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(22.9.9) ロドリゴ 蝦夷地探訪記 その8

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 蝦夷地はどこも寂しいものなのですが、特に農村部の寂しさはたとえようもありません。
牧場などは500mから1km程度離れて建っているのですが、その数件に1件は廃屋になっており、屋根が雪の重みでへこんで朽ち果てている様は、芭蕉翁が歌った「夏草やつわものどもが夢の跡」そのものでございました。

 江戸表の瓦版では、農業人口が05年対比約22%減少したと書いてありましたが、かつて大和の農業人口600万人と言われていた数も、とうとう260万規模になってしまいました。

 蝦夷地は牧草地にしても農耕地にしても江戸や大阪のそれよりはるかに大規模なものの、自由化の波に耐えられず農業経営に失敗しては農村部から消えていくようでございました。

 この様は著名な戯作作家、倉本 聰氏が「北の国から」で描いておりましたように、ちょっとした大雨で農地が流されたり、働き手の一人が不慮の死をとげるといった、ほんの少しのアクシデントで夜逃げ同然の状態になるようでございました。

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(こうした廃屋がいたるところに放置されている

  一方これはとても意外でしたのは漁村部が相対的に裕福で、家屋も瀟洒な建物が多く、一家そろって昆布漁にいそしんでいることでございました。
ここ蝦夷地の昆布漁は漁期が夏の4ヶ月で、しかも1日の漁の時間は3時間と決められており、各家屋に認められた和船は1艘と、完全に制限された中での競争が繰り広げられておりました。

自由化の波にもまれる大規模経営の農村部が疲弊し、一方制限競争の小規模経営の漁村部が裕福で集落が維持されており、子供たちも多いのはなぜか?」
これはロドリゴが蝦夷地を探訪していて最も印象に残ったことでございます。

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山間部の牧草地。あまりよい牧草は生えていない

 今日(元禄3年8月15日)は浦幌のキャンプ場を発って、釧路と言う都邑に向けて歩き始めました。
この道は十勝国道といって、昨日まで通ってきた蝦夷の道とは異なり、象やサイやライオンやチーターが疾駆する道でございました。

 歩道が整備されている場所はまったく問題がないのですが、困ったことにトンネル部分は歩く部分が50cm程度しかなく、リックが壁にぶつかったり、張られている電話線の突出部分があったりして歩道から落ちてしまい、なんとも生きた心地がしませんでした。
主よ、ロドリゴはここで象に踏み潰されるのでしょうか

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とても旧いトンネルらしく、歩道部分は50cm程度しかなかった

 十勝国道直別と言う集落あたりから海岸べりに走っておりましたので景色が一気に開けて気持ちが明るくなるのでございます。
蝦夷地を歩いて山道に差し掛かると視界が極端に狭くなり、ただただ木立の中を歩いていると言うような状況でございました。

 こうした場所はアブの結界でありただでさえ憂鬱になるのですが、いたるところに「ヒグマ注意」の立て札が立っていて、気持ちがナーバスになるのでございました。

 今日の歩行は30km程度と決め、パシクル自然公園近くの海岸べりの防波堤の近くにキャンプを張ることにしました。

遠くに人家あり、ヨーシ。近くに道路あり、ヨーシ。近くに森なし、ヨーシ。
ヒグマの気配なし、ヨーシ

これは毎回キャンプを張るときに繰り返した確認点検で、剣豪宮本武蔵五輪書に書かれていた「ヒグマを見切る法」の極意でございます。

 私ロドリゴが蝦夷地の探訪を行い、修行にいそしんだ結果得た最大の成果はこの見切りでございました。
それまでロドリゴは夜中に異様な物音がすると「すわ、ヒグマか」などと慌てふためいて起き上がり、持っていた杖を小脇に抱えて戦闘態勢をとっておりました。
異様な物音は夜中に何回もしますので、神経が休まる時がなく寝不足になってしまうのでございます。

注)ロドリゴはサンチアーノ大主教からノミの心臓とあだ名されておりました。

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こうした海岸端がキャンプ地としては最適

 しかし、この武蔵の見切りの術を見につけたロドリゴはそれまでのロドリゴと別人でした。
遠くに人家あり、ヨーシ。近くに道路あり、ヨーシ。近くに森なし、ヨーシ。
異常音 アーリ、ただしヒグマの可能性 ナーシ

一度見切ってからは、いささかも幻覚におびえることがなくなったのでございます。

ロドリゴ様、ロドリゴ様が秘剣、ヒグマ見切りを編み出すたびに、このおつうから離れていってしまうのが、悲しいのでございます
おつう、許してくれ。ロドリゴは剣の道でしか生きられないのじゃ
ああ、ロドリゴ様・・・・・・いっそ死ねと言ってくださいまし
おつう(叫ぶ)」
抱き合う二人(音楽、はげしく)


 このようにして熟睡できたのでございます。

 

 

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