(22.11.3) NHKスペシャル 「認知症を治せ」はすばらしい番組だ
(認知症とは多くの病気の総称)
最近見たテレビ番組でこれほど有意義だった番組はない。
私は認知症は不治の病で、一旦これにかかると最後は廃人同様で人生を終わると思っていた。
それに私自身「もしかしたら認知症ではないか」と疑われる症状がしばしば発生している。
まず人の名前などは聞いたはしから忘れてしまうし、2階から1階にものを探しに降りて、途中でかみさんから話しかけられたりすると、「はて、なんで私は1階に降りてきたのだろう」なんて当初の目的を忘れてしまう。
認知症になればかみさんや子供たちに非常な迷惑をかけるし、自身は廃人だから、「もしそうなったら、見事腹かっさばいてはてよう」と三島由紀夫張りの決心をしていた。
しかし認知症は必ずしも不治の病ではないし、進行を遅らせることもできるし、予防すらできるとこの番組が教えてくれたのには驚いた。
そもそも私が誤認していたのは認知症とはアルツハイマー病の日本語名だと思っていたが、これがまったくの間違いだった。
認知症とは認識機能が低下するいう外形から見た区別で、その病因は多様なのだと言う。番組では以下のような病気の総称だと紹介していた。
① アルツハイマー病 56%
② レビー小体型認知症 17%
③ 脳血管性認知症 10%
④ 前頭側頭葉変性症 7%
⑤ 正常圧水頭症 5%
⑥ その他 5%
そしてこれがもっとも大事なのだが、その病気によって対処方法が異なり、特に⑤の正常圧水頭症は手術で完全にもとの状態に復帰できることには驚いた。
この正常圧水頭症は脳の中に髄液がたまりすぎて起こる病気で、髄液が脳を圧迫して歩行障害や尿失禁が起こる病気なのだそうだ。
対処方法は髄液を抜くだけで、いままでテレビのリモコンの操作もできなかった患者が手術をした2ヵ月後にはコンバインを操作して稲刈りをしていた。
この患者の推定数は約30万人であり、正常圧水頭症による認知症だと診断できればたちどころに認知症から回復できると言う。
②のレビー小体型認知症とは、脳の中にレビー小体という一種のゴミのようなものが脳にたまることによって起こる認知症で、物忘れと幻視と運動障害が特色だという。
この患者は普通の人が見えないものが見えてしまい、特にトカゲや蛇のような爬虫類がいると誤認する。
このレビー小体型認知症は直すことはできないが、それぞれの進行を抑えることのできる薬が開発されている。
物忘れ用、幻視用、運動障害用の薬を適切に処方すれば、症状が改善して介護者も本人も負担が大幅に楽になるのだと言う。
(タウ蛋白が神経細胞の中に溜まり、神経細胞を死滅させる)
①のアルツハイマー病は脳が急速に萎縮する病気で、今までは進行は止められないといわれていた。
認知症の二人に一人はこのアルツハイマー病である。
アルツハイマー病とは脳にアミロイドβ(ベータ)と言うたんぱく質がたまることから始まり、それがタウというたんぱく質に変性して神経細胞に取り付き、神経細胞を死滅させる病気だそうだ。
現在処方されている治療薬はアリセプトと言う薬だけだそうだが、これは神経細胞の活動を活発化させる薬で、神経細胞の死滅を止めることは出来ない。
そのため現在世界各国で競争して開発している薬は、神経細胞を死滅させるタウたんぱく質を分解してしまう薬で、イギリスのアバディーン大学で開発中のレンバーと言う薬がアルツハイマー病の特効薬になる可能性が高いという。
現在臨床試験の最終段階にあり、被験者321人の効果は相当高いものだと言う。最終の臨床試験に成功すれば、アルツハイマー病が不治の病という人間に対する原罪のような状態から、普通の直る病気に転換するわけだ。
(アルツハイマー病が発病する20年前からアミロイドβがたまり始める)
またこの番組では、アルツハイマー病になる約20年前から、この病気の遠因であるアミロイドβが特に脳を酷使する部分にたまることが紹介されていた。
したがってこのアルツハイマー病の遠因になるアミロイドβを早期に発見して分解できる薬が開発できればアルツハイマー病を予防できることになる。
「そうか、脳の酷使がいけないのか。考えてみれば俺なんかは無理して頭を使っていたからな・・・・・・・・」反省した。
最後にこの番組で紹介されていたのは生活習慣病、特に糖尿病と高血圧と認知症との関連で、糖尿病や高血圧の人が認知症になる割合はそれがない人の約2倍程度なのだという。
考えてみればこれは当然で、糖尿病や高血圧の人は脳血管の一部がしばしば切れるし、そうなればその周辺の神経細胞には酸素と栄養が行かなくなるので神経細胞が死滅してしまう。
こうした状態の中でタウ蛋白がたまれば、たちまちのうちにアルツハイマー病は悪化して廃人になってしまうだろう。
この番組は「認知症を治せ」という表題であり、それでも現状すべての認知症が治るわけではないが、その一部は劇的に治り、一部は進行を食い止め、さらに認知症の半分を占めるアルツハイマー病にも治療薬が開発されつつあることを教えてくれた。
「よかった、早まって腹みごとにかっさばなくてもよさそうだ」実にほっとさせる番組だ。
再放送があるはずだから見逃した人は是非見ることを薦めたい。
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