(22.9.30) 武富士の倒産と消費者金融ビジネスモデルの崩壊
28日、消費者金融大手の武富士が、来年期日が来る社債926億円の償還が不可能との理由で会社更生法を申請し倒産した。負債総額4336億円だという。
すでに09年9月にはアイフルが倒産しているので大手で二件目の倒産だが、現在残っているのは金融機関がバックについている消費者金融だけになっている。
武富士と言えば一時は飛ぶ鳥を落とす勢いで、創業者の武井保雄氏が日本の長者番付の1位になったり、テレビ広告でダンサーが思いっきり躍動感のあるダンスをしていたが、あの時が武富士の最盛期だったのだとしみじみ思う。
武富士が過去最高益を出したのが01年3月期で、連結最終利益が1272億円になったのには驚いた。当時は都市銀行が不良債権処理で青息吐息だったせいもあるが、「次世代の金融は消費者金融か!!」と思ったものである。
だがその頃を境として消費者金融に対する風当たりが厳しくなっていった。
特に武富士はその強引な取立てが問題になり、また武井保雄氏自身もジャーナリストに対する盗聴事件を起こし有罪判決を受けて武富士がピークを過ぎたことを感じさせた。
しかし消費者金融が本当の意味で斜陽になったのは、06年1月に最高裁がいわゆるグレーゾーン金利を違法とした判決を出てからである。
それまで出資法の上限である29.2%に近い金利で融資をしていたが、これは違法で利息制限法の15%~20%(融資金額によって異なる)までしか認められないとしたので、消費者金融業界は大騒ぎになってしまった。
なぜ大騒ぎになったかというと、20%以下の金利では消費者金融の平均的な延滞率約20%(だから最低の利回りが20%以上必要になる)をカバーできないからだ。
この延滞をカバーして無担保・無保証で融資を可能にする条件がグレーゾーン金利と言われた29%前後の金利で、これによって収益を確保してきたと言える。
注)融資をする側から言うと無担保無保証ほど恐ろしいものはない。消費者金融より安全と言われている企業融資で、無担保無保証を売りものにしていた新銀行東京や日本振興銀行が倒産または実質的な倒産になったことからも分かる。
最高裁の判決を受けて過払い利息の返還請求訴訟が各地で起きており、武富士は年間約1000億円規模の返還請求に応じてきたが、将来的にはさらに1兆円規模の返還請求に応じなければならないと言う。
「もうだめだ。とても返還請求に応じられない・・・・・」
さらに追い討ちは改正貸金業法で10年6月から、貸出総額が年収の3分の1を超えて貸出ができなくなった。
消費者金融借入者約1400万人の約半分が多重債務者と想定されており、A社の返済をB社の借入でファイナンスしていたのが今後はまったくできなくなった。
「お客さん、返済できないならB社を紹介しますよ」というわけにはいかない。
これにより延滞率は20%からさらに大きく上昇し、どこまで延滞が増えるのか分からない状況になっている。
「グレーゾーン金利もだめ、多重債務もだめなら消費者金融は生きるすべがないじゃないか」悲鳴をあげている。
実際問題として消費者金融のビジネスモデルは崩壊しており、将来的に復活するすべはない。
最高裁の判決および改正貸金業法は「消費者金融は一種の悪業であり、これをつぶしてもかまわない」という思想で統一されている。
しかしコインに表裏があるように消費者金融にも表裏があり、30%近い高利でも借入を望む人はいる。
そうした人の借入は結局はさらにあくどい裏金融の世界で調達せざる得なくなるだろう。
ドラスティックな改革はどうしても副作用が発生する。存在するものには何らかの社会的意義があるものだ。消費者金融を悪徳金融として完全に倒産に追い込むことが正しいのか、少し冷静になって考えてみる必要がありそうだ。
注)多重債務者問題については「多重債務者問題は解決するだろうか」を参照
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