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(22.10.31) 文学入門 山本周五郎 「青べか物語」 その2

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 「青べか」とは一人乗りの平底舟でかつて浦安周辺の漁師が貝や魚を取るために使用していた舟の名称である。
山本周五郎氏は昭和の初期にこの浦安に一時住み、そこでたちの悪いぶっくれ舟(青べか)を購入させられ、この舟に乗って釣りをしていたことは、その1に記載した。

 この青べか物語りは33章からなっていて、それぞれがなかなか興味のある内容だが、私が最も気に入ったのは「芦の中の一夜」という章である。
これはサマーセット・モームの短編集を読んでいるような感覚に襲われるほど、出色のできばえになっている。

 ある日主人公は浦安の東の一面に芦の生えている水路で、幸山船長という引退した元蒸気船の船長に合う。
この人は引退後、この芦原の水路にかつて船長が操舵していた17号と言う蒸気船を係留し、その中で一人で暮らしていた。

 子供たちは成人してそれぞれ立派な家庭を築いているので、世間体もあり父親に一緒に暮らそうと提案するのだが、幸山船長は頑として受け付けず、この芦原の水路で一人で暮らしていた。
世間では気がおかしいのではないかと疑われていたが、実は理由があった。

 この物語はなぜ幸山船長が17号船に愛着を持ち、なぜ一人で芦原で暮らし続けるかの謎解き物語だ。

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 船長がながく勤めた会社を引退する時に退職金を拒否し、その代わりに会社から貰い受けたのがこの17号船で、すでに廃船同様の状態で係留されていた。
会社は不思議に思ったが、なぜ船長が17号船にこだわったかについては、17号船にまつわる淡く悲しい初恋があったからである。

 船長が18歳の時初恋をしたのだが、相手の女性の親が大変やり手の企業家で、娘を蒸気船の水夫(当時はまだ水夫だった)の元に嫁入りすることを許さず、ある大店の元に嫁入りさせた。

 二人は深く愛し合っており、娘の結婚式が迫った有る夜、娘から「どうせ嫁にいくのだから、このからだをあなたの好きなようにしてくれ」と船長は哀願されたが、そうすることもなく二人は分かれたと言う。
しかしその後も二人は精神的に結ばれたままの状況が続いた。

 娘の婚家は江戸川堤に近く、また船長は17号船に乗って江戸川を一日1回上り下りするのだが、娘は17号船のエンジン音を聞くとあねさまかぶりにたタスキをかけたまま必ず土手に駆け出してくる。

 そして手を振るとか声をかけることもなく、ただ船の通り過ぎるあいだ、自分がそこにいることを彼に見せ、またあらぬ態で彼のほうを密かに見続けたのだと言う。

 その後産褥で寝付いた時を除いて、その娘は幸山船長が通るたびに土手に姿を現し続けたと言う。
一方幸山船長も27歳で結婚したが、結婚した相手と彼とは愛情の交換はなく、その女性が32歳で早世してからは、二度と結婚することはなかった。

 こうしてその後も江戸川の土手での相手の姿を見ると言うだけの密かな忍び愛が続いたが、彼女は船長が42歳の時に41歳で病死した。
その事実を知った時船長はこう確信した。
そうさな、あのこは死んでおらのとこへ戻ってきた、っていうふうな気持ちだな、長えこと人に貸しといたものがかえって来た、そんな気持ちだっけだ

 その後船長はその娘と心の中で婚姻し、引退後は思い出の17号船の中で二人で暮らし続けているのだと言う。

 この話が本当にあった話か、あるいは山本周五郎氏の創作かは定かではないが、とても感動させる話だ。
昭和初期に生きた日本人がどのような気持ちで生きていたか、何か手に取るように分かって私はとても満足した。

 山本周五郎氏自身は64歳で死去したが、その数年前に「ぼくは母さんと結婚するときに、日本一の作家になって見せると約束したが、どうも、とうとう日本一になりそこなったらしい」と妻に述懐したという。
山本周五郎氏が日本一か否かはともかく、山本氏が「青べか物語」のような庶民の暮らしのルポをこのような形で残してくれたことに、私はとても感謝した

 

 

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(22.10.30) 文学入門 山本周五郎 「青べか物語」 その1

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(現在の江戸川河口。青べか物語の舞台

 今回の読書会のテーマ本は山本周五郎氏の「青べか物語」である。
担当は私だが、この「青べか物語」を読んだことがあるわけではない。この本を選択した理由は山本周五郎氏の他の本が気に入っていたからで、「きっと青べか物語も面白いに違いない」と思ったからだ。

 私が山本周五郎氏の本を最初に読んだのは大学生の頃で、友達の本棚に「ながい坂」が置いてあった。
この本の要旨は「見知らぬ世界に想いを馳せ」と言うブログに、以下のように適切にまとめられていたので参考にしてほしい。

下級武士の家に生まれた阿部小三郎は、いつも使っていた小さな橋が権力者の都合で取り壊されるという出来事を屈辱に感じ、勉学や武芸に励み平侍の子どもはなかなか入れない一級の藩校で学ぶ。
その後藩主飛騨守昌治(ひだのかみまさはる)に信頼されるようになり、元服して主水正(もんどのしょう)と改名し大火事や孤児対策で手腕を発揮し異例の出世を遂げることになる。
その後、昌治が計画した大堰堤工事の責任者に命じられ、工事を進めるが藩主継承争いや藩内の利害関係の中で工事は妨害され、主水正は命をも狙われる。様々な困難、そして孤独に耐えながら主水正は人生を歩んでゆく
。」

 私はこの「ながい坂」がとても気に入り、その後山本周五郎氏の代表作でもある「樅の木は残った」「さぶ」「赤ひげ診療譚」などを読み「山本周五郎と言う作家は、何と誠実な作家なのだろうか」と感嘆し、さらに「赤ひげ診療譚」にでて来る庶民の生活の描写のうまさにうなったが、なぜか「青べか物語」は読んでいなかった。

 青べかとは青く塗られた一人乗りの平底舟で、これを使用して現在の江戸川下流域にある浦安一帯の漁師が貝や海苔取りに使った舟のことを言う。
山本周五郎氏は昭和3年前後の数年間、この浦安で生活しておりその時見聞した経験を元に、1960年にこの「青べか物語」を上梓した。

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妙見島付近)

 「青べか物語」は実に興味深い本だ。当時(昭和の初期)の庶民生活が手に取るように分かると言う意味で刺激的だ。
特に私のように戦後の教育を受けてきたものにとっては、戦前は全否定の世界で、特高警察が常に思想弾圧を行っており市民は逼塞してものも言えず、暗く何ともやりきれない世界と説明されてきた。

 しかしよく考えてみると思想弾圧などと言うかなり高等な営為は、そもそも思想なるものを持っているインテリ階層が対象で、小学校を出るかでないかがほとんどの庶民にとっては、当初から対象外だ。
数少ないインテリ世界と圧倒的多数の庶民生活はほとんど切り離されており、庶民には庶民の生活があった。

 そこでは東京あたりからやってくる裕福な釣り客をどうだまくらかして金をせしめるかとか、男女の性道徳なんぞはまったくないところで自由な性生活を互いに楽しむとか、男女差がなく生活力が上のものが優位に立ち男女が平等に競争しているとか、何とも騒がしくほほえましい世界が広がっている。

 この舞台になった浦安は今では日本有数の住宅地だが、当時は辺鄙な漁村で交通の便はもっぱら蒸気船だったのだから、ほとんど陸の孤島と言ってもいいような場所だった。

 私はこの浦安一帯がとても好きで、よく江戸川沿いをJOGするのだが、当時有った「沖の百万坪」と言われた広大な荒地は埋め立てられ今はディズニーランドがそびえている。
また東の海も埋め立てられ、とても品のいい住宅地になっているが、かつてはここで浦安の漁師が貝や海苔採取をしていた場所だ。

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沖の百万坪は今では東京ディズニーランドになっている

 この本の題名になっている「青べか」はここの芳爺さんにだまされて購入させられた「青いペンキの塗られたぶっくれ舟(たちの悪い舟」で土地のものからは軽蔑されていた舟だが、先生と呼ばれていた作者はこの舟を強引に売りつけられる。

 先生は当初この舟に見向きもしなかったが、子供たちがこの舟に石を投げつけて壊すのを見て、愛着の情が起こり、なんとかこの「ぶっくれ舟」を操作する方法を覚えて、江戸川の河口で釣りをして遊ぶことができるようになった。

 この小説は全体で33章からなり、それぞれが独立したエピソードになっている。その始めの章に「青べかを買った話」があって、この小説の導入部になっている。

 この「青べか物語」は小説と言ってよいかかなり迷うところだ。ルポと言っても間違いではなく山本周五郎氏はこの浦安の庶民生活を帳面に詳細に残しており、明らかに将来小説の素材にしようとしていたことが分かる。

 33の章ので出来具合は、サマーセット・モームの短編集のように完成度の高いものと、そうでないもののごった煮だ。
しかし読み始めるとやめられないのは昭和初期の日本と言うものの庶民生活が分かるからで、庶民と言うものがかなりおおらかで、かつ食わせ物であることを知ることができる。

注)なお、読書会の主催者河村義人さんの読後感がありますので、一緒に確認してください。私の評価とは正反対になっています。
http://yamazakijirou1.cocolog-nifty.com/shiryou/2010/11/221110.html

 

 

 

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(22.10.29) WTOの機能不全とTPPの登場 TPPに乗り遅れるな

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 GATTを発展解消させてせっかく作ったWTO(世界貿易機関)が農業問題で機能不全に陥ってしまった結果、世界は勝手に貿易自由化交渉を始めだした。

 EPA(貿易・投資などを自由化する経済連携協定)がそれで、EPAが2国間での取決めに対し、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)は多国間の取り組みを目指しているところが違う。

注1)最近菅政権はインドとのあいだでEPAを締結することにした
注2)なお、EPAと同じような取り組みにFTAがあるが、FTAは関税に特化した取り組みで、一方EPAは関税だけでなく貿易障壁にかかると取り組みを含めた概念。
実際は同じようなものとして認識されている。

 もともとTPPWTOの会議に嫌気をさしたシンガポールがニュージーランド、チリ、ブルネイを誘って発効させた貿易協定で、農業分野を含めて原則10年以内に100%の関税撤廃を目指したものだ。

 このTPPといういたってローカルな取り組みが一躍脚光を浴びだしたのはこの協定にアメリカオーストラリアが参加を表明したからである。
まずいじゃないか。アメリカやオーストラリアが参加して日本が参加できなければ、この太平洋地区で日本は取り残される

 さらに政府をあわてさせたのは中国も前向きな対応を見せたことで、テンヤワンヤの大騒ぎになってきた。
中国が参加を検討? 冗談だろう。IT産業保護のために外国企業を締め出したり、レアアースの輸出を勝手に差し止める国が自由貿易に参加かい?」

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 あわてて菅総理が「我が国として交渉への参加を含め検討する必要がある」と参加を示唆すると、仙谷官房長官が「このままではグローバリゼーションの中でドロップアウトしてしまうという危機感を強く持っている」とヒートアップさせた。

 もちろん外務省は乗り気で、前原外務大臣が「TPPの扉は閉まりかけており、協議に入れなくなる恐れがある。先送りは許されない」と積極姿勢を表明した。
これで日本のTPP参加は確実かと思ったら、農水省が反対を表明し、さらに小沢派が菅政権を揺さぶる目的でTPP参加に待ったをかけた。
本音では参加に強い意欲を持っている大畠経産相が「TPPありきと言うことではない」とトーンダウンさせたからだ。
大畠氏は小沢派だ。

 WTOにしろTPPにしろ日本政府が締結に消極的だったのは農業問題があり、コメを含めて関税率をゼロ%にすることなどとてもできないからである。

 日本の農業問題は厄介だ。農水省は「日本の食糧自給率は40%で先進国中最も低い」といっているが、これはカロリーベースで計算した値で、生産高ベースで言うと約66%で必ずしも低くなく、日本は世界第5位の農業大国だととの反論もある。

 しかし日本は農水省の言う自給率40%を根拠に、農業(分けてもコメ)の関税引き下げに反対してきたことは事実で、「一粒たりとも外国のコメを入れない」と言うのがかつての農水省の立場だった。

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 インドとのあいだでようやくEPA交渉が妥結したのは、農産物わけてもコメを除外できたからで、TPPではそうした例外措置は認められない。
菅はまた思いつきで、消費税と同じようにTPP参加を言っている」小沢派からは冷たい視線がそそがれており、これを機会に党内対立の炎が立ちのぼりそうだ。

 しかし客観的に見て日本がこの自由貿易交渉から外れると、日本の輸出産業には決定的なマイナス要因になることは確かだ。
他国は無関税なのに日本製品には関税障壁が立ちはだかるからだ。

 経産省の試算ではTPPに参加すれば7から10兆円の経済効果があるといい、一方農水省は試算では16兆円の損失が発生するという。
何のことだかさっぱり分からなくなってきたが、TPPが太平洋地区のEUになりそうな気配に経済界と菅総理はおっとり刀で乗り遅れまいと必死だ。

 

 

 

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(22.10.28) 日印経済協力と中国封じ込め政策 EPAの締結

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 この24日から26日までインドのシン首相が日本を訪問し、懸案だったEPA(貿易・投資などを自由化する経済連携協定)の締結が決まった。
本来貿易や投資の自由化交渉はWTOの場で行うことになっていたが、WTOの国際会議がまったく進展せず、しびれを切らした各国が2国間で貿易と投資交渉を始めた。それがEPAである。

 今回日本がインドとEPAの締結が決まったことに、朝日新聞の社説は「日本が久しぶりに実現した外交関係の前進」と絶賛したが、出遅れて韓国に水をあけられあせっていた自動車業界や鉄鋼業界はもろ手を挙げて大賛成だ。

注)韓国とインドは10年1月にEPAを締結している。

 現在の日本とインドとの経済関係は貿易量が中国の25分の1程度で、まだまだ関係が深いとはいえないが、インドが求めているインフラ整備道路・港湾・電力・通信)に日本企業が積極的に関与できる下地ができたと言える。

注)例外的に自動車メーカー・スズキはインドの自動車シェアの50%を占めており、インドで最も成功した会社になっている。

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 EPA締結は純粋に経済問題だが、実はシン首相の日本訪問には隠れた戦略的狙いがある。
インド・日本にとって目下の仮想敵国は中国で、インドはカシミールで中国に敗北し、最近はミャンマースリランカに中国海軍の軍事基地が建設されつつあり、インド洋を中国の内海にされかねない状況になってきた。

