(23.2.20) 政治は数 菅政権のあまりに早いカウントダウン
「政治は数」だといったのは故田中角栄氏で、その直系の後継者小沢一郎氏の数の選挙戦略に反対して政権奪取を図った菅直人氏だが、早くも政権末期症状に陥いり、退陣はカウントダウンになっている。
23年度の当初予算を通すためには赤字国債を発行するための国債特例法案を通過させなければならないが、この法案通過の見通しがまったく立たないからだ。
注)日本は財政法の建前からは赤字国債の発行を認めていない。そのために特例法案を毎年成立させて赤字国債の発行を容認してきた。
菅氏は大衆迎合主義者だから民衆の喜ぶことしかできない。しかしさすがに国家財政が破綻していることは分かっていて、前回の参議院選挙では財政再建のために「消費税の増税」を「自民党をまねよう」とこわごわ提案した。
その結果民主党は大敗北を喫し、与党だけで過半数を維持することができなくなりレームダックになってしまった。
国会は数がすべてという世界だから、参議院で過半数を取れなければ法案の成立はおぼつかない。
国民が消費税反対の意思表示をすることは歴代の自民党政権で十分経験済みなのだが、菅総理はその経験を学ばなかったようだ。
記憶をたどれば、大平内閣は消費税の導入を図ろうとして衆議院で過半数割れを起こし、竹下内閣は3%の消費税導入に成功したものの世論から総スカンに会って退陣し、細川内閣(これは自民党政権ではないが)は国民福祉税を突然もちだしては翌日に撤回しその後政権が崩壊した。
また橋本内閣は消費税を3%から5%にあげて次の参議院選挙で敗北している。
近くは麻生内閣が消費税アップを争点にして民主党に大敗北を喫した。
「消費税は鬼門」なのだ。
だから本当に消費税の増税をしたければ、選挙の争点から消費税を隠し、両院で過半数を確保した後に、数の力で押し切るほかに手はない。
民衆の意見はわがままだ。総論賛成・各論反対になるのが普通で、財政再建には賛成しても消費税を10%に上げれば生活が苦しくなるのは分かりきっているので浮動票は民主党を離れる。
もし消費税を上げることができなければ財政再建の方法はインフレで国債の実質的価値を低下させることしか選択肢はない。
国債を保有している老人層や実際に生活している人々は塗炭の苦しみを受けることになるが、消費税は明確な増税でインフレは隠れた増税だから、民衆はどうしても明確な増税の方に反対する。
注)詳細は「公的債務1000兆円の踏み倒し方法」を参照
菅政権は完全に行き詰まり、この3月末に当初予算を通すこともできない。
予算こそは国の基本でこの予算が通らなければ菅政権はそのとき終わる。後は衆議院を解散して総選挙を行うか、首相が退陣するかの選択を迫られる。
だが今総選挙を行えば民主党の地すべり的敗退、自民党の復活、みんなの党の大躍進は確実だから、民主党としては恐ろしくて総選挙を行うこともできない。
かといって首をすげ替えても参議院の過半数割れは解消できないのだから、最終的には政界再編による過半数確保しか残された道はない。
しかしこんなにも次々に首相が変わってしまうと日本に政治力を期待するほうがどだい無理だ。かつては経済一流、政治三流といわれていたが、今では経済も二流になってしまったのだから、日本の将来には暗澹たる気持ちになってしまう。
「日本にはいったい何が残ってるんだい」なんて気持ちだ。
菅総理の大衆迎合主義者としての性格が墓穴を掘ったのだが、それにしても日本にはもう少し判断力と指導力の有る首相が現れてもよさそうなものだと思ってしまう。
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コメント
それほど悲嘆するほどではないかも知れません。
実は、麻生総理は世界的には評価を受けているようですよ。
日本国内では、ホテルで飲んでいる、カップめんの値段を知らない、漢字をしらない・・・
などで酷評ですが、特に日米印の条約などは、現在の中国を見れば真に理にかなっていると思われます。
リーマンショック後の景気対策も、純粋に考えれば、あれ以上の対策はありませんね。
日本の不幸は、マスコミが身奇麗で清貧で、事務所の経費を1円単位まで数えている政治家を好むことでしょう。
明治の大政治家は、飲む、打つ、買う、めかけを囲うなど、現在のジャーナリストから見たら突っ込みどころ満載ですが、その豪胆さから来る政治判断は立派なものがありました。
(山崎)政治は泥臭いものであり、海千山千が普通です。誠実で身奇麗な人は個人的には好きですが、政治家としては資質がありません。
私が小沢氏を評価しているのは、選挙のためにはどのようなことをしても勝つというその根性がすばらしいからです。
世界の政治家と渡り合うためには、タフでなくては勤まりません。
投稿: たか | 2011年2月20日 (日) 22時21分