(22.11.2) 中国外交のダッチロール 共青団派と太子党の暗闘
いやはや中国外交が完全にダッチロールになってきた。2年後の胡錦濤主席の引退を睨み権力争いが激化し、とてもまともな国の外交にならなくなっている。
先月末に行われたASEAN首脳会議では、当初日中間の首脳会談は行わないとの中国側の発表があり、その理由が「日本側が首脳会談の雰囲気を壊した」からだと言う。
何とも一方的な発表だと思っていたら、30日には菅総理と温家宝首相が10分間の懇談を行い、これが日本側の発表では日中間の首脳外交という位置づけになった。
もっとも中国側の発表では首脳外交は実施されず、10分間の会談も国内的にはなかったことになっている。
温家宝首相は懇談で「前日の首脳会談の見送りは残念なことだった」と述べたそうだが、「それならいちゃもんをつけず会談をすればいいのに」と私などは思ったが、実は中国側に会談ができない理由がある。
一般の日本人にはとても信じられないと思うが、現在の中国首脳部の胡錦濤主席と温家宝首相は中国では国際融和派と位置づけられており、日本との関係改善に熱心だ。
特に今年の5月に鳩山前首相と温家宝首相との間で「東シナ海でのガス田条約締結交渉」開始の取り決めがなされたが、これは国際融和派の現政権が日本に妥協したと見られており、保守強硬派の怒りを買った。
注)国際融和派はその出身母体が共青団のため共青団派といい、一方保守強硬派は有力者の子弟が中心なので太子党という。
「東シナ海は中国固有の領土であり、そこでガス田の開発をするのは中国固有の権利である。温家宝のヤツが日本に妥協してとんでもない取り決めを行った。
国賊の温家宝を無視して採掘を開始しろ」
注)前原外相は、白樺と言うガス田で試掘が行われている可能性が高いと述べている。
中国の保守強硬派を太子党というが、太子党は石油利権を持っておりこれが中国国内での権力基盤になっている。
だから日本との共同開発は現政権が日本を利用して太子党の利権を奪う党内闘争と映るわけだ。
そして中国の外交がダッチロールをするようになったのは共青団派と太子党の力関係が、従来の共青団派有利の状態から太子党に有利に変わったからである。
胡錦濤・温家宝の共青団派の基盤が揺らいでいるのは、先月の5中全会で太子党の習近平氏が中央軍事委副主席になったことで明らかになった。
この地位はポスト胡錦濤を確約されたも同然の地位であり、2年後は太子党が政権を握ることになる。
太子党はさらなる勢力拡大をはかるため温家宝首相を狙って党内闘争を仕掛けており、尖閣諸島での漁船の体当たりも、地方で頻発している反日デモもこの太子党の策略である。
注)中国には世論はなく、管理された世論しかない。反日デモが決行されているのは太子党の後ろ盾があるからだ。
胡錦濤・温家宝の現政権がいくらネットの削除を行ってデモの取締りをしても効果がないのは、太子党の党員が実質的にサボタージュするからで、中国自慢のネット検閲も実質的に張子の虎になってしまった。
国内で批判にさらされている温家宝首相は日本に強行的な姿勢をとらざるえず、かといってそれでは国際関係がギクシャクするので、已む無く立ち話や懇談と言う形で菅総理との話し合いに応ずることにしている。
温家宝首相の立場は苦しいのだ。
この中国の党内闘争は2年後のポスト胡錦濤が決定するまで何度でも繰り返され、そのたびに太子党は日本を犠牲にして共青団派に揺さぶりをかけると思わなくてはならない。
日本から見たら何とも迷惑な話だが、現状では太子党が次期政権をとることが確実なので、そうなるとかつての江沢民主席のように日本に対し高圧的な態度を取ることは確実で、日中間の「戦略的互恵関係」は画餅に終わりそうだ。
少なくとも東シナ海のガス田採掘では中国は「核心的利益」だといって単独採掘を行い、尖閣諸島周辺に中国海軍が遊弋して日本の海上保安庁の巡視船と対峙することは確実だと予想していたほうがいい。
また経済関係もレアアースのような問題が拡大して日中間で頻発し、そもそも中国で経済活動をするのが極端に難しくなり、日本経済界の中国シフトも終わりになるだろう。
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