注)インド海軍は空母の建設に乗り出したが、すべて中国海軍にインド洋をあけ渡さないためである。

 一方日本は尖閣諸島で中国に脅され、まだ実効支配はしているもののいつ中国海軍に尖閣諸島をのっとられるか分からないような状況になっている。
さらにレアアースで経済を締め上げられ、中国国内では日本製品の排斥運動が起こっている。

注)日本と中国の貿易は最近は中国のほうが黒字で、中国は世界最大の貿易立国であり、実際は日本の方が中国製品の排斥をできる立場にある。
最近イオンは中国からの衣類の調達を現行の80%から50%に落とすと公表した。


 中国の暴虐ぶりは目に余るため、密かに日本とインドは軍事面での提携を強化することにし、インドで外務・防衛の次官クラスの定期会合を持つことも決まった。
もっとも経済面では中国は日本もインドも最大の貿易相手国だから、あまりに露骨な中国包囲網をとることもできない。
現状は深く静かに潜行したまま日印枢軸を強化しようと言う段階だ。

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 日本とインド間にあるほとんど唯一と言っていい棘は原子力の平和利用についての意見の相違である。
インドはNPT核拡散防止条約)を承認しておらず、独自に核開発を実施し、同じく核保有国のパキスタンと対峙している。

 日本との原子力協定には「インドが核実験を行ったら協定を破棄する」という停止条件がついているが、インドの核実験はパキスタン次第だから、状況によっては核実験の再開はあると見なければならないだろう。
だからこの問題は対インド戦略の最大のネックになる可能性が高い。

 しかしそれ以外の経済・防衛問題については完全に利害が一致するのだから、日印関係の強化は日本にとり相当のプラス効果をもたらしそうだ。

 シン首相は日本訪問の後、マレーシアとベトナムを訪問するがいずれも中国の海洋進出に脅威を感じている国で、今回のシン首相の訪問が中国封じ込めのための訪問だったことが分かる。

 これでようやく日本も対中国包囲網の足がかりができたと言える。

 

 

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(22.10.27) 自転車の時代がやってくる 歩行者と自転車の分離

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 私は趣味でマウンティンバイクに乗っており、時々江戸川堤を走っている。
この江戸川には自転車と歩行者が通れる専用道関宿まで約60km続いており、折り返し120kmの快適なサイクリングが楽しめる。

 しかし我が家から江戸川の河口まで出るのが一苦労で、一般道の歩道の上を約40km走らなくてはならない。
最近整備された道路は歩道も広く歩行者がいても問題はないが、戦前から有るような幹線道路は歩道の幅が1m程度の場所が多い。

 こうなると自転車と歩行者は完全に競合状態になって、スピードを上げようものなら事故になってしまう可能性が高い。
もともと自転車は道路交通法の規定では車道の左側を走ることになっていたが、狭い道路で左側を走ろうものならたちまちのうちに自動車に引っ掛けられて事故が絶えない。

 1970年と言うから今から40年前だが、警察庁が自動車と自転車の接触事故に悲鳴をあげて、道路交通法を一部改正して自転車の歩道走行を認める措置を取った。
私などは自転車は歩道を走るものだとずっと思ってきたが、法令制定者の意識では一時的な緊急避難措置だったという。
自転車道を整備するまでは、しかたない、歩道を走ってもよい」そんな感覚だった。

 しかしその後も自転車道の整備は一向に進まず、一方日本の老人人口の増加するにつれて自転車と歩行者との接触事故が激増し、今度はそっちの方が問題になってきた。

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 一般に自転車道とは3種類あって
① 完全に自動車道とも歩行者道とも分離された自転車専用道路、
② 自動車道の脇に白線や色の違ったレーンを設けてそこを自転車を通らせる自転車専用レーン、
③ 川の堤で整備されている自転車と歩行者が通れるサイクリング道路、
である。

 日本ではの整備はほとんど行われておらず、178km程度で、自転車道といえばほとんどサイクリング道路だけのような状態だそうだ。

 今問題になっているのは全国に3万キロにわたって張り巡らされた幹線道路に、何とかして②の自転車専用レーンを整備できないかとの検討で、国交省の研究所の試算では、3万キロのうち約8000kmには自動車道の脇に約1.5m以上のスペースがあるため可能だと言う。

なら早く自転車専用レーンを引けばいいじゃないか」と私は思ったが、信じられないことに法令の整備が未整備なために行政(市町村)が自転車専用レーンの指定を躊躇しているのだそうだ。

 行政は国交省の「道路構造令」の規定にしたがって自転車道を整備しているのだそうだが、ここには①と③の規定しかなく、一方②は警察庁が管轄している「道路交通法」の規定なのだそうだ。
道路構造令に記載がないのだから、下手に自転車専用レーンなんか設定して事故が起こった時に責任を問われたら大変だ」と言う感度で行政の自転車レーンの設置は進まないのだと言う。

 なんともひどい話だが、時代はクリーンエネルギーの時代に大転換しており、自転車こそは究極のクリーンエネルギーで走行される乗り物だ。
最近は自転車通勤も増えて自転車の量も増え、一方老人人口も激増しているので、自転車と老人の接触事故が後をたたなくなりつつある。

新交通戦争の第二幕」といった状況で、さすがにこのままではダメだと国交省も重い腰を上げ始めた。
ようやくヨーロッパ並みに自転車と歩行者が分離され、快適な走行ができる時代が始まろうとしている。

注)この自転車と歩行者の分離については、このおゆみ野でもチャリ会を中心に社会実験をしている。
また自転車通勤については、私がよく見ている「バイオマスおやじの日々」と言うブログの管理者yokuyaさんが、最近自転車通勤を始めた記事を掲載していた。

http://biomass.exblog.jp/14851799/

 

 

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(22.10.26) ちはら台走友会のサンライズLSD(ロング・スロウ・ディスタンス)

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 今年もちはら台走友会サンライズLSDが実施された。
このレースはちはら台から外房の白子浜までの片道34km本納駅経由のため少し遠くなるが直線では29km)をメンバーが各自の走力に合わせて走破するレースで、今年は14名が参加した。

 目的地のサンライズホテルに泊まって、このホテルの名物である太平洋から登る朝日を眺めて翌日は直線距離の29kmを走って帰る。

 私は最近スロウJOGばかりしていたが、LSDとはいえメンバーは思いっきり飛ばすので久しぶりに身体に活を入れることができた。
目一杯走るときは一人ではとても無理で、一緒に走る人がいるとつられて走りきってしまう。

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 このところの長距離走が効いているみたいでスタミナは一向に切れなかったが、初日は足がややもたついた。
私より若干年配のSさんも私たちと一緒に走ったのだが、本納駅近くで側溝のふたに足を引っ掛けてころび、顔と足をひどく打撲してしまった。

 実は私も含めて老人ランナーの最大の弱点は足を高く上げることができなくなりすり足になってしまうことだ。
それも段々と疲労してくると、意識では足をあげていてもほとんど地面の上をなすっているような走りになる。

 フラットな場所ではそれでも問題はないが、側溝の出っ張りなんかがあるとつま先を引っ掛けて転んでしまう。
通常はかなりひどい打撲になり、老人ランナーが競技から引退する最大の原因になっている。

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 このような災難を予防する方法は2つで、常に意識的につま先を挙げてかかと着地を志すことと、上半身を鍛えて倒れても手で顔や足をカバーするようにすることだ。

注)ランナーにとっては手より足が大事で、手を犠牲にして足を守らなければならない。

 幸い私は上半身が丈夫で、日常的に腕立て伏せなどをしているので、転んでも手がすりむけるだけで決定的なダメージはほとんどない。

 今回は両日とも秋風の吹くとても気持ちのよい日和だった。途中にはコスモス畑があったり、またサンライズホテルから見た日の出はとても美しかった。
また土気でおゆみ野ランナーズのメンバーがLSDを行っていたのに会ったので、互いに挨拶を交し合った。

 体調は絶好調で、これなら11月末のつくばマラソンで待望の年齢別順位100番ランナーズと言う雑誌が、その年に開催されたマラソン大会のタイムを集計して、日本人の年齢別ランキングを発表してくれる)を狙えそうだ。

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 なお、このサンライズLSDはちはら台走友会の一大イベントになっており、エイドサポートがしっかりついてくれるのでとても助かる。
なんとも楽しい両日だった。

 

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(22.10.23) 明日はわが身 イギリス キャメロン政権の財政再建策

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 イギリス保守党のキャメロン政権がついに本格的な財政再建策を打ち出した。
GDP対比11%程度に膨れ上がった財政赤字を4年間でほぼ1%までに削減すると言う。
とても信じられない数字だが、キャメロン政権は本気だ。

 イギリスは前政権の労働党が放漫財政を繰り返し、特に銀行救済にはイギリスのGDPに等しい公的資金の直接投入や債務保証をしてきたため、すっかり財務規律が失われてしまった。

 それでも世界各国が放漫財政を放任している間はイギリスへの風当たりは強くなかったが、ギリシャ危機を契機にドイツやフランスといったEUの盟主が緊縮財政に切り替えたため、EUの一員であるイギリスも放漫財政を捨てることになった。
もう、アメリカに付き合っていられない。これ以上の財政赤字はイギリス経済の崩壊につながる」キャメロン党首が悲鳴をあげた。

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 今回の財政再建策は各省庁の予算を4年間で19%削減し、10兆円規模の歳出削減を行うのが骨子になっている。
子供手当ても防衛費も削って公務員を減らし、年金の支給年齢を上げて、付加価値税は20%だ

注)子供手当てには所得制限を設け、年金支給年齢を66歳に引き上げ、公務員を49万人削減し、付加価値税を17.5%から20%に引き上げる内容。

 日本の民主党政権が聞いたら腰を抜かしそうな内容だが、事業仕分けで19%予算削減は可能だとオズボーン財務相は強気の発言をしている。
だが4年間で49万人の公務員削減を公表されては労働者が収まらない。

なんだ、財政赤字は金融機関に対する救済金が膨らんだからじゃないか。あいつらはビックバンなんていって高給を取っていたのに、そのつけは労働者か!!」
フランスと同様にイギリスでもゼネストが起こりそうな雰囲気だが、企業経営者はキャメロン政権に大喝采だ。

よく言ってくれた。これでようやくイギリス経済は立ちなおりのきっかけがつかめる。労働党政権は泥舟だった。経済が立ち直れば公務員の失業者は民間部門で雇用が可能だ

 実はイギリスがいつまでも放漫経営を続けられない理由がある。最大の理由がアメリカと違ってポンドが基軸通貨でないことで、財政支出の増大は結局はイングランド銀行がポンドを増刷することにつながり、インフレが更新するからだ。

注)基軸通貨の場合は自国の経済が不振でも世界全体の経済が拡大すれば、それに見合う通貨量の増大が可能になる。アメリカのドルはアメリカだけのドルではなく世界のドルだからだ。

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 イギリスのインフレ目標は約2%だが、現状のインフレ率は3.1%になり危険水域に入りだした。
イギリスポンドもじりじりと安値を更新し、現在は130円を割って127円前後になりこのまま行くと09年1月の最安値118円に到達しそうだ。
国債利回りは幸いに低下傾向にあるが、それでもドイツやフランスに比較すると高利回りの3%前後だ。

注)一時は4%を越していたが、世界各国が資金の垂れ流しを行った結果国債に対する需要が拡大し、安全資産と見られている国債の利回りが低下している。

 イギリスは慢性的に貿易収支が赤字だからドイツや日本と異なり、強いポンドで世界各国から資金を調達しなければ国際収支が均衡しない。
このまま行けばポンドはますます弱くなり、金は集まらず、国家破綻するのは確実だ。そのためには何としても財政再建をして強いポンドを取り戻そう
キャメロン政権は国家破綻か財政再建かと国民に問うている。

 キャメロン政権の危機意識に比較して、同じように財政赤字が突出している日本の鷹揚さはどうだろう。
現在審議中の追加の補正予算の規模は5兆円だが、国債発行以外に財源はない。

 日本は経常収支が黒字で、国債を国内で吸収できることが唯一の利点だ。
だがアメリカを除いて世界が緊縮財政に転換した今、いつまでも日本がアメリカの放漫財政に付き合っている時代は終わりに近づきつつある。
イギリスの緊縮財政は明日はわが身になると思ったほうがよい。

 

 

 

 

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(22.10.24) 遊歩道の街路樹管理はどのようにしたらよいのだろうか?

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強剪定されると樹勢が弱まり芽吹きが遅い。これは5月5日の状態で、剪定されていないケヤキはこの時期青々している

 ここおゆみ野には四季の道と言う約6kmあまりの遊歩道が整備されている。四季の道の一部に夏の道と言う場所があり、ここにはケヤキの木が植えてあるのだが、2年ほど前にこのケヤキの木が強剪定された。

 以来ケヤキ並木が巨大サボテンのような状態になり、何ともひどい景観になってしまった。私はこのことに心を悩ませていたのだが、先日(10月17日)私も所属している「おゆみ野守り人」と市の関係者緑土木事務所、緑の協会、公園管理課)、および「まちづくり協議会」が集まって、景観問題について話し合いを行った。

 この景観問題の最大の問題点は、住民の意思が統一されているわけでないことだ。
ケヤキ並木の近くに住んでいる住民からは、テレビの映りが悪いので樹木を伐採してほしいとか、落ち葉が屋根にたまってしまうとかの苦情が寄せられることがある。

 この苦情に応じて市がケヤキ並木を強剪定すると、いままでこの道を愛していた人から驚きの苦情が来る。
なんで市はわざわざ景観を悪化させるために公費を使用するのだ

 場所によっては住民自ら景観を保全するために低木の植栽の剪定を行っている所もあり、住民参加の景観作りも始まっている。

 こうしたこともあって、ここおゆみ野で多くの住民が参加してこの景観のあり方を考えてみる必要があるのではないかと、おゆみ野守り人Tさんと、緑土木事務所所長さんが立ち上がってくれた。

 17日の会合はそれぞれの立場から意見交換をしたので、今度は実際に夏の道夏の道公園園にはまた別の問題があり、子供たちの安全性をどのように確保したらよいかとの課題がある)を散策してみて、問題点の所在を確認することにした。

 この取り組みは多くの住民に参加してもらって意見を述べてもらうのが目的だから、チラシを作成して参加を呼びかけている。
日程は11月11日の午後1時45分からで、詳細は以下のチラシを見てほしい。
景観問題を本格的に討論しようと言う試みなので、多くの方が参加してほしいものだ。

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(強剪定された直後

「千葉市(緑土木事務所、公園管理課、緑公園緑地事務所、みどりの協会) & おゆみ野守り人」
              

遊歩道の街路樹管理を考える第1回 夏の道と夏の道公園を歩く会

 平成22年11月11日(木)午後1時45分 夏の道太鼓橋の頂上集合

 夏の道から夏の道公園までを散策しながら街路樹を観察します。
その後、おゆみ野ふれあい館で懇談会、午後3時30分頃解散の予定です。
多くの皆さんの参加をお待ちしています。
なお、雨天の場合はおゆみ野ふれあい館へ移動し、懇談会のみ行います。

【住民の声 ごくごく一部です。】
落ち葉の片付けが大変。遊歩道の樹木が死角となって防犯上問題だ。
緑はおゆみ野の財産だ。筒切りしたケヤキの元気が回復しない。見栄えも悪い。
自分たちの街を、自分たちで守り育てたい。

【千葉市の実情】
公園、街路など緑に接した人、離れた人で意見が分かれ対応に苦慮。
財政再建の真っただ中、予算は確実に減る。
いままでと同じ行政サービスは維持できないかも?

