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(22.10.28) 日印経済協力と中国封じ込め政策 EPAの締結

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 この24日から26日までインドのシン首相が日本を訪問し、懸案だったEPA(貿易・投資などを自由化する経済連携協定)の締結が決まった。
本来貿易や投資の自由化交渉はWTOの場で行うことになっていたが、WTOの国際会議がまったく進展せず、しびれを切らした各国が2国間で貿易と投資交渉を始めた。それがEPAである。

 今回日本がインドとEPAの締結が決まったことに、朝日新聞の社説は「日本が久しぶりに実現した外交関係の前進」と絶賛したが、出遅れて韓国に水をあけられあせっていた自動車業界や鉄鋼業界はもろ手を挙げて大賛成だ。

注)韓国とインドは10年1月にEPAを締結している。

 現在の日本とインドとの経済関係は貿易量が中国の25分の1程度で、まだまだ関係が深いとはいえないが、インドが求めているインフラ整備道路・港湾・電力・通信)に日本企業が積極的に関与できる下地ができたと言える。

注)例外的に自動車メーカー・スズキはインドの自動車シェアの50%を占めており、インドで最も成功した会社になっている。

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 EPA締結は純粋に経済問題だが、実はシン首相の日本訪問には隠れた戦略的狙いがある。
インド・日本にとって目下の仮想敵国は中国で、インドはカシミールで中国に敗北し、最近はミャンマースリランカに中国海軍の軍事基地が建設されつつあり、インド洋を中国の内海にされかねない状況になってきた。

注)インド海軍は空母の建設に乗り出したが、すべて中国海軍にインド洋をあけ渡さないためである。

 一方日本は尖閣諸島で中国に脅され、まだ実効支配はしているもののいつ中国海軍に尖閣諸島をのっとられるか分からないような状況になっている。
さらにレアアースで経済を締め上げられ、中国国内では日本製品の排斥運動が起こっている。

注)日本と中国の貿易は最近は中国のほうが黒字で、中国は世界最大の貿易立国であり、実際は日本の方が中国製品の排斥をできる立場にある。
最近イオンは中国からの衣類の調達を現行の80%から50%に落とすと公表した。


 中国の暴虐ぶりは目に余るため、密かに日本とインドは軍事面での提携を強化することにし、インドで外務・防衛の次官クラスの定期会合を持つことも決まった。
もっとも経済面では中国は日本もインドも最大の貿易相手国だから、あまりに露骨な中国包囲網をとることもできない。
現状は深く静かに潜行したまま日印枢軸を強化しようと言う段階だ。

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 日本とインド間にあるほとんど唯一と言っていい棘は原子力の平和利用についての意見の相違である。
インドはNPT核拡散防止条約)を承認しておらず、独自に核開発を実施し、同じく核保有国のパキスタンと対峙している。

 日本との原子力協定には「インドが核実験を行ったら協定を破棄する」という停止条件がついているが、インドの核実験はパキスタン次第だから、状況によっては核実験の再開はあると見なければならないだろう。
だからこの問題は対インド戦略の最大のネックになる可能性が高い。

 しかしそれ以外の経済・防衛問題については完全に利害が一致するのだから、日印関係の強化は日本にとり相当のプラス効果をもたらしそうだ。

 シン首相は日本訪問の後、マレーシアとベトナムを訪問するがいずれも中国の海洋進出に脅威を感じている国で、今回のシン首相の訪問が中国封じ込めのための訪問だったことが分かる。

 これでようやく日本も対中国包囲網の足がかりができたと言える。

 

 

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