(22.12.13) 世界的インフレが始まった
とうとう世界的インフレーションに火がついてしまった。アメリカ、ヨーロッパ、日本が相次いで金融緩和策をとり、世界中に金をばら撒いた結果その金は金や銀、石油、鉄鉱石等の鉱物資源に一斉に向かってしまい、鉱物資源価格の上昇に歯止めがかからない。
本来アメリカ等が金融緩和策をとるのはレートの安い資金を企業や個人に借りやすくして、設備投資や住宅投資に資金を振り向けてもらい国内景気を持ち直させるのが目的だが、まったくその効果が現れていない。
こうした金融緩和が効果がなかったことは日本の失われた20年が実証済みで、日銀の超緩和策による資金がアメリカの投資会社にながれ、世界的なディリバティブ商品の高騰と、突然の暴落を経験したことから明白だ。
その間日本では設備投資はほとんど行われれなかったが、一方金融緩和策による円安で輸出企業が潤ったのでかろうじてプラスの成長はしていた。
アメリカも超緩和による経済への影響はドル安だけだが、とうとうドルに対する信任がなくなり、長期金利が上昇してかえって市場ではドル高になっている。
注1)低金利策をとると海外の投資会社が日本円を借りてドルに換えディリバティブ商品に投資していたので円安(円でドルが買われる)になっていた。
注2)超緩和策を取ると金余り現象になって通常は長期金利が低下する。しかし限度を超すと通貨そのものに対する信任がなくなり今度は長期金利が上昇する。
現在のアメリカの状況はその段階で世界がドルを見捨てだした。
これは当然で市場関係者としたら、ドルは傾向的に安くなっていくのだから通貨に対する投資を止めて、物に対する投資に切り替えるからである。
おかげで金価格は1オンス1430ドル台と過去の最高値になってしまい、この先1600ドルから1800ドルまで上昇するのではないかと市場関係者は見ている。
また長らく低迷していた銀価格も急上昇をはじめ1オンス30ドルと30年ぶりの高値になっている。
この影響で印画紙に銀を使用している富士フィルムが印画紙の値段を20%程度UPすると公表した。
また石油もリーマンショック前に似た値段の上昇が始まっており、先物価格で91ドルとリーマン前の最高価格150ドルに向かって鎌首を持ち上げ始めた。
また鉄鉱石は値上げに次ぐ値上げでどこまで上昇するか分からないほどだ。
日本ではまだデフレ論議がされているが、世界経済は完全にインフレモードに突入し、鉱物資源のような生産に限界がある資源に対する投資需要はリーマン前と同じだ。
これは明らかな経済変調で、もっとも正しい措置は金融緩和策を中止して、市場から資金を吸い上げることだが、そうするとかろうじて持ちこたえている先進国の経済が停滞局面に入ることを恐れてそれもできない。
注)金融緩和策によって少なくとも金融機関は潤っており、また金や銀に投資している人たちは価格高騰の恩恵を得ている。
また金融緩和を止めるとドル安にストップがかかるため輸出産業の競争力が落ちる。
超緩和をしたためインフレに直撃されそうだが、さりとて緩和策をやめればどこまで経済が失速するか分からない。
ちょうど90年代以降続いてきた日本の金融緩和策と同じジレンマに陥ってしまい、バーナンキ議長は頭を抱えている。
日本経済の過去を見ても分かるように、経済成長には限界があり成長しきった経済は停滞する。
アメリカもヨーロッパも日本と同様な歴史的経緯をたどっているに過ぎないのだが、超金融緩和でじたばたするのは過去の日本と同じだ。
注)日本経済が真っ先に停滞したのはそれまでの成長局面があまりに急激すぎたため、アメリカに意図的にはめられたから。
鉱物資源そのものに対する実需は先進国経済が停滞しているので多くはなく、ほとんどが金融緩和により資金の避難先になっているのに過ぎない。
今後アメリカやヨーロッパ、日本がインフレにたまりかねて金融緩和策を放棄すれば、価格はリーマンショック時と同様に暴落する。
超緩和策とインフレの綱引き状態だが、現状は超緩和策が優位であり、当面は鉱物資源の高騰が止まることはないだろう。
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