さあ、困った!!

千葉市も住民も共に事実を見つめ、考え、行動しよう。
小さな行動を積み重ねて行きたい。
そんな思いで始めてみました。

問い合わせ先 おゆみ野守り人(多田 TEL043-300-1514)

 

 

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(22.10.23) ペンキ屋さんは大変だ。 ベンチの塗りなおし

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(ペンキが剥がれ始めたベンチ

 いやはや頭を抱えてしまった。この5月に四季の道周辺のベンチのペンキ塗りをして、「やれやれ、これでベンチがよみがえった」と思っていたら、半年でペンキが剥がれ始めた。
「冗談だろう・・・・・・・・

 私はペンキ塗りの場合もっぱら水生ペンキを使用して油性ペンキを使用しない。プロはほとんどが油性ペンキを使用するが、その理由は一旦塗ると剥がれ落ちることが少ないからである。

 私も油性ペンキを使用すればいいのだが、この油性ペンキにはシンナー類が含まれていて、臭いをかいでいるとそれだけで頭痛がしてくる。
とても長時間の作業ができないので臭いのない水生ペンキを使用するのだが、すぐに剥がれる欠点がある。

困ったなあ、また塗りなおすより手がないな
悶々としていたがなかなか塗りなおす決心がつかなかった。
悶々とする理由は半年ごとの作業がつらいことと、ペンキ代が馬鹿にならないからだ。

 昨年までは新都市ライフがこのおゆみ野地区の活動に補助金を出していてくれて、おゆみ野クリーンクラブ5万円の補助を受けていた。
これでペンキ代がまかなわれていたのだが、今年から補助制度がなくなった。

)UR都市機構のOさんから、補助制度が緑区の管轄になったと言う情報を最近聞いた

 自己資金でペンキの調達をしなければならないのだが、一缶3000円程度する。
仕方がない。好きなブドウパンを節約して資金をひねり出そう
毎日絶食してようやく資金ができたので、今日剥がれているベンチの補修に向かった。

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とりあえず塗りなおした

 塗りなおしをしてみて分かったのだが、剥がれているペンキはある特定の会社の製品で、私がよく使うアトムペイントはあまり剥がれていなかった。
そうか、ペンキならどれでもいいというわけでないんだ」品質の違いを実感した。

 それと2回目の上塗りは一度目と比較してほとんどペンキがいらないことを発見した。ほぼ半分程度の量ですむ。
よかった、上塗りのペンキは少ない量で済むんだ」ほっとした。



先生は最近やせて、アフリカの難民みたいですがどうしたのですか
よく聞いてくれた、カメゴン。実はベンチの補修用のペンキ代をひねり出すのに絶食しているんだ

知りませんでした。先生は私のキャベツについては今までと同じように食べさせてくださってますね
うん、カメゴンの食事を削ったら男が廃るからな。こうした時はチリの鉱山事故と同様にリーダーがしっかりしないといけないんだ

先生、私も先生のために絶食します
カメゴン、言葉だけでもうれしいよ。カメゴンには家のクーラーのファンや、蚊防止用のネットを破らないようにしてくれればそれで十分だよ

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(22.10.22) アメリカのシェールガス革命  天然ガスが安くなる

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 私はこうした知識が少ないために知らなかったが、毎日新聞の10月18日の記事を読んで驚いた。
今アメリカでシェールガス革命と称するエネルギー革命が進行中だという。
シェールガスとは従来の天然ガスと成分はまったく同じものだが、閉じ込められている場所が異なり、今まで利用されずに放っておかれたほぼ無尽蔵にある天然ガスだという。

 従来の天然ガスは地層の隙間にたまっているガスで、これをストローのようなもので吸い上げて採取する。
一方シェールガス岩盤の中に閉じ込められているガスで、これを取り出すためには高圧の水を岩盤に注入して岩を砕いて採取するのだと言う。

 従来の天然ガスの採取方法に比べて技術的に難しかったため、今までは採取が不可能だったがアメリカがついに技術開発に成功し実際に採取を開始した。

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 世界の天然ガスに対する需要予測で供給者側が強気だったのは、将来的にもアメリカと中国が大量に天然ガスを輸入すると予測されていたからだ。
ロシアや中東諸国はこの需要をあてに天然ガス採掘施設を次々に建設していた。
ところがシェールガスの採掘に成功したアメリカが需要者側から供給者側に変わってしまいそうになってきたので、大騒ぎになってしまった。

注)アメリカの天然ガスの産出量は09年は6240億㎥、うちシェールガス900億㎥で全体の約15%で、今後はこの割合が飛躍的に増大するという。

 ロシア、カタール、イランといった従来の天然ガス産出国が新規投資を手控え、ガスOPECを作って対抗しようとしたが、天然ガスの価格は低下の一途をたどり、英熱量(100万BTU)が07年には13ドル台だったのに、現在は3分の1以下の4ドル台に落ちてしまった。

 ロシアはこの天然ガスを戦略物質としてロシアと敵対関係にあったウクライナを締め上げてきていたのに、近い将来ポーランドシェールガスの生産が始まりそうになり、天然ガスが戦略物質である時代が終わろうとしている

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 なにしろシェールガスの埋蔵量は従来の天然ガスの5倍以上はあると推定され、ほとんどの国でこのシェールガスの産出が可能と言われている。
残念なことに日本にはこうした岩盤がないそうだが、一方で世界各地から有余った天然ガスが供給されるようになるので消費者側は天国のような話だ。

 石油から天然ガスへの代替も進んで、石油価格の乱高下に一喜一憂することもなくなりそうだ。
現在スポット価格は劇的に下がっているが、日本の天然ガスの輸入契約は20年以上の長期契約なので、このスポット価格低下の恩恵をすぐに受けるわけではない。

 しかし今まで石炭や石油を使用していた工場や火力発電所等が今後は天然ガスに切り替えていくだろうから、その時点で安価な天然ガスの恩恵を受けることになる。

 問題は現在盛んに議論されているクリーン燃料の利用にブレーキがかかることで、せっかく盛り上がってきた風力原子力に対する需要がなくなり、もっぱら安価な天然ガスを使用することになりそうだという。

 それとシェールガス採掘時に岩盤を砕いた後、ある種の化学物質を使って岩盤を固定しているがこれが環境に対する影響があるのではないかと懸念されている。

注)ただしこれは技術問題だから代替品はあり、解決可能な課題と思われる。

 はたしてどうなるのだろうか。今後の世界はもっとも安価で大量に存在している天然ガスを燃料に使用する「シェールガス時代」が来るのだろうか。
そして石油の時代が終わるのだろうか? とても興味ある話だ。

 

 

 

 

 

 

 

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(22.10.21) 中国の深い闇 反日デモと内部闘争 共青団派と太子党

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 ここにきてようやく尖閣諸島漁船衝突事故反日デモの関連が明らかになってきた。
当初はなぜこの時期に漁船衝突事故が発生し、それを胡錦濤執行部が声高に日本を非難し、船長を釈放した後も「謝罪と賠償」をもとめ、菅総理と温家宝首相が手打ちをした後も、反日デモが荒れ狂うのか分からなかった。
中国のデモは官製デモだから、手打ちもデモも中国政府の意思と見えたからである。

 私は中国は覇権国家であり、日本から尖閣諸島を奪うまではこの「脅しとすかし」政策を続けると記事に書いてきたが、なぜ中国が「脅しとすかし」をしなければならないかの中国側の内部事情が分からなかった。

 中国共産党は外部に対しては一枚岩のように見せているが、実はどこの国にもある熾烈な派閥闘争を繰り広げている。
日本ような国は民主党自民党が国会で丁々発止の議論をするから、誰の目にも闘争があるのが分かるが、中国はそれを隠れて密室で行っているにすぎない。
密室だけに相手を陥れる手段は何でもありだ

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 中国の二大派閥を共青団派太子党という。一般の日本人には分かりづらい構図だが、共青団派故鄧小平氏が育てたインテリ階層で、共青団という組織を上り詰めてきた現行の執行部を言う。
胡錦濤氏温家宝氏がその代表だが、中国古典のイメージでいえば科挙の試験に合格した進士だと思えばよい。

 一方太子党は、江沢民氏の周りに集まっている上海閥を中心とした実力者の子弟で、親の七光りで党の要職を占めている階層で、習近平氏がその代表である。
太子党は地位も名誉も財産も持っており、この立場を今後とも維持することが最大の眼目になっており、中国版貴族だと思えばよい。

 政策的には共青団派が中国の遅れた貧しい人々の地位の向上に熱心で日本的なイメージでは革新的であり、また対外的には温家宝氏がそうであるように協調的だ。
一方、太子党は自分たちの利益を最大限に維持することに熱心で保守的な体質を持ち、江沢民氏がそうであるように対外的には常に強圧的な対応をする。

 この共青団派と太子党がポスト胡錦濤をめぐって熾烈な争いを行ってきていたが、この18日に終了した5中全会で、ポスト胡錦濤は太子党の習近平氏になることが決まった
習近平氏が中央軍事委副主席になることが採択されたからだ。

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 中国は軍事国家人民解放軍のトップが党の総書記や国家主席を兼ねる。
戦前の日本と同じで陸軍大臣が首相になるのと同じだと思えばいい。
こうしてポスト胡錦濤は太子党の手中に落ちたわけだが、太子党は習近平氏を中央軍事委副主席にするために日本をダシに使ってこのレースに勝利した。

 私はほぼ1ヶ月前に中国の漁船が海上保安庁の船に体当たりしてきた時に、これは偶発事故だと思った。
中国の執行部がいつも必ず起こるデモを抑えて冷静な対応をしようとしていたからだ。

注) (22.9.20) 尖閣諸島の中国漁船衝突事件は偶発的事故 参照

 しかしその後の経緯を見てみると、単なる偶発事故とは言いがたいことが分かった。
中国共産党執行部がデモを抑える一方で日本に対し徹底的に強圧的な外交を展開し、船長を釈放した後も「謝罪と賠償」求めてきたからである。

 何ともちぐはぐな対応だ。日本に対し本当に強圧的ならば、05年の時のように日本大使館に対する暴力デモをおこない、かつ政府間レベルでも脅しの外交をしなければならない。

 さらに不思議なのは菅総理と温家宝首相が手打ちをした後に、デモが地方に荒れ狂ったことだ。
中国首脳部は何をやっているんだ。中国のデモは官製デモだろう。これでは精神分裂症の患者のようではないか」日本政府が当惑したのも無理はない。

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 答えは漁船を体当たりさせてデモを組織した勢力と、デモを抑えようとした勢力が異なるという言うことだろう。
前者は太子党が裏で暗躍し、後者は共青団派の現執行部の方針だとすれば意味が分かる。

 太子党前年度の4中総会で手痛い失敗をし、習近平氏を中央軍事委副主席にすることに失敗している。
胡錦濤氏が腹心の李克強氏を後継者にしようと、習近平氏の昇格を阻んだからだ。

昨年の失敗は許されない。今回は何としても胡錦濤を揺さぶり、わが太子党の習近平氏を次期後継者に指名させよう。
胡錦濤のアキレス腱は日本だ。日本を甘えさせている胡錦濤と温家宝を徹底的にたたけ

日本に甘いと言うことはかつて胡耀邦氏が失脚したように、中国では最大の失脚理由になる。

 今回逮捕された船長が太子党だったか否かは不明だが、太子党の一派から「意図的に漁船を巡視船にぶつけて逮捕されるように」示唆されていた可能性が高い。

 船長が逮捕されるとすかさず太子党は現執行部をつるし上げ、尖閣諸島の領有権で「もし日本に譲歩するようなことがあれば、中国の根源的な利益が脅かされる」として強硬姿勢をとるように脅迫した。
これで胡錦濤政権は日本と妥協することができなくなった。日本に対する妥協は政権の基盤が揺らぐ。

 しかしどこでも領有権問題は一筋縄ではいかない。日本は当初船長を裁判にかけようとしたので、現執行部は日本に対する圧力をエスカレートし、さらに船長を釈放した後も「謝罪と賠償」を要求してきた。
胡錦濤政権は日本に対し厳しいとアピールし、太子党に弱みを付け込まれないようにした訳だ。

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 しかし政権担当者はいつまでも臨戦状態にいるわけには行かない。どこかで日本と手打ちをする必要がある。
菅総理と温家宝首相がASEMの会場を利用して手打ちをしたのを見て、太子党は小躍りした。。
温家宝が甘い態度を取ったのを徹底的に糾弾しろ
作戦をエスカレートし地方の数都市でデモを組織することに成功した。

注)中国では次期後継者を決める5中全会のような大事な時期に、ストを許すことはない。これがあったのはかつての紅衛兵運動と同じように、権力闘争に利用されたからである。

 こうして胡錦濤政権を揺さぶり、太子党はまんまと中央軍事委副主席の地位をせしめることができた。
太子党は日本をダシにして権力闘争に勝利したわけだ。

 しかしこの地位が磐石かどうかは胡錦濤主席が引退する今後の2ヵ年間の政治闘争にかかっており、油断すると胡錦濤氏に巻き返される。
だから太子党はいつでも日本をダシにして胡錦濤政権を追い詰める臨戦態勢を取っているし、一方胡錦濤政権としては日本に厳しく当たることで太子党の追及を避けようと懸命になる。

 中国外務省が「デモをする気持ちは分かるが、法に基づいて行」といっているのがそれで、中国では太子党も共青団派も日本を犠牲にして政権維持を図る。

注)日本が血祭りになるのは中国に対し有効な反論をせず、柳腰外交と称してサウンドバックに徹するからである。

 
こうして日本から見ると、胡錦濤政権から「脅しとすかし」という正反対のメッセージが発せられて、中国側の真意を測ることがことのほか難しくなってしまう。
中国にとって日本はいくら犠牲にしてもかまわない東夷の小国だからと言うのが一番の理由で、今後も日本をダシに権力闘争が繰り広げられると予測しておくのがよい。



 

 






 

 

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(22.10.19) 国営ひたち海浜公園のコキアとコスモス

