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(23.2.25) カダフィ・ショック  リビアの内戦と世界経済の崩壊

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 世界は今カダフィ・ショックが発生するか否かで固唾を呑んでいる。リーマン・ショックから2年半、ようやく立ち直りつつある世界経済がふたたび泥沼に突入する直前まで来た。

 リビアは世界第8位の石油大国で、世界の全生産量の3.3%を生産しており、ほとんどが西欧に輸出されているが、すでに半分の輸出が停止してしまったようだ。

 ドイツ・イタリア・フランス・スペインといった外国資本の石油関連企業が従業員の安全確保のために引き上げを行っているからで、港湾も閉鎖が続いている。

 リビアはアラブでも一二の強権国家だったから、「まさかリビアにアラブ革命が及ぶことはないだろう」と思われていたが、北東部の元王族の支配が強固だったベンガジから火の手が上がった。
カダフィ大佐がここを仇敵の住んでいた場所として、徹底的に弾圧してきたからで、ベンガジ市民はカダフィ大佐を憎んでおり、しかもエジプトに近い。

 現在リビアは内戦状態になっており、国軍の寝返りもあり反政府軍は東と西から首都トリポリに迫っている。
これがエジプトやチュニジアであれば、このあたりで大統領が退陣して暫定政権ができるところだが、リビアはそうはなっていない。

リビアは俺の国だ。俺はリビアを離れずここで死ぬ。俺はムバラクやベンアリのような腰抜けでないカダフィ大佐は口角泡を飛ばしてそう演説した。
カダフィ大佐を支持しているのは治安部隊とまだ寝返っていない国軍そして傭兵部隊だ。

 カダフィ大佐はチュニジアやエジプトでアラブ革命の火の手が上がると、アフリカのマリやモーリタニアやチュニジアやギニア等から大量の傭兵を雇い入れた。治安部隊だけでは対応が難しいと判断したところはさすがだ。
日当は3000ドルと言うから約24万円で、1ヶ月に700万円の高給だ。

 カダフィ大佐が傭兵を雇ったのは軍隊はエジプトやチュニジアのように寝返る可能性が高く、治安部隊だけでは大規模な反乱には対応できないと判断したからだ。
それに何より住民を無差別に殺害できるのはならず者集団の傭兵しかいない
すでに政府発表で300人、アラビアの衛星放送は約800人、ベンガジの反政府組織は2000人の死者が出たと発表している。

 世界経済にとっての問題はリビア内戦が石油価格に飛び火し始めたことだ。
リビアは首都トリポリをめぐって内戦状態になているが、それが長期間に及ぶと世界石油事情は完全に逼迫する。
価格はリーマン・ショック前の約150ドルに急激に近づき、それを突破する可能性が出てきた。
市場では220ドルの可能性があると見ている。

 石油は産業の米だ。この上昇によりガソリン価格だけでなく、電力・ガス・石油製品が急激に上昇し始めた。
すでに穀物価格はリーマンショック前の水準に達しているのだから、これで石油製品が高騰すれば世界はインフレの波に飲み込まれる。

 先進国経済は青息吐息で新興国経済だけが頼りだったのに、ようやく立ち直りを見せていた世界経済が急激に縮小し、リーマン・ショックの再現になりかねない。
市場は敏感に株式市場から資金を引き上げ、石油と金、それに相対的に安全通貨と見られる円、および信頼性の高い債券にシフトしている。
リーマン・ショック前夜とまったく同じ状況だ

 カダフィ大佐ががんばればがんばるほど、カダフィ・ショックの確率は高くなる。
カダフィ・ショックは来るだろうか。そうならないことを願うが来れば世界経済はリーマン・ショック後の2番底を経験することになるだろう。

24.1.16追加) 石油や金価格は一時期高騰し、11年4月石油は110ドルまで上昇したがそれ以上はあがらなかった。これは過去の価格上昇時の教訓と世界経済自体が失速していたので市場がパニックにならなかったためと思われる。

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