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(22.8.3) 日本テレビ報道局の無謀な取材 奥秩父滝川(ブドウ沢)の三重遭難

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(トシムネさん撮影、山崎編集 なおこの写真は北岳の大樺沢です)

 防災ヘリの墜落でなくなられた5名の方には心から気の毒に思ったが、今度の日本テレビ報道局記者カメラマン滝川(この上流にブドウ沢がある)での死亡(溺死)には同情の余地はない。

 ほとんど死亡するのが当然の状況で死亡している。
時間的経緯を追っていくと、7月31日朝6時半ごろから取材のため入山を開始したが、メンバーはA記者(30歳)、Bカメラマン(43歳)、山岳ガイドCさん(33歳)の3名だった。

 この取材は、ヘリの墜落現場まで行って地上からの映像を撮ることを目的とし、ブドウ沢まで沢を遡行する予定だった。
しかし山岳ガイドのCさんによると、A記者は沢登りを行う装備がまったくなされてなかった。
防寒着を持っておらず、ヘルメットも沢登り用の靴もなかったため、CさんA記者にヘルメットと靴を貸したのだという。

 一方日本テレビによれば、今回の取材は以下の条件で許可したと言う。
① 山岳ガイドを必ずつけること
② 取材日数は1日
③ 十分な装備を用意すること


注)登山経験、特に沢登りの経験がない人は、十分な装備と言っても何を用意したらいいのか分からない。許可した方も聞いた方もどうすればいいか分からなかったのが実情だろう。

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(トシムネさん撮影、山崎編集 なおこの写真は北岳の大樺沢です)

 今回派遣された二人のうちA記者は明らかに登山経験が不足しており(経験は簡単な山登り程度だったと思われる)、一方Bカメラマンはアラスカやチベット等の山岳取材の経験者で、防寒着等の用意はしていたが、山岳ガイドのCさんの話だと「二人とも足取りがおぼつかなかった」と言う。

注)過去にどのような経歴があっても日常的に身体を鍛えていなければ、沢を歩いたり滝を登ったりすることはうまくできない。

 ガイドのCさんはこうした状況を見て、二人が沢に入るのは無謀と判断したが、無下に断ることができないため、滝川に下りて、その水の冷たさ(10度C程度)を実感させ、「雲行きが怪しいので、撤退しましょう」と提案したと言う。

注)実際その日の夜半から激しい雨が降った。

 記者とカメラマンはこの段階ではCさんの指示に従い、一旦登山口まで引き返したが、問題はこの後に起こった。
取材に来たものの河原に下りただけで終わってしまったため、カメラマンのBさんが、「尾根筋から墜落したヘリの映像を取れる場所を見つけてくる」と10時ごろから記者とカメラマンだけで再度山に入ったという

注)この取材の実質的なリーダーはBカメラマンだった。

 登山経験の少ない人にはこの行動の意味が分からない。
通常尾根筋は道が明確に存在し、危険な箇所はほとんどない。しかもここはせいぜい1000Mを越す程度の山並みだから、3000M級の山道を歩くのとは違う。

 一方沢筋が幾層にも現れ、水に浸かりながら岸壁を渡るヘツリというような場所や、水が深いトロと言われる遊泳して対岸に渡る場所がしばしば現れる。
水温が10度程度だと、よほど防水のしっかりした衣類を着ていても身体から体温が奪われ、2時間程度低体温症になって身体が動かなくなることがある。

 ガイドのCさんが「尾根筋ならば二人で行ってもまったく問題ない」と判断し日本テレビの2名の行動を許した理由はそこにあるのだが、実際は記者とカメラマンは沢に入っていた。
死亡した場所が滝川なのだから、尾根にいたはずがない。

 BさんはガイドのCさんが危険を感知して沢に入るのを躊躇したため、あえて嘘をついて沢に入ったものと思われる。どうしても報道の映像がほしかったのだろう。

 しかしこの時に最大のミスをしている。
① ロープを持っていかなかったこと(尾根筋ではまったく必要がないが沢では下降時に絶対必要
② A記者の服装が軽登山の服装だったこと
(沢の水温に耐えられない


Cimg1618_2  (トシムネさん撮影、山崎編集 なおこの写真は北岳の大樺沢です)

 沢登りでは撤退(下降)する時が一番問題になる。通常登るのは体力と気力さえあれば可能なのだが、撤退するために滝を下りる時は必ずロープがいる
足下が見えないので、よほどのベテランでもフリーで降りることは危険だ。

 今回二人は沢に入って滝川を遡りブドウ沢に入ろうとしたが、たちまちのうちに身体が冷え、撤退に迫られたはずだ。なにしろA記者は防寒着を持っておらず、沢登りがはじめてだったはずだからだ。

注)沢登りの経験者だったらヘルメットや沢登り用の靴を持っていないことなどありえない。

 しかしこの時になってロープがないことが致命的な失敗になった。登った滝や急角度の傾斜を経験不足のA記者は降りることができなくなって、滑って深みに落ち込み川に流されたと推定される。

注)A記者の頭部には複数の傷があった。一方Bカメラマンには外傷がなかった。

 
BカメラマンA記者を救おうとしたが、一緒におぼれてしまい体力の限界が来て二人とも溺死したものと思われる。
この日の夕刻には雨が降っており、二人はさらに川に流されたようだ。

 今回の事故については同情する余地はない
あえて嘘をつき、軽装備でかつ未経験の若者を連れて沢に入り、撤退用のロープももって行かなかったのだから、遭難するのが当然だ。

 日本テレビはこのような無謀きわまる取材を許可したこと、特に登山経験がほとんどない若者に軽装備で沢登りをさせたことについて、十分な検証をする必要がある。




 

 




 

 

 

 

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