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 一度行ってみたかった国営ひたち海浜公園を訪問することができた。
ひたち海浜公園は茨城県ひたちなか市の海側にある。
ここはおゆみ野の森で大変お世話になった齋藤さんセンター長ととして奮戦している場所である。

 斎藤さんは千葉市花の美術館の館長をした人だが、退職後植物関係のコンサルタントをされていた。
私が斎藤さんを知ったのはその時期である。
その後斎藤さんは国の公園管理のコンペに参加して、今年からNPO法人として国営ひたち海浜公園のセンター長をすることになった。
長く生きていると世の中には信じられないことがおこるものだ」と言われている。

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 ひたち海浜公園には「みはらしの丘」という標高50m程度の丘があり、ここに春はネモフィラ、秋はコキアほうき草)とコスモスが一面に植えられ、この公園のもっとも魅惑的な場所になっている。
なんとかコキアとコスモスの丘を見たい

 おゆみ野の森のメンバーを誘って5名で、この18日に自動車で出かけた。
おゆみ野からは高速道路を使用して片道約3時間の距離にある。

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 ひたち海浜公園は非常に大きな公園だ。広さは350haと言うから、東京ディズニーランド5つ入る大きさだ。
もっともすべてが使用されているわけでなく、全体の約44%にあたる153haが現在公園として利用されている。

この場所は元は旧日本軍の水戸飛行場で戦後アメリカ軍に接収されて水戸射爆場として使用された場所です。
1979年に返還されて公園として整備を始めましたが、まだ全体の約4割程度しか公園として利用されていません。
残りは樹海になっており、案内人がいないと迷子になるくらい広いのですよ

斎藤さんが説明してくれた。

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 この日はコキアとコスモスが満開で、みはらしの丘コキアの赤とコスモスの白やピンクが鮮やかにコントラストをかもし出していた。
10月はこの公園のかきいれどきで、休日はない。
斎藤さんはセンター長という忙しい身であるのに、私たちのために公園の案内をしてくださった。

来てくれる観光客にどんなサービスをすれば喜ばれるか日夜考えているのです。
今は入場口にたって観光案内をすることにしてます。ここはとても広いのでお客さんの要望はかなり色とりどりで、その人にあった最適なコースについて説明をするようにしています


 今年からNPO法人として公園の管理全般を任されているため、従来以上に顧客サービスに努めようと努力しているのだそうだ。
この日は快晴で海風が心地よく楽しい公園めぐりができた。

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 帰りには大洗の魚市場で海の幸の食事を楽しむこともできた。
公園帰りにはこの場所で海の幸を満喫するのが一番だ。

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(22.10.19) フランス年金改革の行方  サルコジ大統領と労組の熱い戦い

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 フランスのサルコジ大統領が保守の威信をかけて年金改革に取り組んでいるが、これに反対する労働組合の抵抗は日増しに強くなっている。
各地で100万人規模当局発表)のデモが行われ、何か総資本と総労働の対決のようだ。
かつて日本にも見られた構図だが、フランスにまだその構図が残されていたことは驚きだ。

 アメリカを始め、イギリスやドイツや日本はすでにかなり前にこうした保守対革新の対決は乗り越えてしまったが、先進国の中でもっとも社会主義的な国家であるフランスは、20世紀の対立をそのまま残している。

 フランスとは理解しにくい国だ。なにしろ主要産業の金融・保険・電力・運輸・防衛といった産業が国営企業か国の関与を強く受けている企業で、そのトップはほとんどが大統領の友人で占められている。
そしてこうした企業や官界に進むには特定の大學(グランゼコールと呼ばれている)の出身者でないとだめで、グランゼコール出身者とそうでないものの相違は貴族と平民の相違に等しい。

 一般の国民は出世とは無縁だから、もっぱら定年を待ちわびて現行の60歳になればはれて引退してもっぱら年金生活を楽しむことになる。
地位や名誉や財産はないが、俺たちには第2の人生がある」と言うのが一般のフランス人の誇りだった。

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 それをサルコジ大統領が年金改革と称して、定年退職年齢を60歳から62歳に引き上げ、年金の満額支給年齢を65歳から67歳に引き上げるとしたものだから労働者が納まらない。

支配階級のサルコジを倒せ、ゼネストだ」。
製油所がストップしてジェット燃料の確保ができなくなってきたため、シャルル・ドゴール空港の予備燃料は19日には枯渇しそうだとエコロジー省の担当者が悲鳴をあげだした。

 フランスきっての強硬な組合である国鉄もストを打っているのでTGVは数本に一本程度しか運行できないし、高校生までストライキに参加しはじめた。
定年延長をして若者の職場を奪うのか!!」

注)2006年の若者雇用促進政策(2年間は理由なく解雇できる)では、時の首相ドビルパンが大学生の反対運動で退陣に追い込まれている。

 もっとも抵抗があってもサルコジ大統領が後に引けない理由がある。 リーマン・ショック後国内の金融機関にディリバティブと称する不良債権が山のようにあることが分かり、その支援のための財政出動で財政赤字がGDPの3%をはるかに超えてしまった。
ところがギリシャ危機を境に、ドイツの強い要望を入れてEUは緊縮財政に転換し、財政赤字をEUの基準どおり3%以下にする取り決めをしたばかりだ。

注)2009年の財政赤字はGNP対比約8%。

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 緊縮財政の目玉はどこでも膨れ上がった福祉予算、分けても年金改革になるのは止む終えない。
フランスの年金制度の赤字は約3.6兆円で、今後とも増大の一歩をたどるためサルコジ大統領としたら、この赤字幅の削減が急務になった。
世界の先進国の中で60歳で定年退職する国がどこにある。ほとんどが65歳だろう。まだ君たちは働ける」こう叱咤激励したが一般市民は馬の耳に念仏だ。

 労働者は「労働は神様が与えた天罰」だと思っているので、サルコジ大統領に賛成しない。
これはエリート層が俺たちを搾取するための謀略だ。二年間搾取期間を延ばそうとしている」テンションはますます上がってきた。
世論調査ではスト賛成者が70%程度になっている。

 サルコジ大統領もEUの盟主として一歩も引けない立場だから、これはフランスにおける20世紀型対立の総決算と言う様相を呈してきた。
果たして総資本対総労働の対決はどちらが勝利するのだろうか。

 

 



 

 

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(22.10.18) 中国外交の真髄 その2 脅しとすかし 尖閣諸島反日デモ

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 中国外交のたくましさには舌を巻く。ASEMブルュッセル会談菅総理温家宝首相が20分程度立ち話をして、これで日中間の緊迫した関係は修復に向かっていると日本政府は胸をなぜ下ろしたが、そうは問屋が卸さなかった。

 中国は何度も言うがことのほか外交に長けている国だ。さっそく「脅しとすかし」を仕掛けてきた。

 逮捕拘留されていたフジタの最後の職員を釈放したり、日本青年の上海万博訪問団を受け入れたり、ベトナムでの日中防衛相会議が実現したので、日本政府はすっかり舞い上がってしまった。
喜び勇んで仙谷官房長官が「しなやかでしたたかな柳腰外交が成功したとの談話を発表したが、その舌の根も乾かないうちに中国の3地方都市で反日デモが発生し、「尖閣諸島は中国の領土だ。日本製品をボイコットしろ」と騒いでいる。

 16日、四川省成都では学生数千人がデモ行進し、いつものように日本のデパート(イトーヨーカ堂)の窓ガラスを石を投げて割っていた。

注)日本でもこの日中国大使館にデモ行進をしているが、中国大使館に石や卵を投げるような品性にもとることはしていない。

 中国のデモはすべて官製デモなので、いまなぜこの時期に地方都市でデモを中国政府が容認したのか日本政府は判断に苦しんでいる。
特に中国では5ヵ年計画策定のための会議(5中全会)が開催されている最中で、通常は重要な会議が行われる時期にデモを許可することはない。

注)当局の意図に反したデモは徹底的に取り締まられるので、結果としてデモはすべて官製デモになる。

なぜだ、せっかく日中関係が修復しているのに?? 中国政府は何を考えているんだ???」政府もメディアも大騒ぎだが、中国としては当然の行動だ。
なにしろ日本政府は尖閣諸島で漁船が巡視船に体当たりしてきた映像すら、中国を恐れて公開しない。
よし、日本が震え上がっている。もう一回日本を脅しあげれば尖閣諸島はわが国の領土になる
弱みを見せればそこを衝くのが中国外交だ。
いつもの「脅しとすかし」の外交を展開してきた。

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 日本人はこの「脅しとすかし」という相反する行動をとることができない。
一人の人格に脅しとすかしがあるなんて信じられないと言う面持ちだが、これはヤクザが常套手段として使用している方法だ。

 たとえば土地の地上げを行う場合に、怖いオア兄さんがさんざん所有者を脅しつけて震え上がった頃を見計らって、もの分かりのよさそうなオア兄さんが、「ここは悪いようにはしねえ、どうだい、俺に任せちゃくれねいか」なんて仲裁に入るふりをしてまんまと地上げを成功させる。

 中国がやっているのはこのヤクザの地上げと同じで、中国は尖閣諸島を中国領土にするまで、この「脅しとすかし」を仕掛けてくるものと思わなくてはならない。
柳腰外交が成功した」なんて涙に咽ぶようでは中国に手玉に取られる。

 人間関係で人を信用するのは美徳だが、外交関係では国を誤る。
特に中国、北朝鮮、ロシアといった国はヤクザと同じなのだから、相手が軟化したと思ったりせず、今回のデモもいつもの中国の「脅しとすかし」外交だと認識して対応を誤らないことだ。

注)日本人で唯一この「脅しとすかし」を使い分けたのは徳川家康である。豊臣家が故秀吉の供養のため方広寺の梵鐘に「国家安康 君臣豊楽」と記名したことに「家康の2字を切り、豊臣を君として楽しむ」とのろいをかけたといちゃもんをつけた。

 豊臣家の家老、片桐且元が弁明に来た時は「淀君を人質にするか、秀頼を人質にするか、大阪城を明け渡すか」3つに一つだと脅しあげた。
驚いた淀君が再度側近の大蔵卿の局を使者として使わすと「秀頼殿は孫の千姫の殿御で、家康にとって大事な方だ」といって猫なで声で大蔵卿の局を籠絡した。

 豊臣方は家康の真意が分からず、結果的に分裂し大阪の陣で滅びている。
家康が日本人に人気がないのはこの「脅しとすかし」外交をしたからだが、中国をはじめ世界の覇権国は常套手段として使用している。

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(22.10.17) 眼鏡

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 最近ヒョンなことから眼鏡をしないことにした。別段視力が回復したわけではない。眼鏡が壊れてしまったからだ。

 この眼鏡は特に老眼に対して配慮された遠近両用の眼鏡で、大學眼鏡といいパソコンを操作するときはとても具合が良かった。
この眼鏡以外にもかつて使用した眼鏡は山ほど机の中にあるのだが、残念なことに遠くははっきり見えても近くは見えない。

「困ったな、どうしよう」思い余ったががしばらくは眼鏡をしないことにした。
私は定年退職者だから仕事上で人と会うことがない。少なくとも取引先のような重要人物と会うことがなく、このおゆみ野の知り合いに会うだけだ。

 少々人を認識できなくても支障のない立場にある。それに老眼だから近くの一定の距離は見えるのでその範囲内でパソコンを操作したり、新聞を見たり、本を読んだり、テレビを見ている限りは問題がない。
なんだ、これなら面倒な眼鏡なんかしないでもいいじゃないか

 私はほぼ毎日四季の道約6kmの清掃をしていて、朝顔見知りの人と会っている。顔はほとんど認識できないが歩き方やそぶりで誰か認識できることが分かった。

 それに何より女性がすべて美しく見えるのには驚いた。
輪郭しか見えないのと、細かなしわやほくろや白髪や、そうした細かなものは一切捨象されるので、何か印象派の絵画を見ているような状況だ。
すごい、世の女性がすべて美人になってしまった

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 自動車を運転する場合は眼鏡をかけることを義務づけられているが、幸いに私は自動車に乗らない。最近まで我が家にも自動車があったが処分してしまった。
移動は歩くか走るか自転車だ。
遠くに行く時は公共機関が発達しているのでこれで十分だ。

 よくアフリカやアフガニスタンのような中央アジアの人たちの映像を見ると、ほとんどの人が眼鏡をかけていないことに驚く。
一方日本人は圧倒的に眼鏡が多く、外国で日本人かどうか見抜く方法は眼鏡とカメラだと言われるくらいだ(戦前はこれに出っ歯が加わっていた)。
ハリウッドの映画で日本人が出てくる場合はこのパターンだ。

 実際自然と共に生きていくだけならば眼鏡はほとんどいらない。景色はコンサイスの辞書の文字のように細かくないから、大体分かれば十分だ。

 最近は自分がかつて必要と思っていたものを一つ一つなくすようにしている。最近まであるか無きかの頭髪を残していたが、それも丸坊主になってすっきりさせてしまった。
これで眼鏡も捨て、自動車も捨てた。携帯などは携帯することがないのでとっくに捨てている。

 何か生活がますますシンプルになっていき、そのうちのわが身も不要になり捨てられるようになるかもしれない。 

 

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(22.10.16) NHK古代史スペシャル 古代日本のハイウェー

22_014 (北海道の道路。ほとんどが一直線に敷設されている。古代の道路と同じ造り方になっている

 最近見た番組のなかでこれほど面白い番組はなかった。NHKが奈良遷都1300年を記念して放送している古代史スペシャル古代日本のハイウェーである。

 私はかつて教科書で平城京から各地に道が整備されたと言うことをならったが、その道はかなり細い道だと思っていた。
なぜ私が細い道と思ったかと言うと、江戸時代に整備された旧中仙道旧東海道はせいぜい3mから4m程度しかなく、馬や大八車がすれ違えるだけの幅しかなかったからである。

 江戸時代の道路が3mから4mなら、古代の道路はもっと狭かったに違いない。そう思っていた。
ところが最近になり古代道が次々と発掘され、奈良時代にあった古代道は何と13mから14m程度あったことが分かってきた。
嘘だろう、そんな馬鹿な!!」疑ってみたが事実なのだ。

 古代道の特徴は道幅が広いこと、ほぼ直線に敷設されていること、低い場所では盛土がされていること、そして側溝があったことが分かってきた。

 古道がまっすぐなことは経験的に私は知っていた。旧中仙道萩往還道をランニングしてみて、道の作りがまっすぐなのに驚いていたからだ。
少々の岡は迂回などせずに昇り降りさせられる。
昔の人はなんてタフなんだ。登りも降りも直線かい!!」
雨の石敷きの萩往還道を滑りながら走ったものだ。

