(22.11.17) 金融機関はわが世の春 22年度中間決算
日本の金融機関大手6行の中間決算が出揃ったが、予想どおりわが世の春を謳歌している。
日本経済が低迷し、融資需要が漸減しているのになぜ金融機関の収益が増加するかと言うと、融資を諦めもっぱら資本市場で勝負しているからだ。
内外の国債、新興国の株式や投資信託、それに金や鉄鉱石のような実物への投資が信じられないほどの利益を上げており、中間決算の収益はリーマンショック前を上回った。
なぜ資本市場で収益が上げられるかというと、日銀が0.1%と言うただ同然の資金を35兆円の規模でばら撒いてくれたからである。
「政府の指示だ。何でもいいから借りてくれ」
ただの資金なら猿でも儲けることができる。
ゆうちょ銀行やかんぽ生命のように日本国債ばかりに投資しても1%の鞘は抜けるし、アメリカ国債ならば(為替変動を無視すれば)3%の鞘が抜ける。
投資ファンドに融資したり、自己ディーリングで新興国の株式や投資信託に投資すれば、確実にそれ以上の収益を上げることができる。
金融機関にとっては今は天国のような状況で、ここで収益を上げられないようでは金融機関を返上したほうがよい。
部門別の収益構造を見てみると分かるが、リテール部門や法人部門の収益はほぼ横ばいなのに、市場部門の収益だけが突出して増加している。
注)三菱UFJの場合、市場部門の収益が1160億円(前年同期)から2425億円と倍増している。
政府のもくろみは日銀の金融緩和策で国内企業が設備投資を増加させ、国内のGDPを増加させると共に就業機会を増やすことだが、実際はこのように金融機関の収益改善だけに利用されている。
もっとも金融機関も日本の重要産業だから、収益が増加することは好ましいことだが、残念ながら喜んでばかりはいられない。
こうした資金は主として新興国の株式や不動産、それと増産に制限がある石油や金や鉄鉱石や穀物等に向けられて世界的なインフレーションが発生しそうだからだ。
注)現在は主として金や鉄鉱石の値段が上昇している。さすがにリーマンショック前のように何でも値上がりすると言う状況ではないが、このまま推移すれば希少財に向かって資金が流れ込むと思ったほうがよい。
金融機関の発表によると下期の収益予想については、景気が足踏み状態で武富士等消費者金融に不安感があるので上期並の収益が確保できるか不透明だと述べている。
しかしこうした金融機関の説明を素直に聞くことは難しい。景気が足踏み状態なのは今に始まったことではなく、また景気がよくなっても大企業は自己資金で設備投資を実施できるから金融機関とは無関係だ。
さらに消費者金融の引当についてはすでに完了しているはずで、今頃騒いでいるほうがおかしい。
だから下期も日銀が供給しているただの資金を最大限に活用し、市場部門で過去最高の収益確保を実現することは確かで、金融機関はわが世の春を謳歌し史上最高益を達成しそうだ。
注)過去金融機関が最高益を達成したのはリーマンショックの前の07年度
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