(22.12.27) 中国漁船体当たり 日本と韓国の違い
18日、黄海の韓国側排他的経済水域(EZZ)で違法操業していた中国漁船が、韓国警備艇に体当たりして沈没し船長一人が死亡、一人が行方不明になった。
この水域では中国漁船が常時違法操業し、常に韓国警備艇との追いかけっこをしており、日本の尖閣諸島水域とまったく同様の状態になっている。
注)乗組員は10名で、4名は韓国の警備艇が5名は中国漁船が救助した。
韓国に救助された船長はその後死亡、3名が韓国当局に拘束されていた。
この事件は日本の尖閣諸島での中国漁船の韓国版であり、漁船が体当たりするところなどは尖閣諸島の再現そのものといえる。
そのため日本の事例と比較しながら、韓国政府と中国政府の対応を興味深く見ることができた。
中国政府が当初この問題を外交問題に拡大させないうに配慮したのは日本の場合と同じだったが、ネットでの中国政府弱腰批判がでて、21日には「賠償と韓国警備員の処罰」を要求したのは日本に対する場合とそっくりで笑ってしまった。
「中国は自分に落ち度があっても何でも賠償と処罰を要求するんだな・・・・・」中国は謝るという事を絶対にしない国だ。
このあたりの中国政府の対応は尖閣諸島問題と同じだが、違いは国内にデモや韓国資本のデパートに対する投石事件が起きないことだろう。
中国はこと日本となると「何でもあり」で暴力沙汰が常なのだが、相手が韓国だと冷静になれるらしい。
一方韓国の対応には感心してしまった。おそらく尖閣諸島問題を他山の石としたのだと思うが、沈没映像を隠したりせずすぐに公表したのは好判断だ。
日本ではあえて隠したりするものだから「やはり日本に落ち度があるので隠しているのだ」と世界から思われてしまう。
また問題が長引くのを避けるために25日には拘束していた乗組員3名を「船長以外は意図的に衝突させようとはしていない」との理由で不起訴処分で釈放した。事件発生後1週間で解決を計り、かつ検察当局が「政治的判断だ」などと愚かなことをいわないところが立派だ。
韓国政府も中国政府もこの問題を外交問題にしたくなかったのだが、韓国側はこうした状況を見てイ・ミョンバク大統領が決断したのだろう。
「日本のように長引かせるな。さっさと釈放して解決しろ」
日本が1ヶ月以上に渡って右往左往していて、その間に衝突の映像がYou-Tubeに流れて、世界的な物笑いになったのとは大いに違う。
残念ながら客観的に見てイ・ミョンバク大統領の指導者としての資質は菅首相よりかなり上だ。
私には大人と子供ほどの相違に見えるが、人によったらもっと差があると言うかも知れない。
しかしそれにしても中国漁船の暴虐非道ぶりはソマリアの海賊なみだ。
当初韓国の警備艇からはゴムボートに乗った4名の警備員が中国漁船に乗り込もうとしたのだが、鉄パイプで応戦されて骨折までしている。
そのうえ漁船が警備艇に突入し、今回は漁船が転覆したのだが、この船長は尖閣諸島での突入の映像を見ていたに違いない。
「韓国の警備艇も日本のようにひるむだろう」
実際は漁船が沈没してしまっているのだから、韓国の警備艇は軍艦並みの装甲なのかと想像してしまう。
しかし韓国政府の紛争解決能力の高さはさすがだ。常に北朝鮮と対峙していて、油断をすると島に砲弾を打ち込まれる国とそうでない国との相違だが、緊張感のある国の政治指導者は鍛えられてタフになっているのだろう。
菅総理の尖閣諸島での失敗も、こうしてみると平和な国の総理なのだから仕方がないのではないかと思えてきたが、それにしてもこれほど指導力に差があるのは日本人としては残念だ。
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コメント
本当にそう言いきれるのかな。本質は、日本も韓国も「釈放」で同じ。韓国は、自国警備船員が重症を負っているにもかかわらず釈放は日本以上に甘い。
(山崎)暴行をした船員が乗っていた船と、体当たりした船は違っていたので、釈放した3名が暴行したわけではありません。そうした意味で「釈放」しやすかったのだと思います。
両国とも中国に甘いのは分かりますが、手際のよさと決断力に韓国の力量を感じます。
投稿: | 2010年12月27日 (月) 23時23分