注)古代には道路を直線に作っても、それに反対する住民運動のようなものがなかったし、また技術的に直線がもっとも作りやすかった。

22_018古代道の発掘のイメージ。実際はアイヌの住居跡

 古代道は全国に7本総延長6300kmだそうだが、これは昭和時代に日本列島改造で日本各地に高速道路を敷設しようとした総延長6500kmとほぼ等しい。
距離が同じだけでなくルートもほぼ同じだと言う。

 かつての古代道は国府と国府の間をほぼ直線に結んでいるのだが、現在の高速道路も大都市と大都市の間をほぼ直線に結んでいる。
そしてかつて国府が設置された場所が、現在でも大都市になっているので、ルートがほぼ同じなのだそうだ。

 道路の作り方は道路の両側に丸太とくいを打ち込んで土が崩れないようにし、一番下に落ち葉や木切れを敷き、その上にサッカーボールぐらいの石を敷き詰め、さらにその上に何層もの土を固めて道路を作ったのだと言う。

 この方法は中国から伝来した工法だが、もともとは秦の始皇帝軍事道路を作った時に用いた方法であることを思い出した。

 この番組ではこの古代道の建設を誰が何の目的で作ったのか検証していて、古代王権で最高の権力者だった天智天皇天武天皇だった可能性が高いと解説していた。

 私の推察は天武天皇が古代道の敷設を命じたはずだと言うもので、天智天皇ではありえないと思っている。
天智天皇は663年に日本・百済連合軍が唐・新羅の連合軍に白村江で完膚なきまでに敗れた後、国土防衛のため瀬戸内海沿岸に山城を築いたり、都を琵琶湖のちかくの大津宮まで後退させている。
唐の侵攻があるものとして恐れおののいていたと言うのが実際だ。

 防衛をする時の鉄則は相手の軍隊が簡単に都まで攻められないようにすることで、江戸幕府でさえ大井川等の大河には橋をかけさせなかった。
ところが今回発掘された古代道は道幅が13m程度もある立派な直線道で、これは秦の始皇帝がそうであったように軍団をすばやく動かすための道路といえる。

注)最近の例ではモスクワの道路網が複雑怪奇に入り組んで作られていたのも、他国からの侵入者を防ぐためである。

 防御のためでなく攻撃のための道路となるとその道路網を整備できた天皇は一人しかいない。
壬申の乱で勝利を収め、古代王朝最大の権力者になった天武天皇であり、日本全国を支配するために整備した道路と言うのが私の推定だ。

注)番組ではこの道路を伝令が行きかい、庸・調(地方の特産物)を運ぶための道路と説明していたが、そのためだけなら13mも道幅はいらない

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古代のイメージ

 また古代道には駅家うまや)と言う宿泊所が整備され、伝令鈴を鳴らしながら馬に乗ってかけていたので駅鈴と呼ばれた)や国司のような役人が寝泊りしていた。

 この駅家は全国に400以上が整備され、8世紀の後半には建物は瓦葺にするように命令が出されている(古代道の近くを発掘して瓦がでてくれば駅家の可能性が高い)。

 この古代道を駅鈴がどの程度の速さでかけたかと言うと、平城京と大宰府の間、約630km4日で駆け抜けたと言う。
一日あたり約160kmであるが、馬なら十分可能な速度だ。

注)私が24時間継続して走ってみて走れる距離の限界は150kmあたりであるので、馬なら人間の2倍の速度は出るはずだから、明るいうちに160km程度は走ったものと思われる。

 
この古代の軍事道路は作られてから100年後あたりから、補修が行き届かなくなり、道も切り崩されて江戸時代の道路のように細くなったと言う。
気宇壮大だった天武天皇の頃と異なり、天皇が甲冑を着て転戦することがなくなったからだと思う。


注)古代道は細くなりながらも300年程度使用されたと言う。

 こうして古代道は1000年の眠りにつき、今平成のこの時代に高速道路となって甦っているともいえる。
実に興味深い話だ。

 


 

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(22.10.15) ようやく目がさめてきた地方自治体  成田の発着枠拡大とリニア新幹線の直線敷設

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 ここに来てようやく地方自治体もごねてばかりいては時代から完全に取り残され、共倒れになることを悟ったようだ。

 成田空港発着枠を現行の22万回から30万回に増枠することを、国・県・空港会社・地方自治体の4者会談で決定したことと、JR東海が計画するリニア中央新幹線のルートを長野県の主張する伊那谷や木曽谷を迂回するルートでなく、南アルプスの地下にトンネルを掘って、ほぼ直線で開通させる案を交通政策審議会国交省の諮問機関)が決定したからである。

 成田空港については建前上は日本の国際空港の表玄関と位置づけられてきたが、この空港の不便さは世界の主要空港と比較すると際立っていた。
最近まで滑走路は1本しかなく、2本になっても同時の離着陸を許されていなかったし、また騒音問題が懸念されていたため夜間は飛行禁止になっている。

 何よりも国内便が成田を使用できないため、乗り継ぎに羽田・成田間を移動しなければならず、あまりの馬鹿馬鹿しさに東京近在以外の人は成田を利用せず、韓国の仁川空港経由で世界に飛び立っている。
本当に仁川空港は便利だわ、座っているだけで乗り継ぎができるんですもの

 成田空港が競争に負けている一番の原因は、発着枠が22万件で国内便の発着ができず、世界の国際空港が4本滑走路で約40万件であるのに対抗できないからである(40万件程度ないとハブ空港になれない)。

 それでも航空行政が成田は国際、羽田は国内の原則を守っている限りは何とか生き延びることができたが、羽田が4本滑走路使用を機会に国内・国際便を飛ばす実質的なハブ空港になることが決まった。

何てことだ、これでは成田は単なるローカル空港じゃないか」さすがに周辺自治体もあせってきた。
そして今まで増枠に反対してきた自治体が妥協して決定したのが、この発着枠30万回である。
私はこの決定は遅きに失したと思ってるが、しないよりははるかにマシだ。

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 またもう一つのリニア新幹線については長野県がごねていた案件である。
せっかくリニアが開通しても、人のいないアルプスの下では意味がない。せめて伊那谷か木曽谷を通せ

 しかしJR東海としては、人が住んでいる場所に新幹線を通すと、その土地の所有者たちとの賠償交渉に時間を取られ、さらに建設費が上がることが目に見えている。

 一方長野県や関係する政治家にとっては、JR東海から土地収用金をごっそり獲得する絶好の機会だから、おいそれと南アルプスの地下にトンネルなど掘られては困る。
公共工事で政治家がピンはねするのが日本のルールだろう」ゴネたが、交通政策審議会は押し切った。

 従来日本ではごね得と言う言葉があり、公共工事に関係した人々が群がって甘い汁を吸うことにしてきたが、ようやくそうした悪習が断たれ始めたようだ。
そもそも日本のおかれている状況がこうした厳しい対応を要請しているのだから、これを機会に今後はごね得の世界は少なくなるだろう。

 

 

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(22.10.14) 名古屋市の楽市・楽座 河村市長の奮戦 市長革命は成功するか

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 現在際立って個性豊かな二人の市長が、地方政治のあり方に異議を唱えて地方議会と対決している。
一人は名古屋市市長河村たかし氏、もう一人が鹿児島県阿久根市市長竹原信一氏である。

 地方政治は国政と異なり、二元代表制という形式を取っており、市長も議員も住民から直接選挙で選出される。
したがって市長と議会は制度的には同等の立場とみなされており対立関係にあるが、実際は議会多数派の党派の支持を得た人物が首長になることが多く、市長と議会の対立はあまりない。

 しかし名古屋市の場合は、本来出身母体だった民主党議員までが反河村市長派となって、議会で河村氏を支持する議員はほとんどいないと言う。

 なぜ議員が反対するかと言えば、議員の定数(75名)を半減し、給与(約1600万円)を半減し、さらに住民税を10%減税するのが市長の公約となっているからだ。
古屋を全国一税金の安い街にして、市民の力で経済危機から立ち直ろう。織田信長の楽市楽座だ

注)市長は自らの報酬をすでに2700万円から800万円に引き下げた。

 減税に見合う財源の一部に議員数の削減と報酬を半額にする案が含まれている。
とんでもない。議員の定数と報酬は聖域でこれに手をつけることなど許せない」議員が一斉に反発した。

注)議会は妥協案として議員の報酬を年額で140万円引下げ、市民税を1年間だけ10%引下げに応じた。

 地方自治体はどこも財政危機にあり、従来は市債の発行や金融機関からの借入でつじつまを合わせてきた。
しかし北海道の夕張市の倒産を契機に財政健全化法が平成19年から施行され、今までのような野放図な財政運営ができなくなっている。名古屋市も景気悪化に伴い市の税収入は減少しており、10年度は地方交付税の交付団体に転落しようとしている。

注)国は相変わらず無制限に国債を発行しているが、地方自治体には縛りがある。

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 河村市長も一歩も後に引く気持ちがなく、議会がどうしても言うことを聞かないのならば、住民請求による市議会解散をして、市長を支持する「減税日本」の議員を大幅に議会に送り込むことにした。
既存の政党の議員はみんな抵抗勢力だ。比叡山の坊主と同じだ、焼き討ちしろ

 実際に住民による市議会解散請求を実施して(河村市長が主導している)、有効署名数約37万人を大きく凌駕した約47万人の署名を集めることに成功した。

 当初議会側は「どうせ有効署名数を集めることなどできはしない」と高をくくっていたが、この数に驚愕した。
まずい、このまま行くと河村市長の思惑通り、来年2月の知事選にあわせて議会選挙を実施されてしまう。投票率が上がって浮動票が市長支持団体の減税日本に流れて、既成政党は大敗北だ
小泉郵政選挙や鳩山民主党選挙のような地すべり的な激震が走りそうになってきた。

 市民の所得が伸びず、税収入が落ち、予算編成に苦慮するようになれば、倒産前の会社と同じで金食い虫の議員を半減したくなるのはどこも同じだ。
しかし議員としたら、失職したらただの人だから、簡単に市長の要望に応ずるわけに行かない。
俺たちだって、生きる権利はある

 会社で言えば利益を出せなくなった部門のリストラをどの様に行うかと言うことだが、議員ほどリストラが難しいものはない

 第一自分たちをリストラするか否かの議決権を持っているのだから「自分たちは立派な公僕で、必要な人材だ」と評価するのは当然だ。
一方河村市長は「公僕がもっとも豊かな生活をしている現状はおかしい」と言って後に引かない。

 こうして貧しくなっていく地方自治体として、どの程度まで議員定数と給与を認めることができるか今問われている。
だから名古屋市の戦いは今後の日本の地方政治のあり方を決定する主戦場といえる。
はたして河村市長は平成の織田信長になれるだろうか。

 

 

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(22.10.13) NKHスペシャル 夢の新薬が作れない  COP10の行方

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 NHKスペシャル「夢の新薬がつくれない生物資源をめぐる闘い)」を興味深く見た。
生物資源」とは聞きなれない言葉だが、現在名古屋で開催されているCOP10(第10回生物多様性条約会議)で主要なテーマになっていると言う(条約会議では遺伝資源と言う言葉を使用している)。

 石油や石炭や金は鉱物資源として広く一般に認識されているが、生物資源とは主として製薬会社が薬の原料として使用する動物・植物・微生物をさす言葉だという。

 この番組で紹介されていた生物資源を利用した新薬に、がん細胞を劇的に死滅させるコンブレタスタチンという新薬があるのだそうだ。
これは臨床段階で3年以内に承認を目指しているのだが、この新薬の原料はアフリカ南部に生息する生物資源、ブッシュウィローという木だという。

注)この薬はがん細胞の血管だけに作用して、腫瘍を死滅させると言う夢のような新薬と言われている。

 もう一つの例はドイツの製薬会社が開発した風邪薬ウンカロアボでドイツでは最もよく販売されている風邪薬だが、この原料はやはり南アフリカ原産のペラルゴニウムという花の球根が原料になっている。

 このペラルゴニウムをドイツの製薬会社が大量に買い付けている。
そのため南アフリカの東ケープ州一帯では、原住民が最も安価に得ることができる現金収入として大々的なペラルゴニウムの採取を行なっており、多くの場所からこのペラルゴニウム消滅してしまったと言う。

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 実を言うと私は薬は実験室で合成されてできるものだとばかり思っていたが、いわゆる画期的な新薬は合成ではダメで、原住民が太古より使用していた薬草類から発見されることが多いという。

注)まったく新しい新薬の分子構造はコンピュータによる合成で作り出すことが難しい。

 今問題になっている先進国と途上国の対立はこの生物資源を乱獲してしまい、生物が消滅してしまうことで近い将来原料がなくなってしまうという危機だそうだ。
南アフリカはこうした先進国の簒奪を「バイオパイラシー(生物資源に対する海賊行為)」と言って非難しているが、製薬会社の言い分は南アフリカ政府がルールを設けて自分で取締りをすればいいというものだ。

注)実際はルールは有るが貧しい南アフリカの住民は生活のためにこのルールを守らない。

 もっとも製薬会社としてもただ簒奪していては原料がなくなってしまうので、アメリカのナポ製薬と言う会社は、盛んに原料の木材の植林を行っていた。
この会社はペルーの森に生息する竜の血と呼ばれる木から画期的な下痢止めの薬を製造しようとしているが(発売は来年の予定)、木一本からはせいぜい200錠程度の原料しか採取できない。
このため製薬会社は今までに約70万本の竜の血の木を植林しており、また今後利益の2%を原住民に還元するとしている。

 しかしペルー政府ナポ製薬の取り組みにまったく不満で、利益が出ようが出まいが法律で売上げの15%をペルー政府と、原住民に支払うよう要請している。
この要請の論理は「先住民の伝統的知識を利用して新薬の開発をしている」ためと言う。

 いわば原住民に特許権があり、その特許料売上げの15%だと言うのだが、これでは製薬会社は新薬の開発意欲がわかない。
利益が上がれば相応に還元しても良いが、利益もないのに売上げの15%とは法外だと言う認識だ。

 また法解釈として竜の血が「先住民の伝統的な知識」に相当するかと言う問題があり、この例ではナポ製薬は「竜の血」は広く知られた公知であって、「伝統的な知識でない」と反論していた。

注)実際にペルー政府が製薬会社から特許料を得た実績はない

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 もっとも今後は途上国がこのペルーと同じような法律を作って、「原住民の伝統的知識」の代価を求めることが予想されるので、製薬会社は対抗として、生物資源を使用せず合成して新薬を作り出す方向を目指している。

注)コンピュータで画期的な新薬を作るのは難しいが、生物資源を分析してその分子構造を探り当てることはできる。

 生物資源の分子構造さえ分かれば、後はそれを工場で合成すればよいのだから、わざわざ生物資源を採取する必要がなくなる。
途上国の生物資源を簒奪するのではないので問題なかろう」と言うのが先進国の主張だ。

