(23.2.7) 弱いもの連合の逆襲 新日鉄と住友金属の合併
ついに新日鉄と住友金属が生き残りをかけて合併に動き出した。来年10月1日をめどに合併を行うと発表したからである。
かつて日本の鉄鋼業界は世界をリードし、特に新日鉄は20世紀の後半の30年間世界一の地位を保っていた。
しかし01年粗鋼生産トップの地位を譲り渡し、08年には2位だったもののリーマンショック後の09年は中国のメーカーに追い抜かれて6位まで後退し、今後どこまで落ちていくか分からないような状態になっていた。
注)通常鉄鋼業界の規模は粗鋼生産で図られる。一方鉄鋼製品は多様化され、H形鋼、熱延コイル、シームレスパイプ、鋼矢版等があるため、何で比較するかによって順位が異なる。
日本の鉄鋼製品は高品質で知られ、特に自動車産業で使用される熱延コイルは日本メーカーの独壇場だったが、世界は大きく変化した。
中国やインドで生産されるいわゆる低価格車は日本製品の品質を必要とせず、安価で適度な品質であれば積極的に購入するようになったため中国鉄鋼メーカーのシェアが急激に伸びている。
「高品質・高価格は日本国内だけしか通用しないのか・・・・・・・・」
新日鉄を取り巻く状況は厳しい。原材料の鉄鋼石や石炭の価格決定権はかつては新日鉄にあったが、いまや中国メーカーに取って代わられた。
「この価格がご不満ならご購入いただかなくても結構です。中国メーカーが喜んで購入してくれます」資源メジャーから完全に足元を見られている。
一方販売面でも原材料アップに伴う価格交渉はトヨタやホンダやニッサンからNOを突きつけられる。
「自動車産業も不況なのです。海外工場の鋼材調達は新日鉄さんでなくても結構です」
中国工場で生産されているニッサンのマーチは95%が中国鉄鋼メーカーのような海外の製品だ。
おかげで新日鉄の業績は急激に悪化し、09年度の最終損益は115億円の赤字になってしまった。
日本国内の需要は頭打ちで、中国やインドでの需要が急拡大しているが、ここでの需要は、中品質・中価格製品だ。
「そんなに無理して高品質の製品を販売してくれなくてもいいのですよ。中国にも立派な製鉄所があります」世界はつれない。
新日鉄はこのままではジリ貧になり、油断をするとアルセロール・ミタルか中国メーカーに買収攻撃を賭けられそうだ。
「やはりここは合併しかない。国内で競争している場合じゃない。海外に打って出るためにも国内固めをしておこう」こうして合併交渉が行われた。
しかし国内には独占禁止法の壁がある。この法律の趣旨は日本のメーカーが世界のトップメーカーだった時代にディペンドしているため合併に厳しい。
今回の合併も承認されるかどうか不明だ。
「公取さん、日本のメーカーは世界的には弱小です。国内シェアだけで考えないでください」経済産業省が懸命に業界の後押しをしている。
注)07年、国内外どちらの企業からでも調達できる場合は国際シェアで見ることに法改正したのに、経済産業省が望んだ運用を公取はしてくれない。
思い余って経済産業省は産業活力特別措置法なるものをさらに制定して公取の力を削ぐ戦略に出てきた。
日本が世界最強の製造業だった時代が終わり、中国やインドに追い上げられている時に、国内法はあまりに時代遅れになっている。
「外国企業から買収されそうな時に、独占禁止法かい!!」企業の悲鳴が聞こえる。
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- (23.2.7) 弱いもの連合の逆襲 新日鉄と住友金属の合併(2011.02.07)
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コメント
ほんと、今の独占禁止法の運用ってどうなってるのやら?です。
PCのOSを見ても然り。
本当は行政はオープンソースを積極的に導入してもいいはずです。
実際に導入した所では経費を大幅に削減できたそうです。
納税者番号制度についても、オープンソースベースで鍛えられた暗号化情報技術があり、流出などに対する厳しい罰則が加わることが肝要といわれます。
以下、余談ですが:
例えばIDの全無効化とIDの再割り当てを全額負担し、関係者は個人法人問わず、
今後とも出入り禁止-等です。そして、このような責任のある仕組みを一世一代の機会
と捉えて欲しいものですが、そこら辺の軟弱エンジニアは無理だと決めつけてるようで
理屈ばかり付けてどうしたら厳しい運用ができるのか、という点への意見が出てこないのですが^_^;
(ちなみに前職では銀行関係のプロジェクトに関わる部署もあったのですが、厳重な守秘義務
のため、情報処理技術の概要はおろか人数すらも社内情報として共有できなかったほど)
投稿: 横田 | 2011年2月 7日 (月) 15時32分