(22.7.16) クラウド・コンピューティングの時代
時代は企業のクラウド・コンピューティングに移ったのかと感慨深かった。
米マイクロソフトと富士通が提携をして企業向けにクラウド・コンピューティング事業に乗り出すという。
クラウド・コンピューティングと言っても一般の人は何のことか分からないが、自分でシステムを構築せず、しかもディスク等も用意せず、もっぱらパソコン1台でネットワークを経由してシステムを利用する方法である。
個人レベルではこのブログが典型的にそうで、私はniftyのココログを使用しているが、ココログをネットワークで呼び出して、そこに毎日ブログを書いており、そのデータはココログのデータベースに蓄積されて、しかもWeb環境ですべての人が検索可能になっている。
私が用意したのはパソコンとネットワークだけであり、ブログを書き込んだり、蓄積したり、配信したりすることはすべてココログが行っている。
私はココログのこの環境はまったく知らず、いわば雲(クラウド)の上の存在なので、この様なシステムの利用方法をクラウド・コンピューティングという。
私が使用している他のクラウド・コンピューティングはYou TubeやGmailやPicasa Webと言ったところだが、いづれもデータベースは自分で持たず、ネットワークを通じてソフトを利用している。
このように個人にとっては当たり前になっているクラウド・コンピューティングがなぜ企業に浸透しなかったかと言うと、企業は今までは自前主義を通してきたからだ。
自前主義をせざる得なかった理由は以下のとおりだ。
① 企業がシステム開発を始めた当座はクラウド・コンピューティングなどという便利な環境がなく、自前で構築せざる得なかった(特にネットワーク環境が悪かった)。
② 一旦自前で構築してしまうとそれを他のシステムに移行することが困難になる(システム要員や設備を抱えてしまうため)。
③ また扱っているデータのセキュリティ管理が重要で、従来はこの管理を他の業者に頼めなかった(信頼できる外部の企業がなかった)。
特に私が所属していた金融機関は典型的にそれで、会社内に多数のシステム開発要員を置いて、自前でソフトを開発し、運用は独自のセンターを構えて多くの運用要員をかかえていた。
年間のシステム関連費用は約300億円程度だったが、会社の中で最も多くの経費を使用していた。
「システムは金食い虫で困る」企画部の予算担当者が毎回ぼやいていたものだ。
金融の仕事は特殊で、自前でないとシステム構築ができないと当時は思っていたが、それはほんの一部の戦略的システムの場合だけである。
それ以外の文書作成システム、表計算システム、メールソフト等はマイクロソフトのWordやExcelやExpressを使用すれば十分だし、会計ソフトや人事・給与・管理ソフト、顧客情報管理ソフトも若干の修正をほどこせばパッケージソフトが十分使用に耐えられる。
金融機関はほとんどのシステムを自前主義で構築してきたが、一方でシステム経費は毎年増加の一途をたどり、しかも従来型の預金や貸出や為替は斜陽産業だ。
「これ以上のシステム経費に耐えられない。どうにかならないか」と言うことで脚光を浴びてきたのがこのクラウド・コンピューティングである。
もし100%このクラウド・コンピューティングを使用したと仮定すると以下のような絶大なメリットが期待できる。
① システム開発要員が要らない。
② システム運用要員が要らない。
③ 電算センターが要らない。
④ 外部にデータを保管する必要がない。
セキュリティー面さえ保証できれば、経営の合理化に取り組まざる得ない企業は、こうしたクラウド・コンピューティングを積極的に利用するようになりそうだ。
なにしろシステムは金食い虫だから、こうした仕事は企業の内部に持ち込みたくないのが本音だ。
注)システム要員が多くなりすぎると、本来証券部門や融資部門で働いてほしい人材がシステムに固定化されて収益を生まなくなる。実際金融機関はそうしたジレンマに悩んでいる。
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