 これに対しても、もともとは途上国にある生物資源を分析した結果だから、途上国側に特許料は存在すると主張して先進国と対立しており論争は尽きない。
従来は新薬の開発利益はすべて開発者に有ったが、今後は何らかの方法で途上国にも還元する方策が模索されそうだ

 今回のCOP10ではせいぜい、「遺伝子組み換え生物が生態系に悪影響を与えた場合、途上国は先進国に金銭的な保証を請求できる」という条項の議決までのようだ。
先住民の伝統的な知識」と言う特許権問題は、今後長く尾を引きそうだ。

注)途上国は中国に見られるように先進国の特許権を無断で使用することで発展しており、この問題は互いに特許権を守ると言う方向でなければ解決しようがない。

 

 

 

 

 

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(22.10.12) HNK古代史ドラマスペシャル 大仏開眼

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 先日2日間にわたって放送されたNHKの古代史ドラマスペシャル大仏開眼を興味深く見ることができた。
私を含め一般の日本人は、奈良時代というものをよく知らない。
聖武天皇奈良の大仏を造営したり、諸国に国分寺国分尼寺を建造したことから、非常に仏教政策に熱心だったことは分かるが、それ以上の知識はあまりないのが普通だ。

奈良時代とはどんな時代だったのだろうか?」そうした興味でこのドラマを見たが、この時代が中国のコピーであったことがよく分かった。
そもそも服装からして中国式であり、特に朝廷の玉座や百官の立ち居振る舞いが中国式であることに驚いた。
当時の指導者層はまったく中国人のようだ。

 手に細長い靴べらのようなものを当時の役人は持っていたが、これはシャクといって、挨拶を交わすときに使用する。
私はシャクは神主さんが詔をする時に使用しているものだとばかり思っていたので、シャクを両手で持って恭しく頭を下げる挨拶が当時の基本と知って驚いた。

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 この奈良時代の人口は500万程度で、都市的な場所は奈良の平城京と九州の大宰府ぐらいしかなく、後は人口がまばらな田舎といった感じだったようだ。
私のイメージとしては現在の北海道を一回り大きくして、かなり寂しくしたような場所が思い浮かぶ。

 この物語は聖武天皇の御世に遣唐使として唐から帰朝した吉備真備と名門藤原氏の家長、藤原仲麻呂との確執が縦糸のテーマになっており、横糸のテーマは大仏開眼となっているドラマだ。

 吉備真備は弱小貴族の出身で、とても朝廷の重要な役職を務める家柄ではなかったが、その学才が秀でていたため遣唐使の一員として唐に派遣され、唐で19年間の研鑽を積んできたインテリだ。

 今の日本のイメージで言えばアメリカのハーバードに留学し、そこで研究者として立派な業績をあげてきたと言うイメージで、実際ドラマでも合理的なこと以外は一切信じないと言う、唐のインテリらしい立ち居振る舞いをしている

 帰朝してからはその近代的知識により朝廷で押しも押されぬ人物として重用されるようになる。
しかし吉備真備を重用したのは心では藤原氏を煙たく思っていた聖武天皇とその皇太子阿部内親王(娘)で、一方藤原仲麻呂を支援したのは聖武天皇の后で、阿部内親王の母親でもあった光明皇后という構図になっている(史実でもその通りだといわれている)。

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 母と娘が対立するとはおかしな構図だが、光明皇后は藤原氏の出であり、藤原一門を権勢の中心に据えることに熱心だったのに対し、阿部内親王は王家の父と藤原氏の母の子供でいわばハイブリッドだったからだろう。
私は母も藤原も嫌いなの

 この奈良時代という時代は、皇室の力と藤原氏の力が拮抗していた時代で、最終的には藤原氏の勝利に終わるがそれは一筋縄で行ったわけでなく、藤原氏は何回かの挫折を繰り返している。

 皇室側も有能な王位継承者を輩出し、特に長屋王が典型的にそうであるように政権の主要な地位に着いたが、藤原氏の陰謀によって自殺に追い込まれている。
自殺させたのは藤原4兄弟と言う仲麻呂の父や叔父だが、この4兄弟はこんどは流行の天然痘で相次いで死去してしまい、残ったのは仲麻呂だけと言う状況になっていた。

 このドラマでは吉備真備が内親王を助けて藤原仲麻呂の横暴をけん制すると言う構図になっている。
実際の吉備真備も反藤原方の筆頭で、そのため仲麻呂から疎まれ大宰府に流されているがこのあたりは菅原道真とそっくりだ。

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 一方横糸の大仏開眼はあまりよく分からない。吉備真備と共に唐から帰朝した僧玄坊聖武天皇の母親のうつ病を治療し、天皇の信任を得て日本国に世界最大の大仏の建立を勧めるのだがなぜ聖武天皇が盧遮那仏(るしゃなぶつ)の建立に積極的になったかドラマではよく分からなかった。

注)井沢元彦氏の逆説の日本史を読むと、聖武天皇もうつ病にかかっており、その原因は藤原一族が陰謀で殺害した長屋王の怨霊を恐れていたからという。長屋王を鎮魂するために光明皇后と一緒になって、大仏を造営したのだと言う。

 阿部内親王は聖武天皇から位を譲られ考謙天皇となるが、母親と藤原仲麻呂の陰謀で廃位させられ,上皇に祭り上げられた。
考謙天皇はこの状態に不満を持っていたが、母の光明皇后が存命のうちは積極的な反撃に出られない

 仲麻呂の専横はますます激しくなり、この仲麻呂の藤原氏中心の政治と新羅討伐計画ドラマでは触れていなかった)を苦々しく思っていた反仲麻呂集団が、光明皇后死去の後孤立した仲麻呂を打つことにした。
考謙天皇の命令で吉備真備を参謀総長にして反仲麻呂軍が仲麻呂の野望を砕くところでこのドラマは終わっている。

そうか、奈良時代を理解するには吉備真備を理解すればいいのか」ドラマを見てその手がかりを知ることができた。
いまから1300年も昔の、霧に包まれた時代だったが、今回このドラマを見ることによって、奈良時代理解の糸口がつかめることができて非常に満足した。

 

 

 

 

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(22.10.11) ノルウェー人権外交の勝利 劉暁波氏へのノーベル平和賞授与

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 実にノルウェー政府は立派だとつくづく感心してしまった。民主主義とは何かを実地で教えてもらったようなものだ。
中国の反体制活動家劉暁波(りゅう ぎょうは)氏に対するノーベル平和賞の授与についてである。

 劉暁波氏89年の天安門事件で学生側を支援し投獄され、08年には「08憲章」を起草して中国共産党の一党独裁を批判したため身柄を拘束された。
そして10年2月に懲役11年の刑を言い渡されて、現在服役中の人物である。

 本年度のノーベル平和賞の候補に劉暁波氏がノミネートされていることを知った中国政府は陽に陰にノーベル委員会ノルウェー政府に圧力をかけ続けてきた。

中国の法律を犯して刑罰に処せられた人物にノーベル平和賞を授与するなど、ノーベル平和賞の趣旨に反する。
もしこの警告を無視してノーベル賞を劉暁波に与えれば、日本と同じように泣きを見る。それでいいのか

 しかしこうした脅しに対し、ノーベル委員会の回答は実に確固たるものだった。
中国の憲法35条は言論・出版・集会・結社・抗議活動の自由を認めていながら、実際はまったく憲法を守っていない。
劉暁波氏の逮捕は明確に憲法違反であり、かつ基本的人権に対する挑戦である


 さらにヤーグラン委員長は「中国がより民主的な国になるため、他の人が言わないことを我々は言わなければならない(そのために劉暁波氏にノーベル平和賞を授与した」と言い放った。

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 中国政府は完全に頭に来て、CNNやBBCやNHKの劉暁波氏に対するノーベル平和賞受賞のニュースを切断してしまった。
さらに劉暁波氏の妻に対する外国メディアのインタビューを阻止している。

ノルウェーのヤツ、日本のように中国の圧力に屈してひれ伏すと思っていたら、居直りやがった。
中国の覇権を認めないとはトンでもない国だ。
日本と同じように経済で締め上げられないだろうか。ノキアはレアアースを使用しているのだろう


主席、ノキアはフィンランドの会社でノルウェーの会社では有りません。この国は北海原油と漁業と林業の国ですのでわが国との関係は深いとはいえません

それではノルウェーへの旅行を差し止めたり、ノルウェー人が当局の制止を無視して万博会場に入りパンダを見たとして拘束したらどうか
テンヤワンヤの騒ぎになってしまった。

 今回のノルウェー政府の対応を見て、世界には恫喝に屈しない国と、易々と恫喝に屈して「早く船長を解放しろ」と首相が叫ぶ国とがあることが分かった。
民主主義の出来具合が違うのだろう。

 

 

 

 

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(22.10.10) 120km走 再開

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この地点ですっかりくたびれ本音は止めようとしていた

 再び120km走を再開することにした。
120km走とは江戸川の河口の葛西臨海公園から川を遡り、利根川との分岐点の関宿まで行き、そこから引き返してくるコースである。
片道約60km、往復で120kmになる。

 私がこのコースが好きなのは堤防の上に自転車と人の専用ロードが敷設しているからで、基本的には自動車道と交わらない(一部自動車道を横切る場所はある)。

 とても安全で、その上堤防の上から見る景色が何ともいい。荒川の場合は回りに住宅が建て込んでいるが、江戸川には色濃く農村地帯が残っている。
途中、寅さんの柴又もあり、観光名所にも事欠かない。

 120km走をする時のコツは、途中でリタイアする場所が少ないことで、江戸川のコースは三郷川間以外にはリタイアする場所がない。
私はいつも川間(45km地点)まで来ると走るのがいやになるのだが、「ここさえ越せば120kmは必ず走ることができる」と心を奮い立たせている。

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柴又付近

 前回このコースを22時間かけて走ったので、今回は20時間を目標にすえることにした。
なぜ20時間かというと、24時間(1日)で150km走る能力を身につけたいからだ。

 私は来年の5月に萩往還250km(2日間)のレースにエントリーしている。この萩往還は過去3回挑戦していずれも失敗している。
今度こそ完走しなければ年齢の関係で一生完走は不可能になりそうだ。
1日目に150km程度走ることができれば、2日目の100kmは確実にこなせるだろう・・・・・、でなければ萩往還は完走できない・・・

 そのための120km、20時間のトレーニングである。
朝8時に葛西臨海公園をスタートしたが、この日(5日)は、10月なのに気温が30度近くに上がって、何とも暑い夏日だった。
長距離走の場合は暑さは大敵だ。

 実際魔の45km地点まで来ると、すっかりへたばってしまい気力がなえてきた。
今日はここで止めて帰ろうかしら・・・・・・

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江戸川浄水場

 悶々としていたら散歩の主婦が通りかかったので、記念写真を撮ってもらうことにした。45kmまでは走った記念撮影だ。

どこから来たのですか?」
葛西臨海公園からです
まー、そんな遠くから・・・これからどこへ?」
関宿まで行って、そこから又折り返して葛西臨海公園まで行きます」つい見栄を張った。
まー、そんなことできるんですか
ええ、夜中も走ります」さらに見栄を張った。

 主婦がすっかり尊敬した目で見ていたため、川間でリタイアすることができなくなってしまった。
仕方ない、関宿まで行くか・・・・・

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(夜の総武鉄橋付近

 しかし昼間の暑さのためにすっかり消耗し、後半はひどい失速状態になってしまった。だんだんと20時間の目標が遠ざかる。
さらに悪いことに綿のパンツをはいていたため股ずれが始まった。
こすれたところに汗の塩がしみこむ。

いてー、もう我慢ならん。パンツを脱ぐ
夜中のロードでパンツを脱いで、股を水で洗い塩を流れおとした。
これでようやく痛さから解放される。

 旧江戸川に入ってからはまったく走れなくなり、100mおきに走ったり歩いたりしてようやく葛西臨海公園に戻った時は朝の5時で、21時間経過していた。

今回は失速して20時間はダメだったか・・・・・」なかなか思い通りには走れないものだ。

 

 

 

 

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(22.10.9) 小沢元代表にたいする検察審査会の強制起訴は無理筋

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 10月4日、東京第5検察審査会が、小沢元民主党代表を政治資金規正法違反の容疑で強制起訴すると発表した(議決そのものは9月15日になされている)。

 これで地方裁判所が弁護士を検察官役に指定し、裁判が始まることになった。
小沢元代表は「2度にわたり(検察からは)不起訴になっており、本日の検察審査会の議決は、誠に残念であります」とコメントしている。

 この事件は東京地検特捜部が証拠不十分で不起訴処分にしたものだが、特捜部が不起訴にした理由は、現行の政治資金規正法の条文解釈では、会計責任者や事務担当者の虚偽記載を問えても、政治家本人については明確な共謀の意思がなければ罪を問えないと判断したからである。

 もともと政治資金規正法ざる法で、政治家の訴追はよほどのことがない限り不可能になっている。
実際鳩山元総理の資金管理団体、友愛政経懇話会の不正記載は鳩山総理に共謀の意思がなかったと不起訴になった。

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 共謀の意思の有無を立証することはかなり難しいようだ。政治家本人と秘書が共謀の意思がなかったと証言すれば、他に何らかの物証がない限り政治家本人を有罪にすることは難しい。
秘書が捜査段階で共謀を認めて検事調書にサインしても、大阪地検特捜部の例のようにでっち上げられたとの反論が容易であり、検事調書が証拠として採用されるかはかなり怪しい。

 そうした意味もあって、東京地検は小沢元代表の起訴を諦めたのだが、検察審査会は「4億円の金を出しておきながら、政治資金報告書の虚偽記載に関与していないとはありえない」として、再び強制起訴の議決をしている。

 私は「小沢元代表が虚偽記載の事実を認識していた」という検察審査会の推定は正しいと思っているが、裁判では物証が出ない限り小沢元代表は無罪になると思っている。
もともと政治資金規正法は、政治家の関与を厳密に証明することを求めており、状況証拠だけでは有罪にできない

 今回の事件で検察審査会は、「政治資金規正法がざる法である(したがって裁判では小沢氏を有罪にできない可能性がたかい」ことを嘆いていたが、私はざる法でいいのではないかと思っている。
法律がより厳格になり、次々に政治家を逮捕してしまえば、清廉潔白な人だけが政治家として残ってしまい、著しく政治力が低下すると思っているからである。

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 私は個人的には清く正しく美しい人が好きだし、友達としてはそうした人と付き合うようにしている。
しかし政治家としては単に清廉潔白だけではだめで、強い指導力と豪腕がなくてはならない。

 その例が今回の尖閣諸島での中国漁船の追突事件で、日本の領海内で操業していた中国漁船を拿捕したのに、中国はありとあらゆる恫喝を行い、日本が船長を政治的判断で釈放した後も「謝罪と賠償」を求めてきた。
謝罪と賠償」を求めなければならないのは日本側のはづだ。

