(23.1.13) NHK クローズアップ現代 ウーマノミクスが日本を変える
最近のNHKの放送は憂国番組一色になってきた。
今度はNHKの看板番組「クローズアップ現代」で「ウーマノミクスが日本を変える」という73分間の特集を組んだ。
通常は25分程度の番組だから、いかにNHKがこの特集を大事にしたか分かる。
ウーマノミクスとは聞きなれない言葉だが、ウーマンとエコノミクスの合成語で女性の経済進出を表す言葉だそうだ。
正月の特番で世界のウィズダムに日本再生の処方箋を語ってもらう番組があったが、その中で強調されたのは「日本は女性の経済進出が不十分であり、この女性の能力の活用が日本経済再生の切り札になる」との指摘があった。
今回はそれを受けてクローズアップ現代でその実情と今後のあり方を提言する番組になっていた。
確かに日本における女性の職場内での地位は高いとはいえない。
この番組では女性進出の世界ランキングを紹介していたが、134か国中94位だといっていた。
(日本の女性進出のランキング)
日本の前後の国はジンバブエ、ベリーズ、モーリシャスと言う国が並んでいたが、何か低開発国の一員みたいだ。
この順位は男女の賃金格差や管理職の割合等で順位を決めているそうだ。
私が金融機関に勤めたのは今から40年以上も前のことだが、当時は女性と男性は職種が分けられており、それに応じて賃金体系も異なっていた。
女性は事務職と呼ばれ一方男性は総合職と呼ばれていたが、事務職はいくら年数を重ねても管理職になれず、賃金も年齢が高くなるほど格差が広がっていた。
当時の人事部の意識は「女性は4~5年のうちに結婚退職するから、その年齢までは男性と同じ賃金にしておいても良い」と言うものだった。
実際私の周りの女性はこの時期までにはほとんどの人が退職していったものだ(だからその後の賃金体系はどうでも良かった)。
あれから40年、私が退職した4年前には女性も男性も結婚をしない人が増え、男女雇用機会均等法の趣旨にしたがって、職種は同一にしたが実際は女性の管理職登用は調査研究部門や事務部門の一部だけで、相変わらず男性社会だった(職種が同じでも女性はなかなか出世できない)。
私はこの実質男性社会が今も続いていると思っていたが、一部では明らかにこの男性優位の社会が崩れ始めていた。
番組では女性が男性社会を打ち破っているいくつかの事例を紹介していた。
① 麒麟麦酒ではノンアルコールビールの開発を女性が担当し300億円以上の市場開拓に成功した。
② 日産自動車では自動車の購買層が男性から女性にシフトしている現実を反映して、女性向け自動車の開発に女性が乗り出した(後部座席にホルダーをつけたり、バックをする時にハンドルと自動車の向きが一目で分かるインジケーターを設置していた)
③ 緩衝材プチプチのメーカーが女性のアイデアでつぶして遊ぶ「プチプチ」を開発し、ヒット商品になって会社の売上げを1.5倍に拡大した。この女性はこのメーカーの取締役になっていた。
④ 現在女性社長の数は約6万人になっており、多くの女性が企業家として、特に生活者の視点から業務拡大を図っている(シングルマザーと高齢者が共同生活をして互いに助け合う仕組み作り等)
(女性の新規開業率は男性の2倍だそうだ)
客観的に見て女性が男性と機会均等の元で競争し、今まで考えられなかったような商品開発をしたり、市場拡大を図ることができれば日本を元気にするのは間違いない。
しかし女性が男性と対等の立場で競争するためには育児問題がある。
番組では日本の女性の職場進出のネックは子育てにあり、育児と職場が両立できないために、特に20代と30代の女性が職場から離れてしまうと言う問題点を指摘していた。
女性が育児を放棄して職場に進出すればとりあえず問題は解決するが、そうなると日本の人口は劇的に減少して国家そのものが成り立たなくなる。
(日本の女性の労働力率は20代、30代に落ち込みがある)
当たり前のことであるが、育児と職場の両立を図る仕組みこそが女性の経済進出の鍵になる。
この点についていくつかの企業の例を紹介していた。
① 残業を取りやめて定時に帰宅させる会社の例
② 一旦職場を離れた職員を子育てが終わってから再度正社員として採用する例
③ 執行役員に女性を多く登用している会社の例
この番組では以上のような女性の能力開発の成功例や、女性が育児と職場を両立できる会社の紹介を行っていたが、実際はそうした事例があるものの日本の女性進出は全体としては低開発国並なのが実態だ。
ノルウェーでは法律で取締役の4割は女性にすることを決めたが、もし本当に女性の力を日本再生の原動力にしたいなら、日本もノルウェー並みの劇薬が必要だろう。
男女雇用機会均等法でいくら女性の職場進出を後押ししても上級管理職に女性がなれないのは、本当は「男性の嫉妬」に原因があるのはサラリーマンなら良く知っている。
いくら男女平等をうたってもそうなるのは容易ではないのだから、日本再生の切り札が女性しかないと思うなら(男性のほとんどが本音ではそう思っていない)、ノルウェーをまねて法的な縛りが必要だろう。
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