(22.11.30) 追跡 A to Z 心の病の薬に何が 向精神薬乱用の実態
私は最近このNHKの「追跡 A to Z」という番組をよく見る。現在日本の問題点に鋭く切り込もうとしている意気込みがよく分かるし、私が知らない社会面での事象を理解するのに役立つ。
番組の構成は当事者へのインタビューが主体で、時に闇の世界の人物も出てきて証言しているので、この世界の人々の考え方も分かるようになっている。
今回のテーマは心の病の病気の治療薬が、医師以外の人々の手によって販売されており、それが非常な利益を上げている実態に迫ったものだった。
通常向精神薬(睡眠薬、抗うつ剤、精神安定剤)は医師の処方箋がないと入手できない。
処方箋では1回あたり1か月分の向精神薬が処方されるのだが、これを不法に入手する方法があるという。
北海道の39歳の女性が「病院」と言うサイトで向精神薬をネットで販売していたが、この女性は病名を偽り多くの病院を回って向精神薬を入手していた。
保険診療の場合は3割負担だから、入手した向精神薬を負担分の約10倍の高値で販売していた。
購入者は医者に行くことを嫌っている(精神科にかかっているとのカルテを知られたくない)若者が多いとの説明がされていた。
この女性の販売実績は麻薬捜査官の調査では約250万円だったが、実際はそれよりも多額だろう。
上記の問題点は病院で簡単に向精神薬が処方されることで、日本ではカルテのネットワークがないから他の病院で何が処方されているか分からない。
しかも病院間の熾烈な競争もあり、患者はお客なので患者が要請した薬を拒むことが病院側でできないのだという。
さらに問題なのは向精神薬の密売に暴力団が絡んでいることだそうだ。
暴力団員は生活保護者を大量に採用して病院を回らせ、そこで必要な向精神薬を入手するのだそうだ。
生活保護者は薬をタダでもらえるので、日当を与えて薬を入手させこれを路上で販売していた。
1回あたりの入手(裏の世界の用語ではしのぎという)で数百万円の利益が上がり、しかも麻薬や大麻といった非合法の薬でないので、持っていてもつかまることがなく安全なのだという。
「ローリスク ハイリターンのうまみのある商売だ」と暴力団関係者が豪語していた。
生活保護者の医療費が無料だとは知らなかったが、闇の世界の人は合法と非合法の間を生きるのがうまい。
こうした状況をどのように厚生労働省が把握しているかというと、現在30万件に登るカルテを照合している最中だという。
一人の患者が数件の病院を渡り歩いて向精神薬を不当に入手している実態の把握をするためだが、このような作業が必要なのは医療関連のネットワークがないためで、手作業で集計するより仕方がない。
通常はアメリカの社会保険番号(日本では年金基礎番号)のようなもので名寄せをしてチェックすればいいのだが、日本では個人情報保護という立場から嫌がることが多い。
しかし情報が一元的に把握できない限り適切な対応は取れないのだから、税金の把握と同様に基礎番号による名寄せは必要だと私は思っている。
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