 菅総理は縮みあがって「早く船長を釈放しろ」大声を張り上げ、船長が釈放されれば中国は軟化すると思っていたが、さらに恫喝をしてきたのでパニックに陥ってしまった。
しかしこれが世界政治の実態であり、中国や、北朝鮮や、ロシアの政治家はヤクザのような体質を持っており、こうした場合は圧倒的な迫力で襲い掛かってくる。
「おい、にいちゃん、中国をなめると泣きを見るぞ!!」

 このようなヤクザな国家と渡り合うことを日本の政治家に求められており、単に清廉潔白で政治資金が透明なだけのお坊ちゃんではとても対応できない。
菅総理は身奇麗な人だが、危機に遭遇すると頭を砂にもぐらせるダチョウになってしまった。

 その点で小沢氏は日本の政治家としてはまれな豪腕とタフさを兼ね備えており、田中角栄氏や金丸信氏のように後ろ暗い点はあるが、海外の政治家と渡り合える唯一の政治家ともいえる

 鳩山元首相などは友愛を説くだけで、まったく交渉力がなかったのでアメリカから完全に馬鹿にされて挫折し、今菅総理が尖閣諸島で中国にいいように脅しあげられている。
今度はロシアのメドベージェフ大統領が領土問題で弱腰の日本を見て、クナシリとエトロフをロシア領にすることを決定してしまった。

 これが国際政治の実態で、政治をきれいごとだけで仕切ることはヤクザな国家にとりかこまれている日本にとって危険すぎる。

 日本には中国や北朝鮮やロシアの恫喝に負けない、タフなネゴシエーターの政治家が必要だ
そうした意味で小沢氏を政治資金規正法で追い詰めることは日本の国益にならないと私は思っている。

(24.4.27)追加
私は小沢氏のタフさ加減は評価するが、消費税増税は必要と判断しており小沢氏の選挙目当ての消費税反対表明には賛成できない。
国内政治では小沢氏の力量は発揮できないのではなかろうか。

 


 

 

 

 

 

 

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(22.10.8) 日銀の愚かな金融緩和策 資金供給5兆円

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 日銀が10月5日に行なった金融政策決定会合で、新たな金融緩和策を策定した。
ポイントは新たな資金供給策として、5兆円の基金を設け、市場から国債や投資信託を購入して、資金供給を行うことだ。

注)それ以外に政策金利を0.1%から0%にするというのもあるが、これは当初からほぼゼロ金利なのだからアナウンス効果しかない。

 すでに新型オペレーションと称して30兆円の資金を0.1%でばら撒いたが、それでも足りないと5兆円を追加した。
金融機関が保有している国債と投資信託を購入すると言うのだが、投資信託の購入は不良資産の買取と言える(ほとんどが元本割れしている)。

 そして重要なのは消費者物価が年率1%程度になるまでこの緩和策を継続するとしたことだ。
インフレターゲットを日銀が初めて設けたことになる(それまでは日銀は消費者物価は0%で安定しているのを良しとしていた)。

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 しかし私が何度もこのブログで述べているように、日銀の金融政策はまったく効果を発揮できない。
少なくとも国内の設備投資を増加したり、国内資産の購入によって土地価格を上昇させるような期待はできない。

 その最大の理由は「金は世界を駆け巡る」からである。
かつてのように円やドルの為替管理を政府が行っていて、資金を国内に留まらせるならば、金融政策は有効に発揮できる。
しかし現在は日銀から金融機関にばら撒かれた資金は、ヘッジファンドや金融機関の自己ディールによって、たちどころに金や石油や希少資源や、穀物に投資され、また新興国の不動産や株式に化けてしまい、日本にほとんど資金が留まらない。

 日本のように人口が減少し、老人が増加して購買力が低下した国にいくら投資をしても資金回収ができないのだから当然の措置と言える。

注1)反対に中国で金融政策が有効なのは金融機関が貸し出した資金が為替管理が厳格なために国内に留まり、不動産価格を押し上げているから。

注2)日銀は伝統的な金融政策(ケインズ政策)を実施しているが、ケインズの言う金融政策とは国内市場から資金が流失しないことを前提に論旨が組み立てられており、グローバル社会では成り立たない。
なお、ケインズの財政政策がいまだに有効なのは子供手当てのように直接に国民に資金が流れるから。


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 金融政策がまったく効果のないことは当の白川日銀総裁も認めていて、9月に白川総裁が発表した「特殊性か、類似性か」と言う論文で次のように述べている。

① 日本の失われた10年の間、日銀はゼロ金利政策や資金の量的緩和のような前人未到の領域に踏み込んで金融政策を実施して来た。

② それでも日本経済を立て直せなかったのは日銀が無能だった訳ではない。

③ その証拠に、現在世界各国がこの日銀をまねて世界的な規模でゼロ金利や量的緩和を行っているが、日銀と同様に効果を発揮することはできていない。

④ 金融政策は構造問題(十分に発達した資本主義経済をさらに飛躍させると言うようなこと)に対応できないからで、日本の経験は特殊なものでなく一般的なものだ。


 白川総裁が本音では諦めている金融政策を今回実施することにしたのは、現在世界的な規模で為替の切り下げ競争がなされており、特にFRBがこの11月にも追加の緩和策を行うと発表したからでる。

まずいじゃないか、これではますますドルの信認は低下して、円が世界から買われて円高になってしまう。
政府がまた円高介入を日銀に迫るから、その前に手を打って円安に誘導しよう
」と言うことのようだ。

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 しかしこれもブログに何回も記したが、日本の円が世界に信任されて日本が世界有数な裕福な国になることがそんなに悪いことなのだろうか。
政府は円高になれば輸出産業がつぶれると大騒ぎをするが、大企業は世界各地に生産拠点を持っていて、最も安価に生産できる場所で生産を行う体制を構築している。

 今回の日銀の金融政策の目的はアメリカと貧乏競争をして、円の価値を下げ輸入物価を上昇させてインフレを起こそうと言うもので、何とも愚かな政策だ。
日本人が本当に豊かになるためには、反対に円を世界で最も信用される通貨にすることである。

 停滞の20年の後せっかくめぐってきたチャンスで、日本が世界国家として飛躍できるこのときに(アメリカや西欧はディリバティブで日本の停滞の20年を後追いしており青息吐息だ、この日銀の政策ほど愚かなことはない。

 

 

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(22.10.7) 文学入門 耕治人 「そうかもしれない」 「どんなご縁で」

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 今回の読書会のテーマ本は耕治人こう はると)氏の「そうかもしれないと「どんなご縁で」という短編だった。
私はいつものように耕治人氏をまったく知らなかったが、戦前から戦後にかけての詩人兼文学者で、私小説作家として著名な人だという。

 1988年口内炎のがんで亡くなっているが、その最後の1年間に認知症患者だった妻と耕治人氏との間で交わされた言葉や、自身の闘病記がこの小説の主題になっている。

 「そうかもしれない」とは耕治人氏が口内炎のがんで入院していた病院に認知症の妻が訪問した時に、「この人があなたのご主人ですよ」といわれてつぶやく言葉である。
そうかもしれないが私には夫かどうか分からない」という意味だ。

注)この時期耕治人氏の病状は悪化しており、最後の看取りとして認知症の妻を施設の人が連れてきた。

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 一方「どんなご縁で」は認知症が進み、夜失禁した妻の下の世話を耕治人氏(この時は耕治人氏はまだ入院していない)がするのだが、その時妻が言った言葉である。
どんなご縁でこんな親切な対応をしてくださるのですか?」という意味だ。

そうかもしれない」は雪村いづみ桂 春團治の主演で映画化され、雪村いづみが渾身の演技をしたと評判になった映画だそうだが、私は見ていない。

 ただこの短編を読んだ感想を正直に言うと、印象はあまりいいものではなかった。
一種の闘病記で、それを自分の周りに起こった事件というよりは日常を細部にわたって書いてあるのだが、そうした闘病記は今ではありきたりになっており新鮮な感覚で読めない。

注)もしかしたら1988年の段階でこうした癌や認知症の闘病記を発表するのは相当勇気の要ることだったかもしれないが、私には判断する材料がない。

 露骨な表現を許してもらえれば、癌も認知症も今では普通にある病気で年をとれば誰でもかかる病気だから、単なる老人看護の話の一形態に過ぎないのではないかと思ってしまう。
したがって当時は評判だったとしても、今では耕治人氏が残した小説は時代から遅れてしまい、読む人はほとんどいなくなったのではなかろうかと推定された。

注)現在耕治人氏の小説はほとんどが絶版になっている。

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 今回の読書会の対象ではなかったが「赤い美しいお顔」という短編が「そうかもしれない」と一緒に講談社の本の中に納められていた。
これは川端康成氏に師事した耕治人氏が、一途に川端氏を尊敬し「私だけの先生」とまで思慕する小説である。
ほとんど一方的な片思いの恋愛小説みたいだ。

 もちろん「赤い美しいお顔」とは川端康成氏の顔だが、あまりに思い入れが強すぎて、川端氏は辟易していたと思われる。
だんだんと川端氏が耕治人氏を避けるようになると、さらに思い入れが募り、最後は川端氏の些細な言葉で傷つき神経症になっていく様が描かれている。

 私にはこの「赤い美しいお顔」という短編が一番面白かったが、それは繊細すぎる人間がいかに精神的に崩れていくかよく分かるからだ
自分と川端氏を一体化すれば、すべての川端氏の言動が耕治人氏に向けられたことになるが、実態は川端氏と耕治人氏は別人格で、それぞれの人生を歩んでいるにすぎない。

 それを無理やり自分と川端氏だけの世界に限定して解釈して神経症になってしまうのは、心がか細すぎるからであろう。
最も詩人の素質はそのか細い繊細な神経にあるのだから、詩人としては一流でも、生活人としては精神病院で治療を受けるのも止む終えないと思われた。

注)その後耕治人氏は川端氏にだまされたと一方的に思って川端氏が死去した後、川端氏の家族を相手に裁判を起こし敗訴している。


なお、この読書会の主催者河村義人さんが、以下の詳細な評論を書いていますので参照してください。

個別具体的な「老い」(リンクが張っております)

 

 

 

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(22.10.6) ちはら台走友会のオクトーバー・ラン

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 毎年この時期になるとちはら台走友会オクト-バー・ランが始まる。
10月の1ヶ月間でどれだけの距離を走りこめるかを競うランで、10月に十分練習ができれば冬のシーズンでよい成績が可能になる。

 通常サラリーマンの走行距離は1ヶ月間300km程度が限界で、これ以上走りこんでいる人はよほど練習熱心な人だ(正確に言うと仕事をほっぽりだしても走っている人)。
しかもこのオクトーバー・ランではみんなが競争して走りこみをするので、1位になる人は500km前後走ってしまう。

 私はさすがに500kmは走ることはできないので、目標を400kmと定めた。
私は通常おゆみ野からちはら台にかけての13km周回コースを走るようにしているので、1ヶ月間休まずに走ればほぼ400kmになる。

 しかし実際は雨の日だとか、体調が悪いとか、用事があったりして毎日走るのは不可能だ。
したがって400kmに到達するためには一時期にかなりの長距離を走るようなことをしなければならない。

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 こうした場合、私は江戸川葛西臨海公園から関宿までの往復120kmの練習ロードを走ることにしている。
自転車と人間の専用ロードなので自動車にぶつかる心配はない。
前回走ったときはこの120kmを22時間かかったが、今回は20時間程度で走りたいものだ。

 朝走り出して翌日の朝までかかり、その間夜寝ないで走るのだが、私は24時間走を何回も経験しているので、夜寝ないことについてさして苦痛に思わない。

よし、今回は400km程度走って、走友会の中で3位程度の走行距離にしよう

 今シーズンはいくつかの目標を設定している。
一つは年齢別日本ランキング64歳100番になること、それと萩往還250km2日間で走る)を完走することだ。

 100番になるためにはフルを3時間40分程度で走る必要があるが、63歳時は3時間53分で、154位だった。
 萩往還は過去3回走ったが、途中の休憩所で寝込んでしまって完走していない。最初の24時間で150km程度走れば、後の24時間で100kmは確実にこなせそうだ。
そのためには江戸川の120kmを20時間程度で走りたい。

やまちゃん、がんばれ、10月は精一杯走りこみをしよう!!!」

 何はともあれ、10月の練習で400km程度走って体調を整えることにした。

 

 

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(22.10.5) 劇画国家北朝鮮の新たな後継者 キム・ジョンウン氏

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 北朝鮮ほど劇画的国家はない。
なにしろ後継者に選ばれたキム・ジョンウン氏のテレビ画像が9月30日に公開されて、はじめてこのジョンウン氏の姿を北朝鮮の市民を含めた世界が見たのだから驚く。

 北朝鮮では金一族の映像は国家のトップシークレットだが、これはかつて北朝鮮が仕掛けたラングーン事件や大韓航空機爆破事件のように金一族がテロに会わないための対策である。
自分たちがしたことは、他人も当然するのだと思っている。

注)北朝鮮は王朝国家だから後継者の安全は国家の最重要事項になる。

 それに今まではジョンウン氏の漢字表記も秘密で、正雲とか正銀とか記載されてきたが、正恩が正しいのだと初めて知った。
年齢も今までは28歳だと言われていたが、急に30歳になってしまい北朝鮮では、年齢は一年ごとに増加するのではないらしい。

 そして今回急に大将に昇格したのだが、ジョンウン氏の戦歴は韓国の天安艦を撃沈したことだと、北朝鮮ではささやかれていると言う。
実に立派な戦歴を持った大将で後継者に相応しい」と言うわけだ。

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 この8月に金正日総書記が中国に電撃的に訪問し、ジョンウン氏を中国の胡錦濤主席に引き合わせたが、北朝鮮の実質的な宗主国の中国に三顧の礼をつくしに行ったわけだ。
これが後継者なのでよろしくお願いします
すっかり気をよくした胡錦濤主席は「後継体制を支持する」との祝電を9月28日に打っている。

 今回キム・ジョンウン氏を画像で見た正直な印象は「若いのにぶくぶく太っていて、これでは3代続いて糖尿病になるのは間違いない」と思った。
スポーツ好きだといわれていたが、身体を見た限りはとてもスポーツをしている身体ではない。
おいしいものを目一杯食べて太ってしまったと言う身体つきだ。

 画像が荒れてあまりはっきりと顔の輪郭が分からなかったが、北朝鮮内部では「故金日成主席に似せて整形手術をして、権威づけをしている」と噂されていると言う。

 おもわず「本当かしら?」と思ったが、北朝鮮では単なる息子というだけではダメで、赫々たる実績を持った指導者でなくてなならないので、大阪地検並みにでっち上げ工作がなされる。
顔は金日成で軍歴は天安艦の撃沈と言うわけだ。

