(23.2.16) NHK 追跡 A to Z 増殖する闇金 飲み込まれる中小企業
前回の追跡という番組では職業を持たない主婦が闇金の餌食になっているレポート(22.11.22の記事参照)を放映していたが、今回は同じく闇金の餌食になっている中小企業の実態に迫っていた。
多重債務の消費者や資金繰りが厳しい中小企業は金融機関から相手にされなかったため、貸金業者(武富士やアイフルのような消費者金融や商工金融等)にたよって資金繰りをつけてきたが、10年6月の貸金業法の全面施行で貸金業者からの融資を受けられなくなってきた。
貸金業者は出資法の認める上限金利、29.2%程度で融資を行っていたが、これは貸金業界の平均的な倒産率が20%程度だったため、20%以上の金利設定でないと貸金業界の経営が成り立たないからだ。
しかし改正貸金業法の施行で貸出金利は20%以下に抑えられることになったため、多重債務者や資金繰りの厳しい中小企業に対する融資をしなくなった。
ある貸金業者は「貸さないのではなく、貸せないんだ。政府が急激に法律改正をしたからだ」と言っていたが、確かに20%以下では倒産しそうな相手に融資することはできない。
06年の段階(この年に最高裁が約29%の金利は違法との判決を出した)で約21兆円の残高があった貸金業界の残高は10年には約12兆円と半減しこの先どこまで減少するか分からない状況になっている。
問題はこの半減した残高を誰が支えているかだが、貸金業者の代わりに闇金融が大増殖をし始めており、日本最大の成長産業になっている。
今回のレポートでも闇金の事務所に新たに闇金に参入を希望している人が押しかけている事例や、闇金に返済ができなくなった中小企業主が今度は闇金の手先として働いている事例を紹介していた。
闇金は今いくら人手があっても足らない状態だ。
なぜこれほどまでに闇金がはびこるかと言うと、貸金業者に断られた中小企業主や主婦はどんな高金利でも借入をするからで、この報道の事例ではある不動産業者の社長は250万円を10日間借りて返済が300万だった。
年間ではなく10日であるところに注意してほしい。
かつては闇金の世界ではトイチ(10日で1割の利息と言う意味)と言う言葉があった、現在はそれがトニー(10日で2割、年間で360%)になっていた。
貸金業界の利息が年間約30%で最高裁判所や国会は高いと思ったようだが、闇金ではその12倍の360%が相場らしい。
これだけ儲かれば貸金業をやめて闇金になるほうがどんなに利益率が高いか分からないのでそうした業者も多い
今回の放送の事例では倒産した中小企業の社長が新たに闇金の中継者にリクルートされ、大阪の暴力団から1億円の資金を託されて沖縄の闇金業者に一人500万円の資金を渡して、営業を行わせていた。
なんと一挙に20名も闇金業者が増えた勘定になる。
注)返済不能者は闇金で働かされる。身体で返すところは昔の女郎と同じ。
また他の例ではこうした闇金に頼らずに中小企業者が互助組織を作って、月に10%(年間で120%)の金利で資金を融通し合っていた。
これも利息制限法違反だが「倒産するよりはこうして助け合うことが必要だ」とその互助組織の主催者は言っていた。
確かに闇金の3分の1の金利だから闇金を利用するよりは負担が少なく立派な互助組織といえる。
06年に貸金業者の約29%の金利は違法とした最高裁の判事も、改正貸金業法を制定して20%以下の金利しか認めないようにした国会議員も善意でこうした判決や法改正をしたのだが、実態は闇金(そのほとんどが暴力団と関係している)をはびこらせる結果になってしまった。
善意が逆に出てしまうのは経済実態を無視して正義だけを全面に押し出した結果だが、アメリカの禁酒法時代と同じように、今日本は金融暴力団が大増殖をしてわが世の春を謳歌している。
「世間知らずな最高裁の判事が貸金業界をつぶしてくれたおかげで、闇の世界はがっぽりよ」と言う感じだ。
闇金業者の前には貸金業者が貸し出しをやめた約10兆円の市場が広がっており、これほど儲かる商売は日本全国を探してもちょっと他にないぐらいだから当然だろう。
注)なぜ経済に正義を持ち込むと失敗するかというと、しょせん経済は損得の話だから。
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