植民地にしたのが原因なのだから自業自得と言うものだ。

 中国を植民地帝国と呼ぶのを不思議に思う人がいると思うが、これは事実である。
植民地とはチベット、内モンゴル、ウイグルの3箇所をさす。

 チベットが現在の中共政権によって植民地化されたのは1950年だから、すでに半世紀以上も前のことだ。その前年、中共政権蒋介石国民党軍を台湾海峡に追い落として、国内統一を成し遂げていた。

 私は長い間「なぜ中共の人民解放軍が1950年にチベットに侵入した」のかその理由が分からなかった。
なにしろチベットは4000~5000mの高地にある貧しい地域であり、ここにたどり着くには今の感覚で言えば登山道しかなかった。

 先日NHKで放送された茶馬古道がそれだ。見た方があれば分かるが、とても普通の人が通れるような道ではない。川には橋がなくワイヤーロープで馬を渡していた。

 こんな場所にせっかく統一がなって平和が訪れたのに「なぜ軍隊を派遣したか。毛沢東は頭がおかしかったのではないか」と思っていた。

 しかし、そう思っていたのは私が世界史の法則を知らなかったからで、井沢元彦氏の「逆説の日本史」を読めがこれが普通だと言うことが分かる。

 日本においては豊臣秀吉が国内統一後の有り余った軍人の失業対策として朝鮮半島に出兵したし、アレクサンダー大王はギリシャ統一戦争後に東方遠征に出かけた。ナポレオンチンギスハーンも同じだ。

 毛沢東は国共内戦に勝利した後の、人民解放軍の失業対策に悩んでいたのだ。何しろ当時の中国はまずしく、とても大量の人民解放軍を養うことができない。
国内戦は終わった。もう君たちに食わせるものはない。食い扶持はチベットに行って自分で調達しろ」と言うことだ。

 幸いにチベットは清朝時代に清の版図に組み込まれていた。実際はほとんど独立国だったが、形式上は清王朝に服属していた。

 それが、清朝滅亡後は服属する相手がなくなったため、完全に独立国の様相を呈していたところに、食詰浪人のような人民解放軍が押し寄せた。
ここは元、清朝の領土だった。だから今度は中共に服属しろ。飯と女をよこせ

 チベットダライラマを中心としたいわゆる神聖政治をしていたので、軍隊はまったくなく、たちまちのうちに人民解放軍に占領されてしまった。

 もっとも中国に言わせると「僧侶と貴族による暗黒の封建農奴社会から人民を解放した」のだから「チベット人民は幸福になった」と言うことだが、これは宗主国常套句で、日本も同じようなことを朝鮮半島の住民に言っていた。

 実際は言うことを聞かないと、男性は断種を強要され、女性は中国兵による強姦が日常的に行なわれていたと、国際法曹委員会が報告している。
中国は長いことこうした事実を隠していたが、ハリウッドが「セブンイヤーズ イン チベット」というブラッド・ピット主演の映画を作って、この事実を暴露した。

 中国は頭に来て抗議したが、当然のことだがハリウッドはその抗議を無視した。
おかげで人民解放軍の高級将校が、日本の皇居にあたるポタラ宮に土足で入ってきて、ラマ教の最も崇高な行事である砂で描いたマンダラを蹴飛ばして壊すシーンを見ることができた。

 その後ダライラマ14世が人民解放軍の圧制に耐えかね、蜂起したのが1959年だが、たちまちのうちに蹴散らされ、ダライラマ14世はインドに亡命した。
インド北部ダラムサラにあるチベット亡命政府がそれだ。

 ここからはホームズワトソン君に登場願おう。

ホームズ、チベット人が機会あるごとに独立しようとしているのは分かるが、なぜこの時期に再び暴動が発生したのだろうか
チベット側から言えば、やはり北京オリンピックをひかえ、世界の目が中国に注がれているこの機会を利用したいと言うのが一番の理由だろう。

 しかしそれだけとはいえない。今回の暴動に多くのラマ僧が参加しているが、これはラマ僧をはじめとするチベット人の精神世界が脅かされているからだ

精神世界が脅かされていると言う意味がわからないな
うん、実は中共政権は政治は中国共産党の支配下においたが、ラマ教と言う精神世界には手をつけなかった。

そのためチベット人がチベットを認識する最後の手段がこのラマ教だったわけだ。

ところが、改革解放の波がこのチベットにも訪れ、中国本土とチベットの間には3本の高速道路が開通し、さらに2006年チベット鉄道が開通してから多くの観光客がラサに来るようになった

観光客が問題なのかい
中国人の商才と、観光客の宗教への無理解が問題なのだ。
宗教絵画や仏像やその他の宗教用具を中国商人が買いあさり、それを観光客に高く売りつけている。
観光客は宗教用具を単なるお土産としか扱わない。

ラマ僧やチベット人からからみれば自分達の最後のよりどころの精神世界を土足で踏みつけられている気持ちになり、チベットが物質文明に汚染されたと思うようになったのだ


それでラマ僧が立ち上がったわけか。イランのホメイニ革命とよく似ているね。ところで今後チベット問題はどう展開するだろうか
現在の人民解放軍の力は圧倒的だから、暴動は鎮圧されるだろう。
チベット問題で中国がゆれることはないが、反対に中国がゆれれば独立運動が燃え盛るだろう。今のところそれがいつかはちょっと予想できないけどね

 

 

 

 

 

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