(22.12.29) 京都議定書09年度達成の裏と表 日本は排出権の販売国になる
環境庁が27日発表した09年度の「温室効果ガス国内排出量の速報値」を見て笑ってしまった。
環境庁は鼻高々で、「90年度対比国際公約である6%削減は可能」といっているのだが、この計算はトリックだらけだ。
注)日本は京都議定書で90年当時の二酸化炭素排出量約12億6千万トンの6%を08年から12年まで毎年削減する義務を負っている。
まず最もトリッキーなのは09年度の二酸化炭素の削減は6%でなく、0.6%の削減で済むことである。
残りの5.4%は森林の吸収部分約3.5%、外国からの排出枠購入1.9%で対応が可能になっている。
注)森林の吸収部分を除けば、0.6%+1.9%=2.5%が本当の削減目標。
日本政府は元々二酸化炭素の排出量を90年対比削減できないと予想していたので、主として東欧諸国(ポーランド等)から不足分を購入することにしていた。その手当てが1.9%(約2500万トン)である。
「日本は金持ちだ。不足分は排出権購入でつじつまを合わせよう」
注)2500万トンの値段はトン当たり2000円とすると、500億円になる。
これが08年から12年まで4年間続けば2000億円程度の排出権を購入することになる。
なお排出権の値段は変動し、購入国が多ければ高くなり反対に購入する国がなくなれば価格がつかない。
ところが信じられないことに09年度の国内CO2の排出量は90年度対比4.1%も減少してしまった。
理由は明確で国内の生産活動が低迷し、すべての部門で対前年比排出量が低下したからである。
「なんだ、これなら自主努力で6%削減が可能で、排出権なんか購入しなくてもいいじゃないか」と言うような状況だ。
08年対比 90年対比
・産業部門 ▲7.9% ▲19.9%
・家庭部門 ▲5.5% +26.9%
・運輸部門 ▲2.5%
・オフィス部門 ▲6.6% +33.6%
大雑把に言って日本経済は90年ごろから長期低迷に入り、GDPもほとんど伸びていない。その結果日本経済の成長を前提にして建てられていた計画がすべてくるっている。
注)国内でも空港や高速道路やダムが不要になったのは、日本経済が予想に反してまったく成長しなかったためで、実際は90年代のインフラで十分だと言うのが実情。
日本は海外から毎年2%(2500万トン)程度の排出権を購入しなければならないと思って手当てしていたのにまったく逆になりつつある。
09年度はCO2削減で4.1%、それに森林部分が3.5%だから合計7.6%。したがって日本は1.6%も余分に削減したので、排出権を売る立場になってしまった。
果たしてこの京都議定書の国際公約がこのように易々と達成できることを喜ぶべきだろうか。日本経済は長期低迷しかつ省エネ技術は発達しているので鳩山前総理が約束した25%削減でも簡単にクリアーできそうな状況になってきた。
「日本は国内から企業がいなくなり、オフィス需要も低迷し、省エネ家電や電気自動車が普及するから、環境先進国になり排出権を販売できる」環境庁は胸を張っているが何とも複雑な気持ちだ。
京都議定書をクリアーできない国は日本だけだと思われていたのに、実際は日本までこの目標をクリアーしてしまったのだから、京都議定書は大成功と言うことになるだろう。
しかし実際の参加国は排出量換算で世界の27%程度だから、世界のCO2は増え続けている。
「CO2は世界全体で増加しているが、京都議定書によればどの参加国もCO2削減に成功した」笑ってしまいたくなるような結論だ。
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