 しかし北朝鮮は本当に劇画のような国だと思う。
ただ単に金正日総書記の息子だと言うだけで、戦歴のある大将にしてして、世界にそれに同意させようとしている。
確かに中国は信じたふりをしているが、それ以外の国はどら息子が二代続くのかとうんざりしているのが実態だ。

 

 

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(22.10.4) 自己保身で墓穴を掘った大阪地検特捜部  特捜部はでっち上げ機関か

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 誰にでも自己保身はあるが、今回の大阪地検特捜部の前部長大坪弘道氏と前副部長佐賀元明氏の自己保身は最悪だった。

 公判を担当していた女性検事が部長と副部長に「村木局長は無罪で、前田恒彦主任検事が証拠のFDの更新日付を書き換えて証拠隠滅を図っている」と訴えたのに、単なる女性のヒステリーとしてこの訴えを無視した。
そして証拠隠滅と言われないように「FDの書き換えを過失として処理するよう」に前田検事に指示している。

 女性検事が証拠隠滅に気がついたのは、1月27日の初公判で弁護側から「村木氏が偽証明書を作成しろと指示したというならば、その日時を明確にするよう」に法廷で求められたからである。

注)公判を担当する検事と捜査を担当する検事は通常異なる。

 捜査報告書には6月1日に当時の上村係長が偽の証明書を作成したとかかれており、一方検事調書には6月上旬に村木局長が上村係長に指示したとなっていた。

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 どちらの日付が正しいか女性検事は確認に迫られ、同僚検事(前田検事の部下)に相談したところ、この同僚検事が偽証明書を作成した証拠のFDがあり、このFDの日付6月1日を前田検事が自分が作成した検事調書にあうように、6月8日に改竄した」と打ち明けた。

じゃ、6月1日に偽証明書が作成されたという捜査報告書が正しくて、6月上旬に村木局長が指示したという検事調書はでっち上げじゃない。
これじゃ、公判は維持できないわ。村木さんは無罪よ・・・
・」

 1月30日、女性検事を含め関係した4人の検事が佐賀副部長にFDの改竄の事実を告げ、FDの日付の再確認を迫ったが、副部長は前田検事に確認をしてから対応を決めると回答した。

 しかしその後の処理がまったくの保身になっている。
前田検事から「公判を有利に導くために意図的に改竄した」との報告を受けた副部長が、部長と相談してだした結論が最悪だった。
人間保身のためなら何でもするという好事例だ。

まずいじゃないか、すでに公判が始まっているのに、いまさら証拠を隠蔽して村木容疑者を犯人に仕立て上げたなんていえないよ。
大阪地検始まって以来の不祥事だよ。
俺の立場はどうなる。花の特捜部長なんていわれて末は検事総長も夢でないのに、こんなでっち上げ事件が表に出たら監督責任を問われる。

なんとか隠蔽する方法はないのかね・・・・」

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 大坪部長、佐賀副部長、前田検事が3人で出した結論は「誤ってFDの日付を書き換えたが意図的でない」という口裏あわせだった
検事が口裏をあわせて証拠を隠滅してはおしまいだ。

しかし、公判担当の女性検事が、真実を公表して村木容疑者の無罪を明らかにすると主張してますが、これをどうしましょう
脅しつけろ。特捜部の統一見解にしたがわないと検事としての未来はないといって、口封じをするんだ。
もしこんなことが世間に知られたら俺は特捜部長を解任されてしまう。副部長、君だって未来はないよ。何とか3人で事件を隠蔽するんだ、いいな


 当初は前田検事が独走して、厚労省の組織犯罪にしようとでっち上げの検事調書を作ったのだが、これで大阪地検特捜部の組織犯罪になってしまった。
だれでも保身はあるものだが、大阪地検あげての大事件になれば、日本の検察制度そのものが問われても仕方がない。

 今、検察制度、特に特捜部はでっち上げ機関ではないかと疑問がもたれている。

注)ただしこの事件で真実を伝えようとした女性検事は、大阪地検の中で誰よりも立派だったと心から尊敬している。



 


 

 

 

 

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(22.10.3) デストロイヤー 陸がめ カメゴン

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 我が家の陸がめ、カメゴンはひどいデストロイヤーだ。
ありとあらゆるものに突進して壊す習性がある。
夏場は昼間、二階のベランダに放しておくのだが、このベランダに設置してあるクーラーのファンに突進して、ファンの蛇腹がほとんど壊れてしまった。

 狭いところにもぐりこむ性質があって、ファンの下にもぐりこもうと持ち上げたりしているうちにファンがカメゴンお豪腕でへなへなになってしまうのだ。

 また窓をネットだけにしておくと、このネットに突進して室内に入り込もうとするので、網が破られ大きな穴が開いている。
カメゴンは私と一心同体なので責任はすべて私に来る。
カメゴン、俺の小遣いはすべてカメゴンの弁済金になってしまうよ・・・

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(壊されたクーラーのファンの蛇腹。動いているのが不思議なくらいだ

 カメゴンが我が家に来た経緯は、息子が結婚するため亀の面倒を見れなくなって私に預けたからだ。
すでに3年半もたってすっかり我が家の一員になっている。
最初は3kg程度だったのに、今は8kg程度までおきくなり、頭から尻尾まで約40cm程度まで成長してしまった。
亀は鼻を互いにくっつけて挨拶するので、私もカメゴンと鼻をくっつけて挨拶する。
私もほとんど亀のようだ。

 カメゴンはケズメという種類らしく、餌さえやれば60cmぐらいまではすぐに成長するらしい。
お父さん、餌をやりすぎて大きくなると家で飼っていられなくなるわよ
いつも娘から注意を受けるが、ついつい餌を多く与えすぎてしまう。
えさはあればいつまでも食べていて限界というものがない。

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私の部屋に入り込もうとしている。実にたくましい

 最近寒くなったり、雨が降ったりしたのでケージの中に入れているのだが、そうするとこの中でウンチとチッコをする。
すぐに気がつけば私が処理するのだが、遅れると体中ウンチまみれになる。
お父さん、大変、カメゴンが大変・・・・・・
糞尿にまみれて大騒ぎをしている。

注)ベランダでいる時はベランダにチッコとウンチをするが、チッコはそのまま流れ、ウンチはカメゴンが食べてしまう。

 そうしたときは一階の風呂場でカメゴンとケージを洗うのだが、ケージをもって階段を下りる時が一苦労だ。カメゴンとケージを合わせると10kg程度になり、狭い階段でよろけそうだ。

  22102_004  (ネットもカメゴンの突進でぼろぼろだ

もうやだ、カメゴンの面倒は見てやれない。山に捨てに行く
先生は動物愛護の精神はないのですか

糞まみれでなければ愛護してもいい
糞も愛護の内です。犬の糞は愛犬家が処理しています

俺は愛亀家なんかになりたくない
先生はすぐに切れてしまうところが弱点です。私をみならって泰然自若としないとイラ菅なんていわれて中国に足元を見られますよ

 カメゴンに説教されてしまった。

 

 

 

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(22.10.2) 為替介入は失敗する。 早くも限界が見えてきたドル買い・円売り 

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 先月15日に政府・日銀が行ったドル買い・円売りの為替介入は早くもデッドロックに乗り上げ始めた。
当初2兆円規模で行った為替介入で、82円台だったドルが85円台になり、「どうだ、介入は成功したろう」と胸を張っていたが、このところ再び円高が進み、9月30日には83円台に戻っている。

 政府・日銀はアメリカも西欧も協調して為替介入をしてくれないので、日本だけで孤軍奮闘しているが、いづれ日本は失敗すると市場から見透かされている。
さあ、83円台になったぞ。もう一度介入するかい?」市場がささやく。

 なにしろ市場には各国が行った金融緩和策による資金があふれかえっている。
アメリカのFRB約70兆円、ヨーロッパのECB約80兆円、そうして当の日銀が新型オペレーションと称して約30兆円を市場に放出しているのだから、ヘッジファンドはほぼ無限大の資金を持っているようなものだ

 さらにFRBは一層の金融緩和策を検討しているといっているのだから、日銀がどんなに努力しても資金不足だ。
戦う相手に資金援助しているのだから、勝てるはずはない。

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 政府・日銀は円安にしないと日本が崩壊するような大騒ぎだが、しかし冷静になって考えてみると、なぜ円高になって悪いのかさっぱり分からない。

 円高になると地方の輸出企業の経営者が「これ以上の円高では企業経営が成り立たない」と言ったり、大手自動車メーカーが「1円円高になれば100億円の利益が喪失する」言ったりしており、それはまったくその通りなのだが、一方輸入業者は「1円円高になれば100億円の利益が発生する」のも事実なのだから、輸出産業のみにスポットを当てるのは片手落ちだ。

 それに何より「日本が豊かになって何が悪い」のだろうかと思ってしまう。
GDPが中国に抜かれたのも、円高になれば抜き返せるし、一人当たりのGDPもアメリカを再び抜くことができる。

 海外の優良な企業は円高のおかげで買収が可能になるし、小金持ちの人は海外に別荘を構えることもできる。
外国旅行をすれば「なぜこんなに自分は金持ちなのだろうか」と疑問に思うほどだ。

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 鉄鉱石や石油や石炭や、中国が輸出規制をしているレアアースの資源価格が高騰しているが、円高が進めがそうした悩みも解決する。
資源の購入に苦しむのは通貨の価値が低下している国だけで、日本のように価値が上昇している国は「だから、なんなのさ」という感覚になる。

 アメリカの共和党政権は「ドル高こそはアメリカの利益」と言ってはばからなかったが、なぜ日本では「円高こそは日本の利益」という政党がいないのか不思議だ。

 アメリカがドルの増刷を繰り返すのは、リーマンショック以降の金融機関が、シティーグループを見ても分かるように、本当の意味で収益が回復していないからだ。
サブプライム商品の時価評価をやめて、不良資産を塩漬けにすることで表面的には経営改善が図れたと発表しているだけである。

 一方日本の金融機関は竹中平蔵氏が徹底的な自己査定を行わせたおかげで、アメリカやヨーロッパの金融機関のように資産が悪化していない。
ヘッジファンドが日本を信頼して円買いするのはその健全性ゆえといえる。

 客観的に見れば円高は日本にとってチャンスだ。
なにしろ世界の資金が日本に集まるのだから、それを利用して世界の優良企業を買収して、マイクロソフトアップルグーグルのような企業になれる千載一遇のチャンスといえる。

 いつまでも「円高で大変だなんていっているようでは、このせっかくの機会をみすみす逃すだけだ。

 

 

 

 

 

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(22.10.1) 日本外交はお人よし  菅内閣を恫喝と懐柔で手玉に取れ 中国外交の真髄

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    日本人はどこまでお人よしなのだろうかと呆れ返ってしまった。
このところの報道で「中国高官が28日、『尖閣諸島問題はほぼ終わった』と述べた」と子供のように喜んでいることである。

 経済界は商社筋の話としてレアアースの通関手続きが再開され、日本への輸出申請を自粛していた中国の鉱山会社が申請を再開したとの情報を受けて「これでレアアースの輸入が可能になり、経済に対する悪影響がなくなりそうだ」と手放しの喜びようだ。

 もっとも中国の姜瑜報道官は、いつもの四角い顔と鋭い眼鏡越しで「責任は日本側が負うべきであり、・・・・・・日本側が誠実で実務的な行動を取らねばならない」と実に堂々と言い放っている。
ここで言う誠実で実務的な行動とは「謝罪と賠償」のことだが、日本の報道では直接に「謝罪と賠償」に言及しなかったので中国が軟化した表れだと言う。

 フジタの職員の4名のうち3名が解放されたのも中国軟化の兆しだという。

 しかしこの日本側の喜びようはまったく相手の恫喝と懐柔外交に乗せられた「ひ弱な花、日本」そのものの姿と言っていい。

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 考えても見てほしい。日本の領海に進入した中国漁船を取り締まっている海上保安庁の巡視船が漁船にぶつけられ、ようやく逮捕した船長を、泣く泣く沖縄地検が処分保留で釈放したのが実態だ。
それなのに中国はレアアースの輸出を差し止め、日本向け観光を自粛させ、フジタの職員をスパイ容疑で逮捕し、挙句の果ては「謝罪と賠償」を要求してきた。

 本来ならこうした措置はすべて日本側がすべきなのに一方的に中国に恫喝され、ようやく中国政府高官が「ほぼ終わった」といったと言って涙を流さんばかりに喜んでいる。
良かった。ようやく中国の怒りが解けた・・・・・」

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 私はかつて融資担当者だった頃、ある会社が倒産しそこに債権回収に出向いていったことがある。
その会社はいわゆる闇金融からも資金を調達していて、ヤクザが2名ほど押しかけていた。

 いかにも怖そうなヤーさんがさんざん社長を脅しつけ、まず最初に闇金融に返済しろと迫っていたが、社長が縮み上がった頃を見計らって軟弱そうなヤーさんが「社長さん、ここは俺にまかせな。悪いようにはしないから」と言ったのには驚いた。

 ヤクザには脅し役と懐柔役が必ずおり、二人三脚で資金回収をする様は実に見事だった。

 中国はヤクザである。尖閣諸島を中国領土にするためには、この恫喝と懐柔の繰り返しがなされると思わなくてはならない。
政府高官が「ほぼ終わった」と言って尖閣諸島の漁船衝突事件が収束するような報道は、この中国のヤクザ体質をまったく見誤っている
繰り返すが、中国は今後もこの恫喝と懐柔を使って日本を手玉に取るはずだ。

 幸いにレアアースについてはNEDOと北海道大学の共同開発チームから、「レアアースを使用しない次世代自動車用モーターの開発に成功した」との発表がなされた。
さすが技術の国日本だとうれしくなったが、中国の報道に迷わされずに、中国のレアアースに依存しない措置を取るべきである。

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 しかしこの尖閣諸島の漁船衝突事件の政府の報道を見て、中国の姜瑜報道官の立派な態度と、一方仙谷官房長官の困り果てた自信のない態度との対比には驚いた。

 中国は自分が犯罪者なのに正々堂々と「謝罪と賠償」を要求し、一方日本は被害者なのに「日本の司法過程の中国側の理解がまったく日本と異なっており、・・・・政治・行政・司法の(三権分立が)中国ではなされていないことに気づかなかった」と弁解していたのは情けない。

 政治体制が異なれば権力のあり方が異なるのは当たり前で、最初から相手の政治体制に合わせて交渉するようでは、外交交渉で位負けするのは当然だ。

 せめて仙谷官房長官が政府見解を述べる時ぐらいは、態度だけでも姜瑜報道官並みの自信に満ちた報道をしてほしいものだ。

 

 

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