(22.9.17) 単独の為替介入は政府のパフォーマンス 円高は止まらない
菅総理が再三に渡って言及していた為替介入が15日実施された。
市場は菅総理の介入発言は口先だけだと高をくくっていたので、さすがにびっくりして円は82円から85円まで円安が進み、当局は為替介入が成功したと胸を張っている。
しかしこの為替介入が成功するかどうかは、これからの為替相場の動向にかかっており、1日だけの勝負で勝敗が決まるわけではない。
15日は長い戦いの始まりに過ぎず、単独介入と言う援軍なき戦いを日本一国でいつまで続けられるかはかなり疑問だ。
今回日本の通貨当局はアメリカやヨーロッパの通貨当局に「最低限ネガティブなことはいわないでほしい」と頼むのがやっとで、とても協調介入などできる雰囲気でなかった。
注)なぜ円高・ドル安になるのかの本質的な理由はアメリカにあり「円高・株安は止まらない 若者は荒野を目指せ」に記載した。
アメリカもヨーロッパも現状のドル安、ユーロ安は輸出振興に好都合であり、財政政策によるてこ入れをこれ以上する余裕がないので、本音は円高こそ望むところで、日本の為替介入はとんでもないと思っている。
注)アメリカは中国に対し元安の是正を求めている最中で、日本の円安政策に対しても快く思っていない。
これを端的に表現したのがグリーンスパン前議長で、アメリカの公聴会で「為替介入は効果がない。長期的・普遍的な効果は期待できない」と実にそっけなく述べている。
今回の政府・日銀の為替介入の規模は約2兆円といわれ、これで3円あまりの円安を演出したのだから、確かにまずまずの成果とはいえる。
注)通常は1円円安に誘導するためには1兆円が必要と言われているので、今回は2兆円で3円の円安なので、効果的だったとの判断になる。
なお為替介入をして調達したドルはそのまま持っていても金利がつかないので仕方なしにアメリカ国債を購入することになる。日本も中国(元安誘導のためドル買いをしている)もこうしてアメリカ国債が積みあがっていく。
しかし為替介入は一旦始めると止めたほうが負けのポーカーゲームになってしまい、後はどちらが資金を持っているかの勝負になる。
政府・日銀は為替介入に必要な資金を短期国債を発行して調達し、それでドル買いをするのだが、前回03年から04年にかけての単独の為替介入では約33兆円の資金を投入した。
その結果は125円台の円が、110円程度の円高になっているのだから、どう見ても成功したとはいいがたい。
日本は輸出振興による不況脱出を図ろうとして、120円台の輸出企業にとって最適な為替相場の維持を図ろうとしたが、そうは問屋が卸さなかったというところだろう。
今回の円高は日本に原因があるのではなく、アメリカにその原因がある。約70兆円にも登る景気浮揚策を実施してもアメリカ経済は一向に上向かない。
FRBはさらに追加の金融緩和を行うと言っているが、これはさらにドルを増刷すると言っているのに等しい。
「こりゃだめだ。ドルはどんどん低下する。相対的に真面目に管理された円を持っておくのがよさそうだ」市場はそう思っている。
注)今回のポーカーゲームの対戦相手はヘッジファンドで、アメリカ政府がジャブジャブの資金供給をしているのでかなり手ごわい。
原因がアメリカにあるのにアメリカはさらに放漫経営をしようとしているのだから、円高・ドル安の流れは決定的だ。
さらにアメリカはドル安を容認しているのだから対応の仕様がない。
今回仕方なしに単独で為替介入を始めたが、前回と同様30兆円規模の為替介入を行っても、グリーンスパン前議長の言う様に円高の流れを止めることはできないだろう。
菅政権は「政府は何もしないで円高を放置して、景気を減速させた」と言われたくないので、パフォーマンスとして実施しているにすぎない。
しかし冷静に考えてみれば、円高とは日本全体の価値が上がることで、黙っていても金持ちになることを意味する。
強い円は企業買収や海外の資産を安く購入できる絶好の機会であり、願ってもない好機だ。
だから「円高で輸出企業は大変だ」というお決まりの悲鳴はもう止めて、積極的にこの機会を利用するのが、まともな経営者というものだ。
(別件)苅田郷で恒例の陶芸展が18日より開催されます。詳細は以下のとおりです。
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コメント
為替介入から一週間、今後の動向が気になりますね。
勉強させて頂きました。 ありがとうございます。
投稿: 株式勝男 | 2010年9月22日 (水) 09時57分