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(23.1.6) NHK 「プロジェクト ウィズダム」 その2

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 この番組の後半は「日本の強みをどう生かすか」について議論が行われた。
出場者は若干かわって以下の通りになった。

・ 米   エズラ・ボーゲル ジャパン・アズ・NO1の著者
・ 米   レナード・ショッパ バージニア大学教授
・     ジム・ロジャーズ 投資家
・ 独  フランツ・ベルデンベルガー ミュンヘン大学日本経済研究所所長
・ インド プレム・モトワニ ネルー大学教授
・ 仏  アルク・アンベール 日仏会館研究センター所長

 この番組は討論形式で、前半が日本の問題点で後半が強みの生かし方になっていたが、議論が錯綜し必ずしもNHKのキャスターが望んだようにはなっていない。
問題点の中で今後の日本のあり方が説明されるからである。

 インドのモトワニ氏は明らかにミスキャストと思われた。とても日本経済や日本についての知識が十分とは思われず、いたって平板な解説に止まっている。
中でも「高品質の製品を安価に作ってインド等の貧しい国にそうした製品を輸出しろ」と言ったのには驚いた。
そうしたことは現在中国を中心になされていることで、とても日本では達成できそうにない。
アメリカのショッパ氏が「日本は高品質・高デザイン等で差別化をはかり、世界の富裕層の需要に答えるべきだ」反論したのは当然だ。

 ただモトワニ氏が「本の退職者がインドに来て技術指導をしてもらいたい」と言っていたのはよく理解できた。
中国や韓国だけでなくインドの経済発展に協力してほしい」と言うことだろう。

注)日本とインドとの関係は現状深いとはいえない。インドの日本研究もまた日本のインド研究もようやくスタートラインについた段階。
そうした意味でモトワニ氏の日本理解が他の出演者より劣っていたのは仕方がないことかも知れない。


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日本のポップ文化は世界に輸出されている

 エズラ・ボーゲル氏は30年前に「ジャパン・アズ・NO1」と言う著書を書き、日本中を沸かせた著者だが、今ボーゲル氏は日本をどのように見ているかが焦点になっていた。

かつての日本は非常に高い競争力を持っており、今でもまだ競争力を持っていると考えている。日本の基本的問題は政治のリーダーシップが十分に機能できないことで、特に首相が1年以内に次々と変わっていってしまうのでは政策の継続性を維持できない。
首相が落ち着いて政策に専念できるような選挙制度の改革が必要だろう

また最近の問題として日本人が世界から学ぼうとせず、たとえばアメリカの留学生のほとんどがアジアでは中国・韓国・東南アジアの留学生で占められ、日本人の留学生だけが減少している。
外国人の利用についても十分でなく、外国人が日本企業で高い地位に着くことも容易でない。

まだ日本には活力が残ってはいるが、より開かれた社会になることが必要で、成熟した社会として世界のリーダーシップを発揮してほしい

注)ボーゲル氏は出演者の中で最も日本の経済力を評価していたが、これは30年前の自身の予測がかなり外れたことに対する焦りのようなものではないかと思われた。
「あれだけ褒めてやったのにこのだらしなさはなんだ。自信を持ってもっとがんばれ」と言うところだろう。

最もボーゲル氏が指摘した政治のリーダーシップのなさは、特に東北アジアでは際立っており、中国、韓国、台湾、シンガポール等に大きく水をあけられている。
私も最近気がついたが、首相としての判断や決断力が身につくのにもそれなりの時間が要るので、首相は最初から首相ではなく国民がそうなれるように後押しする必要があると分かった。

たとえば菅総理にしても外交センスはまったくなく、外交は失敗続きで中国とロシアにいいように翻弄されているが、外交的センスを持つためにも一定の時間が必要なようだ。
鳩山前首相が「よく勉強したら日米安保の必要性を理解した」と言ったのは正直すぎるとは思うが本音だと思う。

はっきり言えることは首相をいくら変えてもダメで、まともな首相になるまで国民は辛抱が必要だと言うことだ。

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日本は観光立国になれとロジャース氏は言う

 投資家のロジャース氏はまったく日本の経済力に期待していない。
国を閉ざして外国人を制限し、自由貿易を嫌って農業保護に邁進し、自由な投資を許さず空港会社に投資しようとすると経済産業省が待ったをかけ、官僚の指導の下に経済運営をしている国には未来がない。たった一つの見込みは観光立国だけだ」と言うものだ。

ロジャース氏の指摘の中で面白かったのは「日本人がアメリカに留学しなくなったのはそもそも子供がいないからだ」と言ったのには笑ってしまった。
財政赤字を削減して国を解放し活力のある国にしなければ、日本に幸福などはない」と言い切っていた。

注)投資家の意見は学者のそれとは違って辛らつで直截的だ。氏が国の制限が有る地域を嫌ってシンガポールに移り住んでいるのが象徴的であるように、投資資金は自由が生命だ。
そうした意味で日本はあまりに息苦しく規制が多すぎて、魅力に乏しいのだろう。
世界の投資家から日本が見放されている現状が良く理解できた。

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フランスのアンデール氏の意見は出演者のなかで一人異質なものだった。
「日本の若者の職場がないことは先進国共通の悩みでフランスでも同じ問題に直面している。
国内の労働需要が安価な技術を必要としない人材に移っていき、高度な勉学を納めた人が失業している」
「フランスにおける日本のアニメ・漫画文化の評価は非常に高く外国書籍のフランス語への翻訳はアメリカ、日本の順になっている」
「豊かな国の次の目標は経済成長ではなく、幸福度の向上であり日本はそうした目的に邁進すべきだ。限りない成長を目ざしても無駄で、過去を見てもGDPの伸び率と幸せな生活が関係がなかったことが分かるずだ」

注)私はこのフランス人の持つ必ずしもGDPに拘泥しない生き方が好きだ。GDPとはアメリカの経済学者が発明した幸福度の尺度で、「ものが豊かになれば幸福だ」と言うものだが、それは貧しい社会には100%当てはまるとしても豊かになるにつれてものの重要性は相対的に低下する。

十分な食料があればそれ以上食べるとメタボになり、衣類も片っ端から購入してしまうとタンスに入らなくなる。
住宅も大きすぎるとメンテに大わらわになるのが実態だ。

幸福とはなにか、それは必ずしも物質的なものだけでなく精神的なものを含むのではないかと言う考え方をフランス人は多く持っており、アンデール氏の意見もそうしたものだ。

誰が考えても分かることはGDPの成長を無限に続けることが幸福なわけがない。現在でもCO2や汚染物質の垂れ流しが地球環境を壊して異常気象が発生しているし、不必要に穀物や石油を求めれば投資資金がそこに向かって異常な値上がりをするだけだ。

GDP神話に対抗できる価値判断軸を提示できるかどうかが、日本の将来の分かれ目になると私は思っている。

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