(22.11.22) NHK 追跡 A to Z 漂流する主婦 借金難民500万人の衝撃
やはりといおうか当然といおうか、主婦が違法な闇金融に大量に流れているとNHKの追跡A to Zが報じた。
この6月に貸金業法が改正になり年収の3分の1以上の借入が消費者金融からできなくなり、借金難民が急増し始めたという。
もともと貸金業法を改正したのは自己破産者が増加したりして多重債務者問題が顕在化したからだが、法律を改正したことによるマイナス面がひどく出始めている。
当初の見積もりでは消費者金融借入者1400万人の約半数の700万人が多重債務者と想定されていたが、今回の番組ではそのうち借金難民に陥っている主婦やサラリーマンが約500万人いるのだという。
従来は専業主婦で有ろうがパート収入しかない主婦であろうが消費者金融は融資をしてくれていた。金利が29%と高金利だったので、消費者金融の平均延滞率20%をカバーして、10%程度の利益が出せていたからだ。
それが6年1月の最高裁の判決で利息制限法の20%以下の金利設定しか認められなくなったため、当然こととして延滞が予想される借入者への融資は差し控えることになった。
法的にも3分の1という年収制限ができたので、消費者金融は専業主婦やパート主婦への融資を一斉に引き上げてしまった。
問題は今までは多重債務者ではあったが、次々に融資を受けることで何とか自転車操業をしていた主婦が借入をストップされたことだ。
「え、何で、借りられないの?」ATMの前で呆然となっている主婦が増えている。
すでに多重債務に陥っている主婦は利息や返済金の手当てをするためにも借入を必要とする。
消費者金融からの調達ができなければ後は闇金融からの調達しかない。
ただし、闇金融の利息は消費者金融の利息と比較して途方もない高さだ。
注)主婦でも夫の同意があれば消費者金融から借入ができるが、ほとんどの主婦が夫に内緒で借入をしていた。
番組では夫と離婚して子供を育てている主婦Bさんの事例を紹介していたが、子供のユニフォームを新調するために闇金融から5万円借金をしたところ、すでに利息だけで9万を支払ったものの、元金の返済はできていないという。
注)子供のユニフォームは1万程度だから、残りは利息の支払い等だと推定される。
いつBさんが闇金融に手を出したか分からないが、貸金業法改正の6月以降だとすれば、半年で180%だから、年間では360%の利回りになる。
今までは29%で借りていたと仮定すると360%だから、約12倍だ。
Aさんの事例は5万5千円借りて利息の支払いは16万5千円で、これも半年の利息だとすると300%で年間では600%、消費者金融の約20倍だ。
Cさんの事例はもっとすさまじかった。5万円の借入で、利息は月4万円だという。
「いくらなんでも嘘だろう」そう思ったが事実だそうだ。
これだと半年で480%、年間では960%、消費者金融の約32倍だ。
現在の闇金融はソフト金融と言って、利息の支払いが行われている限りは脅しや暴力はない。
しかし一旦延滞が始まると以下のような脅しが始まるという。
① ご主人に借入の事実を知らせる(多重債務者の主婦は夫に内緒で借入をしていることが多い)
② 知り合いや近所の人に借入の事実を知らせる。
③ 子供の学校に借入の事実を知らせる。
こうして主婦を追い詰めて、さらに次のような返済方法を求めるという。
① 風俗関係で働いて金を返せ(身体を売れ)。
② クレジットカードを利用して多額の買い物して、その品物をよこせ。
③ 生活保護を申請してその金をよこせ。
今回の貸金業法の改正は実態としてはアメリカの禁酒法と同様な闇金業者をはびこらせるだけになってしまっている。
もちろん金融庁もこうした主婦を救うために社会福祉協議会の低利融資制度を設けたそうだが、実際にこの制度を知っている多重債務の主婦はほとんどいない。
さらにこの番組を見て私が驚いたのはおとり広告で、利息も20%以下で正式な登録業者と偽った広告を出し、ここに電話をかけてきた主婦を闇金融に誘うという手口だった。
一方消費者金融はビジネスモデルが崩壊しているために毎年のように融資残高が減少し、多くの消費者金融が倒産か倒産の危機にある(アイフルと武富士が倒産し、融資残高も06年3月の21兆円から、現在は12兆円と半減している)。
裁判所も政府も消費者金融を悪徳業者と思っており、倒産しても当然だとの態度だが、その結果消費者金融が神様に見えるほどあくどい闇金融がはびこってしまった。
どうしたらよいのだろうか。基本的には以下のような対応しかないと私は考えている。
① 闇金融に手を出す人は自己破産させる。
闇金融に手を出したとたん地獄を見るのだから自己破産が正しい。
なおなぜ闇金融が法外な利息を取るかというと、当初から元金の返済ができると考えていないからだ。
1ヵ月後に破産すると考えれば利息は月100%、5万円貸したら月利で5万円の利息が正しい経済対応になる。
② 消費者金融が経済的に成り立つように法改正をする。
消費者金融が成立していたのはグレーゾーン金利といわれた29%程度の金利が許容されていたからで、倒産率20%程度のもとでは20%以上の金利設定が必要なため。
したがって消費者金融には利息の上限を倒産率をカバーできるまで許容するよう利息制限法を改正する。
このままでは消費者金融業界は消滅する危機にある。正義と思って消費者金融を追い詰めたが、実際は正義でなかった事例だ。
残るのは闇金融だけになり、暴力団の資金源である闇金融だけを太らすことになった。
現状は禁酒法時代のアメリカと同じでアル・カポネが高笑いしている思えばいい。
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